T2D3は、ただのロマンじゃない 〜この成長曲線には戦略的な意味がある〜

「T2D3」

SaaS業界に関わる人であれば馴染みが深い言葉だろう。PMFを達成したARR 約1〜2億円のタイミングをT1のスタート地点として、そこから毎年Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)のペースでARRを成長させる曲線のことをいう。「T2D3」とは、ARRを5年で72倍にするということだ。

ServiceNow や Marketo 、Zendesk など名だたるSaaS企業が、このT2D3を実現させていて、SaaS業界のトップクラスのベンチマークとして利用されている。今回のブログでは、この「T2D3」を目指す意味、そして達成するためのポイントについて触れたいと思う。

T2D3は、戦略的に良い目標である

T2D3を目指すことは、戦略的な意味がある。

T2D3の達成は評価される

T2D3を達成しているSaaS企業は、まだ少ない。達成することができれば、国内でも有数のARR 100億円以上の高成長SaaS企業として評価されるのだ。以下のグラフからも、ARR 100億円以上で年度成長率25%以上のSaaS企業(赤点線枠)は、その他のSaaS企業より高く評価されていることが分かる。

この背景には、「大きな市場のマーケットリーダー」として見られやすくなることが挙げられる。

*東京証券取引所ウェブサイトおよびSaaS上場企業各社の決算資料のデータに基づくALL STAR SAAS FUND独自分析。

組織が程よく“ストレッチ”する

2021年のALL STAR SAAS CONFERENCEに登壇してもらったSmartHR COOの倉橋さんは、T2D3を「壊れない、最高成長速度の良い目安だ」と言及していた。経営者の役割は、「いかに大事なものを壊さず、速いスピードで成長できるかが重要だ」と彼は言う。

目標が低すぎてしまうと進化のない組織になってしまい、はたまた高すぎれば未達に慣れた組織になってしまう。T2D3は、進化する組織を求め続けられる極めて難しいけれど不可能ではない程よいストレッチ目標だ。

SaaSは規模を早期に大きくした方が有利

SaaSは、先に大きくなった方が有利になる。ARR 100億円のSaaS企業と比べて、ARR 10億円のSaaS企業は、雇用できる人数と先行投資に回せる金額が少なくなってしまうことは想像に難くない。最短でARRの規模を大きくして、「人」と「資金」で競合との優位性を築くべし。

T2D3達成で重要なポイントは?

まず、まだ読んでいない人は「SmartHRが“T2D3”を目標にしたら何が起きたか:COO・倉橋隆文と5年間を振り返る」を是非読んでみてほしい。ここには、T2D3を目指すために重要なエッセンスが詰まっている。

この記事にも書かれている重要なこと。それは、戦略を決めるときは、目の前でなく常に先の目標を達成するために「組織」や「オペレーション」をどう進化させるべきかを考えるということ。

例えば、組織のことでいうと、T2D3を達成するためにはとにかく人がいる。350人以上の大きな規模のチームを築くことを想定すべし。この時、目標設定やコミュニケーション、人の配置、オンボーディングなど様々な面で、組織を進化させていく必要がある。進化が間に合わなくなれば、たちまちパフォーマンス低下や、組織崩壊が起きやすくなってしまう。

そして、数字を達成するための戦略も、新しい顧客セグメントの開拓やARPAの向上など適切なタイミングをしっかり捉えて実行に移さなくてはならない。成長率が鈍化してからでは、遅い。鈍化の兆候を先読みして、先手を打つのだ。

T2D3を目指す経営者には、この2つの問いに対する答えをいつも持っておいて欲しい。

「来年の目標を達成するためにプロダクト、組織、そして戦略がどんな状態になる必要があるか?」

「上記の状態になるために必要なアクションが既に実行済みであるか?もし実行にうつしていない場合はいつまでに実行する必要があるか?」

最後に

「T2D3」は、どんなSaaSスタートアップにも目指して欲しい目標だと僕は思っている。でも、「もしT2D3の成長曲線を描くことができなければ、終わりなのか」と言うと、それは違う。PMFを達成させることができて、市場が魅力的なのであれば、T2D3曲線から外れているとしてもさらなる成長の可能性は十分ある。

仮にARR 3億円で年度成長50%で成長しているSaaS企業がいるとしよう。その成長率を何とか10年間維持させることができれば、ARR 100億円を超える高成長率SaaS企業の仲間入りだ。もしこの50%を55%の年度成長率に加速できれば、さらに1年早くARR100億円を達成できることになる。

どんな状態であれ、常に「壊れない、最高成長速度」を探し続けるべきだ。これは戦略的にメリットが多く、より優位なポジションに立てるからだ。

(記事の編集してくれたkobajenneに感謝)


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一兆円企業がこれから続々誕生するSaaS市場でマーケットリーダーになる方法とVCの役割


ついに、この日がやってきました!
いつか一緒に働きたいとずっと思っていた湊 雅之さんがALL STAR SAAS FUNDに参画!

今回のポッドキャストでは、湊さんがALL STAR SAAS FUNDに参画した理由に加えて、僕たち2人で「SaaSの未来」を語りました。10年後のSaaSはどうなるのか、SaaS市場の中でのVCの役割とは、そしてSaaS企業がマーケットリーダーになる重要性とその方法について話しています。
湊さんもSaaSに深く惚れ込み、その力を強く信じています。ALL STAR SAAS FUNDが掲げるミッションに向かって一緒に走る仲間が、またひとり、ジョインしてくれました。Welcome MASA to to ALL STAR SAAS FUND FAMILY!

【ハイライト】

  • 湊さんがSaaSを好きになったキッカケ
  • 仲間でもライバルでもある関係性
  • お祖父さまから受けた影響
  • ALL STAR SAAS FUNDに参画した理由とその魅力
  • SaaS業界でのVCの役割と実現したい世界観
  • 10年後の日本のSaaSとそのポテンシャル
  • 今後SaaS市場が伸び続けるために必要なこと
  • マーケットリーダーになるための条件

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任せられる人を増やすには、挑戦の機会を増やすしかない。〜経営者が意識するべきコミュニケーションとは〜

今回のゲストは、2013年にユーザベースに入社し、2021年1月にCo-CEOに就任した佐久間衡さん。投資銀行でキャリアをスタートされた後、ユーザベースに参画した佐久間さんの役割の変化や、今のポジションになるまでに経験したことや学んだことについてディスカッションしました。佐久間さんが身につけたコミュニケーションやマネジメントスタイル、事業拡大に大きく貢献した取り組み、新規事業やM&Aについて、そして経営者の重要なジョブの一つについて触れています。

マネジメントや経営に関わるヒントが多いエピソードです!

【ハイライト】

  • ユーザベースに入ってから身につけたコミュニケーション方法とその重要性
  • みんなが納得できる意思決定の進め方
  • トップにも意見を言える状況をつくることの重要性
  • 責任範囲がどんどん広がった理由
  • SPEEDA事業の拡大に重要だったこと
  • 任せられる人を増やす方法
  • 新規事業は「時代の必然の流れをつかむこと」
  • M&Aの考え方
  • Co-CEOのメリットと上手くいかせるポイント
  • 経営者の重要なジョブの一つについて

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「チャンスの窓」が開いている時間は長くない。大きな波が立つその時、入口に立て。〜国光宏尚が見るWeb3とXRの現状と未来〜

今回のゲストは、gumiを創業し、現在はWeb3とXRの分野で新たなチャレンジに取り組まれているThirdverse代表 国光 宏尚さんです。

過去の経験から学んだ「タイミングの重要性と見極め方」について、そして「Web3とXRの現状と未来」についてディスカッション。国光さんが考えるそれぞれの技術が持つ可能性と今の限界、具体的な事例やこれらの技術を用いたサービスを普及させるために必要なステップなど、国光さんが見えている未来の世界をのぞいてみました。

Web3とXRについてもっと知りたい方、ToCの経営者だけでなくB2B SaaSの経営者にもおすすめのエピソードです!

【ハイライト】

  • 国光さんの子供時代
  • 中国から影響を受けた話
  • 最初に起業したときのアイデア
  • タイミングの重要性を感じた経験について
  • タイミングの見極め方
  • XRの未来について
  • XRの普及に必要なコト
  • Web3の現在と未来
  • ブロックチェーン4つの世代
  • Web3のToCとB2B SaaSの例
  • 起業家へのメッセージ!

P.S. 前田ヒロは、2022年もSaaS特化のVCとして走り続けます!

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暇になることを恐れず自分自身も楽しく、これが私が見つけた組織を成長させるマネージメント法 〜SmartHRにエンジニアメンバーとして入社、そして新CEOへ〜

今回のゲストは、2022年1月よりSmartHRの新CEOに就任することが発表された芹澤さんです!芹澤さんはシード期のSmartHRにエンジニアメンバーとして入社し、その後VPoE、CTOを経て、12月8日、CEO就任のニュースが発表されました。

このエピソードでは、エンジニア組織のマネジメント方法、そして入社してから着実に責任範囲を広げていった芹澤さんに「任される理由」を聞きました。新CEOとしての意気込みも語っていただいています!

【ハイライト】

  • SmartHRに入社したきっかけとその理由
  • VPoEになってから身についたマネジメント法
  • エンジニアチームを引っ張る時に使う1on1術
  • 成果を出している人にマインドシェアを多く割くべきな理由
  • マネージメントをする人が楽しんだ方が良いワケ
  • 暇になることを恐れるな
  • 急拡大しているエンジニア組織をマネージメントするうえで気をつけた方が良いポイント
  • 宮田さんから学んだこと
  • 他の役員との関係作りについて
  • CEOになろうと思った理由
  • 新CEOとしての意気込み

僕がマネージングパートナーを務めるALL STAR SAAS FUNDが運営している「ALL STAR SAAS BLOG」でも、SmartHRチームの皆さんへのインタビューPodcastや記事を公開しています!

〈記事&Podcast〉ストレッチ目標を実現する鍵は「達成可能性70%」にある(取締役・COO(最高執行責任者)倉橋 隆文さん)

〈Podcast〉SmartHR セールスマネジャーに聞く〜チームで成果を出し続けるマネジメントの勘所(セールスグループ エンタープライズセールス マネージャー 阿部 紘大さん)

〈Podcast〉なぜSaaSビジネスにSales Opsが必要なのか?(セールスプランニング 工藤 慧亮さん)

(ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)


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SaaS誕生から22年 — 3世代に分けて考える成長戦略の変化

SaaSが誕生してから22年が経過した今、世界には1万社以上のSaaS企業が存在していると言われている。

そのような環境の中で、SaaS企業の特徴や成長戦略にも多くの変化が起きているわけだが、この変化を「3つの世代」に分けてみると、その変化の内容をより明確にみていくことができる。

今回は、それぞれの世代の特徴、成功するためのプレイブック、そしてベンチマークとなる指標について、動画で解説してみたいと思う。

(YouTubeと投稿を編集してくれたkobajenneに感謝)

===> ALL STAR SAAS CONFERENCE 2021開催します <===
日本、シリコンバレーなどで活躍するSaaSスペシャリスト達と共に
実践的かつインタラクティブなセッションを繰り広げるSaaS特化型カンファレンス

SaaS企業は、少数精鋭では経営できないその理由

2020年、北米で上場したSaaS企業の従業員人数の中央値は、1192人

利用シーンがシンプルで、顧客獲得やカスタマーサクセスがセルフサーブ型で割と完結しやすいプロダクトを展開しているSlack、Zoom、HubSpotでも、2500人以上の従業員がいる。

僕は以前から「SaaS企業を少数精鋭で成り立たたせることは難しい」と言い続けている。今日は、この理由を改めて述べてみたいと思う。

ニーズの変化

テクノロジーの進化と、その進化によるお客様のニーズの変化は、非常に早い。

たとえば、スマートフォンのように新しいデバイスが普及すれば、そのデバイスへの対応ニーズが顕在化する。AIなどの新技術が誕生すれば、その技術の活用ニーズも顕在化する。To Cの使いやすいサービスが現れれば、to Bのサービスでも同じ基準のUXを求められる。

この変化に適応していくためには多くのエンジニアの力が必要になる。実際にSlackでは売り上げの約37%(一年で約450億円)を開発に投資しているという。

ニーズの変化にスピーディーに適応することが必須であり、SaaS企業にとって、開発は永遠に終わることのない取り組みの一つになる。

エンタープライズ

年間1000万円以上の費用を払っているエンタープライズ顧客数は、Zoomが約1650社、Slackが1300社ほど。両者とも初期の段階ではセールス部隊がいない状態でスタートしているが、今現在は多くのセールス部隊を抱えてエンタープライズ顧客を増やしている。

多くのSaaS企業はこのように、ある時期を越えたところでエンタープライズ顧客の獲得フェーズに入る。このフェーズを成功に導くことこそが、SaaS企業の成長を維持するための重要な鍵となるわけだが、購入プロセスが複雑化しやすいエンタープライズ顧客を攻略するには、強力なセールス部隊が不可欠だ。

競争環境

新しくユニークなSaaSプロダクトを作るハードルが下がってきている時代のなかで、オペレーションや技術への投資で優位性を築いていくのは基本的な戦略だ。しかし少数の人数でSaaS企業を経営しようとすると、この優位性を作るための投資がしにくくなり、競合他社によって追い越されやすい状態を生み出してしまう。

プロダクトを磨くスピードを上げ、市場へのリーチを拡大させて、競争環境が激しいSaaS業界で戦える体制を整えることが、PMFを達成した後企業の成長を加速させるポイントとなる。

SaaS事業をこれから立ち上げる起業家には、先行投資を続けて組織を大きくしていく覚悟を持っていてほしい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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起業家が野心的な目標を持つことが、戦略的に”アリ”な理由

起業家がスタートアップを始めるときに掲げる目標は様々だ。時価総額や売上を軸とした目標もあれば、社会への貢献度を目標にする場合もある。現実的な目標もあれば、人々の想像を遥かに超えるような大きな目標を掲げることもあるだろう。今回は、「大きな夢」を持つことについて僕の意見を話してみたいと思う。

目標の大小にかかわらず、起業をして事業を拡大することはとても難しいことなので、謙虚で現実的な目標を設定することが悪いとは決して思っていない。ただ、戦略的に大きな目標を設定することのメリットというものもいくつかする。

差別化

創業者が設定する会社のビジョンは、採用など人を巻き込むときに非常に強い存在感を表す。ビジョンは、忘れられない印象を与えるほどユニークで、自分も仲間に加わりたいと思わせるほどインスピレーショナルなものである必要がある。人は、社会に大きく貢献できる仕事に魅力を感じるのだ。

大きく野心的なビジョン・目標を設定することによって、インスピレーションが生まれ、その偉大さが優秀な人を巻き込み、定着させることに繋がってくる。

そしてこの高い目標に向けて実績を積み上げていくと自体が、差別化要素にもなる。野心的な目標にどんどん近づいて、目標を現実のものにしていくたびに信頼が積み上がり、「この会社ならできる」「この人となら実現できる」というユニークなポジションを確立することができる。

リスク

“Shoot for the moon. Even if you miss, you’ll land among the stars.(月を目指しなさい。たとえ辿り着けなくても、どこかの星には着陸するだろう。)” 〜 Norman Vincent Peale

僕も含めて、多くの人は失敗を恐れる。大きな失敗を避けるために控えめな目標を設定する起業家もいるだろう。「大きすぎる目標は、大きなリスクを伴う」と考えてしまうかもしれないが、僕はその逆だと思っている。

大きな目標を掲げることで、より多くの人を巻き込み、より多くの資本を持ち、より多くのレバレッジをもたらすことができる。これらのリソースをどう有効活用するかによって、失敗の可能性は最小限に抑えられる。

「大きな目標」を達成しようとした時、失敗するリスクは存在するかもしれない。でも、低い目標を掲げているよりも、はるかに高い場所に着地できるかもしれない。

幸福度

なにを「幸せ」とするのかは人によって違うけれど「目標を掲げて行動する」ことが自身の幸福度に与える影響は大きい。僕は、夢や社会へのインパクトが大きければ大きい物事ほどワクワクする。そのワクワクが、日々の自分の幸福度を向上させている。

今の目標に自分がワクワクしないのであれば、さらに野心的な目標やビジョンを設定してみるのはどうだろう。

大きな目標を達成した先に

起業家が大きな目標を達成した先に何があるだろう?大きな目標を達成すると、ブランドや信頼、経験、仲間が集まるようになる。ひと括りで言えばこれは「レバレッジ」という名の武器を得られるということだ。この武器を使って、他の人にはなかなか挑戦できない何かに挑戦したり、これまで実現できてこなかった世界の創造に向けて動き出すことができる。

起業家は野心的に

といっても、野心的な考えを最初から持つというのは難しい。僕がこれまで一緒に働いてきた起業家も、自分と会社が成長していく過程の中で、考え方自体が少しずつ大きくなっていくことが多い。焦らなくて良い。登ってからじゃないと見えてこない景色というものはある。

自己完結で野心を高めるのは難しい。刺激やインプットが必要で、周囲の環境を意識するのも重要だ。自分の近くに目線を高めてくれる人がいると良いだろう。

野心的に考えて行動することは、経験したことのないことにチャレンジし続けることになるので、なんとも居心地が悪いと思うだろう。でも、この居心地の悪さにこそ慣れる必要がある。そしてやがてこの状況に居心地の良ささえ感じるようになるかもしれない。

起業家は野心的であれ。

小さい目標を掲げようが大きな目標を掲げようが、どちらにしても大変な道を歩むことになる。自分や自分の周り、会社に対して、「野心的な目標」が与えるメリットは想像以上に多いはずだ。だとすると、戦略的に野心的な目標を持つことは、”ありよりのあり”ではないだろうか。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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SaaSの使い方と会社のカルチャーはマッチしているのか?

これまで、「会社のカルチャー」は毎日オフィスの中で顔を合わせながらする人同士の会話や行動が積み重なって形づくられるものだった。でも今は、リアルな場で対面したコミュニケーションを行うよりも、SlackやSalesforce、Notion、Zendeskなど、SaaSを通したコミュニケーションの方が多くなってきて、これらの使い方自体が「カルチャーづくり」に大きな影響を与える時代になっている。

では、実際SaaSを使ったカルチャーづくりにはどんな事例があるのだろうか?どんなことに気を付けるべきなのだろうか。

SaaSを活用した事例

透明性を高める – 多くの企業が透明性を高めようと積極的に取り組みを行っている。その中でも上手くできている例の一つとして、SmartHRのSlackの活用方法がとても参考になる。2019年12月に公開されたSmartHRの運用ガイドラインでは、アイコンの重要性、表示名の細かいルール、チャネルの使い方などが記載されているのだが、特に注目したいのが「DMを原則使わない」というルール。

以下のグラフにある通り、ほぼ全てのコミュニケーションがオープンなチャネルで行われている。これがSmartHRの透明性の高いカルチャーを支えている一つの柱になっているのだと思う。

オペレーション・エクセレンス – The Model文化を浸透させているセールス・フォースでは、自社のプロダクトを活用したKPI管理が徹底されている。下図のようなダッシュボードを使い、一日単位ではなく時間単位で定量的に自己のパフォーマンスを測っている。

KPIやフェーズをしっかり定義し、自分の活動を徹底的に記録する。メンバー全員にこの意識が根付いているからこそ実現できるカルチャーだ。

*参考記事「セールスフォース・ドットコムのトップインサイドセールスは、どんな一日を過ごしている?密着してわかった「詳細な活動計画

ズレを無くす – 10Xでは、ありとあらゆる情報の整理や管理がNotion上で行われていて、どこにどのような情報があるのかが分かる状態、分からない場合も誰に聞けばよいのかがすぐに分かる状態をつくることを大切にしていて、「情報の地図」というドキュメントが整備されている。(参照記事:神は「順序」に宿る。10Xの、バリューを軸に組織のスループットを最大化する方法

“ここには、我々はどういう状態を達成したいか、どの情報がどこに置かれているか、どんなメンバーがいてそれぞれ何に詳しいのか、情報をどう取り扱うか、などが記載されています。” ~ 10X 矢本真丈”

理解と認識を言語化してズレを無くすことで、一人一人の判断力を高めたり、コラボレーションしやすい環境をつくることができる。これは全てをドキュメント化するカルチャーが組織全体に根付いていないとできないことだ。

課題を課題として認識する – カミナシでは、会社や事業が抱えている課題をTrelloに残している。課題の認識を共通化することで「それを解決するぞ」というコミットを表す効果がある。ボトムアップで課題をきちんと拾い上げ、言語化し、アクションに落とし込む経営者がいるからこそ成り立つ。

SaaS活用で注意するポイント

では、SaaSを使ったカルチャーづくりで気を付けるべきポイントはなんなのか?

SaaSの活用方法とバリューの整合性 – 会社のバリューとSaaSの運用方法に、整合性をもたせることが大切だ。透明性を大事にするのであれば、SlackのチャネルやNotionの閲覧権限もそれに沿った設定にする必要がある。感謝の気持ちをしっかり伝えられるチームをつくりたいのであれば、SaaS上でも感謝の言葉が自然と出てくるような環境作りが大切だ。特に日々のコミュニケーションで使われるような利用頻度の高いサービスは、組織全体への影響力が高いので、気を付けておくと良いだろう。

ルールは明文化し、全員で守る – 特に、人が増えていくフェーズの企業では、運用のルールをできる限り明文化がさせた方が良い。どのような使い方を推奨するのか、そしてどのようなことが推奨されないのか。これらのルールを明確にすることで、組織全体にそのカルチャーを浸透させやすくなる。SmartHRのSlack運用ルールは、細かいところまで明記されていて、とても分かりやすい。

それでも話した方が良いときもある – SaaSはとても便利なツールだが、コミュニケーションをSaaS上で完結させないことも大事だ。人の感情やニュアンスは、どうしてもテキストだけで伝えるのには限界がある。何かを議論する時や感情的になりそうな議題は、対面、または少なくともZoomで話す。信頼関係を築く上でも、やはり声のコミュニケーションは欠かすことはできない。

チャレンジではなくチャンス – SaaSの普及は、カルチャーづくりを難しくしているのではなく、むしろ簡単にしてくれていると僕は思っている。今までは対面での限られた機会でしか自社のバリューを体現しにくかった。でもSaaSを使うことで、24時間いつどこからでも体現化させることができて、触れる頻度を高くすることができる。これは、カルチャーづくりがより実行しやすくなるチャンスだと考えている。

SaaSの使い方と会社のカルチャーはマッチしているか。

この記事が、SaaSを活用したより強いカルチャーの築き方について考えるきっかけになれば嬉しい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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部下との認識のズレを無くし、企業文化を強くする「経営者のトリセツ」

Airbnb、Coinbase、Instacart、Stripeなど数多くのデカコーン(時価総額1兆円以上)企業に投資を実行し、アドバイザーとしてたくさんの企業の成長を支援してきたElad Gil氏。

”起業家のバイブル”とも呼ばれる彼の著書「HIGH GROWTH HANDBOOK」の日本語版「爆速成長マネジメント」の発売にともない、3月17日にEladと一緒にウェビナーを開催することになった。当日は、企業を急成長させるための秘訣について、1時間みっちり深ぼってディスカッションしていきたいと思っている。

英語版が発売された2018年にStripeのPatrick McKenzieさんから「絶対読んだ方が良い」と渡されたことがきっかけで手に取ったこの本は、今も僕の本棚の手に取りやすい場所に在り続けている。

今回は、僕がこの本を読んで一番印象に残ったチャプター『経営者のオペレーションガイド』を紹介したいと思う。これは、StripeのCOOであるClaire Hugh Johnsonが実際にStripeで実践している取り組みで、「Claireがどんな事に関わりたいのか」「どんな時に話しかけて欲しのいか」「どんなコミュニケーションを好むのか」などが細かくまとめられている。簡単に言えば、”Claireの取扱い説明書” みたいなものだ。

この取り組みのメリットは2つあると思っている。

1つは、周りがClaireと連携したり、彼女を巻き込みたい時にどうすれば良いのかが分かりやすくなるということ。コミュニケーションスタイルを明文化することによって、誤解が生じることがなくなるし、彼女がどんな行動を評価しているのかも明確になるので、組織の文化作りへの貢献にも繋がる。

もう1つのメリットは、オペレーションガイドを書いている本人の自己認識を高めるきっかけになるということ。自分の強みや弱みが何なのか。改善すべきポイントを振り返ることができる。

では実際にどのようなことが書かれているのか。

以下に、Claireの「オペレーションガイド」を一部抜粋して翻訳したものを紹介する。
(*実際のガイドの内容を意訳しています。また、より分かりやすくするため内容を一部省略・消去しています。)

まず、皆さんと一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています。

オペレーションのアプローチ

  • 隔週または週に一度の1on1。計画を立てることができるように、時間を一定に保つようにします。私は、議題やアクション、目標、アップデートを追跡できる共通の1on1ドキュメントを使うことを好みます。
  • 毎週のチームミーティングは、アップデートと意思決定・仕事のレビューの両方をする場と認識しています。テレビ会議の設定や時間帯の調整は必要ですが、皆さんが準備をしてミーティングに参加すること期待しています。
  • 四半期ごとのプランニングセッションでは、万全な事前準備を行い、チームやパートナー(社内外)と共にその後のフォローアップもしっかり行っていきたいと考えています。
  • ストライプとは別の事業を検討する会議を実施する可能性もあります。でも、プランニングをしながら、きちんと仕事をマネージできるよう頑張っていきます。どうぞご期待ください。
  • 1on1について
    • 一緒に仕事をし始めてから数ヶ月経ったところで、あなたの経歴や将来の野望、あなたが今まで選択してきたこと、その選択をした理由などを聞きながらキャリアセッションを行います。これは、長期的な個人のキャリア・プランに対して、あなた今在どのような位置にいるのかを知るために役立ちます。
    • 四半期ごとに、あなたの個人的な目標の上位3~5つを私たち2人でレビューしていきましょう。四半期ごとに話し合い、その目標を達成するために必要な時間やスペース、サポートを明確に知り、計画を立てていきます。私は、3〜6ヶ月ごとにこれを実施して、みんなにも私の個人目標を共有していきます。
  • あなたのチーム
    • チームや、日々の業務を理解するために私が参考にできそうなメール(FYIとしCCをしたり転送したり)やドキュメントがあれば、積極的に私を追加して共有してください。
    • 仕事が順調に進行していたり、チームのメンバーが素晴らしい仕事をした時は、その内容を転送したり、私たちの1:1ドキュメントにリンクしたりして教えてください。私は、WIP(Work in Progress)を見るのが好きで、素晴らしい仕事をしてくれた人たちに会えることがとても嬉しいのです。

マネジメントスタイル

協調的

  • 私は、決定事項やオプションについてグループ内で議論したり、大きな事柄をホワイトボードに書き出したりすることが好きです。1つの立場や意見に固執することはほとんどありませんが、欠点としては、物事をすぐに判断するとは限らないということがあるでしょう。私は話をしながら、いくつかのアイデアやデータ、オプションを参照して判断しようとします。そのため、私の決断には時間がかかることがあります。すぐに決断をする必要がある場合は、そのことを私がしっかり認識できるようにしてください。

ハンズ・オフ

  • 私はマイクロマネージメントをするタイプではありませんし、物事が軸から外れていると考えられる場合を除いて、細かいところを気にすることもありません。もし軸から外れているとなった時には、懸念していることが何なのかを伝え、一緒にプランを立て直します。だから、私がプロジェクトやチームに参加したばかりのタイミングではハンズオンで参画します。これは、のちにもし私のサポートが必要になった時に、どのようにサポートすべきかを把握しておくための方法なのです。
  • 私がいなくても、あなたはたくさんの決断をしていると思うし、もしあなたが私のところに来たら、たいていは「あなたはどうしたいのか。」「どうしたらいいと思うのか。」と聞きながら、あなたを決断に導くための手助けをします。とはいえ、何か大きなことがあれば、それについて知りたいし、いつでも相談にのります。私は、あなたとあなたのチームで何が起こっているかを知るのが好きなのです。

整理と責任

  • 私は、アクションアイテムをとても重要視します。一つ一つを追いかけるようなことは好みませんが、物事がスムーズに進捗しなかった時には気がつきます。期限の再調整を行うことは良いのですが、その再調整のタイミングが期限の翌日になったりするのはイライラします….
  • 先手を打って対応できたかもしれないことができておらず、その仕事の対応に没頭している人から土壇場になって私に声がかかるのは好きではありません。大きな仕事はなるべく先回りして着手し、一緒に進めていきましょう。同様に、リソースは限られているからこそ優先順位はある意味 ”冷酷” になって見極めて決めて欲しい。皆さんには、そして私自身も正気であり続けなくてはいけません。

データ・ドリブン

  • 私はデータやダッシュボードが好きなので、進捗状況や結果を客観的に測定するするのは好きですが、データにとらわれたり、数字をいじったりするのは嫌いです。何が本当に重要なのか、一貫性のある情報を見直し、データを使って洞察を得るようにしましょう。
  • 私は、それぞれが個別のプロセスやフレームワークを持つより全員が「どのように物事を実行するのか」の合意を得たいと思っています。
  • 私たちが何かを議論している時、あなたが私たちの決定に役立つデータを持っていたり、思い当たるデータがある場合は、ぜひ教えてください。

でも直感的な面もある

  • 私はまた、事実やデータがあまりない状況でも、人やプロダクト、そして意思決定に直感的に対応することもあります。「ああ、彼女はすぐに結論に飛びつこうとするのだろう」思われがちですが、私はそのような人間にならないように努力してきました。最終的には、私は良い直感を持っていると思いますが、私はそれに縛られないようにしています。あなたの ”仕事” は、私の本心を読み取りながら議論することです。私はより良い結果に向けて熱く議論するのが好きです。
  • 私はよくタレントマネジメントで直感を使っていて、人のことを「読む」のが上手だと言われます。繰り返しになりますが、私は物事をジャッジしたり、結論に飛びつくことがないよう努力しています。でも同時に、あなたのチームメンバーについて仮説を立てます。あなたの仕事は、私が、あなたやあなたのチームメンバーについて本当に正しく知ることができているかどうかを確認することです。

コミュニケーション

1on1s

  • 口頭で話し合った方が良いトピックスや、毎週の1on1の機会まで待つことができる場合は1on1を使って話をしましょう。メールは時間を取られるので、賢く使いましょう。
  • しばらく1on1がない場合は、もちろん気軽にメールなどを使って連絡してください。

Email

  • 私は受信したEメールは素早く読むようにしています。でも、左腕に軽度の手根管症候群があり、超長文のメールを書くのが好きではありませんし、生産的だとも思いません。
  • 私は、受け取ったすべてのメールをその日のうちに読んでいますが、読んだことを知らせるために返事をすることはありません。皆さんが私に送信したメールは、18時間以内には読まれていると思ってください。ただ私は、質問やリクエストを受けている時にしかそのメールに返事をしません。もし、返事をすべきメールなのに返信がないと言う場合は、遠慮なく催促してください。私はそれで怒ることはありません。

チャット

  • 緊急、重要、タイムリーなことならば、いつでも自由に連絡してください。
  • 短い質問は問題ないのですが、私はミーティングに入っていることが多いので、すぐに回答ができないことも多いと思います。
  • 話したいトピックが長いもので、緊急度が低いものならば、1:1で話しましょう。

フィードバック

  • 好きです。フィードバックは、与えることも好きですし、受け取るのも好きです。特に建設的フィードバックは大好物です。四半期ごとに公式フィードバックセッションも行いますが、私が何かを見たり聞いたりした時には、タイムリーに共有します。皆さんも、同じようにしてください。覚えておいて欲しいのは、何を聞いても、何を見ても、私はあなたの味方です。気になった時には言う。もし、あなたのことで私に愚痴をこぼす人がいたならば、直接あなたに伝わるように徹底させます。

人とマネジメント

  • 私は、あなたとあなたの部下、そしてあなたの成長を大切にしています。私があなた個人、そしてチームの育成について定期的に話すことができているかを常に気に留めておいてください。スーパースターが現れた時でも、チャレンジングなことがあるときでも、みんなで助け合いたいと思っています。

結果

  • 良い結果を出すためには、測れる目標が重要です。

ヒューモア

  • 最後に、大笑いして、一緒に仕事をしている人たちと共に楽しむのが好きです。

以上が、Claireが書いた自身の “取扱説明書” の中で僕が特に関心を持った一部を抜粋したものだ。

このドキュメントは、従業員のオンボーディングで活用できると思う。カルチャーの理解、コミュニケーションの仕方、評価される行動やバリュー、良いリーダーの定義などがこのドキュメントに凝縮されている。

新しく入った社員は、仕事をしながら試行錯誤をしながら会社に「フィット」していくわけだが、このように言語化することによって、フィットするまでのスピードが格段にアップするのではないだろうか。

起業家、経営者、そして部下を持つリーダーも、自身の ”トリセツ” を作ってみてはどうだろう。

最後に。Eladの「爆速成長マネジメント」には、Eladのこれまでの経験や知識に加えて、こうした爆速成長企業が実践している様々な施策が載っている、まさに盛り沢山な一冊だ。

今回の投稿で紹介したのは、その中のほんの一部を切り取ったものだが、これだけでもこの本がなぜ「バイブル」とまで呼ばれ、起業家に愛され続けているのかが分かるのではないかと思う。

3月17日、直接この本の内容についてより深くディスカッションできることをとても楽しみにしている。

イベント参加申し込み受付中。詳細はこちら(2021年3月16日(火)午後12時まで)

※ 3月14日(日)午後3時までに参加申し込みをしてくれた方限定で、Eladに聞いてみたい質問も募集中。

ぜひご参加ください!

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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