SaaS企業が勝つために必要なバリュー


Photo by: Malcolm Macgregor

企業のバリュー(価値観)は、会社の文化を作り上げるうえでの重要な要素であり、DNAであり、経営層からマネージャー、そして社員それぞれの判断基準や行動指針にもなる。正しいバリューの設定と運用をすることで、掲げたミッションを達成する力強い会社を作ることができる。

今回は、代表的なSaaS企業のバリューをいくつか紹介しながら、僕が思う「SaaS企業が勝つために必要なバリュー」について書いていこうと思う。

Salesforceの4つのバリュー

まずは、「SaaSの王者」であるSalesforceの4つのバリューを見てみよう。

信頼 – 社員、顧客、アドバイザーなど、Salesforceに関わるすべての人達と透明性を持ったコミュニケーションをとり、関係を大切に築いていく。

カスタマーサクセス – Salesforceの成功は、顧客の成功があってこそ。顧客と共に成功し、成長し続ける。

イノベーション – テクノロジーを通じて新たな価値を提供するだけでなく、社員一人一人がイノベーションというマインドセットを持つべきだ。

平等 – ダイバーシティーは、イノベーションとクリエイティビティーの促進に通ずるものと信じている。その人のバックグラウンドを尊重し、共に働ける環境づくりを大事にする。

Hubspotの7つのバリュー

続いてはHubspotの7つのバリュー(これは、この128ページもある英語版資料の中から一部を抜粋、要約したもの)。

ミッションとメトリックス – 私たちは、中小企業を愛している。彼らを成功に導くことが私たちのミッションだ。これを達成するため、私たちはメトリックス(数値)にコミットする必要がある。

顧客のために解決する – Solve For The Customer (SFTC)。顧客を満足させるだけでなく、成功させることが重要だ。

透明性 – 会社の中のあらとあらゆる情報を社員全員に開示する。

オーナーシップを持つ – 自律とオーナーシップを大事にしている。たくさんの細かいルールやポリシーを作るのではなく、個人個人に判断を委ねる。

人>パーク – 会社の最大な従業員特典は、”Amazing People” に囲まれること。謙虚で共感力が強く、柔軟性と透明性のある、有能な人に囲まれる環境である。

ユニークであれ – 他とあえて違うことをしないとイノベーションは起きない。現状に挑戦し続けることが大事。

人生は短い。意味のある事をしろ – 仕事は人生の中の大部分を占めている。だからこそ楽しく、健康で、意義のあることをするべき。

SmartHRの6つのバリュー

そして最後は、勢い良く成長しているSmartHRのバリュー(ウェブサイトからの引用)。

自律駆動 – SmartHRは「100の問題を50人で2問ずつ解く組織」を目指す。そのために、情報をオープンにし、フラットな状態をキープすることを約束する。

ひとりひとりが指示を待つのではなく、みずから解くべき問題を見つけ出そう。そして、自分で判断し、主体的に行動を起こしていこう。

早いほうがカッコイイ – あれこれ悩む前に、動き出そう。まずは荒削りでもOK。最速のアウトプットを心がけ、フィードバックのループを素早く回していこう。

大きな意志決定も、即断即決でいこう。それがチームを加速させ、社会を加速させる原動力になる。

最善のプラン C を見つける – 今あるものが最適解とは限らない。「こんなものだろう」という思い込みを捨て、常識を疑い、俯瞰で物事をとらえよう。

手段や技術に固執せず、柔軟に工夫しよう。選択肢を多く出し、「どちらか」ではなく「どちらも」叶える最善の答えを生み出そう。

一語一句に手間ひまかける – 細部まで徹底的にこだわろう。言葉はもちろん、UIも、コードも、すべてはユーザーや社会に対するメッセージだ。

もっと言葉を磨こう。1 ピクセルにこだわろう。コードの一行一行に魂を込めよう。その小さな手間ひまが、大きな成果につながっていく。

ワイルドサイドを歩こう – なんでも挑戦して失敗しよう。そして、失敗から学び、次へと活かそう。

新しい挑戦にはレールがない。誰も通ったことがない道の先には、誰も提供できていない価値がある。挑戦をやめなければ、いつかたどり着ける。

人が欲しいと思うものをつくろう – 世の中の深い課題に目を向け、大きな変革を起こそう。表面的な解決策ではなく、人々の行動から課題をあぶり出そう。

現在に最適化するのではなく、未来を見据えて考えよう。そして、ユーザーが自慢したくなるほどのプロダクトをつくろう。

SaaS企業が勝つために必要なバリュー

もうすでに気が付いているかもしれないが、3社のバリューには共通している要素がいくつかある。そしてその要素こそが、僕がどのSaaS企業にも取り入れて欲しいと思うポイントだ。

カスタマーサクセス:3社とも顧客目線のバリューを掲げている。SaaSという言葉の最後の”S”は「サービス」をさす。プロダクトだけではなく、セールス、オンボーディング、そしてカスタマーサクセスの全てを顧客目線で設計、実行することで、より良いサービスへと成長させていく必要がある。「顧客と共に成功し、成長し続ける」これがSaaS企業にとって一番重要な使命だと思う。

イノベーション: 顧客がサービスを導入してくれる主な理由の一つは、テクノロジーだ。常に新しい事にチャレンジし続けることによって、他社との差別化を強化し、顧客に最先端のソリューションを提供する。テクノロジードリブンであることももちろん重要だが、挑戦的なマインドセットも会社の文化に根付かせる必要がある。

透明性:SaaS企業はプロダクト、マーケティング、セールス、サクセスなど様々なファンクション間の連携によって成り立つ。この連携力の強さによって顧客の体験が大きく変わる。そのためにも、全社員を信頼し、情報を開示すること。そして社員それぞれにオーナーシップを持ってもらう必要がある。

以上が、僕が考えるバリュー設定をするときに積極的に取り入れると良い「SaaS企業が勝つために必要なバリュー」だ。

ただ注意して欲しいのは、他の企業のバリューをそのまま自分の企業に当てはめようとしても、それは根付かない。自分たちが体現することができる、自分たちに合った言葉とバリューの組み合わせを探す必要がある。

(edited by kobajenne

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理想的なシリーズAのSaaSスタートアップ


Photo by: simone

「理想的なシリーズAのSaaSスタートアップの状態とは?」

起業家からよく聞かれる質問のひとつ。

多くの場合、シリーズAの資金調達を実行するSaaSスタートアップは、およそ3〜5億円を調達しようとする。今回のポストでは、僕がシリーズAのSaaSスタートアップへの出資を検討する際に確認しているポイントについて書いていきたいと思う。

ただし、これはあくまでも「理想的な状況」であって、実際この中のいくつかの要素が足りていなかったとしても、シリーズAの調達ができないというわけではない。でも、満たしてるポイントが多ければ多いほど調達できる確率は確実に上がる。

Retention
僕のブログやツイッターでも〈継続率の重要性〉について常に発信しているが、チャーンが高ければ高いほどARR100億円を達成するハードルは上がる。
だから、有料顧客がサービスに高い満足度を示しているのか、長期にわたって使い続けたいと思われているのかを確認している。年間契約が多いSaaSスタートアップの場合、契約更新率は90%以上が理想。月額契約が多い場合は、1%未満のカスタマーとグロスチャーンが理想だ。

Growth
成長率に勢いがあることが全てではないが、成長率は様々な視点から事業の状況を語ってくれる。
そのサービスに高い需要があるのか。顧客にとって必要不可欠なサービスになるため、強力なセールスやマーケティング、カスタマーサクセスの構築ができているのかもこの数字が示す。MRR1000万円を突破したタイミングで月次成長率10%以上を維持できてるのであれば上出来だ。

Management Team
シード段階と比べて、チームがどの程度アップグレードできているのか。
セールスやカスタマーサクセス、プロダクトチームそれぞれの先頭に立ちチームを引っ張っていける人材がいるのか。各チームのレベルはどのくらい向上しているのか。そして、今まで社長が行ってきた業務をどれだけ権限委任することが出来ているのか。最も良いのは、営業のクロージングを社長以外の人ができ始めていて、さらにカスタマーサクセスとプロダクトチームの権限委任が完了している状態だ。

TAM / SAM / SOM
狙っている市場で、ARR100億円以上の企業を作ることができるのか。
この答えは、ボトムアップで(対象顧客数 x ARPA)で算出した方が分かりやすい。可能であればSOM (今のプロダクトで狙える顧客セグメントの市場規模)、SAM(2〜3年の期間で狙いたい顧客セグメントの市場規模)、そしてTAM (最終的に獲得したい最大の市場規模)に分けられていると良い。SOMが100億円以上、SAMが500億円以上、そしてTAMが1000億円以上が理想と言える。

Competitive Dynamics
狙っている市場をどこまで独占できるのか。
他社より自社のプロダクトが優れていること。高い競合勝率(90%以上が理想)。そしてさらに、サービスの導入理由を顧客ヒアリングなどを通じて確認できると良い。

以上が、シリーズAのSaaS企業に対して投資を検討する際に重要視しているポイントだ。冒頭で伝えたとおり、これらはあくまでも〈理想な状態〉だ。実際、これらを満たせていない企業に投資を実行したこともある。でも、最高のシリーズAを達成するために、常に理想的な状態を意識しながら挑んで欲しいと思う。

(edited by kobajenne

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レイヤーで考えるSaaSの経営と戦略

分解して見ると、SaaS企業は、様々なプロダクト、顧客セグメント、そして獲得戦略のレイヤー(層)を重ねることによって売上を伸ばし続けている。例えば、大手米SaaS企業のBoxとVeevaの資料からも、時間軸とともにプロダクトのラインナップを重ねて、対象顧客を広げているのが分かる。今日は、SaaS企業のレイヤーの種類と考え方について書こうと思う。

Veevaのプロダクトラインナップ
Boxのプロダクトラインナップ

SaaS企業には、主に3つのレイヤーがある。

  1. プロダクト: 恐らく、多くの人が最初に思い付くのが「プロダクト」のレイヤー。プロダクトレイヤーを重ねる目的は様々だが、例えば、既存顧客にプロダクトを売り込んで平均単価を上げる「アップセル」を実行すること、既存顧客とのタッチポイントを増やして(LTVを上げる目的として)退会率を下げること、そして新たな顧客セグメントを狙いに行くこと等の目的がある。
  2. 戦略: 主にユーザー獲得にかかわる「戦略」レイヤー。インバウンドやアウトバウンド、コンテンツマーケティングやセミナーなど。また、営業育成やインサイドセールスチームの立ち上げも戦略レイヤーに入ると思っている。
  3. セグメント:SMBやエンタープライズ、IT企業や製造業、顧客セグメントには様々な切り口がある。新たな顧客セグメントを狙いに行くときは、プロダクトか戦略、または両方が絡んでくることがほとんどだ。

では、どのレイヤーをまず増やすべきなのか。優先順位の考え方には、主に以下2つの要素がある。

  1. TAM: 市場規模が一番重要。5年後10年後の売り上げ構成を考えた時、どのレイヤーが一番大きいのか?可能であれば、一番大きいところから狙いに行きたい。
  2. ロードマップ:ただし、単純にTAMだけを優先するのも難しい。TAMの大きいレイヤーを狙うためには、プロダクトや組織をどこまでストレッチさせないといけないのかも考慮も必要だ。例えば、SMBからエンタープライズの市場を狙うためには、その市場で戦うことができる組織やプロダクトになるまでにどのくらいの時間が必要なのか。その準備期間中に他のレイヤーを先に狙いに行く必要はないのか。このように、レイヤーを追加する時は、他のレイヤーとのトレードオフを考える必要がある。

今月の売り上げは12ヶ月前の取り組みによって生み出され、12ヶ月後の売り上げは今日の取り組みによって生み出される。

SaaS企業は、昨日や今日の施策がすぐに結果として現れない。特に、規模が大きくなればなるほど、新しい取り組みが全体の売り上げに影響し始めるまでの時間軸は長い。どんなレイヤーでも、少なくとも12ヶ月はかかると思った方がよい。

つまり、「MRRの伸び率が下がってきたから新しいレイヤーを増やそう」ではもう遅い。考え方としては、来年の今頃のMRRを達成するために今のうちにやるべきことは何なのか、再来年の今頃のMRRを達成するためにいつまでに何を始めるべきなのかといった考え方を持つ必要がある。大体、毎年1〜2個のレイヤーを足していく意識をしていくと良いと思う。

中長期の事業計画を作成するときは、このレイヤー毎に考えてみると、詳細で解像度の高い計画を立てることができる。レイヤーを足していき、長期に成長し続けられるSaaS企業を目指すと良いだろう。

(edited by kobajenne

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SaaStr シリーズ:SaaS企業の最初の100人


Photo by: Aigars Mahinovs

SaaStrシリーズ第二弾はSaaS企業最初の100人について(元記事はこちら

SaaS事業の人員計画を立てるにあたり、「これだけの人を雇う必要があるのか」と驚く起業家も少なくはない。SaaSは、〈営業型〉である場合は特に、アウトバウンド、販売開発担当者、インバウンド、フィールド・セールス、マーケティング、カスタマー・サクセス、サポート、さらに複雑なプロダクト管理など、システムの開発はもちろんのこと、それ以上の非常に多くのファンクションが必要になるからだ。

大まかに言えば、初期の段階で計画した人数の2倍の人員を雇う必要が出てくるケースが多いだろう。

では、かみ砕いてみてみよう。

あなたは10億円のARRを目指していて、資金もきちんと確保されている状況にあるとしよう。恐らくあなたはその時点で、またはARR15億円を達成する時までには、100名の人員を抱えることになる。もしこれがセールスドリブンモデルのときは、どのような構成になるだろうか。

例えば年間の成長率が100%で、その翌年にはARR 20億円を達成する計画を立てたとする。

すると、翌年100%で成長するためには、まず10億円のARRを達成する必要があり、その場合に必要な人員は40名ほどになる。

  • 1名の営業本部長(VP of Sales)。そして恐らくは営業管理・育成のディレクター(VP or Director of Sales Ops)1名、そしてその下のアナリストを最低でも1名。
  • 20億円のARRを十分に達成するためには、20人の営業担当者が必要になる。なぜなら、ARRが10億円増加し、年末にはさらに増加するからだ。でも実際のところは、その年の半ばにかけて、これより多くの人員を必要とする可能性が高い。これは、新規受注の量やMRRの増加が大幅に見込めるようになるためだ。最終的には、少なくとも25人分の予算を立てると良いだろう。
  • アウトバウンドやスクリーニングにおいて、営業チームをサポートするSDRは恐らく8名程が理想。状況は激しく変化するが、モデル化の目的では、1対3の比率が良い。
  • 25人の営業担当者とSDRを管理するための営業部長を3〜4名(部長1人あたり、8人の営業担当者をつけるのが、チームが上手く機能する標準の比率。そして、SDRについては部長1人あたり8〜10名を管理できるという前提だ)。
  • 僕は、これをインバウンドとアウトバウンドに分けることさえしていないし、個別にフィールド・セールスを追加することについても触れていない。ARRが約10億円に到達達する頃には、恐らく(大規模な取引のための)フィールド・セールスを最低2〜3名は加えたくなるだろう。
  • そう。これは、あなたが考えていたよりも、はるかに多い数字だと思う。

カスタマー・サクセス部門においては、約20名ほどの人員が必要になるだろう。

  • カスタマー・サクセス・マネージャー1人あたり、1.5億円のARRを想定しよう。すると、翌年の計画を達成するためには、約15人の カスタマー・サクセス・マネージャーが必要になる。ただ、同時期に15名を揃えなくても良いので、まずは15名としよう。
  • 彼らを管理する本部長が1名、カスタマー・サクセス・マネージャーを半数ずつ分けて管理する部長が2名。 そして恐らくデータ分析などをサポートするアナリストも1名必要になる。

マーケティング部門では、外部の委託ベンダーの数に応じて変わるが、僕は、4〜8名の人員を雇う必要があると考えている。

  • マーケティングVP
  • デマンド・ジェネレーションのディレクター
  • フィールド・マーケティングのディレクター(イベント等)
  • コンテンツ・マーケティング
  • プロダクト・マーケティング
  • そして恐らく、マーケティングチームが独自で潜在顧客を管理するリード管理担当者(2〜3名)

サポート部門では、この時点で電話サポートを含めた、24時間年中無休のサポートが欲しい。それには最低5名の人員、理想的には6名必要だと考えよう。

OK。まだエンジニアは1人もいないのに、既に70になってしまった!

それでは、プロダクト部門とエンジニアリング部門に移ってみよう。

プロダクト部門では、少なくとも4名のフルタイムの人が必要になる。それでも多すぎるということはない。

  • 全体を管理するプロダクトVPが1名
  • プロダクト、インテグレーション、リリース等を管理する2〜3名のマネージャー

DevOpsあるいはTechOpsでは、24時間365日対応できる状況を確保するために、3〜4名の人員を必要とすることになる。実際は4名いる方がはるかに良い。さて、僕たちはここで、データベース管理者等を数に含めるべきか。答えは、6〜7名程いることが望ましい。

エンジニアリング部門では、20名は確保したいところだと僕は思う。2つの「ピザボックス・チーム(6〜7名程)」に加えて、狂気じみた次世代のことを試行錯誤し続けるエンジニア少数名と、リファクター、バックエンドなどのみに注力する少数名だ。この時点で、フロントエンドチームと協働する2名のデザイナーも必要になるだろう。

そして最後に、僕たちにはQAが必要だ。恐らく最低でもQAエンジニア8名、マネージャーが1名は必要だ。人員削減のために、RainforestQAや他の何かを使っても良いが、そうでなければ、1対2でカバーすることを想定するのがベスト。コードを書く20名のエンジニアに加えて、うまく回り始めたら、QAチームには最低でも8名、さらにチームのリーダーが必要になるだろう。

さて。ということは、10億円程度のARRを目指すならば、プロダクトとエンジニアリング部門であなたが必要とするのは約40名ということになる。

これらを全部合わせると110名になる。そしてさらに、アドミン関連や経理などの人員を必要なだけ雇用する。

分かっている。もうすでに100人を少し超えてしまっている。だから、ここからは実際の状況をみながら調整していくことになる。でも、成長計画を達成するにはこの追加の人員が結局必要になるだろう。

言い換えれば、10億円のARRを達成するにあたり、人員の大部分は、プロダクトを作るためではなく、セールスやマーケティング、サポートを支えるために必要とするわけだ。

(すべての翻訳記事掲載については、SaaStrから掲載許可を得ています)

(edited by kobajenne

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Slack、Zoom、Atlassian、Twilioなど急成長SaaS企業の共通点


Photo by: kris krüg

ここ数年の間で上場した米国SaaS企業の中に、異常に高いパフォーマンスを発揮するSaaS企業が存在する。これらの企業は、従来とは違う新しいカテゴリーのSaaS企業と言っても良いだろう。

このカテゴリーに入る会社は、例えばSlack (年度成長率82%、ARR 500億円以上)、Zoom (年度成長率118%、ARR 400億円以上)、Twilio (81%、ARR 1000億円以上)だ。巨大な規模のARRを達成しているのにも関わらず、ものすごい高成長率を実現している。

これら企業をみていくと、ARRの規模や成長率のほか、主に「ボトムアップでセールス」を行っているという共通点があるのだが、その他にもこのような共通しているポイントがあることに気付く。

セルフサーブ:大規模で高成長を維持できているSaaS企業には、セルフサーブ型のプロダクトがある。クライアントの会社がプロダクトを導入する時、まずは少数または、一部の部署で使い始め、価値を感じられるようになってから、徐々に組織全体に広げていくことができる。

1000万円以上の単価を狙える:セルフサーブ型のプロダクトを提供するSaaS企業は、自社のプロダクトの平均単価が低い。でも、このカテゴリーに入る企業は、年間1000万円以上を支払うクライアントを多く持っている。

例えば、Zoomの場合、年間1000万円以上を支払っているクライアントが300社以上、全体の売上の3割を占めている。Slackの場合も、そのようなクライアントが500社以上いて、全体売上の4割を占めている。

高い売上継続率:Slackの売上継続率は143%、Atlassianは148%、Twilioは155%、Zoomは140%と、業界中央値の120%を高く超えている。

これは、導入初期段階ではボトムアップで少人数から課金をし、時間が経過するにつれて組織内でどんどんとプロダクトを使うユーザーが広がり、課金額が増えている証拠である。

これらのポイントは、日本のSaaS企業にとっても重要な点と言える。これらの条件を満たすことができれば、SaaS企業の中でも異常にパフォーマンスが高い〈特別なカテゴリー〉に入ることができるはずだ。

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SaaStr シリーズ:ARR 1億円から10億円へ 〜 ストレス無く成長する方法


Photo by: Carl A

今日から、このブログのコンテンツの一つとして、アメリカ最大のSaaSコミュニティー『SaaStr』に投稿されてる記事の中で、僕が皆に届けたいと思う記事を翻訳して、皆に届けていきたいと思う。(すべての翻訳記事掲載については、SaaStrから掲載許可を得ています)

今回の記事は、2011年にAdobeが買収した電子サインサービス「EchoSign」を創業、その後SaaStrを創業したJason Lemkinの記事。(元記事はこちら

自分の過去の経験と学びを基に、ARRを1億円から10億円へ、もっと早く-そしてもっとストレス無く達成するための方法10項目をリストアップした内容。

1. 問題解決にかける時間をより少なくして、諸問題を取り扱うシニア人材の採用活動により多くの時間を割く

これは自分が何度もやりがちであったミスで、一緒に働いてきた多くのCEOたちにも見られることだ。ARRが1億円程度に達成したら、もう採用活動に充分な時間をかける人は誰もいない。

もっと酷いのは、すべてを自分でやろうとして、自分で解決することで言い訳をする時だ。

そう、あなたは自分でセールスチームを管理することも、ドリップマーケティングキャンペーンを行うことも出来るだろう。プロダクトが複雑になってきて、どう全体を組み合わせていくのかを忘れ始めたとしても、あなたがまだProduct headの役割を担うことはできると思うだろう。

だが本来は、このような問題を取り扱うことができるVPを採用することに時間を費やす方が良い。 こういうことこそが、ARR 1億円 を達成した会社のトップがフルタイムで行うべき仕事の全てなんだ。自分で何でも問題解決しようとすることが一番時間の無駄で、例えぴったりの人材がいても、その人を雇用しないための言い訳になってしまう。

2. 主要な取引パートナーを数社持った時点で、フルタイムのBiz Dev(事業開発)のヘッドを採用する

僕はこの助言を受けて、その通りだと思ったのにも関わらず実行しなかった。  資金も十分になく、優秀なBiz Dev(事業開発)VPをしっていたわけでもなかったからだ。だから、自分自身、そしてセールス、プロダクト、カスタマーサクセスのVP達とで、主要なパートナーを共同で管理していた。このチームアプローチ自体が大失敗だったわけではない。すべてのパートナーが、VP、またはCレベルのサポートを受けることができていた。

でもそれは同時に「パートナーを戦略的に取り扱える者が誰もいない」ということでもあった。 パートナーの反応は総じて良好だったが、特に競争の激しいマーケットにおいて、それでは不十分で、常に変化し続けるパートナーのステークホルダーの状況をすべて把握できる人が必要だ。  迅速に行動して、パートナーに実際に会いに行く。共有している顧客が、共にハッピーであるよう徹底すべき。リードを運ぶパートナーと戦いながら、マインドシェアを創り出す。 そんな重要なパートナーを2社持ったなら、これはもうフルタイムの仕事になる。 初めは週50時間の仕事に感じられるかもしれない(そうでないかもしれないが)。  でもそれは、この仕事がフルタイムの仕事に値しないということには繋がらないのだ。

3. 迅速に行動する。クライアント、有望見込客、取引パートナーとは会って話す。もっとさらに精力的に。

これは、僕がごまかしてきたこと。  迅速に行動したつもりだったけれど、その頻度が不十分だった。  僕は、多くの業務を自分自身で抱えこんでいることを理由に(Point 1を参照)、クライアントを訪問して、彼らと会って話をするということから遠ざかっていた。でも、この点において、僕は自分自身をもっと追い込んで、行動させるべきだった。

あとで分かったのは、自分が実際に訪問した多くのクライアントは、11〜12年以上経ってもクライアントでい続けてくれている。あくまでも自分が携わっていた中での話だけど、訪問して会って話をしてきた顧客を失ったことがない。でも、トップクライアントをCEOが直接訪問しなければ、強い関係づくりをすることはできない。最低でも四半期に2回は、足を運ぶことだ。

これは、(ハードコストの面で)このフェーズで会社の規模を拡大するためにできる最も安価な施策のひとつ。もしあなたに十分な資金がない場合でも、トップクライアント、有望見込み客、取引パートナーを訪問して話をするくらいの余裕はあるはず。

4. ARR 2円ごとに1円をバランスシート上で確保すること。  それ未満であれば過少投資していると考える。

僕たちは、ARR 約4億円でキャッシュフローをプラスにすることが出来た。  これを実現できたのは、僕たちがローコスト・リードを生み出すセカンドオーダー・レベニューに注力したことにあって、その結果、毎月110%以上のMRRを現金で取り入れることができたからだ。 皆にも実行してみてほしい。最初の段階で資金繰りが上手くいかなかくても、このポイントのあたりでキャッシュフローをプラスにし始められるはずだ。

これは素晴らしいことであり、ベンチャーキャピタル及び他の利益から生み出された自由だった。だがこれには隠れた税金があり、僕はそのことを表面的にしか理解していなかった。僕たちは、ARR 4億円、バランスシート上で約1.5億円で、キャッシュフローをプラスにした。そして負債を少し(1.25億円ほど)追加することで、バランスシート上の数字を2億円までにしたが、会社が成長するにつれて、これでは不十分となった。  ARR 8億円で、銀行にキャッシュが2億円ある場合、5000万円~7500万円超、最高1億円の投資を行うというのはかなり神経質になる。1億円の投資が心配な状態で、セールス担当を20人追加採用したり(ARR 10億円を射程に入れると必要になる)、ヨーロッパにオフィスを新設したり、大きなキャンペーンとイベントを実施するためにコストをかけるのは難しい。これは微妙だが、SaaSでは、ARR 50%未満が銀行にある場合、投資が不足していると言える。

あなたがイニシャル・スケールに近づいたら、少なくともある程度の戦略的債務を引き受けることを検討する価値がある。ガソリンタンクがほぼ空であることを知らせるライトを点灯させたくないと思うこともあるだろう。それこそが一歩を踏み出したくなる時なんだ。

5. CTO主導からVPE主導の開発チームにする。 これ無くして本来のエンタープライズにはなれない。

これは我々の多くが理解しているトランジションだが、順序が若干間違っている。  多くの場合、エンジニアリングのVP(VPE)を採用して、CTOからの引き継ぎを行う。というのは、CTOが燃え尽きてしまったり、8〜9名を超える開発チームの立ち上げにトラブルを抱えたり、技術的な負債やバグなどの問題を解消することに無関心になるところを見ているから。こうした事態の組合わせは、経験値の高いVPEを採用するタイミングであることを示す合図としては十分だ。

だが、SaaSにおいてもまた、もっと微妙なフェーズトランジションがある。大企業のニーズを本当の意味でサポートしていくためには、ベテランのVPEが必要になるだろう。大手やパワーを持つ会社または人間と話せる人間。それは、セキュリティ、データ、プロテクション、コードレビュー、暗号化、キーストア、リリース管理などについて、企業がどのように考えるかを真に理解していて、実際にその経験がある人間だ。大企業のクライアントからの信頼を得るには、そういったVPEが必要だ。彼らは、大企業のニーズに素早く応えることができる体制へと会社を変化させていくだろう。

6. 早い段階でアウトバウンドチームを追加する。それは、いつも必ずうまく行く。

これは今でこそ広く理解されていることだが、僕にとってはかなり斬新な話だった。僕は、高速で対応するアウトバウンドチームを管理したことも、立ち上げたこともなかった。そして、ARR 1億円から10億円の間、僕たちの会社には、たくさんの(多岐にわたりながらも非常に多くの)インバウンドリードがあったので、かなり後になるまで、伝統的なアウトバウンドチームを立ち上げることはしなかった。でも、今言えるのは、もっと早くに立ち上げるべきだったということ。重要なのは、それはいつでも必ず功を奏するということだ。

今日のSaaSの世界の教訓は、もし大量のリードを持っていたとしても、アウトバウンドチームは早めに立ち上げるべき。このチームは、あなたの会社のスイートスポットの中でも最も大きなアカウントを狙うことが出来る。そのこと自体に価値がある。会社の歴史の中の早い段階で、そうしたロゴやブランド、名前を得られることは必ず何かに繋がる。このような「付加的」なアウトバウンドチームは、インバウンドエンジンの中核が稼働している限り、コストさえカバーできれば良いと思う。最初の1年で1円の売上を立てるために1円を使ったとしても、構わないと言っても過言ではないだろう。

7. カスタマーカンファレンスを早めに開催する。

SaaStrアニュアルの規模を考えると、これは皮肉に満ちているように思えるかもしれないが、僕は、カスタマーカンファレンスの趣旨を理解するのが遅かった。僕が目の当たりにしたのは、Dreamforceのパワーだった。でも、セールスフォースはとても複雑なプロダクトだ。

僕たちのプロダクトがどれだけ簡単に使えるのかを説明する内容で、まる1日分のコンテンツを埋めるなんて、そんな方法は僕には分からなかったし、ましてや十分なクライアントを集めることができるかどうかも分からなかった(1000人でも分からない)。

その結果、ARR 12億円 に達成してやっと初めてのカスタマーカンファレンスを行うことになった。そしてこれは間違っていた。絶対にクライアントが集まることができる場所を作るべきだ。例えそれが10〜20社しか集まらない場合でも実施すべきだ。

8. セールスチームを早期に特化型にする。クローザーにはクロージングを、オープナーにはオープニングを担当させ、フィールド/ミッドマーケット/ SMB区分を早期に行う。

これは、今では多くの人が理解しているものだが、僕はこれを学ぶのに少し時間がかかった。初期段階ならば、「フルスタック」のセールス・プロフェッショナルがいることに問題はない。でもそれは、その段階までだ。一般的に、セールス・プロフェッショナルは一つのことが得意であり、アウトバウンドが得意な人もいれば、アカウント管理が得意な人もいる。インバウンド、大規模ディール、小規模ディール、中規模ディール、複雑なディール、2コールクローズディール、ハイベロシティ対ローベロシティ・・・このうちのいくつかの分野に優れている人はいないし、ましてや全分野において優れている人もいない。もし、得意でない分野のセールスをやらせた場合、そのセールス担当の多くは失敗するだろう。

セールス担当が、イエローページを開いて1日のスケジュールの50%を使ったとする。そして25%はランダムなリードが舞い込んでくることを期待する。そして残りの25%は付随した仕事にあてる。そんな日々はもう終わりだ。セールス担当が3人の時点でも、すべての担当者は自分が得意なことをやらせるべきで、特化型になるべきだ。例えば、SME・中規模サイズのマーケットのクローザーは、1日のアポイントメント数を1〜2件ではなく、4件にすべき。それには、通常は誰か他の人がアポの設定をする必要がある。でも、もし2件ではなく4件のアポをこなすことができれば、それはクローザーの生産性を2倍にすることができるということだ。そしてその結果、セールス担当からさらに高い生産性を期待する事ができるようになり、クロージング率、リード毎の収益もより高くなるだろう。これをやらない手はない。

9. カスタマーマーケティングをさらに強化する。 クライアントとの契約が締結されても、マーケティングは終わらない。

クライアントを1件獲得するのにいくらかかっているのかは把握しているだろう。では、売り上げた後、そのクライアントが継続してプロダクトやサービスを使い続けてくれるよう、そしてアップセルを狙うマーケティングのために、カスタマーライフタイムの何%を費やしている?いくら費やしているのか、または費やすべきなのか、その答えを知っているのは、恐らくこれを読んでいるほんの一握りのSaaS経営者だろう。

この答えは絶対に知っておくべきであり、計画も持つべきだ。そして、それに対する人材も採用すべきだ。リカーリングレベニューモデルの場合、プレ・セールカスタマーマーケティングと同じくらいポスト・セールカスタマーマーケティングが重要になる。リニューアルや競合からの獲得、アップセルをゴールとする別のチームが必要になる。そして、それらの収益源の一部をマーケティングに対して使うべきだ。最低でも5%、長期的に考えるなら10%でも良いと思う。

カスタマーサクセスのプロは、優秀で重要だが、彼らはマーケターではない。カスタマーサクセスチームにカスタマーマーケティングをさせても良いのは初期段階までだ。ARR 5億円を達成したら、そこは分けておかないと、上手く回らなくなってくるはずだ。

10. ARR 10億円達成に近づいたら、ブランドへの投資を積極的に行うべき。最初は馬鹿げた話に思えるかもしれない。でも、これが70%以上のアーリーアダプターでない企業がベンダーを選ぶ判断基準になる

最後のポイントは、僕がやった微妙な間違い。ARR10億円を達成させた僕は、セカンドオーダーレベニュー、リファーラルそして、幸せな顧客が持つパワーを良く理解している。しかし、僕はそれが全て真の「ブランド」であるとは思ってなかった。初期段階において、ブランドにあまりこだわる必要はない。なぜなら、そもそもブランドなど持っていないからだ。だからニッチな分野においてミニブランドを得るようになって、それがリードの生成につながる。

そして、ARRが10億円に近づいた時、このミニブランドがブランドに変わる。僕が考えるこの差は、あなたの会社が、アーリーアダプターではない企業にとっての最初の選択肢になっているということだ。アーリーアダプターはベンダーリスクを取りながらも革新さを求めて、挑戦することを好む。しかし、事業領域が成熟して、このアーリーアダプターのフェーズを離れたら、その先にいる多くのクライアントは、どのベンダーを採用すべきなのかを教えてもらいたがる。だからこそ、トップブランドになるということは非常にパワフルなことなのだ。もしかすると、前職で採用した実績があって、次もまた採用してくれるかもしれない。Techcrunchの記事やブログポストで見かけることがきっかけになるかもしれない。とにかくARR 10億円に達した時、その分野であなたの会社は多くの人に知られている存在になっているだろう。

だから、ARR8〜10億円以上になったら自分のブランドに投資する。一番有名な展示会に行ったら、リードを獲得するのではなく、既存クライアントに会うべきだ。どこにでも行って、ありとあらゆる場所に参加する。コンテンツマーケティングを実行するのは、自分のプロダクトやサービスを売るためじゃない。既存のクライアントを助けるために実行するんだ。ステージにあがれ。コーポレートマーケティングのVP、そしてCMOを採用する。

そしてブランドを守り抜く。一度でも無くしてしまえば、それを取り戻すのは至難の業だ。でも、もし投資し続ければ、それはその先何十年も続くブランドとなるだろう。

(edited by kobajenne

SaaSスタートアップの企業価値にインパクトを与える「ポジショニング」


Photo by: Scott Friesner

ARR(年間定額収益)が同じ規模なのに、VCが付ける企業価値が全く異なるケースがよくある。ARRの10倍にも満たない額で評価される会社もあれば、100倍以上の額で評価されることもある。この差を生み出すのは一体何なのか?

これには、様々な「ポジショニング」が影響している。

データ・ポジション:SaaS企業が提供しているプロダクトを通して、どんなデータが蓄積されているのか?この情報の価値はどれほどのものなのか?そのデータを元に新たな価値提供やマネタイズが可能になる企業の方が評価される。

例えばそのSaaSプロダクトがないと収集することが難しい情報(会社の健康状態、顧客の関するインサイト、財務分析等)や、行えない決断(人材の適材適所、予算の配分、与信等)があるほど、「価値のある良いデータを蓄積できている」と言えるだろう。

時間が経過すればするほど、または導入企業数が増えれば増えるほど、サービスの精度が上がるのか?クライアントに還元できる価値が上がるのか?機械学習を活用できたり、他社からの参入障壁を高めるようなデータを築くことができれば、さらに評価される。

カスタマー・ポジション:顧客のどんな課題を解決しているのか?大きな予算をかけてでも導入する価値があるような〈大きな課題〉を解決できるのか?それとも、優先度が低く、景気が悪くなれば直ぐに打ち切られる可能性があるのか?

当然のことだが、顧客が日々課題として感じているものを解決できるプロダクトであるほど依存性が高い。僕がいつもSaaS企業を評価するときは、ターゲット顧客の「トップ3の課題」を解決できるのかを気にしている。

マーケット・ポジション:狙っている市場はどれぐらい競争が激しいのか?すでに既存プレイヤーが多く、差別化要素が弱いとなかなか良い評価はつけずらい。また、似たようなサービスが同時多発的に生まれていたらプレミアもつきずらい。

チームの構成、プロダクトの性質、競争環境を考慮して、ニッチで独占的なポジションを取れると感じられたら、それは大きなプラス要素になる。

SaaS業界全体の企業状態を表す指標は様々だが、特にベンチャーSaaS企業の場合は特有の評価基準があり、インパクトを与える要素も独特だ。
この「ポジショニング」によって企業の強弱が決まるので、今後の事業展開や戦略を考えたときはこのような要素を含めて考えると良いだろう。

(edited by kobajenne

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SaaSは全ての業界を食うのか?業界特化型SaaSを起業するときに考えるべきこと


Photo by: Kevin Gill

SaaSは全ての業界を食うのか?業界特化型SaaSを起業するときに考えるべきこと

ここ数年、業界特化型のSaaS企業(Vertical SaaS)に注目が集まっている。
例えばアメリカでは、製薬業界に特化したVeeva(時価総額 約1.2兆円)、教育業界に特化した2U (時価総額 約5600億円)、建築業界特化したのProcure Technologies(時価総額 約1000億円)、ウェルネス業界に特化したMindbody(時価総額 約2000億円)などがあり、2016年アメリカのVertical SaaS企業の時価総額は、合計16兆円にまで拡大している(参照)。

日本でも建築*リーガル保険*食品工場*歯科医院*薬局ホテル国際物流等などの業界で、Vertical SaaS企業が次々と生まれている(* BEENEXT支援先)。

また、SMSが運営する介護業界に特化したSaaS「カイポケ」も年間売上33億円のビジネスに成長している。

では、Vertical SaaSのビジネス機会は、全ての業界に対して存在するのか?
Vertical SaaS企業を立ち上げるときに考えるべきポイントについてまとめてみた。

対象顧客が支払うSaaS利用料の限界はいくらなのか?
Vertical SaaS企業を立ち上げようとした時に考えるべき重要なポイントは、対象となる業界の状況とその業界内の顧客が支払うSaaS利用料の目安だ。例えば、その業界全体が潤っているならば、年間1000万円を支払う顧客が多く存在するかもしれない。しかし、利益率が低い業界ならば年間10万円程度しか支払わない顧客の方が多いかもしれない。

全体的に儲かっている業界なのであれば、市場規模についてはあまり心配する必要はない。
なぜなら、利用料を年間1000万円支払える顧客が多く存在する場合、ARR50億円を達成するために必要な有料顧客は500社程度だからだ。
その一方で、SaaSに対して少額の資金しか投入できない顧客が集まる業界の場合、自分の会社が現実的に到達できる規模がどの程度になるのかを考える必要がある。一顧客あたりが支払う利用料が年間10万円ならば、ARR50億円を達成するには5万社の顧客が必要になる。対象顧客は何社存在するのか?マーケットシェア20%程度でも十分な規模に到達できるのか?などを問うべきだ。

営業サイクルはどれぐらい長いのか?
平均単価が年間1000万円以上であれば問題になることは少ないが、年間500万円以下の顧客をクロージングするのに半年以上かかるのであれば、もう一度エクセルと向き合う必要があるかもしれない。

極端な例として、年間30万円の顧客をクロージングするのに12ヶ月かかり、営業マンあたりのクロージング数が年間10社しかないとすると、その営業マンの給料でさえも一年で回収できないということになる。営業マンの費用以外にもカスタマーサクセス費用、オペレーション費用、営業サポート費用、マーケティング費用などもあることも忘れずに。

そんな中、「一人の営業マンは自分の年収の4倍のARRを獲得する」というのが一つの良い指標になるだろう。つまり、年収500万円の営業マンは、年間2000万円のARRを獲得する必要がある。ちなみに北米では、6〜8倍程度のARRが望ましいと言われている。

〈参考〉以下は、Hubspotがまとめた、の年間契約金額に応じた平均営業サイクルの表:

セールスフォースでは解決できない独特な課題が存在するか?
特定の業界に特化したSaaSを作ろうとしたとき、セールスフォースなど既存のHorizontal SaaSで解決できる課題はどのくらいあるのか?もし、既存の大手SaaSで課題のほとんどを解決できるのであれば、差別化要素が足りていないのかもしれない。

でも、その業界独特なプロセスや課題があり、既存のSaaSよりも10倍良い体験を生み出せるのであれば、大手SaaS企業に勝てる可能性は十分ある。

日本ではまだまだ存在するVertical SaaSの機会
下図は、北米大手VC Bessemer Venture Partnersが作ったVertical SaaSのマップ。
日本では特に物流、医療、教育などでチャンスがまだ残っていると僕は思う。

SaaSは、まだまだ色んな業界を”食える”と思っている。ただし前述のとおり、狙う業界によっては展開の難度や、市場サイズが異なり、ビジネスモデルを成り立たせる難易度が想像以上に高い場合があるので、Vertical SaaSに挑戦する起業家は上記のポイントを頭に入れて自分たちの事業の可能性を考えてみてほしい。

(edited by kobajenne

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70億円調達したB2B SaaSスタートアップのピッチ資料を解説


Photo by: Phil

カスタマーサポートや求人、その他お問い合わせのメールを一度に複数人で対応できる「コラボレーション・インボックス」を展開するFront社が、今年1月、シリーズBでSequoia Capital等から約70億円を調達した。この資金調達時に使用された資料を同社のCEOが一般公開していたので、僕の視点からこの資料の”イケてる”ポイントを解説したい。

様々な業界や業種が使っている

スライド左下の表から、テック業界以外にも旅行や教育、不動産など様々な業界の顧客を獲得できていることが分かる。また、右下の表では、カスタマーサポートからHR、マーケティングやプロダクトチームなど、一部の部署に限らず会社内で幅広く使われているのが分かる。

スタートアップを評価する時、多くのVCが注目するポイントの1つに「TAM (この会社が狙える最大の市場規模)」があるだろう。僕の場合も『この企業がターゲットにしている市場は、ARR 50億円以上の企業を作り出す可能性を持っているのか』という点はいつも確認するようにしている。

一つの業種にしか対応していないB2B SaaSを展開している場合、それでも十分大きなACVが取れるのか、または様々な業界に対応できるようサービスに変更を加える必要があるのかを検討する。その結果一つの業界に絞った場合も、その業界の中でさらに様々な業種を狙えるのか、大きなACVを取れるのかが重要な基準になる。

Front社は、業界そして業種をまたいで顧客を獲得できていることが、特に優れているポイントの一つだろう。

ARRが順調に伸びてる

具体的な数字は非公開になっているが、このグラフからもARRが順調に伸びていることが見て取れる。SaaS企業は常にT2D3の成長率を求められているわけだが、同社は、恐らくその成長率を満たしているのだろう。前ラウンド(シリーズA)の調達資料には、2017年度の計画が10億円以上のARRになっていたので、この数字を達成したものと考えられる。

ネガティブチャーン!

ネガティブチャーンとは、Net Churnがマイナスになっていること。つまり退会による売上の減少よりもアップセルやアップグレード、エキスパンションによる売上の増加ペースの方が速いということを示している(方程式はこちら)。

上のスライドでは、同社がネガティブチャーンを達成できていること、そして、Gross Churnも改善傾向にあることを示している。

営業チームもスケールできている

もう一つ、VCがB2B SaaSのシリーズBラウンドで出資を検討する際に着目するポイントとして、「営業チームをスケールさせられているか」がある。ただ単に営業メンバーを増やすだけではなく、営業メンバーのオンボーディングや、トレーニングがきちんとできているのかが重要だ。スライド左側は、営業メンバーの数(グレー)と個人目標を達成できてるメンバーの数(ブルー)をグラフにしたもの。一般的に、営業メンバーの半分以上が目標を達成できている状態が健全だと言われており、Front社はその比率を超えていることが分かる。

スライド右側は、営業チームのキャパシティ(グレー)と実績(ブルー)を表している。実績がキャパシティを常に上回っており、モチベーションの高いチームを維持できていることが分かる。

ASPの上昇と大型案件の増加

ASP(平均販売単価)が上がり、大型案件(定義は不明)が増加していることを表しているスライド。ここで注目したいのは、同社のサービスが中小企業だけでなく、大規模な顧客にも販売できているということ。営業チームのレベルが上がっている証拠だ。

マーケティング指標が健全

スライドの上半分はマーケティング費用とリード数を四半期毎に比較したものだが、このスライドでは、左下の表に注目してほしい。
まず、LTV/CACの数値。北米のSaaS業界では、LTV/CACが3以上であることが望ましいと言われている中、同社の直近四半期では、4.4を達成している。

次に、売上に対して使われているマーケティング費用の比率。アメリカ上場SaaS企業の売上に対するマーケティング費用の比率は、20%〜50%程であるケースが多い。例えば、Salesforceは50%以上、Marketoは60%以上を占めているなか、Front社は20%を下回っている。

Net Retention 150%

以前Net Revenue Retentionの重要性について書いたことがあるが、Front社は、1年後のNet Revenue Retentionが150%、さらに時間軸と共にユーザーの利用率(スライド右下)も増加傾向にある。これは、アップセルやエキスパンションが確実にできていることを表している。

Front社は、様々な観点で非常に魅力的なスタートアップだ。同社の シリーズAシリーズB 両ピッチ資料も、参考になるポイントが多く含まれているので、是非一度見てみて欲しい。

(edited by kobajenne

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この数値がSaaS経営の難易度を決める「Net Revenue Retention」


Photo by: zapmole756

SaaS企業は、T2D3の成長率を求められるが、実はこの成長を達成する難易度は企業ごとに異なる。この難易度を示す重要な指標の1つが「Net Revenue Retention」だ。

Net Revenue Retentionとは
売上継続率のこと。今月獲得した売上が来年の今頃にはどの位になるのか、を示す指標。
方程式は以下:

A = [1年前に当月獲得した有料顧客のMRR]

B = [その同じ顧客の今月のMRR]

Net Revenue Revenue Retention = B / A

参照:Essential SaaS Metrics: Revenue Retention Fundamentals

例えば、昨年3月に獲得した新規有料顧客のMRRが100万円で、その同じ顧客からの今年3月のMRRが90万円の場合、Net Revenue Retentionは90%になる。

アメリカの上場SaaS企業は、Net Revenue Retentionが100%を超えているケースが多数。
下のグラフは、Net Revenue Retentionを公表しているアメリカの上場SaaS企業の一覧。Twilioが170%、Boxが130%、Zendeskは123%で、これら企業のNet Revenue Retentionの中央値は、117%となる。

(クリックすると拡大します)

Source: Net Dollar Retention Benchmarks

100%を超えているということは、退会による売上の減少よりもアップセルやアップグレード、エクスパンションによる売上の増加ペースの方が速いということを示している。

例えば Veeva Systems の場合。Net Revenue Retentionが187%なので、今月新規顧客から獲得した月次売上が1億円だとすると、来年の今頃その同じ顧客から得られる月次売上は1.87億円になるということだ。

Net Revenue Retentionは、低ければ低いほど経営のハードルが上がり、高ければ高いほど経営が楽になる。
今月の新規有料顧客からのMRRが1000万円だったとしよう。

Net Revenue Retentionが150%の場合、新規の顧客を全く獲得しなくても来年の同じ頃に獲得できる売上は1500万円になる。しかし、Net Revenue Retentionが50%の場合は来年の同じ頃の売上は500万円になってしまう。

つまり、Revenue Retentionが低ければ低いほど、売上の成長計画を達成するために、新規の売上を多く獲得する必要が出てきてしまう。

プロダクトマーケットフィットとカスタマーサクセスが鍵
売上継続率を上げるためには、プロダクトマーケットフィットを達成すること、アップセルやアップグレードが可能な料金体系にすること、そしてカスタマーサクセスを実践することが重要だ。

これらのポイントについては、以下の記事も参考にして読んでみてほしい。

(edited by kobajenne

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