トップダウンなのか、ボトムアップなのか?SaaSのGTM(市場戦略)の考え方

(FORTUNE Global Forum)

プロダクト・フィットを達成したSaaS企業が、次に考えるべきは『GTM』だ。

GTMとは『Go-To-Market』の略。市場を獲得するための戦略のことで、SaaSでは「トップダウン」「ハイブリッド」「ボトムアップ」の3つの型に大きく分けることができる。

トップダウンは、CXOレベルでの導入意識決定が必要なケースが多く、ピンポイントでのマーケティング戦略や、フィールドセールスによる長いサイクルの対面営業プロセスを要する。カスタマーサクセスの面でも、導入時の訪問支援サポートや個別のアドバイスをするようなハイタッチな手法になる。このトップダウン戦略を採用している企業例としては、Veeva、Workday、Zuoraなどが挙げられる。

ハイブリッドは、比較的ターゲティング範囲が狭く、インサイドセールスで完結できる場合もあれば、フィールドセールスも絡めたハイブリッドなセールス戦略が必要になる場合もある。カスタマーサクセスも、トップダウンよりは比較的ライトな形式になる。ZendeskやSalesforceなどが、ハイブリッド型からスタートしている。

ボトムアップは、対象者が広範囲なためマスに近いマーケティング戦略が適用できる。いち従業員が一人、または数名で使い始められるプロダクトやサービスで、セルフサーブ型でユーザーオンボーディングが完結できる。また、バイラル要素があり、営業サイクルも短い。Zoom、Slack、Twilioなどが例として挙げられる。

GTMを考えるときの要素

では実際自分の提供しているSaaSは、どのGTMの型に当てはめるべきなのか。それを見極めるためには、以下の視点で考えてみると良いだろう。

プロダクトの複雑性: SaaSプロダクトの価値や機能の利便性について、人が対面で説明する必要がある場合は、ハイブリッド、またはトップダウンの戦略が必要になる。一方、ウェブを通してすぐに理解してもらえるものであればボトムアップの戦略が通用する。

また、プロダクトを使いこなすために長い期間や手厚いサポートやトレーニングを要する場合は、トップダウン型である必要があり、比較的ライトなトレーニングで済むのであれば、ハイブリッド型を適用できる。登録したら人が関与すること無く、すぐに使い始められるプロダクトならば、ボトムアップ型の戦略を取るのが最適だ。

デリバリー:ユーザーが、一人でそのSaaSを導入することができるのか。それとも複数人のコミットや調整が必要なものなのか。関わる人の数が多ければ多いほど、トップダウン型の戦略を取る必要性が高まる。導入までの時間をあまり取らないものは、ボトムアップ型が通用する。

価格:プロダクトやサービスの価格によって、決裁者が変わる。そして、この決裁者が誰になるのかによって取るべき戦略が変わる。いち従業員が申請するだけで導入できるような価格帯なのか。または部署がもつ予算を使えば導入できるのか。はたまた幹部層が管理する予算を取らなくてはならないのか。大きな予算が必要になるほど、ランクの高い決裁者によって導入可否が判断されるため、トップダウン型の戦略を取る必要がある。

この3つの視点で考えてみると、自分のSaaSがどのGTMの型に当てはまるのかが見えてくるはずだ。プロダクトがシンプルで、デリバリーも早く、価格が低いのであればボトムアップ型。非常に複雑で、デリバリー期間も長く、そして高単価なのであれば、基本的にはトップダウン型の戦略が必要になる。一方で、要素に偏りがない場合は、ハイブリッド型の戦略になる。

戦略と戦術の具体化

今回はGTMの概念をシンプル伝えるために大きくまとめでみたが、実際にGTMの戦略を決めるときは、マーケティング、セールス、そしてカスタマーサクセスのプランを具体的な戦術にまで落とし込んで作っていく。バイヤーのペルソナ、セールスのファネルやテクニック、バリューの伝え方など、細かく落とし込むことで解像度の高いGTM戦略が完成する。

GTMは常に進化していく。

ただし、GTMは一度決めて終わるものでなく常に変化していくもの。プロダクトの成熟度や競争環境、顧客のニーズ、そして会社のフェーズで変わるからだ。例えば、BoxやShopifyも、初期はボトムアップのGTMからスタートしていたが、その後ハイブリッドやトップダウンのGTMへと戦略の展開方法を変えている。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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ソフトウェア産業の勝ち方が変わってきている ~ LayerX 福島 良典

Gunosy創業者で2018年にLayerXを設立した福島 良典さん。今回も、ブロックチェーンや福島さん流経営スタイル、スタートアップの勝ち方、起業アイデアの考え方など盛りだくさんの内容となりました。僕にとっても、すごく楽しく学びの多いディスカッションになりました。

【ハイライト】

  • 起業家になった理由
  • タイミングの見極め方
  • 信用と起業アイディアの関係性
  • ブロックチェーンを選んだ理由
  • なぜ国がデジタル通貨を発行するのか
  • 金融機能のUnbundlingとは
  • SF小説を書いている理由
  • ポジショニングとネットワーク効果について
  • 競争優位性の作り方
  • 技術力よりも技術意思決定力
  • ハック型とマーケット型の違い
  • 標準化経営について
  • 新規事業は規模から考えてはいけない理由
  • 初めての起業と2回目の起業での時間の使い方の違い
  • スタートアップのモテ期について

(ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)

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起業家に薦めたい。SaaSの使いこなしで1日あと2時間確保する方法

SaaSに特化した投資を実行する身としては、僕自身も様々なSaaSプロダクトを使いこなして、自分の生産性を最大化することを積極的にやっていきたいと思っている。今回は、自分がどういうSaaSプロダクトを、どういう風に使っているのかについて書いてみる。感覚としては、これから書く以下を実行したことで、1日のうち新たに確保できた時間は、1〜2時間ほど。これは大きい。

Hubspotで日程調整

HubspotとGoogleカレンダーと連携させることによって、日程調整がとても楽になる。日程調整をしたい相手には、Hubspotのミーティングリンクを送るだけで自分が空いている時間を共有できて、そしてカレンダー登録も自動化できる。

ミーティングの合間の調整タイムを入れたり、スロットあたりの長さも調整が可能など自由度が高い。僕が薦めたい活用方法は、Hubspotミーティングのリンクを2バージョン作ること。一つは緊急度が低いミーティング用、そしてもう一つは緊急度の高いミーティング用だ。

後者のカレンダー上では1日2時間ほどの時間を確保する。そうすることで、もう一つのカレンダー上では、その時間帯は空き時間ではなくなり、緊急案件が発生しても確実に時間を確保することができる。Hubspotは、Zoomとも連携ができる。予定が登録された瞬間に、そのミーティング専用のZoomリンクを自動生成する機能があるので、僕はデフォルトでZoomリンクを自動生成するように設定している。

Hubspotで人間関係を管理

基本的にヒトの情報は全てHubspotで管理している。特に便利だと思う機能はタスクの機能。誰かと打ち合わせした後に、Hubspotにそのとき話した内容を記録し、次にその人と会うタイミングをその場で決めてHubspotのタスクに入れている。タスクの期限が来た時には、メールでリマインダーが送られるように設定している。これによって、フォローアップやキャッチアップの漏れが大幅に削減されるし、しばらく話をしていなかった人の情報にもきちんとアクセスできるのは嬉しい。

Superhumanでメールのスーパーサイヤ人に

メールクライアントは、Superhuman。主に使っている機能は、リマインダー機能。返信をもらいたいメールを送信した時に、予め設定した時間までに返事が来なかったら通知が来るようにする。これで、メールのフォローアップ漏れも無くなるし、いちいちフォローアップが必要なメールをTo Doリストに入れる必要もなくなる。

リマインダー機能の活用方法は、もう一つある。僕のメールの基本ルールは、2〜3分で返信ができるものはその場で返信して、検討したり調査したりする時間が必要など、返信に時間がかかると判断したメールは、リマインダー機能を使って、一旦夕方までInboxから消えるようにしている。こうすることによって、Inbox自体がスッキリするので、情報に左右されることなく1日のスケジュールを着実にこなすことができる。夕方になったらその隠したメールたちがInboxに表示されるようになるので、それらをまとめて対応できる。

Superhumanのテンプレート機能もとても便利で、良く繰り返して使う文章(例えばオフィスへまでのアクセス案内を説明する時など)は、ショートカットでメールに挿入できるようにしている。

1Passwordでパスワード管理

1日を通して、少なくとも10回は色々なサービスにログインする。そんな時に必ず必要になるのが「パスワード」なわけだが、セキュリティーのために各サービスのパスワードは、ユニークで複雑な異なるパスワードである必要がある。このパスワードを覚えたり入力したりするのは、とにかく時間が取られるし、ましてや記憶しておくことなど不可能だ。1passwordは、そういう悩みをすべて解決してくれるので、パスワード管理においては必須ツールだ。

Notionで人生を管理

To Doリストや人生計画、読みたいものリスト、運動スケジュール、書きたいブログテーマ等とにかく僕のほぼすべてをNotionで管理している。たくさんの情報を整理、管理するにはもってこいのツールで、さらにアイコンやクリップなども使えるので見た目も楽しい。

To Do管理で僕が薦めたい方法は、

・じっくり考えて進めないといけないタスク
・あまり考えなくてもできるタスク

の2つに分けること。じっくり時間をかけて熟考しながら進めなくてはいけないタスクは、1日2個までに限定して、毎日1〜2時間そのタスクに集中する時間を確保する。とにかくひたすら手を動かすような、あまり考えなくても進められるタスクは、打ち合わせの合間や夕方の時間帯など、頭の回転が少し鈍ってきているなと感じる時にバッチ処理で進める。

おやすみモードの活用

色々なサービスがたくさん出てくると、人は知らず知らずのうちに、常に通知や連絡に追われる日々を過ごす。僕は日中1日2時間くらいiPhoneの〈おやすみモード〉をONにする(Mac OSでも同時に通知OFFにしている)。その間、前述した時間をかけて熟考する必要があるタスクに集中する。これをやり出してから、実際自分はどれぐらい通知に追われているのか気が付くきっかけになった。

Zapierで領収書管理

Zapierは使い始めたばかりで一番上手な使いこなし方を検証しているフェーズだが、最近は、請求書管理に使っている。メールで届いた請求書や領収書にラベルをつけると、Zapierがそのラベルに応じてGoogle Drive上の該当フォルダーにPDFファイルで自動保存してくれる。これでメールを検索して請求書などをPDFに変換してフォルダに整理するという作業が自動化され、請求書関連で要していたストレスフルな時間を大幅削減できるようになった。

以上が、僕が今メインで活用しているSaaSの使い方だ。使いこなせばこなすほど大幅な生産性アップに繋がる。みんなが他にどういうツールをどのように使っているのかも知りたいので、もしお奨めがあればツイッターで@DJTOKYOにメンションで教えてくれると嬉しい。

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ARR目標を達成するためにSaaSスタートアップ経営者ができること

Photo by: Philo Nordlund

明けましておめでとうございます。今年もブログやポッドキャストでの情報をより頻度をあげて発信していきたいと思っているので、2020年もどうぞよろしくお願いします。

さて、起業家のみんなは、2020年の初営業日を迎えて、今年のARR目標の設定も完了し、多くが目標に向けて行動に移し始めている頃だろう。今回のブログは、今年の目標の達成確度を高めるために経営者やマネージャーができること、について。

パイプライン、パイプライン、パイプライン:各経営メンバー、マネージャー、そしてリーダーたちとパイプラインのレビューを行い、ディスカッションする。

例えば、以下の通り今年の目標を設定したとしよう。

• 新規顧客からのARRを2億円に
• リードからの成約率が25%を維持
• クロージング期間を平均して半年

この場合、逆算すると今年6月までに8億円分のリードを獲得する必要がある。マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトなど各セグメントのリーダーのパイプラインと数値目標への強いコミットが必要だ。もし、ARR8億円分のリードを生み出すコミットができないのならば、リードあたりの収益(ARR / リード)を上げて調整する必要がある。

パイプラインの状況や商談フェーズについて、各メンバーと毎週ディスカッションする機会を作れば、組織全体の数値管理能力と推進力が上がるだろう。

もっとコーチングを:リーダーの役割は、部下やメンバーが目標を達成できるようなガイダンス、スキル、ノウハウやリソース等を提供すること。部下との1 on 1の頻度を増やし(週に一度が理想)、目標達成にどのぐらい自信を持っているのかを確認。自信が足りていないようであれば、必要なサポートをしていく。

ゴールをクリアにし、必達の意識を高める:会社の目標、各チームの目標、そして個人目標はもう設定されていたとしても、設定だけで終わらすのではなく、《共有と確認》を毎週徹底すべき。負け越す状況には決して慣れさせず、各自ゴールにコミットし、常に勝ちに行く姿勢、必達の意識を高める。

カスタマーサクセスにダブルダウン:売上チャーンが下がれば、新規獲得しなくてはいけない売上が減る。アップセルやエキスパンションによって売上継続率を100%以上にできたなら、なおさら良い。売上規模が大きいほど、チャーンやアップセルによるインパクトも大きくなるので、カスタマーサクセスをさらに強化しレベルアップを図るべし。

採用計画を達成させる:SaaSは、採用計画が未達だと売上計画の達成も難しくなる。採用を社長の目標に入れてコミットさせる。もし毎月1名の採用を目指すなら、採用担当者がいることが必須になるだろう。会社に十分なキャッシュがあるのなら、2ヶ月に一名を採用する計画であったとしても、担当者を入れても良いと思う。

セグメントと分析:既存顧客をセグメント化してパターンを探す。リードあたりの売上が、レストラン業界で特に高いかもしれない。従業員人数300人以上の顧客のチャーンが圧倒的に低いかもしれない。プレミアムプランの顧客の方がNPSが高いかもしれない。他より上手く機能しているセグメントを探して、そこにリソースと予算をもっと寄せていく。

Sales Opsへの投資:ダッシュボードの管理、セールスプロセスの改善、情報やノウハウの体系化、部署間の連携力アップなど図るSales Opsの専任がいると営業効率が上がる。特にARR 1億円超えているスタートアップにとっては、メンバー各自が目標達成をするための重要な役割になる(Sales Ops とは?)。

以上が1年間のARR目標の達成確度を上げるポイントだ。目標を達成して、今年もさらに良い年を築いていこう。

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KARAKURIに投資をした理由

コールセンターの就労人口は、おおよそ100万人、そしてその市場は1兆円以上と言われている。コールセンターやカスタマーサポート部隊を持つ企業も非常に多く、サービスを提供するなかで重要な役割を持っている。

でも同時に、多くの人が働く大きな業界であるということは、課題も多いということだ。

コールセンターは離職率が高い。業務内容も環境も〈忙しく大変〉というイメージが強く、採用も難しい。お客様に対して丁寧な対応を心がけたいのはやまやまだが、現実は一人当たりの対応件数が増えるばかり。育成にかけるリソースも足りていない。このコールセンターやカスタマーサポートが抱える課題を全体的に解決しようとしているのがKARAKURIだ。先日総額5億円のラウンドをALL STAR SAAS FUNDで投資させてもらった。

Vision

初めてKARAKURIに出会ったのは2018年の前半。当時は、チャットボットスタートアップが多く生まれ、ブームのようになっていた。僕もすでに多くのチャットボットスタートアップからのピッチを受けていて、すでにこの分野は「バズワード」として聞き疲れ気味だった。実はKARAKURIからコンタクトをもらったときも「きっとまた同じようなピッチを聞くのだろう」と思っていた。でも、違った。

CEOの小田さんが語ったメッセージは、チャットボットの話ではなかった。それは、コールセンターやカスタマーサポートの話だった。前職でコールセンターBPO業務を立ち上げてきた小田さんは、課題に対する理解度が非常に深かった。

課題の大きさ、機会の多さ、そして業界全体に変革を起こしたい気持ち。業界やクライアントに関する理解度も深く、ビジョンも大きかった。僕は、そんな彼に惹かれて去年8月に投資を決めた。

Technology

そして彼らのもう一つの魅力は、技術力だ。大きなビジョンを描いたら、それについて行ける技術職が必要。この技術力が、KARARKURIには存在している。CTOの中山さんが率いるエンジニアチームは、レベルが高く、開発スピードも速い。クライアントとの満足度インタビューの結果にも現れている。仲間集めも順調に進み、一流の技術チームになれるポテンシャルを秘めていると思う。

Customer Success

クライアントのオンボードから導入後のフォローアップまで、KARAKURIは会社全体を通してカスタマーサクセスへのコミット力が高い。カスタマーサクセスという名前のチームは存在せず、複数の部署が連携して顧客の成功にコミットする体制を取っている。このタッグ制によって、クランアントが様々な面でスピーディなサクセスを体験できるようになっている。結果、既存顧客のアップセルやエクスパンションから成る売上拡大率が高いのだ。

KARAKURIは、そんな優秀なメンバー達と共に、多くの課題を持つ重要な市場に挑んでいる。彼らのビジョンを実現できるように僕も全力でサポートしていきたいと思っている。現在も様々なポジションで絶賛採用中なので、一緒にチャレンジしたいと思う人はぜひ連絡をして欲しい。 ⇒ https://karakuri-ai.co.jp/?page_id=1009

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ARR1000億という名の山の登り方

今回のポストでは、サブスクリプション・ビジネスにおける収益化のためのプラットフォームを提供するZuora社の社長、Tien Tzuo氏が来日中に開催したイベントのディスカッション内容を書き起こしたものだ。彼が語った、セールスフォースでの経験や学び、そしてARR 1000億円に到達するまでの『7つのフェーズ』とは。

セールスフォースでの時間

僕(Tien Tzuo氏)のセールフォースでの従業員番号11番。1999年創業間もない時にジョインして、まだオフィスもプロダクトもない時だった。僕らは「インターネット時代のエンタープライズサービスを作る」をビジョンで事業展開した。セールスフォースは、SaaSの事例が全くない中、イチからSaaSを設計して事業を伸ばしてきたので、みんなが最近聞くようなコンセプト(例えば、カスタマーサクセスやSDR/BRD)や指標(ACV等)は、セールスフォースが発明したものだ。

ほぼ同時期に創業されたエンタープライズサービスを提供する企業は、オンプレを提供していたけれど、セールスフォースはオンプレを提供する事を強く否定し続けた。「インターネット時代のエンタープライズサービスを作る」と言うビジョンに執着した。この執着心は、自分たちに〈フォーカス〉を与えてくれて、そしてSaaS市場が確立したタイミングで、僕たちはその市場のリーダー的存在になれた。

ストーリーを語る力

これはセールスフォースで学んだ事で、大きな概念を描いて発信していく。セールスフォースは、自分達のことを語る時、SFA (セールスフォース・オートメーション)については言及せず、「ソフトウェア時代を終わらせる」と言うストーリーを語った。

Zuoraでもその学びを活かして、ビリングツールのサービスプロバイダーとして自らを語るのではなく、「サプスクリプション・エコノミー」のストーリーを語り続けている。

The Climb

SaaS企業を成長させる時に気をつけなければならないのが、『自分が今どのコンテキストやフェーズにいるのか』だ。これを意識せずに伸ばしていくと、思わぬ落とし穴にハマってしまう。また、急成長しているときはとにかく色々壊れてしまう。過去に囚われず、自分たちを再発明していく必要がある。

この7つのフェーズの総称を「The Climb」と言う名前にした理由は、SaaS企業を伸ばすとき、登山と同じようにスィッチバック(ある方向から概ね反対方向へと鋭角的に進行方向を転換するジグザグに登っていく)が必要だからだ。「今までとは違うことをやらなくてはいけない」というマインドセットが重要なのだ。

アイデアの証明(0ドル〜100万ドル)

起業家がよくする間違いの1つは、ニーズを確認する前にプロダクトを作ってしまうこと。
開発をする前に、完成されたプロダクトがない状態でも、自分たちが売ろうとしているプロダクトが、まずは1億円分売り上げることができるのかを確認しなくてはならない。プロトタイプの状態でユーザーにぶつけることで、自分のアイデアが求められているものなのかを確認、証明すべきだ。

製品の証明(100万ドル〜300万ドル)

ARR 1億円を超えるタイミングまでには、プロダクトの最終形態の解像度を上げておきたい。最終版を完成させるにはあと5年かかるかもしれない。でも、完成に向けてどういった順番でどの機能を開発するのか、どのクライアントを取りに行くのかなどは、ARR 3億円のフェーズに行くタイミングまでには明確に答えられるようにしておきたい。Zuoraでは、早い段階からSaaS企業だけでなく、他の業種や業界を狙っていくという判断をしているから、それを考慮したプロダクト設計にしていた。

市場の証明(300万ドル〜1,000万ドル)

特にベンチャーキャピタルから資金調達をした場合、本当の市場規模を理解する必要がある。今自分が経営している会社は、どのくらい大きくなるポテンシャルがあるのか。評価額はどの位までになれるのか。これを知らずに大型調達をしてしまうと売却も上場もできない会社になるリスクが出てくる。

ARR 100億円を達成したタイミングでどのくらいの顧客数になりそうなのか ー 平均単価100万円の顧客を1万社持つのか、はたまた平均単価1000万円で1000社の顧客を持つのか。そして、将来的にターゲットとなりえる顧客数の規模はどの程度なのか。こういった質問にしっかりと答えらえるようにしなくてはならない。

並行して、マネージメントの仕方も大きく変える必要がある。組織の中で1人のリーダーが効果的に直接影響を与えらえる人数は、大体7人まで。それを越えたらレイヤー(層)を1つから2つに増やす必要がある。従業員57人くらいになればリーダーのレイヤーは3つに増やす。そして従業員150人となればレイヤーは4つに。マネージメントの仕方や情報共有の仕方、そして目標設定の仕方は、レイヤーを増やすたびに大きく変えていくべきだ。

ビジネスモデルの証明(1,000万ドル〜3,000万ドル)

ARR 10億円から30億円の間では、ビジネスモデルに焦点を絞り始める必要がある。
顧客獲得コスト、解約率、LTV、粗利益、NRRやコホート別に見たトレンドなど様々な視点での指標を用いて、ビジネスを成立させるために何をどこまで持っていく必要があるのかを考え抜く。

特にARR 30億円規模になると、予算の割り振り方が今後の成長に大きなインパクトを与える。顧客セグメントや取り組み毎に、どのくらいのセールスとマーケティング予算を割り振るべきなのか。今後のさらなる成長のためにR&Dに割くべき先行投資額はいくらなのか。これらをはっきりとしておきたい。

ビジョンの証明(3,000万ドル〜1億ドル)

ARR 30億円を超えた時点で上記すべてを明確化することができたのなら、もうARR 100億円は見えてくる。大体2〜3年で達成できるだろう。
特に上場を目指すのであれば、組織であれ投資家であれ、より強い「巻き込み力」が必要だ。たくさんの企業があるなかで、何故自分たちを選ぶべきなのか?ビジネスの証明、明確化は出来ているのだから、あとはビジョンを語り説得する。

Zuoraの上場時には、「世界がサブスクリプションに転換することを信じるなら弊社に投資した方が良い」というストーリーを強く訴えかけて投資家を巻き込んだ。

業界の証明(1億ドル〜3億ドル)

ARR 100億円を越えると、「プラットフォーム」を創造できる規模になってくる。太陽の周りにたくさんの小さな惑星があるように、自分の周りに小さい企業が多数集まり始める。プロダクトを連携したい、一緒に販売したいという企業が集まる。だからこの時点でどういったエコシステムを作りたいか、一緒に成長し続けるためにはどのような相手とどのように組むべきなのかを考える。

会社の証明(3億ドル〜10億ドル)

僕たちは、今ちょうどARR 1000億円を目指してる段階なので、ここからはあまり語れないが、ここまで来るともう長期に物事を考えなくてはならない。長期的に成長できる会社であり続けるには、どうすれば良いのか。業界の中で僕らはどういった立ち位置にいるべきなのか。そして、さらなる高みをどう探しにいくのか。

最後に

何か違和感を感じた時や、今まで上手くやってきていたことが上手くいかなくなっていると感じたら、それは会社に変化があった時。その時は、会社と自分自身の〈再発明〉をしなくてはいけない。前の一歩で成功の要因となったものが、今の一歩では足かせになることがある、ということを忘れてはいけない。白紙に戻った気持ちで課題に向き合えれば、おのずと答えが見えてくるはず。変化に適応し続ければ、ARR 1000億円のSaaS企業を創りあげることができると信じてる。

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SaaSのトレンドとその未来を語る(2019年版)

2019年も残りあとわずか。今年もSaaS業界で様々な動きがありました。今回は、先日開催したALL STAR SAAS CONFERENCEでのセールスフォースベンチャーズ 湊 雅之さんとのセッション「SaaSのトレンドとその未来を語る(2019年版)」を公開します。セッション中に投影したスライドも上記のリンクからご覧いただけますので、スライドを見ながら是非聴いてみてください。

【サマリー】

  • アメリカのトレンド
  • 日本のSaaS株の状況
  • 日本のSaaSベンチャー投資の状況
  • 2019年のトレンド
  • 2020年のトレンド
  • SaaS経営者に伝えたい2020年のアドバイス

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SmartHR

今年2019年7月、僕はSaaSベンチャー企業への投資と支援に特化したファンド「ALL STAR SAAS FUND」を設立した。これを機に、今後可能な限りこのファンドでリード投資をしたスタートアップについて、僕の想いを投稿をしていきたいと思う。

それぞれのスタートアップのどういったところを見て投資を決断したのか、どういう想いで支援をしているのか、などを伝えることができれば嬉しい。

投資を発表して数ヶ月程経過しているが、今回のポストでは「ALL STAR SAAS FUND」にとって記念すべき第一号案件となった SmartHR について書いていこう。

僕がSmartHRに対して初めて投資を実行したのは、2015年のシードラウンドの時。実は最初に出会った時、彼らは全く別のサービスを展開していて、その時のサービスは正直あまりピンと来るものがなかった。でもその数ヶ月後にSmartHRというサービスにピボットをしたタイミングで、投資することを決めた。この時の決め手は、(1)ユーザーに対する理解度が非常に深かったこと、(2)その理解を基にユーザー目線のプロダクトを設計できていたところ。そして、宮田さんと内藤さんの素直さや学習能力の高さを感じたところにある。

このシード投資以降、僕は継続してほぼ全てのラウンドでSmartHRに追加投資をしている。そして今回のラウンドでは、共同リードで55億円を投資させてもらった。ALL STAR SAAS FUNDからの直接投資と、僕が窓口となって交渉、調整をさせてもらった投資金額を合わせると、合計で30億円近くになる。これは、僕自身のキャリアの中でも、一番大きい投資だ。

サクセス

強い魅力として感じた点の1つは、Customer Successへのコミットメント。ここで重要なのは、このコミットが組織全体規模で実行できていることだ。プロダクトチームやエンジニアチームがリリースするプロダクトや、その中の機能一つをとっても顧客中心で設計されていて、クオリティーが高い。そして、セールスやマーケティングチームもカスタマーサクセスに対する意識がとても高いと感じた。CSチームだけでなく、全部署がCSにコミットしているからこそ、99.5%という継続率を実現出来ているのだと僕は考えている。

僕がSmartHRのクライアントにインタビューをした時も、SmartHRのプロダクトとブランドに対する愛を感じたほどだ。サービスに対する満足度の高さはもちろんだが、それ以上にクライアントが、SmartHRのことを、今後も共に業界を向上させていくための〈パートナー〉として考えてくれている姿勢が在った。顧客との特別な関係性がそこに存在していることを感じた。

文化とマネージメント

僕が最も強く魅力を感じたのは、SmartHRの文化とマネージメントのスタイル。創業当初から毎年、SmartHRの従業員との面談機会を持たせてもらっているのだが、毎回特別なものを感じている。とにかく透明性が高く、メンバーそれぞれの責任感も高い。そして、コアバリューの理解がハッキリしている。経営層は自分たちと組織全体に高いスタンダードを求め続け、さらに高いスタンダードに進化し続けられるポテンシャルを秘めていると感じた。必ず、一流の組織になれると確信した。

マーケット

最後に、マーケットのポジショニングも魅力的だった。スモール、ミディアム、そしてラージのエンタープライズ顧客が存在していて、その対象となる業界は、ITやテック業界に止まらず幅広い業種や業界を巻き込んでいくことができる。つまり、対象となる潜在顧客が、日本全国に存在していて、その数は300万社以上にもなるのだ。同時に、HR Techの市場自体も直近の約350億円から、2023年までに1000億円近くまでに急成長する言われている。まさに、巨大な波に乗っている。ARR 100億円以上の企業を作れる条件が揃っていると思う。

二つ目のモチベーション

この3つが、僕がSmartHRに投資を実行した大きな投資理由だ。でも実は、直近のラウンドで僕が投資を行ったのには、もう一つのモチベーションがあった。正直言えば、今回のラウンドへの需要はとても高く、僕が投資をしなくても資金は十分に集まっていただろう。でも僕は、SmartHRの経営メンバーが今まで作り上げてきた(そして成長し続けている)マネージメントスタイルや素晴らしい文化作りを継続して欲しかった。

どんな大口の投資家が入ってくるのか。サポートのスタイルはなんなのか。新規投資家が入ってくることによって経営チームとの間で予想外な化学反応が起きる可能性があるのか。過剰に組織を管理してくることがないのか。

投資家は様々で、企業との相性によってはその繋がりがプラスに働くこともあれば、マイナスになることも、ゼロになることもある。SmartHRの場合、すでに対投資家との関係性が上手く機能している状態だったこともあった。だから、これから相性の良い新たな出資者を探すプロセスをゼロから始めるよりも、僕自身が共同リードのポジションに入って調整をさせてもらう方が、様々なリスクを減らせるのではと考えたのだ。こうしてALL STAR SAAS FUNDは、当初の予定よりも3ヶ月前倒しをして誕生することになった。

シリーズC

実はこのラウンドでは、ALL STAR SAAS FUNDの組成、資金調達、SmartHRへの投資をほぼ同時並行で行っていたので、僕にとって大きな挑戦だった。つい最近のことではあるけれど、この時のことを良く振り返る。そして毎回、この挑戦をして本当に良かったと思う。シードから支援させてもらっているSmartHRを、レイターステージでもサポートし続けられるのは、とても嬉しく光栄なことだ。

今後も、SmartHRのようにアーリーからレイターのステージにかけて支援を続けられる関係性を築いて行ける支援先を増やしていきたい。レイターステージの企業への投資は、アーリーステージの投資の数よりは少なくなるけれど、年に1社は、今回のようなレイターステージ投資を実行できたら最高だ、と思っている。

SmartHRは、自信を持って最高のスタートアップだと言える。こんなに最高な環境はなかなか見つからないと強く思う。現在様々なポジションで絶賛採用中なので、是非さらなる高みを目指して一緒にチャレンジしてみてはどうか。=> https://smarthr.co.jp/recruit

(edited by kobajenne

エグゼキューションの質

Photo by: Michelin Motorsport WEC_24 Heures du Mans

スタートアップに投資をした後、僕たちVCは様々な指標や情報をもとに、会社の状態や事業の進捗状況を把握しようとする。その中でも僕が、定性的ではあるけれど、そのスタートアップの成功を予測するために一番重要だと思っている要素は『エグゼキューションの質』だ。経営チームによるエグゼキューションの質が高ければ、どんな問題にぶつかっても解決方法を見つけることができ、スタートアップのポテンシャルを最大化できる。

エグゼキューションの質が高くなければ、一流の会社にはなれないと僕は信じている。

では、「エグゼキューションの質が高いと思う経営」とは、どういったところを見て感じるものなのか。

  • 課題に対するアクションのスピード:エグゼキューションの質が高いチームは、潜在、顕在に関わらず、抱える課題に対してスピーディーに対応できている。3ヶ月以内には課題を解決させていることが多い。
  • 目標の達成率:設定した目標や計画の達成率が高く、目標値を上回ることが多い。例え未達の月があっても、2ヶ月以上未達が続くことはあまり無い。
  • 優先順位とフォーカス:会社にとって一番重要なことにフォーカスできていて、意識が散らばっていない。
  • 一貫性:優先順位や目標が、社長や経営層はもちろんのこと、会社全体で一貫して正しく理解され認識されている。また、方針やビジョンにブレや矛盾がない。
  • クリアな考え:考えが整理されていて、次に取るべきアクションが明確になっている。
  • 高いスタンダード:経営チームが、自分達、そして会社全体に対して高いスタンダードを求めていて、そのスタンダードの高さを抜かりなく徹底的に維持している。

これらが、僕がエグゼキューションの質が高いと感じる経営チームだ。では、エグゼキューションのレベルを上げるためにどうすれば良いのか?

  • 良いプランニングと計測:どんなことでも、計らなければ客観的に状態を分析することはできない。大事だと思う指標を計測し、プランニングの解像度を上げ続けていく。そのためにも、プランニングのための時間を確保することが大事。
  • 良い人の採用:エグゼキューションのレベルを上げるために良い人材を確保し、委任と権限譲渡を積極的に遂行する。これは、考える時間を確保するためにも重要なこと。
  • 違和感を無くす:何か違和感を感じたならば、事態が悪化する前にその理由を突き止めてその原因を潰す。時間の経過と共に解決するだろうなどという考えは持たないこと。逃げずにすぐに課題に立ち向かうべき。
  • 透明性と責任:不都合な情報を隠さず、透明性高く経営をしてる。それぞれの役割や責任をハッキリさせて、言い訳できるシチュエーションを無くす。
  • グッドで満足せず、常にグレートを目指す:現状に満足せず、さらに高いレベル、最高な状態を目指し続ける。フィードバックを求めて、インスピレーションを探す姿勢を忘れないこと。

自分達のエグゼキューションの質は高いと言えるのか。
もしその答えが「No」なのであれば、これからレベルを上げにいけば良い。質が上がれば、自分自身と会社に対する愛と誇りも強まって、より高いところを目指し続ける原動力になると僕は思う。

(edited by kobajenne

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SaaS企業の拡大に必要不可欠な「セールスイネーブルメント」

SaaS業界の最重要ワードの一つ「セールスイネーブルメント」。今ではSaaS企業の拡大に必要不可欠な機能と言えるだろう。では、そもそも「セールスイネーブルメント」とは何なのか?効果を出すために何をするべきなのか?

11月7日に開催するALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYOに先駆けて、今回のポッドキャストエピソードでは、セールスフォース・ドットコムで7年半の間Sales Enablementチームの部門長として活躍、現在はEnablementサービスに特化したR-Square & Companyを創業した山下 貴宏さんとディスカッションしました。

【サマリー】

  • Sales Enablementとは何なのか?
  • EnablementであるものとEnablementでないもの。
  • Enablementが重要な理由。
  • Enablementの始め方。そして定着させる方法。
  • 効果的なEnablementのためにSFAで何を管理するべきか。
  • Enablementの目標設定。
  • Enabementチーム内の役割分担。
  • ARRの規模毎に必要なEnablement。
  • Enablementに向いてる人、向いてない人。

Photo and sound edited by kobajenne

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