ARR目標を達成するためにSaaSスタートアップ経営者ができること

Photo by: Philo Nordlund

明けましておめでとうございます。今年もブログやポッドキャストでの情報をより頻度をあげて発信していきたいと思っているので、2020年もどうぞよろしくお願いします。

さて、起業家のみんなは、2020年の初営業日を迎えて、今年のARR目標の設定も完了し、多くが目標に向けて行動に移し始めている頃だろう。今回のブログは、今年の目標の達成確度を高めるために経営者やマネージャーができること、について。

パイプライン、パイプライン、パイプライン:各経営メンバー、マネージャー、そしてリーダーたちとパイプラインのレビューを行い、ディスカッションする。

例えば、以下の通り今年の目標を設定したとしよう。

• 新規顧客からのARRを2億円に
• リードからの成約率が25%を維持
• クロージング期間を平均して半年

この場合、逆算すると今年6月までに8億円分のリードを獲得する必要がある。マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトなど各セグメントのリーダーのパイプラインと数値目標への強いコミットが必要だ。もし、ARR8億円分のリードを生み出すコミットができないのならば、リードあたりの収益(ARR / リード)を上げて調整する必要がある。

パイプラインの状況や商談フェーズについて、各メンバーと毎週ディスカッションする機会を作れば、組織全体の数値管理能力と推進力が上がるだろう。

もっとコーチングを:リーダーの役割は、部下やメンバーが目標を達成できるようなガイダンス、スキル、ノウハウやリソース等を提供すること。部下との1 on 1の頻度を増やし(週に一度が理想)、目標達成にどのぐらい自信を持っているのかを確認。自信が足りていないようであれば、必要なサポートをしていく。

ゴールをクリアにし、必達の意識を高める:会社の目標、各チームの目標、そして個人目標はもう設定されていたとしても、設定だけで終わらすのではなく、《共有と確認》を毎週徹底すべき。負け越す状況には決して慣れさせず、各自ゴールにコミットし、常に勝ちに行く姿勢、必達の意識を高める。

カスタマーサクセスにダブルダウン:売上チャーンが下がれば、新規獲得しなくてはいけない売上が減る。アップセルやエキスパンションによって売上継続率を100%以上にできたなら、なおさら良い。売上規模が大きいほど、チャーンやアップセルによるインパクトも大きくなるので、カスタマーサクセスをさらに強化しレベルアップを図るべし。

採用計画を達成させる:SaaSは、採用計画が未達だと売上計画の達成も難しくなる。採用を社長の目標に入れてコミットさせる。もし毎月1名の採用を目指すなら、採用担当者がいることが必須になるだろう。会社に十分なキャッシュがあるのなら、2ヶ月に一名を採用する計画であったとしても、担当者を入れても良いと思う。

セグメントと分析:既存顧客をセグメント化してパターンを探す。リードあたりの売上が、レストラン業界で特に高いかもしれない。従業員人数300人以上の顧客のチャーンが圧倒的に低いかもしれない。プレミアムプランの顧客の方がNPSが高いかもしれない。他より上手く機能しているセグメントを探して、そこにリソースと予算をもっと寄せていく。

Sales Opsへの投資:ダッシュボードの管理、セールスプロセスの改善、情報やノウハウの体系化、部署間の連携力アップなど図るSales Opsの専任がいると営業効率が上がる。特にARR 1億円超えているスタートアップにとっては、メンバー各自が目標達成をするための重要な役割になる(Sales Ops とは?)。

以上が1年間のARR目標の達成確度を上げるポイントだ。目標を達成して、今年もさらに良い年を築いていこう。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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KARAKURIに投資をした理由

コールセンターの就労人口は、おおよそ100万人、そしてその市場は1兆円以上と言われている。コールセンターやカスタマーサポート部隊を持つ企業も非常に多く、サービスを提供するなかで重要な役割を持っている。

でも同時に、多くの人が働く大きな業界であるということは、課題も多いということだ。

コールセンターは離職率が高い。業務内容も環境も〈忙しく大変〉というイメージが強く、採用も難しい。お客様に対して丁寧な対応を心がけたいのはやまやまだが、現実は一人当たりの対応件数が増えるばかり。育成にかけるリソースも足りていない。このコールセンターやカスタマーサポートが抱える課題を全体的に解決しようとしているのがKARAKURIだ。先日総額5億円のラウンドをALL STAR SAAS FUNDで投資させてもらった。

Vision

初めてKARAKURIに出会ったのは2018年の前半。当時は、チャットボットスタートアップが多く生まれ、ブームのようになっていた。僕もすでに多くのチャットボットスタートアップからのピッチを受けていて、すでにこの分野は「バズワード」として聞き疲れ気味だった。実はKARAKURIからコンタクトをもらったときも「きっとまた同じようなピッチを聞くのだろう」と思っていた。でも、違った。

CEOの小田さんが語ったメッセージは、チャットボットの話ではなかった。それは、コールセンターやカスタマーサポートの話だった。前職でコールセンターBPO業務を立ち上げてきた小田さんは、課題に対する理解度が非常に深かった。

課題の大きさ、機会の多さ、そして業界全体に変革を起こしたい気持ち。業界やクライアントに関する理解度も深く、ビジョンも大きかった。僕は、そんな彼に惹かれて去年8月に投資を決めた。

Technology

そして彼らのもう一つの魅力は、技術力だ。大きなビジョンを描いたら、それについて行ける技術職が必要。この技術力が、KARARKURIには存在している。CTOの中山さんが率いるエンジニアチームは、レベルが高く、開発スピードも速い。クライアントとの満足度インタビューの結果にも現れている。仲間集めも順調に進み、一流の技術チームになれるポテンシャルを秘めていると思う。

Customer Success

クライアントのオンボードから導入後のフォローアップまで、KARAKURIは会社全体を通してカスタマーサクセスへのコミット力が高い。カスタマーサクセスという名前のチームは存在せず、複数の部署が連携して顧客の成功にコミットする体制を取っている。このタッグ制によって、クランアントが様々な面でスピーディなサクセスを体験できるようになっている。結果、既存顧客のアップセルやエクスパンションから成る売上拡大率が高いのだ。

KARAKURIは、そんな優秀なメンバー達と共に、多くの課題を持つ重要な市場に挑んでいる。彼らのビジョンを実現できるように僕も全力でサポートしていきたいと思っている。現在も様々なポジションで絶賛採用中なので、一緒にチャレンジしたいと思う人はぜひ連絡をして欲しい。 ⇒ https://karakuri-ai.co.jp/?page_id=1009

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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ARR1000億という名の山の登り方

今回のポストでは、サブスクリプション・ビジネスにおける収益化のためのプラットフォームを提供するZuora社の社長、Tien Tzuo氏が来日中に開催したイベントのディスカッション内容を書き起こしたものだ。彼が語った、セールスフォースでの経験や学び、そしてARR 1000億円に到達するまでの『7つのフェーズ』とは。

セールスフォースでの時間

僕(Tien Tzuo氏)のセールフォースでの従業員番号11番。1999年創業間もない時にジョインして、まだオフィスもプロダクトもない時だった。僕らは「インターネット時代のエンタープライズサービスを作る」をビジョンで事業展開した。セールスフォースは、SaaSの事例が全くない中、イチからSaaSを設計して事業を伸ばしてきたので、みんなが最近聞くようなコンセプト(例えば、カスタマーサクセスやSDR/BRD)や指標(ACV等)は、セールスフォースが発明したものだ。

ほぼ同時期に創業されたエンタープライズサービスを提供する企業は、オンプレを提供していたけれど、セールスフォースはオンプレを提供する事を強く否定し続けた。「インターネット時代のエンタープライズサービスを作る」と言うビジョンに執着した。この執着心は、自分たちに〈フォーカス〉を与えてくれて、そしてSaaS市場が確立したタイミングで、僕たちはその市場のリーダー的存在になれた。

ストーリーを語る力

これはセールスフォースで学んだ事で、大きな概念を描いて発信していく。セールスフォースは、自分達のことを語る時、SFA (セールスフォース・オートメーション)については言及せず、「ソフトウェア時代を終わらせる」と言うストーリーを語った。

Zuoraでもその学びを活かして、ビリングツールのサービスプロバイダーとして自らを語るのではなく、「サプスクリプション・エコノミー」のストーリーを語り続けている。

The Climb

SaaS企業を成長させる時に気をつけなければならないのが、『自分が今どのコンテキストやフェーズにいるのか』だ。これを意識せずに伸ばしていくと、思わぬ落とし穴にハマってしまう。また、急成長しているときはとにかく色々壊れてしまう。過去に囚われず、自分たちを再発明していく必要がある。

この7つのフェーズの総称を「The Climb」と言う名前にした理由は、SaaS企業を伸ばすとき、登山と同じようにスィッチバック(ある方向から概ね反対方向へと鋭角的に進行方向を転換するジグザグに登っていく)が必要だからだ。「今までとは違うことをやらなくてはいけない」というマインドセットが重要なのだ。

アイデアの証明(0ドル〜100万ドル)

起業家がよくする間違いの1つは、ニーズを確認する前にプロダクトを作ってしまうこと。
開発をする前に、完成されたプロダクトがない状態でも、自分たちが売ろうとしているプロダクトが、まずは1億円分売り上げることができるのかを確認しなくてはならない。プロトタイプの状態でユーザーにぶつけることで、自分のアイデアが求められているものなのかを確認、証明すべきだ。

製品の証明(100万ドル〜300万ドル)

ARR 1億円を超えるタイミングまでには、プロダクトの最終形態の解像度を上げておきたい。最終版を完成させるにはあと5年かかるかもしれない。でも、完成に向けてどういった順番でどの機能を開発するのか、どのクライアントを取りに行くのかなどは、ARR 3億円のフェーズに行くタイミングまでには明確に答えられるようにしておきたい。Zuoraでは、早い段階からSaaS企業だけでなく、他の業種や業界を狙っていくという判断をしているから、それを考慮したプロダクト設計にしていた。

市場の証明(300万ドル〜1,000万ドル)

特にベンチャーキャピタルから資金調達をした場合、本当の市場規模を理解する必要がある。今自分が経営している会社は、どのくらい大きくなるポテンシャルがあるのか。評価額はどの位までになれるのか。これを知らずに大型調達をしてしまうと売却も上場もできない会社になるリスクが出てくる。

ARR 100億円を達成したタイミングでどのくらいの顧客数になりそうなのか ー 平均単価100万円の顧客を1万社持つのか、はたまた平均単価1000万円で1000社の顧客を持つのか。そして、将来的にターゲットとなりえる顧客数の規模はどの程度なのか。こういった質問にしっかりと答えらえるようにしなくてはならない。

並行して、マネージメントの仕方も大きく変える必要がある。組織の中で1人のリーダーが効果的に直接影響を与えらえる人数は、大体7人まで。それを越えたらレイヤー(層)を1つから2つに増やす必要がある。従業員57人くらいになればリーダーのレイヤーは3つに増やす。そして従業員150人となればレイヤーは4つに。マネージメントの仕方や情報共有の仕方、そして目標設定の仕方は、レイヤーを増やすたびに大きく変えていくべきだ。

ビジネスモデルの証明(1,000万ドル〜3,000万ドル)

ARR 10億円から30億円の間では、ビジネスモデルに焦点を絞り始める必要がある。
顧客獲得コスト、解約率、LTV、粗利益、NRRやコホート別に見たトレンドなど様々な視点での指標を用いて、ビジネスを成立させるために何をどこまで持っていく必要があるのかを考え抜く。

特にARR 30億円規模になると、予算の割り振り方が今後の成長に大きなインパクトを与える。顧客セグメントや取り組み毎に、どのくらいのセールスとマーケティング予算を割り振るべきなのか。今後のさらなる成長のためにR&Dに割くべき先行投資額はいくらなのか。これらをはっきりとしておきたい。

ビジョンの証明(3,000万ドル〜1億ドル)

ARR 30億円を超えた時点で上記すべてを明確化することができたのなら、もうARR 100億円は見えてくる。大体2〜3年で達成できるだろう。
特に上場を目指すのであれば、組織であれ投資家であれ、より強い「巻き込み力」が必要だ。たくさんの企業があるなかで、何故自分たちを選ぶべきなのか?ビジネスの証明、明確化は出来ているのだから、あとはビジョンを語り説得する。

Zuoraの上場時には、「世界がサブスクリプションに転換することを信じるなら弊社に投資した方が良い」というストーリーを強く訴えかけて投資家を巻き込んだ。

業界の証明(1億ドル〜3億ドル)

ARR 100億円を越えると、「プラットフォーム」を創造できる規模になってくる。太陽の周りにたくさんの小さな惑星があるように、自分の周りに小さい企業が多数集まり始める。プロダクトを連携したい、一緒に販売したいという企業が集まる。だからこの時点でどういったエコシステムを作りたいか、一緒に成長し続けるためにはどのような相手とどのように組むべきなのかを考える。

会社の証明(3億ドル〜10億ドル)

僕たちは、今ちょうどARR 1000億円を目指してる段階なので、ここからはあまり語れないが、ここまで来るともう長期に物事を考えなくてはならない。長期的に成長できる会社であり続けるには、どうすれば良いのか。業界の中で僕らはどういった立ち位置にいるべきなのか。そして、さらなる高みをどう探しにいくのか。

最後に

何か違和感を感じた時や、今まで上手くやってきていたことが上手くいかなくなっていると感じたら、それは会社に変化があった時。その時は、会社と自分自身の〈再発明〉をしなくてはいけない。前の一歩で成功の要因となったものが、今の一歩では足かせになることがある、ということを忘れてはいけない。白紙に戻った気持ちで課題に向き合えれば、おのずと答えが見えてくるはず。変化に適応し続ければ、ARR 1000億円のSaaS企業を創りあげることができると信じてる。

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SaaSのトレンドとその未来を語る(2019年版)

2019年も残りあとわずか。今年もSaaS業界で様々な動きがありました。今回は、先日開催したALL STAR SAAS CONFERENCEでのセールスフォースベンチャーズ 湊 雅之さんとのセッション「SaaSのトレンドとその未来を語る(2019年版)」を公開します。セッション中に投影したスライドも上記のリンクからご覧いただけますので、スライドを見ながら是非聴いてみてください。

【サマリー】

  • アメリカのトレンド
  • 日本のSaaS株の状況
  • 日本のSaaSベンチャー投資の状況
  • 2019年のトレンド
  • 2020年のトレンド
  • SaaS経営者に伝えたい2020年のアドバイス

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SmartHR

今年2019年7月、僕はSaaSベンチャー企業への投資と支援に特化したファンド「ALL STAR SAAS FUND」を設立した。これを機に、今後可能な限りこのファンドでリード投資をしたスタートアップについて、僕の想いを投稿をしていきたいと思う。

それぞれのスタートアップのどういったところを見て投資を決断したのか、どういう想いで支援をしているのか、などを伝えることができれば嬉しい。

投資を発表して数ヶ月程経過しているが、今回のポストでは「ALL STAR SAAS FUND」にとって記念すべき第一号案件となった SmartHR について書いていこう。

僕がSmartHRに対して初めて投資を実行したのは、2015年のシードラウンドの時。実は最初に出会った時、彼らは全く別のサービスを展開していて、その時のサービスは正直あまりピンと来るものがなかった。でもその数ヶ月後にSmartHRというサービスにピボットをしたタイミングで、投資することを決めた。この時の決め手は、(1)ユーザーに対する理解度が非常に深かったこと、(2)その理解を基にユーザー目線のプロダクトを設計できていたところ。そして、宮田さんと内藤さんの素直さや学習能力の高さを感じたところにある。

このシード投資以降、僕は継続してほぼ全てのラウンドでSmartHRに追加投資をしている。そして今回のラウンドでは、共同リードで55億円を投資させてもらった。ALL STAR SAAS FUNDからの直接投資と、僕が窓口となって交渉、調整をさせてもらった投資金額を合わせると、合計で30億円近くになる。これは、僕自身のキャリアの中でも、一番大きい投資だ。

サクセス

強い魅力として感じた点の1つは、Customer Successへのコミットメント。ここで重要なのは、このコミットが組織全体規模で実行できていることだ。プロダクトチームやエンジニアチームがリリースするプロダクトや、その中の機能一つをとっても顧客中心で設計されていて、クオリティーが高い。そして、セールスやマーケティングチームもカスタマーサクセスに対する意識がとても高いと感じた。CSチームだけでなく、全部署がCSにコミットしているからこそ、99.5%という継続率を実現出来ているのだと僕は考えている。

僕がSmartHRのクライアントにインタビューをした時も、SmartHRのプロダクトとブランドに対する愛を感じたほどだ。サービスに対する満足度の高さはもちろんだが、それ以上にクライアントが、SmartHRのことを、今後も共に業界を向上させていくための〈パートナー〉として考えてくれている姿勢が在った。顧客との特別な関係性がそこに存在していることを感じた。

文化とマネージメント

僕が最も強く魅力を感じたのは、SmartHRの文化とマネージメントのスタイル。創業当初から毎年、SmartHRの従業員との面談機会を持たせてもらっているのだが、毎回特別なものを感じている。とにかく透明性が高く、メンバーそれぞれの責任感も高い。そして、コアバリューの理解がハッキリしている。経営層は自分たちと組織全体に高いスタンダードを求め続け、さらに高いスタンダードに進化し続けられるポテンシャルを秘めていると感じた。必ず、一流の組織になれると確信した。

マーケット

最後に、マーケットのポジショニングも魅力的だった。スモール、ミディアム、そしてラージのエンタープライズ顧客が存在していて、その対象となる業界は、ITやテック業界に止まらず幅広い業種や業界を巻き込んでいくことができる。つまり、対象となる潜在顧客が、日本全国に存在していて、その数は300万社以上にもなるのだ。同時に、HR Techの市場自体も直近の約350億円から、2023年までに1000億円近くまでに急成長する言われている。まさに、巨大な波に乗っている。ARR 100億円以上の企業を作れる条件が揃っていると思う。

二つ目のモチベーション

この3つが、僕がSmartHRに投資を実行した大きな投資理由だ。でも実は、直近のラウンドで僕が投資を行ったのには、もう一つのモチベーションがあった。正直言えば、今回のラウンドへの需要はとても高く、僕が投資をしなくても資金は十分に集まっていただろう。でも僕は、SmartHRの経営メンバーが今まで作り上げてきた(そして成長し続けている)マネージメントスタイルや素晴らしい文化作りを継続して欲しかった。

どんな大口の投資家が入ってくるのか。サポートのスタイルはなんなのか。新規投資家が入ってくることによって経営チームとの間で予想外な化学反応が起きる可能性があるのか。過剰に組織を管理してくることがないのか。

投資家は様々で、企業との相性によってはその繋がりがプラスに働くこともあれば、マイナスになることも、ゼロになることもある。SmartHRの場合、すでに対投資家との関係性が上手く機能している状態だったこともあった。だから、これから相性の良い新たな出資者を探すプロセスをゼロから始めるよりも、僕自身が共同リードのポジションに入って調整をさせてもらう方が、様々なリスクを減らせるのではと考えたのだ。こうしてALL STAR SAAS FUNDは、当初の予定よりも3ヶ月前倒しをして誕生することになった。

シリーズC

実はこのラウンドでは、ALL STAR SAAS FUNDの組成、資金調達、SmartHRへの投資をほぼ同時並行で行っていたので、僕にとって大きな挑戦だった。つい最近のことではあるけれど、この時のことを良く振り返る。そして毎回、この挑戦をして本当に良かったと思う。シードから支援させてもらっているSmartHRを、レイターステージでもサポートし続けられるのは、とても嬉しく光栄なことだ。

今後も、SmartHRのようにアーリーからレイターのステージにかけて支援を続けられる関係性を築いて行ける支援先を増やしていきたい。レイターステージの企業への投資は、アーリーステージの投資の数よりは少なくなるけれど、年に1社は、今回のようなレイターステージ投資を実行できたら最高だ、と思っている。

SmartHRは、自信を持って最高のスタートアップだと言える。こんなに最高な環境はなかなか見つからないと強く思う。現在様々なポジションで絶賛採用中なので、是非さらなる高みを目指して一緒にチャレンジしてみてはどうか。=> https://smarthr.co.jp/recruit

(edited by kobajenne

エグゼキューションの質

Photo by: Michelin Motorsport WEC_24 Heures du Mans

スタートアップに投資をした後、僕たちVCは様々な指標や情報をもとに、会社の状態や事業の進捗状況を把握しようとする。その中でも僕が、定性的ではあるけれど、そのスタートアップの成功を予測するために一番重要だと思っている要素は『エグゼキューションの質』だ。経営チームによるエグゼキューションの質が高ければ、どんな問題にぶつかっても解決方法を見つけることができ、スタートアップのポテンシャルを最大化できる。

エグゼキューションの質が高くなければ、一流の会社にはなれないと僕は信じている。

では、「エグゼキューションの質が高いと思う経営」とは、どういったところを見て感じるものなのか。

  • 課題に対するアクションのスピード:エグゼキューションの質が高いチームは、潜在、顕在に関わらず、抱える課題に対してスピーディーに対応できている。3ヶ月以内には課題を解決させていることが多い。
  • 目標の達成率:設定した目標や計画の達成率が高く、目標値を上回ることが多い。例え未達の月があっても、2ヶ月以上未達が続くことはあまり無い。
  • 優先順位とフォーカス:会社にとって一番重要なことにフォーカスできていて、意識が散らばっていない。
  • 一貫性:優先順位や目標が、社長や経営層はもちろんのこと、会社全体で一貫して正しく理解され認識されている。また、方針やビジョンにブレや矛盾がない。
  • クリアな考え:考えが整理されていて、次に取るべきアクションが明確になっている。
  • 高いスタンダード:経営チームが、自分達、そして会社全体に対して高いスタンダードを求めていて、そのスタンダードの高さを抜かりなく徹底的に維持している。

これらが、僕がエグゼキューションの質が高いと感じる経営チームだ。では、エグゼキューションのレベルを上げるためにどうすれば良いのか?

  • 良いプランニングと計測:どんなことでも、計らなければ客観的に状態を分析することはできない。大事だと思う指標を計測し、プランニングの解像度を上げ続けていく。そのためにも、プランニングのための時間を確保することが大事。
  • 良い人の採用:エグゼキューションのレベルを上げるために良い人材を確保し、委任と権限譲渡を積極的に遂行する。これは、考える時間を確保するためにも重要なこと。
  • 違和感を無くす:何か違和感を感じたならば、事態が悪化する前にその理由を突き止めてその原因を潰す。時間の経過と共に解決するだろうなどという考えは持たないこと。逃げずにすぐに課題に立ち向かうべき。
  • 透明性と責任:不都合な情報を隠さず、透明性高く経営をしてる。それぞれの役割や責任をハッキリさせて、言い訳できるシチュエーションを無くす。
  • グッドで満足せず、常にグレートを目指す:現状に満足せず、さらに高いレベル、最高な状態を目指し続ける。フィードバックを求めて、インスピレーションを探す姿勢を忘れないこと。

自分達のエグゼキューションの質は高いと言えるのか。
もしその答えが「No」なのであれば、これからレベルを上げにいけば良い。質が上がれば、自分自身と会社に対する愛と誇りも強まって、より高いところを目指し続ける原動力になると僕は思う。

(edited by kobajenne

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長期にわたるSaaS経営マラソンを走り切るには

SaaSスタートアップの経営は、とにかく時間がかかる。ゼロからARR100億円に到達するには、早くても8年は必要と考えたほうが良い。でも、その間ずっと全力で走ってる状態では、途中でバーンアウトしてしまうだろう。持続性のある経営を行うためにも、自分自身と会社、そして組織全体のメンテナンスを強化していく必要がある。

この記事では、現役のSaaS起業家からコメントやアドバイスをもらったので、彼らのコメントをもとに「長期なSaaS経営マラソンを走り切る方法」について書いていきたいと思う。

顧客と話してリチャージする

エネルギーを維持するためにやってることは、顧客と頻繁に会うこと。
人生をかけて創り上げた製品やサービスに対して、顧客から直接感謝の言葉をもらったり、さらなる改善点を教えてもらえる体験はエネルギーをもらえるし、ツライことを乗り越えてきて良かったと心から思える。― 福山 太郎 (Fond)

Fondの太郎くんが、彼自身そしてチーム全体のエネルギーを持続するために行っているのは、顧客と積極的に会って話をすること。これが今後の開発ロードマップのヒントになったり、カスタマーサクセスへの貢献にも繋がっているので、少なくとも週に一度はお客さんと会う機会を作っている。

顧客と定期的に会うこと。最低週に一社、できれば二社。顧客に会うことは、一番エネルギーをもらえるし、最も勉強になる。特にインターネットの会社を経営していると顧客に会う機会が自然と少なくなってしまいがちだから、意識することが大事!事件は会議室では起きていない!― 福山 太郎

COOやCクラスのメンバーを入れる

自分の役割を他のメンバーに委任できれば、新しい取り組みや事業など、未来を考えるためにより多くの時間を割くことができる。ARR1億円を超えたタイミングで自分の役割の大部分を担ってくれるCOOクラスを採用できればそれが理想だが、カスタマーサクセスやセールス、プロダクトなど部分的に委任できるVPやマネージャーを積極的に採用すると良い。

COOに仕事を任せ始めたのは、ARRが1億円を超えたタイミング。アドバイザーのFOND福山太郎さんから「ARR1億円まではアートで、ARR1億からはサイエンスの世界」と聞いていたので、そのバトンタッチがうまくできたなと思っています。― 宮田 昇始(SmartHR)

考える時間を確保する

スタートアップの経営はとにかくやることが尽きない。だからこそ、考える時間の確保は重要だ。実はこの時間は、起業家にとっての〈精神安定剤〉にもなる。気が付けばカレンダーが埋まっている・・・という事も多いなか、考えるための時間を予めブロックして、その時間は場所を変えてみるなど、環境にも工夫を取り入れると良い。

どうしても日々のオペレーションに追われていると、短期目線になりやすい。中・長期の未来について考えたり、他の経営者や専門家と話したり、自身の業界とは全く関係のない業界の人と話したりすることは、普段使わない思考を活性化できるので、リフレッシュした気持ちになるし、エネルギーが湧くきっかけになるだろう。

以下は、Plaid社の倉橋さんが考える「良いエネルギー」で自分を満たすために実施していること。

・未来、理想を考える時間がとれている。

・新鮮な気持ちに定期的に戻れている。

・累積思考バイアスを壊せている。

・具体的にはオフィスに行かない時間を作る(AMは基本行かない、毎週X曜日は行かない、この週は行かない)。

・未来の話をしている時間を増やす。

・学習と発見をメンバーに求め、結果を認める。

・無駄な時間、無駄なインプットを許容する。

・CPO(Chief Product Officer)の柴山とただただ話す。

・思考が切れる時間を作る。

・2週間以上、強制的に業務から離れる(半年に1度程、旅行など)。

・起業初期いたコワーキングスペースを”サード・プレイス”として持ち続ける。

倉橋 健太(Plaid)

採用ミスは辛い、でも乗り越えたら勝機が見える

初めて本格的なマネジメントチームを組成しようとした時。特に、間違ったマネージメント採用をしてしまった時のストレスは非常に大きかった。経験豊富なマネージメントチームを組成すると、仮に採用後に違和感を感じても、自分が間違っているのかと思ってしまいがちだけど、何か違和感を感じたら必ず介入して、必要に応じて方向転換を行うことを学んだ。マネージメント面接慣れをするのには時間がかかった。― 福山 太郎

まだチームが全部で50人のとき、ミドルクラス人材の組織ミスマッチが数件起こり、組織の空気が悪くなった。ファイナンスを推進する傍ら、1on1を繰り返し、経営の余裕もなくなっていた。 痛みは伴ったが、会社視点で前向きなリーダーへの裁量を広げ、配置変更し、チームビルティングをし直した。― 稲田 武夫 (Oct)

採用ミス、特にマネジメント層はストレスが大きい。カルチャーフィットの確認、採用基準の明確化、リファレンス、そして他の経営者からのアドバイスを聞くなどして、できる限りミスは回避はしたい。でも、100%回避することは不可能なので、どこかでミスは発生する。
その時重要なのは、とにかく早期に行動すること。問題を解消することができたら、今までより断然強く良いチームとなり、その結果、勝機が見えてくるようになるはず。とにかく乗り越えるしかない。

長期に経営できるマインドセット

2つあります。1つ目は「水は低きに流れ、人は易きに流れる」を意識しています。無理に努力するのではなく、自然と努力できる環境をつくっています。自分も会社も。2つ目は「三方よし」です。誰かが過剰に得したり、損する仕組みは長続きしません。例えば「顧客」「社員」「会社」の三者ともがハッピーになる仕組みづくりを意識しています。― 宮田 昇始

長期の経営を意識したマインドセットも重要。働き方や環境づくり、サービスや組織の設計など、長く自然と働けるようするのが大事だ。

・長期に正義を置く。長期と短期は常にセットで考え、発信し、問題提起する。

・プロダクトとビジネス以外の側面についても、一切妥協せず同一の目線感で意思決定する。

・組織や売上は最後に考える。とはいえちゃんと売上は作る(理想を言っていられる自信とステークホルダーからの信頼)。

・今のリズム、重心を設計する。固定化(思考停止)してくる部分を意図的に壊す。

・予定不調和な採用を心がける(スキルや人員計画ドリブンな採用を行わない)。

― 倉橋 健太

体の安らぎ、心の安らぎ

1日1時間の筋トレ。8時間睡眠。平日はお酒を飲まない。― 福山 太郎

今年からランニングを月間100kmやってます。走っている間が、深く内省する時間です。あとお酒は週6〜7回ほど。 ― 宮田 昇始(SmartHR)

宮田くんは、お酒を減らした方が良いと思うのだが(苦笑)、運動する起業家は多い。やはりリラックス効果があるのと、肉体の強化は自信にもなるし、精神面の強化にもなる。体と心の安らぎを満たす方法は人それぞれだが、そのための時間の確保が重要だ。

PMFを達成したらすぐに採用

人事の採用と、広報の採用!もし次回があるならば、PMFを感じた瞬間に彼らを採用できるように関係づくりをしておきます!あと、英語ももっと早くやれば良かった!― 宮田 昇始

もっと早くやれば良かった事は採用リーダーの採用、マーケティングリーダーの採用、技術負債の解消と社内システム開発組織の構築。― 稲田 武夫

PMFを達成すると人の足りなさを直ぐに感じてしまう。PMF達成前から関係づくりできるとよりスムーズになる。特に、採用ペースが月に1名以上になりそうな段階で、採用担当者や人事担当者は採用するべき。

時間は必ずかかる。焦らない。

SaaSで一番大事なのは、淡々と正しいことを行い続けること。時間は必ずかかるので、焦らない。そして社員もツライことを一緒に乗り越えてくれているので、マイルストーンを達成したら、必ず社員とお祝いをすること。顧客の声を聞いて、より良い製品を作って、顧客にさらに喜ばれるのは、最高の幸せ!福山 太郎

とにかく時間がかかるので、そのロードトリップを楽しむことが大事。会社やチームメンバーが記録を更新した時、プロダクトをリリースした時、今まで獲得できなかった顧客を初めて獲得できた時など、マイルストーンを達成した時は、社員とお祝いをしてチームの一体感を強化しよう。

SaaSの経営マラソンは長く、時には辛く感じられる時があるかもしれない。
でも、正しくやれば誇りに思える会社と組織になる。
みんなも是非彼らのアドバイスを取り入れながら、走り切って欲しい。

ご協力いただいた稲田くん宮田くん太郎くん倉橋さんに感謝!

(edited by kobajenne

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SaaStr シリーズ:営業本部長が90日以内に売上を2倍にした方法

SaaStrシリーズ第三弾は2011年にAdobeが買収した電子サインサービス「EchoSign」の元営業本部長が90日以内に売上を2倍にした方法について(元記事はこちら

ブレンドン・キャシディは、我が社が地獄の年から抜け出そうとしていた困難な時期に営業本部長として参画した。リードは増え続けていたが、収益の伸びは停滞していたのだ。

ブレンドンが我々のオファーを受け入れる前に、僕は彼と一緒に座り、彼の仕事の見通しを伝える機会があった。僕は彼を100%信頼していること。そして素晴らしい仕事をしてくれると確信していると言った。しかし、ストレートに言うと、数値のモデリングを構築し、180日以内に売上を2倍にできない限り、会社は十分に大きくなることができず、結果資金が尽きて、失敗する事になるだろうと伝えた。これは、非常に大きな ”注文” であることは分かっていたが、その当時の数字を計算すると、これは成し遂げなければならないことだと伝えた。

彼は、少し時間をかけて会社の数字とデータを見た。そして、僕は、この時の彼の次の反応を忘れることはないだろう。「問題ありません。」と彼が言ったのだ。「十分な原材料があります。リードもあります。そして、何人かの良い担当者もいます。やってのけます。」

そして彼はやってのけた。実際、彼は90日間で売上を2倍にしてしまったのだ。

彼は一体これをどうやって成し遂げたのだろう?そこから何を学べるだろうか?

まず、彼が最初の90日間にやらなかったことを吟味してみよう。 

  • 彼はこの90日間、新しい見込み客や顧客を持ち込まなかった。90日では、大きなインパクトを与えることはできないと考えたのだ。
  • プロダクトはそのままだった。彼が着任した最初の日にプロダクトにあった欠陥やギャップは、90日後もそのままだった。
  • 競争相手が弱くなったわけではない。当然ながら。
  • 価格設定も変更せず、そのままだった。ターゲットの顧客とターゲットの取引サイズも同じだった。ここでもなんら変更はなかったのだ。

それでは、ブレンドンは90日間で一体どうやって売り上げを2倍にすることができたのか。

最終的に、それは以前簡単に説明したことのある1つのメトリックに起因していた。彼は、リードあたりの収益を倍増したのだ。リード・ベロシティ(営業チームがアプローチをしても良いと判別できたリードの成長率)は同じ、リード生成率も同じ。90日間に起こったことは、我々が持っていた各リードから得た収益が2倍になったことだった。

彼はこれをどうやって成し遂げたのだろう?まあ、いくつかの企業秘密も関係しているかもしれないが、僕が観察したのは次の通りだ。

  • 彼は直ぐに(本当にすぐに)実績のあるクローザーでチームをアップグレードした。ブレンドンは、参画して1日程度しか経ってない時点で、我々のステージと価格帯でクロージングすることができる3人の新しい営業を連れて来た。明らかに、彼らはまだプロダクトをよく知らなかった。知るには早すぎたから。だから、ドメインの専門知識は、彼らの成功とはまったく関係ない。しかし、彼らは我々の価格帯での基本的なSaaS販売プロセスを知っていた。そして彼らは有能だった。結果、販売サイクル90日未満で、ブレンドン着任以前からいた営業担当者と比べて最大3倍の率でリードとの取引を完了させたのだ。ドメインについての深い知識がほとんどなくても。
  • 彼は継承したチームを最大限に活用し、効果的に仕事をしていなかったチームメンバーを取り除いた。ブレンドンは、既存の営業チームのサイズを迅速に増やし、なかでも高い見込みのある営業担当と最高の結果をもたらしていた営業担当の2人にエネルギーを集中させた。そして、最も若いSMB営業担当者の驚くべき才能に気づき、直ぐに彼を昇進させた。これにより、彼担当のリードの生産性がおそらく3倍になっただろう。さらにブレンドンは、良い結果をもたらしていない担当者にリードを与えるのを単純に、止めた。考えてみれば、平均以下の担当者に貴重なリードを与えるのはとても無駄な行為である。リードを平均以下の担当者から実績のある担当者に再配布する(そして平均以下の担当者を取り除く)だけでも、大きな変化をもたらした。
  • 彼は、全てを自分1人でやろうとはしなかった。彼が “スーパー担当者” だとしても、これらを全て自分1人でやろうとするには、やることが多過ぎた。代わりに、彼は自分が持っていたリソース内での生産性を2倍、3倍にし、また、以前の中央値の2倍、3倍の確率で営業成績を残す才能がある者を直ちに雇うことに焦点を当てた。
  • 彼は、メトリックとしてパイプラインを使うのを止めた。パイプラインは重要な営業指標だ。しかし、クロージングしなければ話にならない。ブレンドンはパイプラインの無限のチャートと議論に終止符を打った。僕たちは完了することのできる実際のディールについて議論した。
  • 彼は競争を取り入れた。以前の営業チームのほとんどは競争に苦しんでいた。しかし競争はSaaSの世界では当たり前の話。信じられないかもしれないが、多くの人は競争から逃げる。しかし、競争を直ぐに受け入れ、そこから学べば、自分の相対的な短所と長所を学び、少なくとも最初はそこに集中することができる。

素晴らしいマネージメントが、営業本部長の第1の仕事である。雇い、管理し、昇進させ、耳を傾け、反復し、援助する。 これらがブレンドンが最初の90日間にした「すべて」である。他のことをする時間はまったくなかった。同じプロダクト、同じ長所、同じ短所、そして同じ世界。

そして、彼は見事に目標を果たした。

なぜなら僕は、世界レベルのマネージャーを雇ったのであり、マジシャンを雇ったわけではないのだから。

(すべての翻訳記事掲載については、SaaStrから掲載許可を得ています)

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レイヤーで考えるSaaSの経営と戦略

分解して見ると、SaaS企業は、様々なプロダクト、顧客セグメント、そして獲得戦略のレイヤー(層)を重ねることによって売上を伸ばし続けている。例えば、大手米SaaS企業のBoxとVeevaの資料からも、時間軸とともにプロダクトのラインナップを重ねて、対象顧客を広げているのが分かる。今日は、SaaS企業のレイヤーの種類と考え方について書こうと思う。

Veevaのプロダクトラインナップ
Boxのプロダクトラインナップ

SaaS企業には、主に3つのレイヤーがある。

  1. プロダクト: 恐らく、多くの人が最初に思い付くのが「プロダクト」のレイヤー。プロダクトレイヤーを重ねる目的は様々だが、例えば、既存顧客にプロダクトを売り込んで平均単価を上げる「アップセル」を実行すること、既存顧客とのタッチポイントを増やして(LTVを上げる目的として)退会率を下げること、そして新たな顧客セグメントを狙いに行くこと等の目的がある。
  2. 戦略: 主にユーザー獲得にかかわる「戦略」レイヤー。インバウンドやアウトバウンド、コンテンツマーケティングやセミナーなど。また、営業育成やインサイドセールスチームの立ち上げも戦略レイヤーに入ると思っている。
  3. セグメント:SMBやエンタープライズ、IT企業や製造業、顧客セグメントには様々な切り口がある。新たな顧客セグメントを狙いに行くときは、プロダクトか戦略、または両方が絡んでくることがほとんどだ。

では、どのレイヤーをまず増やすべきなのか。優先順位の考え方には、主に以下2つの要素がある。

  1. TAM: 市場規模が一番重要。5年後10年後の売り上げ構成を考えた時、どのレイヤーが一番大きいのか?可能であれば、一番大きいところから狙いに行きたい。
  2. ロードマップ:ただし、単純にTAMだけを優先するのも難しい。TAMの大きいレイヤーを狙うためには、プロダクトや組織をどこまでストレッチさせないといけないのかも考慮も必要だ。例えば、SMBからエンタープライズの市場を狙うためには、その市場で戦うことができる組織やプロダクトになるまでにどのくらいの時間が必要なのか。その準備期間中に他のレイヤーを先に狙いに行く必要はないのか。このように、レイヤーを追加する時は、他のレイヤーとのトレードオフを考える必要がある。

今月の売り上げは12ヶ月前の取り組みによって生み出され、12ヶ月後の売り上げは今日の取り組みによって生み出される。

SaaS企業は、昨日や今日の施策がすぐに結果として現れない。特に、規模が大きくなればなるほど、新しい取り組みが全体の売り上げに影響し始めるまでの時間軸は長い。どんなレイヤーでも、少なくとも12ヶ月はかかると思った方がよい。

つまり、「MRRの伸び率が下がってきたから新しいレイヤーを増やそう」ではもう遅い。考え方としては、来年の今頃のMRRを達成するために今のうちにやるべきことは何なのか、再来年の今頃のMRRを達成するためにいつまでに何を始めるべきなのかといった考え方を持つ必要がある。大体、毎年1〜2個のレイヤーを足していく意識をしていくと良いと思う。

中長期の事業計画を作成するときは、このレイヤー毎に考えてみると、詳細で解像度の高い計画を立てることができる。レイヤーを足していき、長期に成長し続けられるSaaS企業を目指すと良いだろう。

(edited by kobajenne

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SaaStr シリーズ:SaaS企業の最初の100人


Photo by: Aigars Mahinovs

SaaStrシリーズ第二弾はSaaS企業最初の100人について(元記事はこちら

SaaS事業の人員計画を立てるにあたり、「これだけの人を雇う必要があるのか」と驚く起業家も少なくはない。SaaSは、〈営業型〉である場合は特に、アウトバウンド、販売開発担当者、インバウンド、フィールド・セールス、マーケティング、カスタマー・サクセス、サポート、さらに複雑なプロダクト管理など、システムの開発はもちろんのこと、それ以上の非常に多くのファンクションが必要になるからだ。

大まかに言えば、初期の段階で計画した人数の2倍の人員を雇う必要が出てくるケースが多いだろう。

では、かみ砕いてみてみよう。

あなたは10億円のARRを目指していて、資金もきちんと確保されている状況にあるとしよう。恐らくあなたはその時点で、またはARR15億円を達成する時までには、100名の人員を抱えることになる。もしこれがセールスドリブンモデルのときは、どのような構成になるだろうか。

例えば年間の成長率が100%で、その翌年にはARR 20億円を達成する計画を立てたとする。

すると、翌年100%で成長するためには、まず10億円のARRを達成する必要があり、その場合に必要な人員は40名ほどになる。

  • 1名の営業本部長(VP of Sales)。そして恐らくは営業管理・育成のディレクター(VP or Director of Sales Ops)1名、そしてその下のアナリストを最低でも1名。
  • 20億円のARRを十分に達成するためには、20人の営業担当者が必要になる。なぜなら、ARRが10億円増加し、年末にはさらに増加するからだ。でも実際のところは、その年の半ばにかけて、これより多くの人員を必要とする可能性が高い。これは、新規受注の量やMRRの増加が大幅に見込めるようになるためだ。最終的には、少なくとも25人分の予算を立てると良いだろう。
  • アウトバウンドやスクリーニングにおいて、営業チームをサポートするSDRは恐らく8名程が理想。状況は激しく変化するが、モデル化の目的では、1対3の比率が良い。
  • 25人の営業担当者とSDRを管理するための営業部長を3〜4名(部長1人あたり、8人の営業担当者をつけるのが、チームが上手く機能する標準の比率。そして、SDRについては部長1人あたり8〜10名を管理できるという前提だ)。
  • 僕は、これをインバウンドとアウトバウンドに分けることさえしていないし、個別にフィールド・セールスを追加することについても触れていない。ARRが約10億円に到達達する頃には、恐らく(大規模な取引のための)フィールド・セールスを最低2〜3名は加えたくなるだろう。
  • そう。これは、あなたが考えていたよりも、はるかに多い数字だと思う。

カスタマー・サクセス部門においては、約20名ほどの人員が必要になるだろう。

  • カスタマー・サクセス・マネージャー1人あたり、1.5億円のARRを想定しよう。すると、翌年の計画を達成するためには、約15人の カスタマー・サクセス・マネージャーが必要になる。ただ、同時期に15名を揃えなくても良いので、まずは15名としよう。
  • 彼らを管理する本部長が1名、カスタマー・サクセス・マネージャーを半数ずつ分けて管理する部長が2名。 そして恐らくデータ分析などをサポートするアナリストも1名必要になる。

マーケティング部門では、外部の委託ベンダーの数に応じて変わるが、僕は、4〜8名の人員を雇う必要があると考えている。

  • マーケティングVP
  • デマンド・ジェネレーションのディレクター
  • フィールド・マーケティングのディレクター(イベント等)
  • コンテンツ・マーケティング
  • プロダクト・マーケティング
  • そして恐らく、マーケティングチームが独自で潜在顧客を管理するリード管理担当者(2〜3名)

サポート部門では、この時点で電話サポートを含めた、24時間年中無休のサポートが欲しい。それには最低5名の人員、理想的には6名必要だと考えよう。

OK。まだエンジニアは1人もいないのに、既に70になってしまった!

それでは、プロダクト部門とエンジニアリング部門に移ってみよう。

プロダクト部門では、少なくとも4名のフルタイムの人が必要になる。それでも多すぎるということはない。

  • 全体を管理するプロダクトVPが1名
  • プロダクト、インテグレーション、リリース等を管理する2〜3名のマネージャー

DevOpsあるいはTechOpsでは、24時間365日対応できる状況を確保するために、3〜4名の人員を必要とすることになる。実際は4名いる方がはるかに良い。さて、僕たちはここで、データベース管理者等を数に含めるべきか。答えは、6〜7名程いることが望ましい。

エンジニアリング部門では、20名は確保したいところだと僕は思う。2つの「ピザボックス・チーム(6〜7名程)」に加えて、狂気じみた次世代のことを試行錯誤し続けるエンジニア少数名と、リファクター、バックエンドなどのみに注力する少数名だ。この時点で、フロントエンドチームと協働する2名のデザイナーも必要になるだろう。

そして最後に、僕たちにはQAが必要だ。恐らく最低でもQAエンジニア8名、マネージャーが1名は必要だ。人員削減のために、RainforestQAや他の何かを使っても良いが、そうでなければ、1対2でカバーすることを想定するのがベスト。コードを書く20名のエンジニアに加えて、うまく回り始めたら、QAチームには最低でも8名、さらにチームのリーダーが必要になるだろう。

さて。ということは、10億円程度のARRを目指すならば、プロダクトとエンジニアリング部門であなたが必要とするのは約40名ということになる。

これらを全部合わせると110名になる。そしてさらに、アドミン関連や経理などの人員を必要なだけ雇用する。

分かっている。もうすでに100人を少し超えてしまっている。だから、ここからは実際の状況をみながら調整していくことになる。でも、成長計画を達成するにはこの追加の人員が結局必要になるだろう。

言い換えれば、10億円のARRを達成するにあたり、人員の大部分は、プロダクトを作るためではなく、セールスやマーケティング、サポートを支えるために必要とするわけだ。

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