エグゼキューションの質

Photo by: Michelin Motorsport WEC_24 Heures du Mans

スタートアップに投資をした後、僕たちVCは様々な指標や情報をもとに、会社の状態や事業の進捗状況を把握しようとする。その中でも僕が、定性的ではあるけれど、そのスタートアップの成功を予測するために一番重要だと思っている要素は『エグゼキューションの質』だ。経営チームによるエグゼキューションの質が高ければ、どんな問題にぶつかっても解決方法を見つけることができ、スタートアップのポテンシャルを最大化できる。

エグゼキューションの質が高くなければ、一流の会社にはなれないと僕は信じている。

では、「エグゼキューションの質が高いと思う経営」とは、どういったところを見て感じるものなのか。

  • 課題に対するアクションのスピード:エグゼキューションの質が高いチームは、潜在、顕在に関わらず、抱える課題に対してスピーディーに対応できている。3ヶ月以内には課題を解決させていることが多い。
  • 目標の達成率:設定した目標や計画の達成率が高く、目標値を上回ることが多い。例え未達の月があっても、2ヶ月以上未達が続くことはあまり無い。
  • 優先順位とフォーカス:会社にとって一番重要なことにフォーカスできていて、意識が散らばっていない。
  • 一貫性:優先順位や目標が、社長や経営層はもちろんのこと、会社全体で一貫して正しく理解され認識されている。また、方針やビジョンにブレや矛盾がない。
  • クリアな考え:考えが整理されていて、次に取るべきアクションが明確になっている。
  • 高いスタンダード:経営チームが、自分達、そして会社全体に対して高いスタンダードを求めていて、そのスタンダードの高さを抜かりなく徹底的に維持している。

これらが、僕がエグゼキューションの質が高いと感じる経営チームだ。では、エグゼキューションのレベルを上げるためにどうすれば良いのか?

  • 良いプランニングと計測:どんなことでも、計らなければ客観的に状態を分析することはできない。大事だと思う指標を計測し、プランニングの解像度を上げ続けていく。そのためにも、プランニングのための時間を確保することが大事。
  • 良い人の採用:エグゼキューションのレベルを上げるために良い人材を確保し、委任と権限譲渡を積極的に遂行する。これは、考える時間を確保するためにも重要なこと。
  • 違和感を無くす:何か違和感を感じたならば、事態が悪化する前にその理由を突き止めてその原因を潰す。時間の経過と共に解決するだろうなどという考えは持たないこと。逃げずにすぐに課題に立ち向かうべき。
  • 透明性と責任:不都合な情報を隠さず、透明性高く経営をしてる。それぞれの役割や責任をハッキリさせて、言い訳できるシチュエーションを無くす。
  • グッドで満足せず、常にグレートを目指す:現状に満足せず、さらに高いレベル、最高な状態を目指し続ける。フィードバックを求めて、インスピレーションを探す姿勢を忘れないこと。

自分達のエグゼキューションの質は高いと言えるのか。
もしその答えが「No」なのであれば、これからレベルを上げにいけば良い。質が上がれば、自分自身と会社に対する愛と誇りも強まって、より高いところを目指し続ける原動力になると僕は思う。

(edited by kobajenne

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SaaS企業の拡大に必要不可欠な「セールスイネーブルメント」

SaaS業界の最重要ワードの一つ「セールスイネーブルメント」。今ではSaaS企業の拡大に必要不可欠な機能と言えるだろう。では、そもそも「セールスイネーブルメント」とは何なのか?効果を出すために何をするべきなのか?

11月7日に開催するALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYOに先駆けて、今回のポッドキャストエピソードでは、セールスフォース・ドットコムで7年半の間Sales Enablementチームの部門長として活躍、現在はEnablementサービスに特化したR-Square & Companyを創業した山下 貴宏さんとディスカッションしました。

【サマリー】

  • Sales Enablementとは何なのか?
  • EnablementであるものとEnablementでないもの。
  • Enablementが重要な理由。
  • Enablementの始め方。そして定着させる方法。
  • 効果的なEnablementのためにSFAで何を管理するべきか。
  • Enablementの目標設定。
  • Enabementチーム内の役割分担。
  • ARRの規模毎に必要なEnablement。
  • Enablementに向いてる人、向いてない人。

Photo and sound edited by kobajenne

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② 急成長を続ける北米のデカコーン企業 Stripe のChief Revenue Officerが、来日予定!日本にはまだ浸透していない、この「Chief Revenue Officer」の重要性とは。

③ 大型調達を実施したSmartHRとオクトの代表が語る、急成長を支える組織基盤のあり方。

④ SNS投稿禁止の「Deep Dive」セッションでは、ここでしか聞けない(シェアされない)トークを。参加者との質問を交えながら、進めていく参加型セッションです。

⑤ 今年のSaaS業界のホットトピックである「イネーブルメント」や「エンタープライズセールス」のスペシャリストが、その成功の秘訣を教えます。

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長期にわたるSaaS経営マラソンを走り切るには

SaaSスタートアップの経営は、とにかく時間がかかる。ゼロからARR100億円に到達するには、早くても8年は必要と考えたほうが良い。でも、その間ずっと全力で走ってる状態では、途中でバーンアウトしてしまうだろう。持続性のある経営を行うためにも、自分自身と会社、そして組織全体のメンテナンスを強化していく必要がある。

この記事では、現役のSaaS起業家からコメントやアドバイスをもらったので、彼らのコメントをもとに「長期なSaaS経営マラソンを走り切る方法」について書いていきたいと思う。

顧客と話してリチャージする

エネルギーを維持するためにやってることは、顧客と頻繁に会うこと。
人生をかけて創り上げた製品やサービスに対して、顧客から直接感謝の言葉をもらったり、さらなる改善点を教えてもらえる体験はエネルギーをもらえるし、ツライことを乗り越えてきて良かったと心から思える。― 福山 太郎 (Fond)

Fondの太郎くんが、彼自身そしてチーム全体のエネルギーを持続するために行っているのは、顧客と積極的に会って話をすること。これが今後の開発ロードマップのヒントになったり、カスタマーサクセスへの貢献にも繋がっているので、少なくとも週に一度はお客さんと会う機会を作っている。

顧客と定期的に会うこと。最低週に一社、できれば二社。顧客に会うことは、一番エネルギーをもらえるし、最も勉強になる。特にインターネットの会社を経営していると顧客に会う機会が自然と少なくなってしまいがちだから、意識することが大事!事件は会議室では起きていない!― 福山 太郎

COOやCクラスのメンバーを入れる

自分の役割を他のメンバーに委任できれば、新しい取り組みや事業など、未来を考えるためにより多くの時間を割くことができる。ARR1億円を超えたタイミングで自分の役割の大部分を担ってくれるCOOクラスを採用できればそれが理想だが、カスタマーサクセスやセールス、プロダクトなど部分的に委任できるVPやマネージャーを積極的に採用すると良い。

COOに仕事を任せ始めたのは、ARRが1億円を超えたタイミング。アドバイザーのFOND福山太郎さんから「ARR1億円まではアートで、ARR1億からはサイエンスの世界」と聞いていたので、そのバトンタッチがうまくできたなと思っています。― 宮田 昇始(SmartHR)

考える時間を確保する

スタートアップの経営はとにかくやることが尽きない。だからこそ、考える時間の確保は重要だ。実はこの時間は、起業家にとっての〈精神安定剤〉にもなる。気が付けばカレンダーが埋まっている・・・という事も多いなか、考えるための時間を予めブロックして、その時間は場所を変えてみるなど、環境にも工夫を取り入れると良い。

どうしても日々のオペレーションに追われていると、短期目線になりやすい。中・長期の未来について考えたり、他の経営者や専門家と話したり、自身の業界とは全く関係のない業界の人と話したりすることは、普段使わない思考を活性化できるので、リフレッシュした気持ちになるし、エネルギーが湧くきっかけになるだろう。

以下は、Plaid社の倉橋さんが考える「良いエネルギー」で自分を満たすために実施していること。

・未来、理想を考える時間がとれている。

・新鮮な気持ちに定期的に戻れている。

・累積思考バイアスを壊せている。

・具体的にはオフィスに行かない時間を作る(AMは基本行かない、毎週X曜日は行かない、この週は行かない)。

・未来の話をしている時間を増やす。

・学習と発見をメンバーに求め、結果を認める。

・無駄な時間、無駄なインプットを許容する。

・CPO(Chief Product Officer)の柴山とただただ話す。

・思考が切れる時間を作る。

・2週間以上、強制的に業務から離れる(半年に1度程、旅行など)。

・起業初期いたコワーキングスペースを”サード・プレイス”として持ち続ける。

倉橋 健太(Plaid)

採用ミスは辛い、でも乗り越えたら勝機が見える

初めて本格的なマネジメントチームを組成しようとした時。特に、間違ったマネージメント採用をしてしまった時のストレスは非常に大きかった。経験豊富なマネージメントチームを組成すると、仮に採用後に違和感を感じても、自分が間違っているのかと思ってしまいがちだけど、何か違和感を感じたら必ず介入して、必要に応じて方向転換を行うことを学んだ。マネージメント面接慣れをするのには時間がかかった。― 福山 太郎

まだチームが全部で50人のとき、ミドルクラス人材の組織ミスマッチが数件起こり、組織の空気が悪くなった。ファイナンスを推進する傍ら、1on1を繰り返し、経営の余裕もなくなっていた。 痛みは伴ったが、会社視点で前向きなリーダーへの裁量を広げ、配置変更し、チームビルティングをし直した。― 稲田 武夫 (Oct)

採用ミス、特にマネジメント層はストレスが大きい。カルチャーフィットの確認、採用基準の明確化、リファレンス、そして他の経営者からのアドバイスを聞くなどして、できる限りミスは回避はしたい。でも、100%回避することは不可能なので、どこかでミスは発生する。
その時重要なのは、とにかく早期に行動すること。問題を解消することができたら、今までより断然強く良いチームとなり、その結果、勝機が見えてくるようになるはず。とにかく乗り越えるしかない。

長期に経営できるマインドセット

2つあります。1つ目は「水は低きに流れ、人は易きに流れる」を意識しています。無理に努力するのではなく、自然と努力できる環境をつくっています。自分も会社も。2つ目は「三方よし」です。誰かが過剰に得したり、損する仕組みは長続きしません。例えば「顧客」「社員」「会社」の三者ともがハッピーになる仕組みづくりを意識しています。― 宮田 昇始

長期の経営を意識したマインドセットも重要。働き方や環境づくり、サービスや組織の設計など、長く自然と働けるようするのが大事だ。

・長期に正義を置く。長期と短期は常にセットで考え、発信し、問題提起する。

・プロダクトとビジネス以外の側面についても、一切妥協せず同一の目線感で意思決定する。

・組織や売上は最後に考える。とはいえちゃんと売上は作る(理想を言っていられる自信とステークホルダーからの信頼)。

・今のリズム、重心を設計する。固定化(思考停止)してくる部分を意図的に壊す。

・予定不調和な採用を心がける(スキルや人員計画ドリブンな採用を行わない)。

― 倉橋 健太

体の安らぎ、心の安らぎ

1日1時間の筋トレ。8時間睡眠。平日はお酒を飲まない。― 福山 太郎

今年からランニングを月間100kmやってます。走っている間が、深く内省する時間です。あとお酒は週6〜7回ほど。 ― 宮田 昇始(SmartHR)

宮田くんは、お酒を減らした方が良いと思うのだが(苦笑)、運動する起業家は多い。やはりリラックス効果があるのと、肉体の強化は自信にもなるし、精神面の強化にもなる。体と心の安らぎを満たす方法は人それぞれだが、そのための時間の確保が重要だ。

PMFを達成したらすぐに採用

人事の採用と、広報の採用!もし次回があるならば、PMFを感じた瞬間に彼らを採用できるように関係づくりをしておきます!あと、英語ももっと早くやれば良かった!― 宮田 昇始

もっと早くやれば良かった事は採用リーダーの採用、マーケティングリーダーの採用、技術負債の解消と社内システム開発組織の構築。― 稲田 武夫

PMFを達成すると人の足りなさを直ぐに感じてしまう。PMF達成前から関係づくりできるとよりスムーズになる。特に、採用ペースが月に1名以上になりそうな段階で、採用担当者や人事担当者は採用するべき。

時間は必ずかかる。焦らない。

SaaSで一番大事なのは、淡々と正しいことを行い続けること。時間は必ずかかるので、焦らない。そして社員もツライことを一緒に乗り越えてくれているので、マイルストーンを達成したら、必ず社員とお祝いをすること。顧客の声を聞いて、より良い製品を作って、顧客にさらに喜ばれるのは、最高の幸せ!福山 太郎

とにかく時間がかかるので、そのロードトリップを楽しむことが大事。会社やチームメンバーが記録を更新した時、プロダクトをリリースした時、今まで獲得できなかった顧客を初めて獲得できた時など、マイルストーンを達成した時は、社員とお祝いをしてチームの一体感を強化しよう。

SaaSの経営マラソンは長く、時には辛く感じられる時があるかもしれない。
でも、正しくやれば誇りに思える会社と組織になる。
みんなも是非彼らのアドバイスを取り入れながら、走り切って欲しい。

ご協力いただいた稲田くん宮田くん太郎くん倉橋さんに感謝!

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SaaStr シリーズ:営業本部長が90日以内に売上を2倍にした方法

SaaStrシリーズ第三弾は2011年にAdobeが買収した電子サインサービス「EchoSign」の元営業本部長が90日以内に売上を2倍にした方法について(元記事はこちら

ブレンドン・キャシディは、我が社が地獄の年から抜け出そうとしていた困難な時期に営業本部長として参画した。リードは増え続けていたが、収益の伸びは停滞していたのだ。

ブレンドンが我々のオファーを受け入れる前に、僕は彼と一緒に座り、彼の仕事の見通しを伝える機会があった。僕は彼を100%信頼していること。そして素晴らしい仕事をしてくれると確信していると言った。しかし、ストレートに言うと、数値のモデリングを構築し、180日以内に売上を2倍にできない限り、会社は十分に大きくなることができず、結果資金が尽きて、失敗する事になるだろうと伝えた。これは、非常に大きな ”注文” であることは分かっていたが、その当時の数字を計算すると、これは成し遂げなければならないことだと伝えた。

彼は、少し時間をかけて会社の数字とデータを見た。そして、僕は、この時の彼の次の反応を忘れることはないだろう。「問題ありません。」と彼が言ったのだ。「十分な原材料があります。リードもあります。そして、何人かの良い担当者もいます。やってのけます。」

そして彼はやってのけた。実際、彼は90日間で売上を2倍にしてしまったのだ。

彼は一体これをどうやって成し遂げたのだろう?そこから何を学べるだろうか?

まず、彼が最初の90日間にやらなかったことを吟味してみよう。 

  • 彼はこの90日間、新しい見込み客や顧客を持ち込まなかった。90日では、大きなインパクトを与えることはできないと考えたのだ。
  • プロダクトはそのままだった。彼が着任した最初の日にプロダクトにあった欠陥やギャップは、90日後もそのままだった。
  • 競争相手が弱くなったわけではない。当然ながら。
  • 価格設定も変更せず、そのままだった。ターゲットの顧客とターゲットの取引サイズも同じだった。ここでもなんら変更はなかったのだ。

それでは、ブレンドンは90日間で一体どうやって売り上げを2倍にすることができたのか。

最終的に、それは以前簡単に説明したことのある1つのメトリックに起因していた。彼は、リードあたりの収益を倍増したのだ。リード・ベロシティ(営業チームがアプローチをしても良いと判別できたリードの成長率)は同じ、リード生成率も同じ。90日間に起こったことは、我々が持っていた各リードから得た収益が2倍になったことだった。

彼はこれをどうやって成し遂げたのだろう?まあ、いくつかの企業秘密も関係しているかもしれないが、僕が観察したのは次の通りだ。

  • 彼は直ぐに(本当にすぐに)実績のあるクローザーでチームをアップグレードした。ブレンドンは、参画して1日程度しか経ってない時点で、我々のステージと価格帯でクロージングすることができる3人の新しい営業を連れて来た。明らかに、彼らはまだプロダクトをよく知らなかった。知るには早すぎたから。だから、ドメインの専門知識は、彼らの成功とはまったく関係ない。しかし、彼らは我々の価格帯での基本的なSaaS販売プロセスを知っていた。そして彼らは有能だった。結果、販売サイクル90日未満で、ブレンドン着任以前からいた営業担当者と比べて最大3倍の率でリードとの取引を完了させたのだ。ドメインについての深い知識がほとんどなくても。
  • 彼は継承したチームを最大限に活用し、効果的に仕事をしていなかったチームメンバーを取り除いた。ブレンドンは、既存の営業チームのサイズを迅速に増やし、なかでも高い見込みのある営業担当と最高の結果をもたらしていた営業担当の2人にエネルギーを集中させた。そして、最も若いSMB営業担当者の驚くべき才能に気づき、直ぐに彼を昇進させた。これにより、彼担当のリードの生産性がおそらく3倍になっただろう。さらにブレンドンは、良い結果をもたらしていない担当者にリードを与えるのを単純に、止めた。考えてみれば、平均以下の担当者に貴重なリードを与えるのはとても無駄な行為である。リードを平均以下の担当者から実績のある担当者に再配布する(そして平均以下の担当者を取り除く)だけでも、大きな変化をもたらした。
  • 彼は、全てを自分1人でやろうとはしなかった。彼が “スーパー担当者” だとしても、これらを全て自分1人でやろうとするには、やることが多過ぎた。代わりに、彼は自分が持っていたリソース内での生産性を2倍、3倍にし、また、以前の中央値の2倍、3倍の確率で営業成績を残す才能がある者を直ちに雇うことに焦点を当てた。
  • 彼は、メトリックとしてパイプラインを使うのを止めた。パイプラインは重要な営業指標だ。しかし、クロージングしなければ話にならない。ブレンドンはパイプラインの無限のチャートと議論に終止符を打った。僕たちは完了することのできる実際のディールについて議論した。
  • 彼は競争を取り入れた。以前の営業チームのほとんどは競争に苦しんでいた。しかし競争はSaaSの世界では当たり前の話。信じられないかもしれないが、多くの人は競争から逃げる。しかし、競争を直ぐに受け入れ、そこから学べば、自分の相対的な短所と長所を学び、少なくとも最初はそこに集中することができる。

素晴らしいマネージメントが、営業本部長の第1の仕事である。雇い、管理し、昇進させ、耳を傾け、反復し、援助する。 これらがブレンドンが最初の90日間にした「すべて」である。他のことをする時間はまったくなかった。同じプロダクト、同じ長所、同じ短所、そして同じ世界。

そして、彼は見事に目標を果たした。

なぜなら僕は、世界レベルのマネージャーを雇ったのであり、マジシャンを雇ったわけではないのだから。

(すべての翻訳記事掲載については、SaaStrから掲載許可を得ています)

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SaaS企業が勝つために必要なバリュー


Photo by: Malcolm Macgregor

企業のバリュー(価値観)は、会社の文化を作り上げるうえでの重要な要素であり、DNAであり、経営層からマネージャー、そして社員それぞれの判断基準や行動指針にもなる。正しいバリューの設定と運用をすることで、掲げたミッションを達成する力強い会社を作ることができる。

今回は、代表的なSaaS企業のバリューをいくつか紹介しながら、僕が思う「SaaS企業が勝つために必要なバリュー」について書いていこうと思う。

Salesforceの4つのバリュー

まずは、「SaaSの王者」であるSalesforceの4つのバリューを見てみよう。

信頼 – 社員、顧客、アドバイザーなど、Salesforceに関わるすべての人達と透明性を持ったコミュニケーションをとり、関係を大切に築いていく。

カスタマーサクセス – Salesforceの成功は、顧客の成功があってこそ。顧客と共に成功し、成長し続ける。

イノベーション – テクノロジーを通じて新たな価値を提供するだけでなく、社員一人一人がイノベーションというマインドセットを持つべきだ。

平等 – ダイバーシティーは、イノベーションとクリエイティビティーの促進に通ずるものと信じている。その人のバックグラウンドを尊重し、共に働ける環境づくりを大事にする。

Hubspotの7つのバリュー

続いてはHubspotの7つのバリュー(これは、この128ページもある英語版資料の中から一部を抜粋、要約したもの)。

ミッションとメトリックス – 私たちは、中小企業を愛している。彼らを成功に導くことが私たちのミッションだ。これを達成するため、私たちはメトリックス(数値)にコミットする必要がある。

顧客のために解決する – Solve For The Customer (SFTC)。顧客を満足させるだけでなく、成功させることが重要だ。

透明性 – 会社の中のあらとあらゆる情報を社員全員に開示する。

オーナーシップを持つ – 自律とオーナーシップを大事にしている。たくさんの細かいルールやポリシーを作るのではなく、個人個人に判断を委ねる。

人>パーク – 会社の最大な従業員特典は、”Amazing People” に囲まれること。謙虚で共感力が強く、柔軟性と透明性のある、有能な人に囲まれる環境である。

ユニークであれ – 他とあえて違うことをしないとイノベーションは起きない。現状に挑戦し続けることが大事。

人生は短い。意味のある事をしろ – 仕事は人生の中の大部分を占めている。だからこそ楽しく、健康で、意義のあることをするべき。

SmartHRの6つのバリュー

そして最後は、勢い良く成長しているSmartHRのバリュー(ウェブサイトからの引用)。

自律駆動 – SmartHRは「100の問題を50人で2問ずつ解く組織」を目指す。そのために、情報をオープンにし、フラットな状態をキープすることを約束する。

ひとりひとりが指示を待つのではなく、みずから解くべき問題を見つけ出そう。そして、自分で判断し、主体的に行動を起こしていこう。

早いほうがカッコイイ – あれこれ悩む前に、動き出そう。まずは荒削りでもOK。最速のアウトプットを心がけ、フィードバックのループを素早く回していこう。

大きな意志決定も、即断即決でいこう。それがチームを加速させ、社会を加速させる原動力になる。

最善のプラン C を見つける – 今あるものが最適解とは限らない。「こんなものだろう」という思い込みを捨て、常識を疑い、俯瞰で物事をとらえよう。

手段や技術に固執せず、柔軟に工夫しよう。選択肢を多く出し、「どちらか」ではなく「どちらも」叶える最善の答えを生み出そう。

一語一句に手間ひまかける – 細部まで徹底的にこだわろう。言葉はもちろん、UIも、コードも、すべてはユーザーや社会に対するメッセージだ。

もっと言葉を磨こう。1 ピクセルにこだわろう。コードの一行一行に魂を込めよう。その小さな手間ひまが、大きな成果につながっていく。

ワイルドサイドを歩こう – なんでも挑戦して失敗しよう。そして、失敗から学び、次へと活かそう。

新しい挑戦にはレールがない。誰も通ったことがない道の先には、誰も提供できていない価値がある。挑戦をやめなければ、いつかたどり着ける。

人が欲しいと思うものをつくろう – 世の中の深い課題に目を向け、大きな変革を起こそう。表面的な解決策ではなく、人々の行動から課題をあぶり出そう。

現在に最適化するのではなく、未来を見据えて考えよう。そして、ユーザーが自慢したくなるほどのプロダクトをつくろう。

SaaS企業が勝つために必要なバリュー

もうすでに気が付いているかもしれないが、3社のバリューには共通している要素がいくつかある。そしてその要素こそが、僕がどのSaaS企業にも取り入れて欲しいと思うポイントだ。

カスタマーサクセス:3社とも顧客目線のバリューを掲げている。SaaSという言葉の最後の”S”は「サービス」をさす。プロダクトだけではなく、セールス、オンボーディング、そしてカスタマーサクセスの全てを顧客目線で設計、実行することで、より良いサービスへと成長させていく必要がある。「顧客と共に成功し、成長し続ける」これがSaaS企業にとって一番重要な使命だと思う。

イノベーション: 顧客がサービスを導入してくれる主な理由の一つは、テクノロジーだ。常に新しい事にチャレンジし続けることによって、他社との差別化を強化し、顧客に最先端のソリューションを提供する。テクノロジードリブンであることももちろん重要だが、挑戦的なマインドセットも会社の文化に根付かせる必要がある。

透明性:SaaS企業はプロダクト、マーケティング、セールス、サクセスなど様々なファンクション間の連携によって成り立つ。この連携力の強さによって顧客の体験が大きく変わる。そのためにも、全社員を信頼し、情報を開示すること。そして社員それぞれにオーナーシップを持ってもらう必要がある。

以上が、僕が考えるバリュー設定をするときに積極的に取り入れると良い「SaaS企業が勝つために必要なバリュー」だ。

ただ注意して欲しいのは、他の企業のバリューをそのまま自分の企業に当てはめようとしても、それは根付かない。自分たちが体現することができる、自分たちに合った言葉とバリューの組み合わせを探す必要がある。

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理想的なシリーズAのSaaSスタートアップ


Photo by: simone

「理想的なシリーズAのSaaSスタートアップの状態とは?」

起業家からよく聞かれる質問のひとつ。

多くの場合、シリーズAの資金調達を実行するSaaSスタートアップは、およそ3〜5億円を調達しようとする。今回のポストでは、僕がシリーズAのSaaSスタートアップへの出資を検討する際に確認しているポイントについて書いていきたいと思う。

ただし、これはあくまでも「理想的な状況」であって、実際この中のいくつかの要素が足りていなかったとしても、シリーズAの調達ができないというわけではない。でも、満たしてるポイントが多ければ多いほど調達できる確率は確実に上がる。

Retention
僕のブログやツイッターでも〈継続率の重要性〉について常に発信しているが、チャーンが高ければ高いほどARR100億円を達成するハードルは上がる。
だから、有料顧客がサービスに高い満足度を示しているのか、長期にわたって使い続けたいと思われているのかを確認している。年間契約が多いSaaSスタートアップの場合、契約更新率は90%以上が理想。月額契約が多い場合は、1%未満のカスタマーとグロスチャーンが理想だ。

Growth
成長率に勢いがあることが全てではないが、成長率は様々な視点から事業の状況を語ってくれる。
そのサービスに高い需要があるのか。顧客にとって必要不可欠なサービスになるため、強力なセールスやマーケティング、カスタマーサクセスの構築ができているのかもこの数字が示す。MRR1000万円を突破したタイミングで月次成長率10%以上を維持できてるのであれば上出来だ。

Management Team
シード段階と比べて、チームがどの程度アップグレードできているのか。
セールスやカスタマーサクセス、プロダクトチームそれぞれの先頭に立ちチームを引っ張っていける人材がいるのか。各チームのレベルはどのくらい向上しているのか。そして、今まで社長が行ってきた業務をどれだけ権限委任することが出来ているのか。最も良いのは、営業のクロージングを社長以外の人ができ始めていて、さらにカスタマーサクセスとプロダクトチームの権限委任が完了している状態だ。

TAM / SAM / SOM
狙っている市場で、ARR100億円以上の企業を作ることができるのか。
この答えは、ボトムアップで(対象顧客数 x ARPA)で算出した方が分かりやすい。可能であればSOM (今のプロダクトで狙える顧客セグメントの市場規模)、SAM(2〜3年の期間で狙いたい顧客セグメントの市場規模)、そしてTAM (最終的に獲得したい最大の市場規模)に分けられていると良い。SOMが100億円以上、SAMが500億円以上、そしてTAMが1000億円以上が理想と言える。

Competitive Dynamics
狙っている市場をどこまで独占できるのか。
他社より自社のプロダクトが優れていること。高い競合勝率(90%以上が理想)。そしてさらに、サービスの導入理由を顧客ヒアリングなどを通じて確認できると良い。

以上が、シリーズAのSaaS企業に対して投資を検討する際に重要視しているポイントだ。冒頭で伝えたとおり、これらはあくまでも〈理想な状態〉だ。実際、これらを満たせていない企業に投資を実行したこともある。でも、最高のシリーズAを達成するために、常に理想的な状態を意識しながら挑んで欲しいと思う。

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レイヤーで考えるSaaSの経営と戦略

分解して見ると、SaaS企業は、様々なプロダクト、顧客セグメント、そして獲得戦略のレイヤー(層)を重ねることによって売上を伸ばし続けている。例えば、大手米SaaS企業のBoxとVeevaの資料からも、時間軸とともにプロダクトのラインナップを重ねて、対象顧客を広げているのが分かる。今日は、SaaS企業のレイヤーの種類と考え方について書こうと思う。

Veevaのプロダクトラインナップ
Boxのプロダクトラインナップ

SaaS企業には、主に3つのレイヤーがある。

  1. プロダクト: 恐らく、多くの人が最初に思い付くのが「プロダクト」のレイヤー。プロダクトレイヤーを重ねる目的は様々だが、例えば、既存顧客にプロダクトを売り込んで平均単価を上げる「アップセル」を実行すること、既存顧客とのタッチポイントを増やして(LTVを上げる目的として)退会率を下げること、そして新たな顧客セグメントを狙いに行くこと等の目的がある。
  2. 戦略: 主にユーザー獲得にかかわる「戦略」レイヤー。インバウンドやアウトバウンド、コンテンツマーケティングやセミナーなど。また、営業育成やインサイドセールスチームの立ち上げも戦略レイヤーに入ると思っている。
  3. セグメント:SMBやエンタープライズ、IT企業や製造業、顧客セグメントには様々な切り口がある。新たな顧客セグメントを狙いに行くときは、プロダクトか戦略、または両方が絡んでくることがほとんどだ。

では、どのレイヤーをまず増やすべきなのか。優先順位の考え方には、主に以下2つの要素がある。

  1. TAM: 市場規模が一番重要。5年後10年後の売り上げ構成を考えた時、どのレイヤーが一番大きいのか?可能であれば、一番大きいところから狙いに行きたい。
  2. ロードマップ:ただし、単純にTAMだけを優先するのも難しい。TAMの大きいレイヤーを狙うためには、プロダクトや組織をどこまでストレッチさせないといけないのかも考慮も必要だ。例えば、SMBからエンタープライズの市場を狙うためには、その市場で戦うことができる組織やプロダクトになるまでにどのくらいの時間が必要なのか。その準備期間中に他のレイヤーを先に狙いに行く必要はないのか。このように、レイヤーを追加する時は、他のレイヤーとのトレードオフを考える必要がある。

今月の売り上げは12ヶ月前の取り組みによって生み出され、12ヶ月後の売り上げは今日の取り組みによって生み出される。

SaaS企業は、昨日や今日の施策がすぐに結果として現れない。特に、規模が大きくなればなるほど、新しい取り組みが全体の売り上げに影響し始めるまでの時間軸は長い。どんなレイヤーでも、少なくとも12ヶ月はかかると思った方がよい。

つまり、「MRRの伸び率が下がってきたから新しいレイヤーを増やそう」ではもう遅い。考え方としては、来年の今頃のMRRを達成するために今のうちにやるべきことは何なのか、再来年の今頃のMRRを達成するためにいつまでに何を始めるべきなのかといった考え方を持つ必要がある。大体、毎年1〜2個のレイヤーを足していく意識をしていくと良いと思う。

中長期の事業計画を作成するときは、このレイヤー毎に考えてみると、詳細で解像度の高い計画を立てることができる。レイヤーを足していき、長期に成長し続けられるSaaS企業を目指すと良いだろう。

(edited by kobajenne

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SaaStr シリーズ:SaaS企業の最初の100人


Photo by: Aigars Mahinovs

SaaStrシリーズ第二弾はSaaS企業最初の100人について(元記事はこちら

SaaS事業の人員計画を立てるにあたり、「これだけの人を雇う必要があるのか」と驚く起業家も少なくはない。SaaSは、〈営業型〉である場合は特に、アウトバウンド、販売開発担当者、インバウンド、フィールド・セールス、マーケティング、カスタマー・サクセス、サポート、さらに複雑なプロダクト管理など、システムの開発はもちろんのこと、それ以上の非常に多くのファンクションが必要になるからだ。

大まかに言えば、初期の段階で計画した人数の2倍の人員を雇う必要が出てくるケースが多いだろう。

では、かみ砕いてみてみよう。

あなたは10億円のARRを目指していて、資金もきちんと確保されている状況にあるとしよう。恐らくあなたはその時点で、またはARR15億円を達成する時までには、100名の人員を抱えることになる。もしこれがセールスドリブンモデルのときは、どのような構成になるだろうか。

例えば年間の成長率が100%で、その翌年にはARR 20億円を達成する計画を立てたとする。

すると、翌年100%で成長するためには、まず10億円のARRを達成する必要があり、その場合に必要な人員は40名ほどになる。

  • 1名の営業本部長(VP of Sales)。そして恐らくは営業管理・育成のディレクター(VP or Director of Sales Ops)1名、そしてその下のアナリストを最低でも1名。
  • 20億円のARRを十分に達成するためには、20人の営業担当者が必要になる。なぜなら、ARRが10億円増加し、年末にはさらに増加するからだ。でも実際のところは、その年の半ばにかけて、これより多くの人員を必要とする可能性が高い。これは、新規受注の量やMRRの増加が大幅に見込めるようになるためだ。最終的には、少なくとも25人分の予算を立てると良いだろう。
  • アウトバウンドやスクリーニングにおいて、営業チームをサポートするSDRは恐らく8名程が理想。状況は激しく変化するが、モデル化の目的では、1対3の比率が良い。
  • 25人の営業担当者とSDRを管理するための営業部長を3〜4名(部長1人あたり、8人の営業担当者をつけるのが、チームが上手く機能する標準の比率。そして、SDRについては部長1人あたり8〜10名を管理できるという前提だ)。
  • 僕は、これをインバウンドとアウトバウンドに分けることさえしていないし、個別にフィールド・セールスを追加することについても触れていない。ARRが約10億円に到達達する頃には、恐らく(大規模な取引のための)フィールド・セールスを最低2〜3名は加えたくなるだろう。
  • そう。これは、あなたが考えていたよりも、はるかに多い数字だと思う。

カスタマー・サクセス部門においては、約20名ほどの人員が必要になるだろう。

  • カスタマー・サクセス・マネージャー1人あたり、1.5億円のARRを想定しよう。すると、翌年の計画を達成するためには、約15人の カスタマー・サクセス・マネージャーが必要になる。ただ、同時期に15名を揃えなくても良いので、まずは15名としよう。
  • 彼らを管理する本部長が1名、カスタマー・サクセス・マネージャーを半数ずつ分けて管理する部長が2名。 そして恐らくデータ分析などをサポートするアナリストも1名必要になる。

マーケティング部門では、外部の委託ベンダーの数に応じて変わるが、僕は、4〜8名の人員を雇う必要があると考えている。

  • マーケティングVP
  • デマンド・ジェネレーションのディレクター
  • フィールド・マーケティングのディレクター(イベント等)
  • コンテンツ・マーケティング
  • プロダクト・マーケティング
  • そして恐らく、マーケティングチームが独自で潜在顧客を管理するリード管理担当者(2〜3名)

サポート部門では、この時点で電話サポートを含めた、24時間年中無休のサポートが欲しい。それには最低5名の人員、理想的には6名必要だと考えよう。

OK。まだエンジニアは1人もいないのに、既に70になってしまった!

それでは、プロダクト部門とエンジニアリング部門に移ってみよう。

プロダクト部門では、少なくとも4名のフルタイムの人が必要になる。それでも多すぎるということはない。

  • 全体を管理するプロダクトVPが1名
  • プロダクト、インテグレーション、リリース等を管理する2〜3名のマネージャー

DevOpsあるいはTechOpsでは、24時間365日対応できる状況を確保するために、3〜4名の人員を必要とすることになる。実際は4名いる方がはるかに良い。さて、僕たちはここで、データベース管理者等を数に含めるべきか。答えは、6〜7名程いることが望ましい。

エンジニアリング部門では、20名は確保したいところだと僕は思う。2つの「ピザボックス・チーム(6〜7名程)」に加えて、狂気じみた次世代のことを試行錯誤し続けるエンジニア少数名と、リファクター、バックエンドなどのみに注力する少数名だ。この時点で、フロントエンドチームと協働する2名のデザイナーも必要になるだろう。

そして最後に、僕たちにはQAが必要だ。恐らく最低でもQAエンジニア8名、マネージャーが1名は必要だ。人員削減のために、RainforestQAや他の何かを使っても良いが、そうでなければ、1対2でカバーすることを想定するのがベスト。コードを書く20名のエンジニアに加えて、うまく回り始めたら、QAチームには最低でも8名、さらにチームのリーダーが必要になるだろう。

さて。ということは、10億円程度のARRを目指すならば、プロダクトとエンジニアリング部門であなたが必要とするのは約40名ということになる。

これらを全部合わせると110名になる。そしてさらに、アドミン関連や経理などの人員を必要なだけ雇用する。

分かっている。もうすでに100人を少し超えてしまっている。だから、ここからは実際の状況をみながら調整していくことになる。でも、成長計画を達成するにはこの追加の人員が結局必要になるだろう。

言い換えれば、10億円のARRを達成するにあたり、人員の大部分は、プロダクトを作るためではなく、セールスやマーケティング、サポートを支えるために必要とするわけだ。

(すべての翻訳記事掲載については、SaaStrから掲載許可を得ています)

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Slack、Zoom、Atlassian、Twilioなど急成長SaaS企業の共通点


Photo by: kris krüg

ここ数年の間で上場した米国SaaS企業の中に、異常に高いパフォーマンスを発揮するSaaS企業が存在する。これらの企業は、従来とは違う新しいカテゴリーのSaaS企業と言っても良いだろう。

このカテゴリーに入る会社は、例えばSlack (年度成長率82%、ARR 500億円以上)、Zoom (年度成長率118%、ARR 400億円以上)、Twilio (81%、ARR 1000億円以上)だ。巨大な規模のARRを達成しているのにも関わらず、ものすごい高成長率を実現している。

これら企業をみていくと、ARRの規模や成長率のほか、主に「ボトムアップでセールス」を行っているという共通点があるのだが、その他にもこのような共通しているポイントがあることに気付く。

セルフサーブ:大規模で高成長を維持できているSaaS企業には、セルフサーブ型のプロダクトがある。クライアントの会社がプロダクトを導入する時、まずは少数または、一部の部署で使い始め、価値を感じられるようになってから、徐々に組織全体に広げていくことができる。

1000万円以上の単価を狙える:セルフサーブ型のプロダクトを提供するSaaS企業は、自社のプロダクトの平均単価が低い。でも、このカテゴリーに入る企業は、年間1000万円以上を支払うクライアントを多く持っている。

例えば、Zoomの場合、年間1000万円以上を支払っているクライアントが300社以上、全体の売上の3割を占めている。Slackの場合も、そのようなクライアントが500社以上いて、全体売上の4割を占めている。

高い売上継続率:Slackの売上継続率は143%、Atlassianは148%、Twilioは155%、Zoomは140%と、業界中央値の120%を高く超えている。

これは、導入初期段階ではボトムアップで少人数から課金をし、時間が経過するにつれて組織内でどんどんとプロダクトを使うユーザーが広がり、課金額が増えている証拠である。

これらのポイントは、日本のSaaS企業にとっても重要な点と言える。これらの条件を満たすことができれば、SaaS企業の中でも異常にパフォーマンスが高い〈特別なカテゴリー〉に入ることができるはずだ。

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立ち上げ期のSaaS起業家が、あと24ヶ月頑張る4つの理由


Photo by: Pavel Baramov

SaaSスタートアップの立ち上げには時間がかかる。プロダクトマーケットフィットをし始めるまでに、だいたい24ヶ月かかる(SaaSのプロダクトマーケットフィットについては、この記事を参照)と思っていて良いくらいなのだが、ほとんどの起業家は、早く諦めすぎてしまう傾向がある。そこで今回は、なぜあと24ヶ月頑張るべきなのか、その理由について書いてみた。以下のような傾向が一つでも当てはまるなら、後24ヶ月頑張ってみても良いのかもしれない。

自身のコネを使わずに、新規開拓した有料顧客が10社いる場合

友人や親戚など自分のコネクションに頼らずに得た新規の有料顧客が10社でもいるのなら、それは今後の展望が見込めるサインかもしれない。この10社は、少なくともそのプロダクトやさサービスに費用を投じることによって、自社が抱えている課題を解決してくれている、または解決してくれるかもしれないという期待を持っていることになる。この数が10あるならば、それは今後100に増える可能性を潜めている。顧客が解決してほしい課題は何なのか、そして実際に解決してくれた問題は何だったのかを探ることで、事業をさらに拡大させるためのヒントを得ることができるだろう。

MRRが、月次10%以上成長している場合

月次売上100万円しかない時点での月次10%のMRR成長は、非常に小さく感じるかもしれないし、全く成功していないと感じるかもしれない。でも、SaaSは複利的に成長するということを常に頭においておくべき。この10%を維持することが出来たら、12ヵ月後にはMRR 300万円で、24ヵ月後には900万円になることが予測できる。ということは、MRR1000万円が見えてきたタイミングで、やっと成長を感じられる楽しい時期が始まる。

会社の売り上げが小さいと感じてる時は、とにかく10%成長をどう維持できるのか、もっと言えば、20%成長にもっていくためにはどうすれば良いのかを考えると良い。

アップセルが発生した場合

既存有料顧客が、より費用の高いプランにグレードアップしてくれた、または課金方法を従量課金にすることができた場合。その顧客の満足度が高い証拠であり、これは非常に良い傾向だ。他の顧客に対してもその満足度の高さを再現できるかどうかが分かれば希望がある。

大手企業が顧客になった場合

実績もなく、来年はどうなっているのか分からないスタートアップのサービスまたはプロダクトに対して、大手企業が予算枠を取って社内の稟議通して顧客となってくれたとき、その企業は新しい大きな機会を探ろうとしている可能性がある。もっと話を深く探ることで、求められているものが何なのかを見つけることができる。この流れが、大手の顧客をさらに10社手に入れるための手がかりになる。

逆に、諦める理由があるとしたら・・・

どう考えてもARR 20億円以上の市場規模が無いと思ったとき。M&Aを狙うか、またはVCが入っていない状態であるならば、ARR 20億円の市場規模でも十分なのかもしれない。でも、IPOを狙っているのであれば、少なくとも早い段階でARR 50億円のポテンシャルは欲しいところだ。

SaaS企業は、プロダクトマーケットフィットを見つけ出すまでにかなりの時間を要することが多い。「成長が遅い、進んでいる気がしない」と感じたときでも、上記のような傾向がある場合は、まずは〈24ヶ月〉頑張ってみてほしい。

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