SaaS誕生から22年 — 3世代に分けて考える成長戦略の変化

SaaSが誕生してから22年が経過した今、世界には1万社以上のSaaS企業が存在していると言われている。

そのような環境の中で、SaaS企業の特徴や成長戦略にも多くの変化が起きているわけだが、この変化を「3つの世代」に分けてみると、その変化の内容をより明確にみていくことができる。

今回は、それぞれの世代の特徴、成功するためのプレイブック、そしてベンチマークとなる指標について、動画で解説してみたいと思う。

(YouTubeと投稿を編集してくれたkobajenneに感謝)

===> ALL STAR SAAS CONFERENCE 2021開催します <===
日本、シリコンバレーなどで活躍するSaaSスペシャリスト達と共に
実践的かつインタラクティブなセッションを繰り広げるSaaS特化型カンファレンス

SaaS企業は、少数精鋭では経営できないその理由

2020年、北米で上場したSaaS企業の従業員人数の中央値は、1192人

利用シーンがシンプルで、顧客獲得やカスタマーサクセスがセルフサーブ型で割と完結しやすいプロダクトを展開しているSlack、Zoom、HubSpotでも、2500人以上の従業員がいる。

僕は以前から「SaaS企業を少数精鋭で成り立たたせることは難しい」と言い続けている。今日は、この理由を改めて述べてみたいと思う。

ニーズの変化

テクノロジーの進化と、その進化によるお客様のニーズの変化は、非常に早い。

たとえば、スマートフォンのように新しいデバイスが普及すれば、そのデバイスへの対応ニーズが顕在化する。AIなどの新技術が誕生すれば、その技術の活用ニーズも顕在化する。To Cの使いやすいサービスが現れれば、to Bのサービスでも同じ基準のUXを求められる。

この変化に適応していくためには多くのエンジニアの力が必要になる。実際にSlackでは売り上げの約37%(一年で約450億円)を開発に投資しているという。

ニーズの変化にスピーディーに適応することが必須であり、SaaS企業にとって、開発は永遠に終わることのない取り組みの一つになる。

エンタープライズ

年間1000万円以上の費用を払っているエンタープライズ顧客数は、Zoomが約1650社、Slackが1300社ほど。両者とも初期の段階ではセールス部隊がいない状態でスタートしているが、今現在は多くのセールス部隊を抱えてエンタープライズ顧客を増やしている。

多くのSaaS企業はこのように、ある時期を越えたところでエンタープライズ顧客の獲得フェーズに入る。このフェーズを成功に導くことこそが、SaaS企業の成長を維持するための重要な鍵となるわけだが、購入プロセスが複雑化しやすいエンタープライズ顧客を攻略するには、強力なセールス部隊が不可欠だ。

競争環境

新しくユニークなSaaSプロダクトを作るハードルが下がってきている時代のなかで、オペレーションや技術への投資で優位性を築いていくのは基本的な戦略だ。しかし少数の人数でSaaS企業を経営しようとすると、この優位性を作るための投資がしにくくなり、競合他社によって追い越されやすい状態を生み出してしまう。

プロダクトを磨くスピードを上げ、市場へのリーチを拡大させて、競争環境が激しいSaaS業界で戦える体制を整えることが、PMFを達成した後企業の成長を加速させるポイントとなる。

SaaS事業をこれから立ち上げる起業家には、先行投資を続けて組織を大きくしていく覚悟を持っていてほしい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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SmartHRから得た5つの学び

2021年6月8日、支援先のSmartHRが156億円の調達を発表し、彼らはユニコーン企業の一員となった。

思い返せば代表の宮田さんと最初会ったのは2015年。起業して2年ほど経った頃、SmartHRの前身 KUFUで彼らは全く別のビジネスアイディアを形にすべく奮闘していた。そしてその年の春、彼らがビジネスアイデアを「SmartHR」にピボットをしたタイミングで出資させてもらうこととなった。そこから快進的な成長を続けて、直近の発表ではARR 45億円、年度成長率100%+以上というグローバルな視点で見てもトップクラスの成長曲線を描いている。

SmartHRへ最初に出資してから6年が経つが、僕自身たくさんの刺激を受け、学びを得てきた。SmartHRに投資をしていなかったら、今の僕のSaaSに対する愛とコミットメントはなかっただろうと言っても過言ではない。

今回は、SaaS業界のレジェンドになりつつあるSmartHRから学んだ5つのことについて書いていきたいと思う。

組織がプロダクトと戦略の一部

SmartHRから学んだことの中で一番みんなにも伝えたいと思うポイントは、『プロダクトと会社の戦略の一部として組織が存在している』ということ。

お客様目線で考えることを徹底するカルチャーが、強いプロダクトとカスタマーサクセスを実現し、”異常”に低い解約率につながっている。SmartHRのユーザーがサービスの使いやすさについてツイートしているのを見たことがある人も多いのではないだろうか。この圧倒的なユーザー体験はSmartHRにとって強力な差別化要素となっているわけだが、そのうしろにはSmartHR、そしてチームを支え続けるカルチャーが存在している。

SmartHRが戦略を上手に実行できている重要な要素のもう1つは、スピードだ。「早いほうがカッコイイ」というバリューを掲げ、とにかく組織全体のスピード感が速い。

2020年はじめに日本で新型コロナウィルスの感染者が増加してしまったとき。SmartHRがすぐさまリモートワークを意識した広告コピーに切り替え、国内初のZoom撮影したテレビCMを3週間で制作、放映した。コロナ禍で必要な新機能を開発し、需要が高まっている業種を探し出し、応援キャンペーンを実行するというスピーディな動きは、僕にとっても衝撃的だった。

自分の会社の強みは何か?どう差別化していくのか?どんな戦略を実行するのか?

この3つの問いに対しての答えを明確にして、実行に移すための適正な組織とカルチャーを築きあげられたことが、SmartHRがユニコーン企業へと成長できた大きな要因だと僕は思う。

レイヤーを重ね続ける

SmartHRは、新しい顧客セグメントの発掘や顧客獲得戦略への取り組み、オペレーションの改善を重ね続けた。

ローンチ当初は中小規模のIT企業が主な顧客層だったのが、その後対象顧客セグメントを1000人、1万人規模の企業へと展開し、さらに飲食業や製造業などの業界セグメントも広げていった。獲得戦略においても、インバウンドのセルフサーブ型を中心にスタートしたが、インサイドセールスチームを構築したり、マスマーケティングやアウトバウンドなど施策を増やしている。

PMFを達成するまでは、1つのセグメントの顧客獲得に集中して戦略を実行すべきだ。SmartHRは、PMFを達成後、継続的にそのレイヤーを重ねていったことで、非常に高い成長率を実現できている。(参考記事:レイヤーで考えるSaaSの経営と戦略

権限移譲と自立駆動の重要性

もし、僕が宮田さんにスーパーヒーローの名前を付けるとしたら「Super Delegation Man (スーパー権限移譲マン)」にすると思う。僕は、このパワーは宮田さんの特別な力だと思う。とにかく自分より優秀な人を採用して巻き込んでいく力がある。そして権限移譲を進めていくスピードと、その成功確率が異常に高いのだ。打ち手の数を増やすスピード、そして組織や事業課題を解決速度を”超高速”にできている究極の秘訣なのではないだろうか。

限界に挑戦する

SmartHRが、固定概念に囚われることなく挑戦し続けられている理由を語るには、経営陣メンバーは必要不可欠な存在だ。今の成長に大きく寄与している。

常により良く、より高い場所を目指す姿勢。特に数字まわりに対する目標はとても野心的である。現状の引き延ばしで来年の目標数値を決めるのではなく「グローバルでもトップクラスの急成長曲線を達成するにはどうしたら良いのか」を念頭に置いて、打ち手や戦略、採用計画を練り上げている。

彼らのこの姿勢は、事業の成長ポテンシャルや限界というものは、あらかじめ決められてることなどではなく、自分で決めるものなのだと言うことを僕に気づかせてくれた。(参考記事:ストレッチ目標を実現する鍵は「達成可能性70%」にある

正しくやれば正しく成長する。これがSaaSだ。

最後にみんなに共有したいポイント。それは「SaaSは、正しくやれば正しく成長する」ということ。

お客様に寄り添ったプロダクトを作り、カスタマーサクセスを組織全体に浸透させる。優秀な人を巻き込んで、戦略に紐づいた強い組織を作る。レイヤーを積み上げて打ち手を増やす。そして野心的になる。

これは決して簡単なことではない。でも、不可能ではない。

SmartHRのような素晴らしいスタートアップが誕生したことで、正しく成長できるSaaSのプレイブックがこの業界に出来上がりつつある。(参考サイト: ALL STAR SAAS PLAYBOOK

これが僕がとくにみんなに伝えたい〈SmartHRから学んだ5つのポイント〉だ。

他にも書ききれないほどの学びが沢山あったし、今も現在進行形で毎日学びや刺激をくれている。本当に感謝しかない。『SmartHR』という物語は、まだまだ始まったばかり。企業も人もまだまだ伸び盛りと言って良いだろう。「いつの日か、デカコーン企業(時価総額1兆円以上)になる。」そんな夢を描きながら、これからも一緒に成長できるのがとても楽しみだ。

まだまだ旅路は続くけれど、ここで一回伝えたい。

SmartHR、ユニコーン企業入りおめでとう!
そしてこの旅に僕も参加させてくれたこと、本当にありがとう。

そして最後に。日本のSaaS業界にとって、この動きはまだまだ序盤だ。これから数多くのSaaSユニコーンが生まれ、日本を支える存在になってくれると僕は信じている。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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予実を外さない男 ~ SmartHR COO 倉橋 隆文

今回のゲストは、SmartHR COOの倉橋 隆文さん。

業界トップクラスのCOOである倉橋さんと、COOになるまでに経験したこと、ストレッチ目標を立ててそれを達成するための方法、そして良いCOOになるためのメンタリティーについてディスカッションをしました。

CXOを目指されている方、またCOOを探している経営者におすすめのエピソードです。

【ハイライト】

  • SmartHRに入社して最初の30日にやったこと
  • ストレッチ計画を立てる時のプロセス
  • 組織のポテンシャルと成長性を最大化するには
  • 達成の可能性は、70%がベストのライン
  • いつも見ているダッシュボードの内容
  • 代表の宮田さんとの役割分担
  • マネジメントについて
  • 良いCOOになるために意識していること
  • COO候補の面接で何を聞くべきなのか

(ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)


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【動画】2020年のSaaS。そしてSaaSのニューノーマルとは?

先日開催したALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2020でのDNX Ventures 湊 雅之さんとのセッション「2020年のSaaS。そしてSaaSのニューノーマルとは?」の録画動画をアップしました!

2020年にSaaS業界で起きた出来事の振り返りや、ニューノーマルのトレンド、国内SaaS企業にとって最もチャレンジングだったことは何だったのか。最後には、2021年に向けて僕たち2人からSaaSに携わる皆さんに伝えたいメッセージも。

カンファレンスでご覧いただいた方も復習として。ご覧いただいていない方は、この機会にぜひチェックしてみてください。

(動画とポストを編集してくれたkobajenneに感謝)

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SaaS 起業家向け相談会「SaaS Startup Office Hours」開催中!
起業を考えている、または既に起業されている方を対象に、メンタリングセッションを実施しています。

こんな悩みや疑問を持っている人におすすめです。
資金調達済みの起業家も大歓迎!

アイディアの検証方法が知りたい
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データを活用してKPIを改善したい
資金調達で気をつけるべきポイント、戦略が知りたい
チームマネジメントを改善したい

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成長率だけを追いかけ過ぎると罠にハマる。SaaS経営者が考えるべき戦略とは。~ Fond 福山太郎

SaaSの魅力の1つは、KPIが分かりやすいことだろう。多くの指標のベンチマークが存在し、さらに戦術のノウハウがオープンに広まってきている。でも、数字や戦術だけに着目していると、そこには大きな落とし穴があることも忘れてはいけない。今回のポッドキャストは、Fondの福山太郎くんと一緒に、SaaSの経営に関する様々なトピックに触れました。

【ハイライト】

  • 成長しやすいSaaSの条件
  • 成長率を追いかけすぎた時の罠
  • 成長の4つのレバー
  • SaaSのエクセル経営は良くない
  • 社長の役割とは(トップダウンとボトムアップで決める事)
  • 良い戦略とは
  • 顧客に選ばれるための要素
  • 権限移譲の考え方
  • The Modelを取り入れるべきタイミング

(ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)

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SaaS企業の急成長を支える最初の100人 ~ SmartHRとANDPAD

今回のポッドキャストは、2019年11月に開催したALL STAR SAAS CONFERENCEの中で、現在も引き続き急成長しているSmartHRの宮田社長とANDPADの稲田社長を招いて行ったセッションの録音をお届けします。

成長を支える最初の100人の組織はどのような構成なのか。採用の順番は何が最適か。そして、数名の段階から100人までチーム数を増やすにあたり、どのような課題が出てくるのかなどについてディスカッションをしました。

1年前のセッションとなりますが、今まさに同じようなステージにいる、または目指している起業家の皆さんにきっと参考になる内容となっていると思います。

※ ブログに埋め込んでいるスライドを見ながら聞くとをお勧めします。

【ハイライト】

  • チームを作る順番について
  • 採用の基準について
  • バーティカルSaaSで信用を積み上げる方法
  • 規模度の社長の役割
  • 権限移譲の順番とタイミング
  • 最初のCSはどのような人か?
  • 人事担当者を採用するタイミング
  • 評価基準を導入したタイミング
  • 開発体制について

(ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)

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SaaSは全然始まったばかり。「わがまま」の言える組織が重要!~ サイボウズ 青野 慶久

97年にパッケージソフトから始まり、その後クラウドへの転換を見事に実現したサイボウズ。今回のポッドキャストは、サイボウズの代表取締役社長 青野 慶久さんをお招きして、クラウド事業を始めたきっかけやその経験について、そして「わがまま」が言える組織の重要性についてディスカッションしました。

【ハイライト】

  • クラウドシフトは、とある社員の「わがまま」から生まれた
  • パッケージからクラウドシフトの苦労
  • クラウドが成功する手応えを感じた時
  • 単価の重要性について
  • 20年以上経営を続けている理由
  • 「わがまま」が言える環境のメリット
  • 企業理念と個人の目標を重ね合わせる重要性

(ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)

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ARR100億円が必然になった時。

ここ数年、Sansan、ラクス、マネーフォワード 、freeeなど、ARR 100億円を突破、または超えそうなSaaS企業が増えてきている。日本のSaaS業界はまだまだこれからで、ARR 100億円組に参画する企業が、今後も続々と現れるだろう。

売上もブランドもなく、チームもまだ小さい立ち上げ時のSaaS起業家にとっては、ARR 100億円は遠すぎる未来であり、なかなか実感もわかないだろう。

でも、顧客の数が10社から100社、1000社になり、従業員も3人から30人、300人と増えていくと、ARR 100億円というのは近い未来の話なのではないかと気付きはじめ、ある日それは必然のことだと感じ始めるだろう。そして、その予感は恐らく間違ってはいない。

では、ARR 100億円が必然と感じ始めた時に考えるべきことは何か?そして、その予感を現実のものにするためにはどうすれば良いのか?

リテンションを愛に転換する

SaaS企業にとって、リテンション率(顧客継続率)が非常に重要であることは誰もが知っていることだ。これについては以前にも話をしたが、規模が大きくなればなるほど、リテンション率が事業にもたらす影響は大きくなる。1億円売り上げのうち10%が退会すれば、1000万円を失うことになり、同じ比率でARR 100億円の事業だと10億円を失うことになる。

ARR 100億円が必然だと感じ初めた時点では、リテンション率は高いかもしれない。でも、それがイコール顧客に愛されているとは限らない。ここからは、退会されないSaaSから、愛されるSaaSに変わる必要があるのだ。

今経営しているSaaS事業の規模が大きくなればなるほど、その市場が魅力的な市場であることが明らかになる。つまり、隙を見つけてその市場に参入しようとする企業が増える。だからこそ、既存顧客が他社に乗り移らないようにするためにも、愛されるブランドや企業になる必要がある。

また、規模が大きくなるとリファーラルや口コミで活用できる顧客基盤ができる。他の人に教えたくなるような愛されるサービスに進化できれば、誰にも止められない勢いで成長を続けられるようになる。

NPSスコアなど、愛にリンクする指標を見つけて改善を目指すと良い。

組織とオペレーションを優位性にする

これまではタイミングやプロダクト、技術、そして複数の優秀なメンバーによって成長してきたかもしれない。でも、長期的に成長を続ける為ためには、組織とオペレーション重要視する必要がある。会社の文化と、従業員への投資がいつも以上に必要になるだろう。

課題が解決される、勝つことに執着する、そしてクリエイティブに働ける文化を浸透させて、ほぼ全ての従業員が成長を実感できる組織へと進化させていくのだ。

会社レベルではなく、個人が目標達成できている割合、そして文化の浸透率などを追うと良い。

市場の解像度を高めて戦略を固める

SaaS事業を推進している期間が長ければ長いほど、市場の解像度は上がっていく。どのセグメントに強く、どのセグメントに弱いのか。SaaSは、〈ニッチ〉の積み上げで拡大するので(参考記事)、今攻略できてるニッチ性でどこまでの事業規模を目指せるのか、さらなる拡大のために、今後攻めていくべきセグメントはどこなのか、そして、その攻め方までをも言語化する必要がある。

プロダクト、営業、マーケティングなどの各側面での中長期プランを立てて、今のうちに実行に移し始めていくべきだ。

ブランドを守る

時とともに、業界に対するブランド力はついてくる。ただし、長年築いてきた信頼と、ブランド力は、ほんの一瞬の出来事で失うことがあるので、徹底的に死守する必要がある。会社が大切にしている理念や、指針を浸透させるための取り組みや制度、顧客情報を守るチームや技術を構築する必要がある。

また、仮に何か起きてしまったときのため、迅速な対応ができるようなポリシーを決めておくことも重要だ。

レベルを上げ続ける

組織、チーム、技術、マネジメントなど、ありとあらゆる面で継続してレベルの引き上げをしていきたい。一度これを怠ってしまうと、ゆっくりゆっくりと、でも確実に後退していく企業になってしまう。

経営レベルからメンバーまで「チャレンジ」と「成長」に対して常に欲を持つことが大切。

他社ではなかなか辿り着くことができない規模まで成長することによって、今まで積み上げてきた実績と経験、そして集めてきた人と資金でできる範囲が拡大する。リソースをフル活用して、さらなる高みを目指すべき。

先にある世界

大規模な企業になると影響力が増し、発言の一つ一つが業界に大きなインパクトを及ぼすようになる。単にSaaSを提供する企業ということではなく、対象の顧客がいる業界を支える「インフラ」となる存在になり、同時に業界を進展させる力を持つ。

ここからどうすればこの業界を10倍良くできるのか。

ARR 100億円が必然と感じ始めたら、これらの要素を抑えて、さらにその先の大きな目標を持ち、より良い世界の実現を目指して欲しい。

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日本発のグローバルSaaS企業をつくるには

Salesforce、Notion、Zoom、Microsoft Officeなど、僕たちが日常的に使う多くのSaaSプロダクトは、海外からやってきている。日本のSaaSイノベーションブームは最近始まったばかりだが、今後グローバルで活用される日本発のSaaSが出てくるのだろうか。

今回は、日本発のグローバルなSaaS企業をつくるにあたり、抱えるであろう課題は何なのか。そして、どのようにすればグローバルに通用するSaaS企業を作ることができるのかについて書いていきたいと思う。

難しい理由

グローバルで通用する日本発のSaaS企業の誕生が難しい理由はいくつかある。

競争環境:

SaaSのグローバル展開の難易度は、今まで以上に上がっている。SaaSのイノベーションは世界中で同時多発的に起きており、他の国に参入しようとした時には競合他社がすでに存在している可能性が高い。

特に営業主導型のSaaS企業にとっては、優れたソリューションを作るだけでなく、その市場での営業やマーケティング人材の確保の面でも競争がおこるだろう。その市場で勝ちたいのであれば、より優秀な人材を現地で採用し、非常に強い実行力を持つ必要がある。

ニュアンス:

バーティカルSaaSの場合は特に、同じ業界、分野の仕事でも、他の国とはマッチしない「ニュアンスの差」がある。例えば、企業の運営スタイル、法律、社会保障や税務の制度、ビジネスの取引方法などが挙げられるだろう。

これらのニュアンスの違いによって、顧客のワークフローが変化し、優先順位が変わる。ニュアンスの異なる他国に進出すると、プロダクト設計、ユーザーインターフェース、カスタマーサクセスをその国に合わせる必要が出てくる。場合によっては、一からプロダクトを設計し直す必要が出てくるだろう。

アダプション:

日本のSaaS普及率は勢い良く上がっているが、アメリカと比べればまだ遅れをとっているのが現状だ。日本は、アメリカに7年遅れを取っているクラウド「抵抗国」と言われている。

実際、日本がSaaS普及拡大フェーズに入るなかで、アメリカでは普及の先に出てくる2.0の需要を満たすプロダクトが誕生し始めている。例えば、Notionは、TrelloやEvernoteなど様々なSaaSプロダクトの要素を組み合わせたモダンなソリューションを提供している。他にも、SkypeやWebexが満たせていなかった顧客需要を捉えたZoomや、元々エンジニアにしかできなかったダイナミックなデータベースの構築を特別な知識がない人でも構築可能にしたAirtableなどがある。これらのプロダクトは、様々なSaaSが普及した後に顕在化されるニーズ、そして現れる機会であることが多く、北米のSaaS起業家はその需要に率先して気付くことができる優位性がある。

グローバルなSaaS企業を作るには

では、このようなチャレンジが多い中で、日本からグローバル展開をするにはどんな要素が必要なのか?

ボトムアップ

グローバル展開をする時は、営業ドリブンなモデルよりも、ボトムアップなプロダクトドリブンなユーザー獲得戦略を取る方が比較的進めやすいだろう。営業ドリブンの場合、参入市場となる各国で営業チームを構築しなくてはならないので、現地での採用面でも他社と競わないといけない。また、営業ドリブンは先行投資額が膨大となり、資金が多く必要になるので、海外展開のタイミングも遅れてしまう。

一方で、営業人員を求めない、プロダクトドリブンなユーザー獲得戦略ならば、海外展開へのスピードや資金効率の面で見ても比較的進めやすいだろう(参考記事:トップダウンなのか、ボトムアップなのか?SaaSのGTM(市場戦略)の考え方)。

世界レベルのUI / UX

ボトムアップ戦略を成功させるためには、他社を圧倒させるほどのレベルのUI/UXが必須となる。ほぼTo Cと変わらないような獲得戦略になるので、To Cプロダクトに求めらえる「サクサク動く」動作や使い勝手、使っていて「気持ちが良い」や「楽しい」感覚が必要だ。

ユニバーサルなユースケース

プロダクトのユースケースは普遍的で、仕事をする上での基本的なニーズを満たすものの方がグローバル展開がしやすい。それは、国や文化ごとに固有のものがあってはならない。Zoom、Notion、Slack、Superhumanが非常に早くグローバル普及している理由は、それらのユースケースが普遍的であるから。

コミュニティー

バイラル性や口コミ効果が強いSaaSプロダクトにする事が望ましい。特にエンジニアコミュニティーでは、これが分かりやすく健在していて、RubyやGoといったプログラミング言語には、世界中に熱烈なフォロワーがいる。また、プロダクティビティーのマニアや、学生YouTuberの中ではNotionのファンが多く存在しており、これによってサービスが世界中に広がるスピードを加速させている。ターゲットユーザーが思わず発信したくなるような高品質なプロダクト、熱烈なユーザーが各国に集まる取り組みなどがあると効果的かつ効率的に拡大させることができる。

先端にいる

前述の通り、グローバル展開の観点で北米が有利なのは、彼らがSaaSアダプションの先端にいるからだ。その遅れを取らないためにも、需要の先に顕在化するであろうさらに先の需要を常に見る必要がある。最先端の需要、最先端の事例、そして最先端の技術を掴むための取り組みが必要だ。

以上が、僕が考えるグローバルSaaS企業のチャレンジとそれを克服するための大要素だ。もちろん、機会によって展開の仕方は異なってくるし、必ずこれらの要素がないとグローバルで成功できないという訳ではないが、グローバル市場で闘う場合の勝率は上がると思う。多くのSaaSスタートアップが生まれ始めている日本から、グローバルに普及できるサービスが近い将来出てくることを僕は強く願っている。

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