人は、スランプの時のみ成長する

1996年、SaaSやクラウドという言葉がまだ存在せず、日本のエンタープライズ市場にパッケージソフトが浸透していくのもまだこれから……という時期に、ワークスアプリケーションズは誕生しました。

ワークスアプリケーションズは、パッケージソフトの普及に大きく貢献し、現在のSaaS市場の誕生、そして業界全体の成長加速を促す存在となりました。

今回のポッドキャストでは、創業したワークスアプリケーションズを売上高500億円を超える企業に成長させ、同社退任後は HR共創プラットフォームを展開する「パトスロゴス」を起業した牧野正幸さん(Xアカウント)にお話を伺いました。

今のSaaSの原型となったB2Bソフトウェアの歴史、時代の変化に合わせた競争戦略や圧倒的な採用力を実現した取り組みなど、ワークスアプリケーションズでの約20年間の経営者としての経験と学び、そしてパトスロゴスでの新たな挑戦について深掘りました。

SaaS業界に関わる方はもちろん、すべての業界にいらっしゃる方に楽しんでいただける学びや気づきが多いエピソードです。ぜひお聴きください。

【ハイライト】

  • 1996年のB2Bソフトウェアの環境について
  • ワークスアプリケーションズの戦略
  • 年間2,000人のインターンを受け入れた理由
  • ワークス出身者に優秀な人が多いワケ
  • SaaSは、もう後退しない
  • AIがSaaS業界にもたらす影響
  • 10年後の日本、そして10年後のSaaS
  • リクルーティング部門には営業やコンサル出身者を入れた方が良い
  • エナジャイズできない経営者は0点
  • 採用のブレーキはかけない方が良い理由
  • 20代の時間の過ごし方
  • 社会貢献の大切さ

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「経営OSをアップデートする」サクセッションには、創業者の「否定」も重要になる。

創業から14年。上場したあとも、絶えず成長を続けるラクスル。先日、このラクスルの創業者である松本さんは、同社のCFOだった永見さんにCEOのバトンを渡しました。

そして松本さんは今、世界中にいるチームと共に、ITデバイス&SaaSの統合を目指すクラウドサービス「ジョーシス」をグローバルで展開することに力を注いでいます。

今回は松本さんに、CEOを退くことを決意した背景や、グローバルな視点でのビジネスの考え方についてお話しいただきました。さらに、彼のこれまでの経験や、これから先の100年のビジョンについても掘り下げた内容になっています。

新たな挑戦を続ける松本さんの話は、夢を追い続ける起業家や経営者に聴いてもらいたいエピソードです。

【ハイライト】

  • CEOのバトンを渡そうと思った理由
  • 「経営OS」のアップデートと、Inorganicな成長に必要なリーダーシップ
  • CEOのサクセッションを上手く進めるためのアドバイス
  • なぜジョーシスだったのか —— アイデアを選んだ理由やその基準について
  • 「ワンチーム」と「ワンプロダクト」へのこだわり
  • グローバル企業のマネジメントについて
  • 松本さんにとって「起業家」とは?
  • 100年後に価値が上がるもの、下がるもの
  • 100年続く事業はどう作るべきなのか

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500年続く老舗和菓子店「とらや」がお客様に愛されながら、変化を恐れず進化し続けられる理由

500年。

想像することさえ難しい、遥か遠い時間にさえ感じるこの年数。

でも日本には、実際に約500年以上続く企業が存在します。その1社が、日本を代表する老舗 和菓子店「とらや」です。今回のポッドキャストは、株式会社虎屋 18代目、代表取締役社長の黒川 光晴さんをゲストにお迎えしました。

お客様から深く愛され続けながら、時に従来のやり方を変えてでも進化の道を歩む。

何百年もの間、大切に守られ続けるカルチャー、そして時代とともに変化を恐れず進化する姿勢。黒川さんのお話を聞いて、人や企業が長く、力強く存在し続けるための本質的な要素とは何なのか、少し見えてきたように感じました。

「とらや」が絶対に譲らない軸は、驚くほどシンプルなものでしたが、企業の在るべき姿を明確に示しているものであり、この軸があるからこそ、お客様から長く愛され続けているのだと思います。

そして、200年以上も前に制定された「バリュー」や「掟書(おきてがき)」には、業界に関係なく、現代に生きる僕たちが大切にしたい言葉たちがたくさん綴られていました。

【ハイライト】

  • いつから虎屋の跡継ぎを意識しはじめたのか
  • アメリカのビジネススクールで学んだこと
  • 1805年に定められた「掟書(おきてがき)」について
  • 伝統を守りながらも、変化するべきこととは
  • 事業の「コア」をアップデートするための新しい試み
  • 数百年以上も続く事業の成功の秘訣

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ハングリーであること、恐れていること

Sequoia Heritage Keith Johnson、Sequoia Capital Doug Leone、Snowflake Frank Slootman、Kleiner Perkins Mamoon Hamid……

僕は、彼らのような尊敬する経営者やリーダーの方たちと直接話す機会に恵まれてきた。これは本当に、本当に光栄なことで、今もなお、彼らとの時間を思い返すだけで、興奮を覚えるほどだ。

彼らは、それぞれが独自の視点と経験を持っていて、性格も全く違う。でも一つだけ。彼ら全員に共通する特徴がある。それは、飽くなきハングリー精神を持っていること。彼らのハングリー精神は、より多くの富を得るためでも、大勢の人からの賞賛を得るためでもなく、卓越性、パフォーマンス、そして真実に対する執着心からきているのだと、僕は感じている。

Doug Leoneが以前、こんな話をしていた:

#2であることは勝つことではない。#2であるということは、#1になることに敗北したということだ。

Dougのメッセージはとても明確で、「最善を尽くさないことは選択肢ではない」ということ。この言葉は、僕に深く響いて、今も投資チームのマントラとなっている。

ハングリーであることで、恥をかくことや間違いを指摘されること、未知の領域に挑戦することに対する怖さを、全て振り払うことができる。フィードバックを渇望して、更なる成長のための道を絶えず探求することになる。

僕が以前、ある支援先の組織診断を実施して、企業の代表である起業家にその診断結果をフィードバックしたとき、彼が真っ先にした質問は、「僕たちは、ナンバーワンですか?」だった。とにかくパフォーマンスを向上したい、真実に向き合いたい。こういうスタンスを持つ経営者は、間違いなく大成功するだろう。

ハングリーであることに対する恐れ

この情熱は、このこだわりは、人を遠ざけてしまうのだろうか?
要求が多すぎると思われるだろうか?

以前の僕は、「ハングリー精神」そのものに恐怖を抱いていた。でも、Frank Slootmanの言葉が、その恐怖を消し去った。

“ You can push the standards in every meeting, every email, every slack. You should AMP IT UP in every interaction. Don’t be afraid that people will leave you because of your intensity. Because the best people will stay.”

「一つひとつの会議やメール、スラックで、基準は常に押し上げることができる。すべての対話の中で、物事を磨き、強化しようとするべきだ。あなたが、強烈なまでの情熱、こだわりを持つことによって人々が去ることを恐れないでほしい。最高の人々は、あなたのそばに残るから」

重要なのは、自分、そして周りに対して、誠実であること。情熱やこだわりを共有して、ミッションを理解する人々に囲まれることが、より充実した環境を作れる方法なのだと思う。

“WHY”の重要性

強力なハングリー精神には、明確な “WHY” の意識が必要だ。その理由は、大きく2つある。

まず一つは、あなたの強烈さの根本にあるものが何なのか、なぜ必要なのかを周りの人が理解できるよう、コンテクストを提供する。この努力を蔑ろにすれば、その強烈さも「クレイジー」だと捉えられてしまうかもしれない。

そしてもう一つは、困難な場面に直面したとき、明確な “WHY” は、あなたの『強さの源』になる。人には必ず、辛いと感じる時があるだろう。「なぜ自分はこんなに頑張るのだろう?」と思うことだってあるだろう。そんな時、明確な “WHY” を持つことで強い自分を維持できるだろう。

情熱と生活のバランス

卓越性を追求する道は、困難に満ちている。生活とのバランスを見つけるのも非常に難しい。Jeff Bezosが言うように、仕事と生活を単純にバランスさせるのではなく、二つの間の調和を求める必要がある。

今でも僕は、この調和を見つけるのに苦労をしている。自分を少しストレッチさせ過ぎているかもしれない。「自分は本当にこのまま続けるべきなのだろうか?」と自分を疑うことさえある。

そういうとき、僕は一時的に減速して “WHY” に立ち戻っている。

少なくともこの調和を生み出すためには、ライフパートナー、そしてビジネスパートナーたちと自分のミッションを共有し、同じ方向を目指すことが大切なのだと思う。僕は、パートナーたちの支えなしでは、間違いなく、今、この場所にはいない。

ジャーニーであり、目的地ではない

「僕のハングリー精神は十分なのか?」「もっとできるのではないのか?」
自分を疑う場面は山ほどあるし、「ハングリー精神を持つべきだ!」などと僕が書くこと自体、ふさわしくないのかもしれない。

ただ、自分は、果たしたいこと、果たすべきことから、まだまだほど遠い場所にいることは間違いない。今の自分は、まだ進化と成長を続けるジャーニーの途中にいる。

僕の “WHY” の中心には、いつもALL STAR SAAS FUNDが在る。そして、このジャーニーを続けられているのは、僕たちを信じてくれている起業家や投資家、メンターの皆さん、応援してくださっている全ての方達がいてくださってこそであり、本当に、本当に感謝でいっぱいだ。

偉大な何かを達成するためのハングリーさは、意識的な選択だと思う。自分を満たすため、夢を実現するための方法は無数にある。だから、もし、このハングリー精神に共感してくれた起業家や、「ハングリーなVCになりたい」と感じた人がいれば、僕に連絡をしてほしい。

決して簡単ではないし、苦労はするだろう。だけど、一緒にいれば、お互いを高め合うことができるし、勝利をより確実なものにできると信じている。

ハングリーなVCになりたい方はこちらを通してご連絡を

(記事の編集してくれたkobajenneに感謝)

人と会社の「コンテクスト」が魔法を起こす

Great vision without great people is irrelevant
(偉大なビジョンは、偉大な人々がいなければ意味がない) 
~ Jim Collins

スタートアップには、一人の「人」の動機や強みと、スタートアップのビジョンや戦略が、完全に一致する、 “魔法の瞬間” を迎えることがある。

その瞬間をキャッチしたら、その人は、まるでスーパースターを獲った無敵状態のヒーローになったかのように、勝利を重ね続ける。ALL STAR SAAS FUNDがタレント支援活動をさせてもらっている中で、僕は幸いにも、そんな魔法の瞬間に何度か出会したことがある。

成長と勝利をし続ける人が多いスタートアップは、会社もまた同様に成長し続け、勝利し続ける。

「それはそうだろう」と思う人も多いだろう。

でも想像してみてほしい。「自分が描くゴール」と「相手の本当の望み」が完全に、完全に一致する経験をしてきた人は、いったいどのくらいいるのだろう?ましてやそれが、「人」と「会社」の間で起こる確率を考えたら……。

だから、僕はこの瞬間を「奇跡のようだ」とさえ思う。

コンテクストを理解する

この魔法を引き起こすためには、どうしたら良いのだろう。
そこに、再現性はあるのだろうか。

そんなことを考えるようになって、「もしかしたら、コンテクスト(背景)の理解」が一番大事なのかもしれない、という回答にたどり着いた。ここからは、会社が人のコンテクストを理解するためにできることをブレイクダウンしていこうと思う。

人生で何を達成しようとしているのか。根底にある動機は何か。何が彼らを幸せにして、何が彼らを苦しめているのか。

僕たちが、普段(起業家や採用などの)面談で話をする時、これらの答えのヒントを探るため、【相手の成長過程】についての話をすることがある。その人は、どんな幼少期を過ごして、学生時代はどんな生活をしていたのか。家族との関係はどうだったのか……。若い頃の自分の経験は、その人の『人格』を創り上げたコンテクストが隠れていることが多いからだ。なかでも僕がよく聞く質問を3つ紹介する。

転んだ時、あなたはどうする?

人は、挑戦し続ける限り必ず、転ぶ。

この転んだ時のエピソードは、その人の『原動力』を知るきっかけになり、また、転んだ時の思考プロセスを理解するためのヒントも隠れている。

社会人になってからでも学生の頃の話でもよいので、その人が挫折、絶望を感じた時のエピソードを聞いてみよう。この時、こんなポイントに注目してみて欲しい。

立ち直りのプロセス:転んだとき、何を考え、どう立ち上がったのか。
圧倒的な努力で乗り越えたのか?人を巻き込んで乗り越えたのか。
直感的に動くタイプなのか?慎重に考えて動くタイプなのか?

立ち上がる理由:転んだ後になぜ立ち上がろうとしたかの理由を知ることができると、「その人を動かす原動力は何なのか」を知ることができる。単なる負けず嫌いだから?完璧主義者や責任感が強いから?成長のプロセスが楽しいから?それとも失望させたくない相手が存在するから?

回答自体に、正解・不正解は存在しない。
立ちはだかる困難を乗り越えるためのその人なりの「成功の型」、そして転んでも立ち上がろうとする原動力が何なのかを探りたい。

触れて欲しくない “トリガー” は何か?

ストレスを感じるポイントは人それぞれ。

ストレスは、「その人が何に敏感で、何にこだわりがあるのか」を理解するヒントになる。裏を返せば、根源となる強みを理解できるようになる。注目するポイントはここだ。

なぜ触れてほしくないのか?:過去のトラウマや失敗からきているのか。こだわりからきているのか。それとも何かに対する苦手意識からきているのか?

ストレスと感じた時、どうしている?:そのストレスを感じたとき、解決に向けてすぐに行動を取るのか、それとも我慢をするのか?感情は見せるのか、それとも抑えるのか?

ストレスを感じる理由から、その人の価値観が見えてきたり、ストレスとの向き合い方や対処法で、本人のコミュニケーションスタイルなどが見えてきたりする。

人生のKPIは何か?

人には、最大化、または最小化させたいと思っている「指標」がある。

それは「お金」かもしれないし「子供との時間」かもしれない。ここもまた、間違った答えは存在しない。重要なのは、そのKPIを設定した背景、そしてそのKPIを最大化させるためにどんな行動を取っているかだ。

KPIを知ることで、本人のモチベーションの軸を理解できるようになる。お互いのKPIを開示することができれば、信頼関係を構築するきっかけにもなる。この質問は、とてもパワフルな質問で、僕が一番好きな質問、かもしれない。

整合性をはかる

「人のコンテクスト」を理解することができたら、次に自分たちの会社が掲げているビジョンや環境と一致しているのかを振り返ってみてほしい。

  • その人の判断基準 ⇔ 会社のバリュー
  • その人のコミュニケーションスタイル ⇔ チームとの相性
  • その人の壁を乗り越える型 ⇔ 会社の環境や上司のマネジメントスタイル
  • その人のKPI ⇔ 会社がそのKPIに貢献できるか
  • その人の価値観 ⇔ 会社とのマッチ度やその価値観を活かせられるか

一つひとつの整合性を確認していくと、最終的なマッチ度が見えてくるだろう。もちろん100%マッチすることはなかなか難しい。でも、ここで大事なのは【総合的にその人が会社で成功するイメージが湧くかどうか】だ。

密度の高い対話と相手を理解しようとする強い姿勢、そして、それぞれの価値観と目標が同じ方向を向いているかを評価するための時間……「魔法の瞬間」を迎えることは簡単なことではない。間違えることも沢山あるだろう。だけど、この瞬間が生まれた数だけ、人も会社も成長することは間違いない。だからこそ、僕も永遠のテーマの一つとして努力を続ける価値があると思っている。

そして、ここまで読んでくれた人に一言!!

ALL STAR SAAS FUNDでは、支援先が、より強い組織を築いていくために、人とスタートアップの出会いを作り、支援する「HR Partner」を募集しています!「魔法の瞬間」を迎えるためにスタートアップと一緒になって活動をするハートフルでやりがいのあるポジションです。少しでも興味ある方はご連絡ください。募集中のポジションについての詳細はこちらです!ご連絡お待ちしています!


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あのとき組織が壊れなかったのは、「経営のリズム」と「明るさ」があったからだった。

今回は、わずか一年で従業員数が3倍以上に増え、最近38.5億円の資金調達を実現したhacomonoのCEO 蓮田さんとCOO 平田さんとのエピソードをお届けします。

この急成長を支えたのは、蓮田さん自身のミッションへのこだわり、マネージャーの成長にフォーカスした組織づくり、そして平田さんの参画によって導入された経営のリズムがあったからだと蓮田さんは話します。

COO採用の進め方から、権限移譲のやり方まで。これまでの一年間の急成長を振り返りながら深く掘り下げます。蓮田さんと平田さんの経験に学ぶ、成長企業の成功のカギとは。

ハイライト

  • COOを探すべきだと思ったきっかけ
  • 経営は一人ではなく、チームで行うもの
  • 社長がCOO採用にコミットする必要性
  • COO採用の基準とその見極め方
  • 最初のミーティングのスタンスと、相手を巻き込む採用プロセス
  • COOへの権限移譲は、人間関係の構築が先
  • COOのキャッチアップには、トップダウンとボトムアップの両方がある
  • CEOからすぐに引き継げるものと引き継げないもの
  • チーム間の連携では、明るく前向きに話すことが重要
  • 従業員が12ヶ月で3倍増でも、組織が壊れなかった理由
  • 早い段階から定性的なメッセージの重要性を研ぎ澄ます
  • 問題が出てきたら、「マネージャーが成長する」ことを意識する
  • CxOの役割分担で互いにバックアップする
  • コア・コンピタンスを定義するタイミングとその会社への影響

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AIとSaaS — その戦略、事例、そして未来

(本記事はNotion AIを活用しています)

スマートフォンが、ウェブに新たな大きな波を作ったように、AIは、SaaS業界に大きな変革を起こすと思っている。

David Sacks

AIの発展、そしてGPTを活用したアプリ、サービスがどんどんと増えている昨今、その勢い、影響力はますます強まっている。なかでも、つい先日発表された「Notion AI」は、特に上手にAIを取り入れ、従来の利便性を保ちながらもユーザーに新たな価値を提供した例だろう。

このAIの波は、SaaS業界にも革新的な波をもたらしている。SaaS企業がAIを活用することで、より強力なプロダクトを提供し、普及を加速させられる可能性があると思う。今回は、AIを取り入れたサービス事例を紹介しながら、SaaS企業がAIを取り入れるときに考えるべきポイントにも触れていく。

AIの事例

AIを取り入れた最近のSaaSプロダクトを調べてみて、それらを大きく3つのカテゴリに分類してみた。

(1)プログラミングやカスタマーサポート業務などを自動化したりアシストしたりする「サジェスト/アシスト」カテゴリ

(2)大量のデータから重要なポイントのみを抜き出したり、サマライズする「サマライズ」カテゴリ

  • 会議内容のサマライズ (Vowel)
  • お問い合わせ内容などからフィードバックをサマライズ (betterfeedback)
  • 記事の要約 (Genei.io)

(3)画像、音楽、動画、コピーなどのクリエイティブを生成する「クリエイティブ」カテゴリ

SaaSの提供価値を高めて普及を加速する

僕は、AIとSaaSを切り離して別々のものとして見るのではなく、それぞれが “ソフトウェア” という世界の中の1つとして混ざり合うような感じになっていくのではないかと考えている。SaaS企業は、AIによってより多様にお客さまの課題を解決できるようになり、提供価値はさらに上がっていくことは間違いない。また、AIがドライブする新たなUXの実現によって、SaaSやソフトウェアの普及がもっと加速する可能性もある。

例えば、DBの構築や管理を求められてきたサービスは、AIによって自動化できる幅が広がることで、お客さま側の教育やベンダー側の工数を減らすことができ、より広い対象に向けてサービスを提供できるようになる。大量のデータを扱うサービスも、AIによってより使いやすく、簡単に使いこなせるようになる可能性だってある。

音声コマンドで、より高度で複雑な指示を出せるようになれば、PC環境でしか実現できなかったことを、ハンズフリーの環境でも使えるようになる。

AIの可能性は、無限にある。

Source: Foundation Models Are The New Public Cloud

AIもSaaSも基本戦略は変わらない

AIは、コモディティー化されていく前提で考えておくべきだろう。中長期目線でみれば、AIの精度やAIを取り入れていること自体を差別化要素にすることは難しくなる。

前述の通り、AIとSaaSは切り離して考えるのではなく「AIを取り入れたSaaS」として考える。そう考えれば、SaaSの基本戦略であるプロダクトのポジショニング、進化を続けるプロダクト、お客さまに寄り添った設計やUX、データやワークフローを押さえることが、引き続き重要であり続けることは明白だろう。

AIもSaaSもまだまだこれから

AIによって、SaaSはさらに大きな可能性を、そして市場にさらに大きなインパクトをもたらすだろう。

こうしている今も、世界中で多くのAIスタートアップが生まれて、新たな挑戦に挑む企業が登場している。でも現段階では、そのほとんどがアーリーアダプターの興味関心によって試されているような状態だ。これが実際の業務に本当に定着するのか、中長期で価値を提供し続けることができるのか。最適なUXは何か、十分な精度が備わっているのかなど、未知数な部分はまだまだ多い。

ただ、AIが多くの業界に「新たな変革の波」を起こすことは間違いないと思う。ソフトウェアの世界で挑戦する起業家のみんなにとっても「どのようにして自分たちのサービスにAIを取り入れられるのか」を考えるにはベストなタイミングだろう。

(Thank you kobajenne for editing this blog)


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「袖振り合う縁をも生かす」世界中で繋がりを生む「想い」と「姿勢」


佐藤 輝英さんとの出会いは、僕の人生を大きく変えた。
当時21才だった僕に、スタートアップ投資の機会を与えてくれた僕の恩師だ。あれから14年という月日が経過したけれど、僕は今も佐藤さんと一緒にスタートアップ投資の活動を続けさせてもらっている。

人を活かし共に活動するためにはどうすべきか。お金とはどう付き合うべきなのか。大切にしたい価値観や決断の仕方。これらすべてを佐藤さんの影響を受けて、学び、生きてきた。佐藤さんは、僕にとって初めての上司であり、人生のメンターであり、今では同じビジョンを共有するパートナーだ。

hiromaeda.comポッドキャストをはじめた頃から、「いつか佐藤さんとのセッションを録ろう」と思っていたが、ついに今回、2023年最初のセッションに佐藤さんを迎えることができた。こんな風にインタビュー形式で佐藤さんと対談したのはこれが初めて。

彼のスーパーパワーである「セレンディピティー」の生み出し方、人の可能性の見極め方など、(14年間なんとなく聞かずに終わっていた)僕がずっと聞いてみたかったことを根掘り葉掘り聞いてみたエピソード。世界中を飛び回り活動する佐藤さん自身が体験してきた「信頼」や「出逢い」の学びは、心にズンっと沁みる言葉が溢れていた。

ハイライト
  • Amazonやアリババから得たインスピレーション
  • 約15年間の「社長 佐藤輝英」を通して学んだ3つのこと
  • 上場が近づいた時に気をつけるべき「普通病」
  • 経営者が絶対忘れてはいけない一番大切な仕事とは
  • 会社の成長に直接的なインパクトを与えるのは、あなたの日常から離れた場所にあるということ
  • セレンディピティーがたくさんある理由
  • 佐藤さんにとっての「人格者」とは
  • 「得意淡然」「失意泰然」、感情のベルトを一定化する重要性
  • 前田ヒロが21歳の時
  • 人の可能性の見極め方
  • 信頼を築くときに、意識していること
  • お金との付き合い方。なぜ「自腹」にするのか。
  • もし、本を書くとしたら

ポッドキャスト編集してくれたkobajenneに感謝)


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差をつける、2023年

そもそも「予想する」ことは難しいことだけど、2023年の予想は特に難しい。

「リセッションは浅く、今年の前半に底を打つだろう」という比較的楽観的な予想もあれば、「2022年より深刻な状態になり、2024年に入ってからでないと回復の兆しはみられないだろう」という悲観的な予想も出ている。

まだまだ先行きが不透明なこの1年、僕たちはどのように突き進んでいくべきか。

起業家たちからもらう質問の中でも、もっとも多い質問の一つなので、僕なりの答えをブログにまとめてみようと思う。

強いのか?それとも弱いのか?

自分が経営するスタートアップの状態は「強い」のか「弱い」のか

同じフェーズのスタートアップと相対的にみて、KPIの進捗、ユニットエコノミクス、財務状況、組織の状態はどうか。もう一度見つめ直してみてほしい。

強い状態でいることは当然だ、と思う人も多いだろう。でも、変化の激しい市況の中で「強く有望な企業」でい続けるためには、一つの視点にとらわれず、その変化に順応できる“秀でた強さ”が必要だ。

既存株主にVCが入っているのであれば、「僕たちは今、強い状態にあるのか、有望だと感じるか」を聞いてみるのも良い。日々スタートアップを支援しているVCの視点で意見をもらえるだろう。

まだ株主がいなくても、VCが実施しているオフィスアワーや相談会などで話をする中で、自分たちの強さや弱さの気づきを得ることはできると思う。自分たちから見える景色だけでなく、俯瞰的な意見もぜひ取り入れて見つめ直してみてほしい。

その結果、自分たちが強く有望な状態であると考えるのであれば、市況にかかわらず攻めのスタンスをとっても良いと思っている。資金調達の面においても、強く有望なスタートアップならば調達を成功させられる可能性は十分ある。

一方、「弱さ」が見えたスタートアップは、「強く有望」なスタートアップになるために何をすべきなのか、既存計画の見直しの必要性などを含めて考えるところからスタートしてみてほしい。

大切なことなのでもう一度。とくに市況の変化が激しい時期は、「強さ」を測る投資家の基準やセンチメントも頻繁に変わるので、株主はもちろん、これから関係を築いていきたいVCや投資家たちと、自分たちの強さや有望さを確認する機会を定期的に設けよう。

C-90・60・10プランをつくる

達成確度 90%、60%、10%ごとのプランをつくる
※この「C」は「Confidence(自信度)」を表す

これは、北米のSaaS特化VC SaaStr が推奨しているファイナンシャルプランの立て方。

(参照:SaaStr「The 3 Financial Plans You Need for The Year: C-90, C-60 and C-10 (Updated) 」内のスライドを日本語に翻訳したもの)

まずベースプランとなる「C-60」をつくる。「それ以上だとストレッチが足りない、それ以下だとリスクが高すぎる」というちょうど良いバランスで設定する。

そして「C-90」。これは悲観的なシナリオになったとしても十分に資金が確保できるのか、ランウェイを確保できるのかを確認するためのもの。全社に共有するためではなく、あくまでも経営陣の中で共有するためのプランだ。つくり方は比較的簡単で、ベースプラン(C-60)から売上を20%程度カットした数字を設定する。

「C-10」は、よりストレッチさせたプラン。ベースプラン「C-60」よりも20%ほど上回った数字を設定する。例えば、年度成長率100%が「C-60」であれば、「C-10」は年度成長率120%を設定する。ちなみに僕の個人的な考えとしては、SaaStrが推奨する達成確度10%〜20%というのは、少々ストレッチしすぎているように感じている。「C-30」くらいに調整してみても良いのでは、と思う。

プロダクトは、命

プロダクトの予算は、可能な限りカットしない方が良い

予算の見直しでコストカットを実施するとき、全体を均等にカットしようとする企業をよく見かける。でも、プロダクトは攻め続けるべき。プロダクトは、スタートアップにとって命であり、差別化を実現できる非常に重要な要素だ。プロダクトが劣ってしまうと、景気が回復したときにも大きな不利になってしまう恐れがある。

現実の理解

向き合うべきは、あなたの現実

SnowflakeのFrank Slootmanに、不景気にどう対処すべきかと聞いたとき、彼のアドバイスは「ニュースに振り回されず、ビジネスの中で起きていることだけに反応すべき」だった。市場はあまりに大きく複雑。だから、マクロ経済が悪かったとしても、自分が取り組んでいるビジネスや市場には全く影響がないということだってあり得るのだ。

「あなたの現実は、隣の人とはまったく異なるかもしれません」~ Frank Slootman

今年の予算は、どんな状態か?
抱えている課題のトップ3は、何か?
お客さまは、何を考えているのか?

不透明な市況に右往左往するよりも、これらの理解を徹底的にアップデートすべき。

自分とお客さまの状況を客観的にみてしっかり理解し、それらを基にアクションを取るべきなのだ。

晴天では15台も追い越せない……でも、雨天なら追い越せる。

“You cannot overtake 15 cars in sunny weather…but you can when it’s raining.”

F1界のレジェンド、アイルトン・セナ氏の言葉。

環境が良ければ、誰もがアクセルを踏む。採用もマーケティングも、みんなが先行投資をする。そのような中で差を生み出すのはなかなか難しい。

ならば、今僕たちがいる環境は、強い会社がより強くなる絶好のチャンスだと捉えてみたい。PMFを達成し、ユニットエコノミクス、財務状況を改善して、プロダクトを強化する。競合との差をつけるなら、今だ。

(記事の編集してくれたkobajenneに感謝)


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恐怖に向かって走る

人は、恐怖を避けようとする。

恐怖を感じた時、多くの人は、その恐怖を無視することができなくなるまで放置するか、その恐怖について考えようともせずに、恐怖から逃げようとする。

僕自身も、同じことをしてしまいがちだった。今でも、課題や問題が現れそうな時、「もう少し待てば状況は良くなる。時間が状況を良くしてくれる。」と楽観的で安易な考えを持って、簡単な選択をしてしまう時がある。

そもそもなぜ、人は恐怖から逃げようとするのか?それは、3つの理由のどれかに当てはまるのではないかと思う。

  1. 感情的なストレスを避けたい。エネルギーも奪われるし、気持ちの良い物ではないから。
  2. 嫌われたくない。誰かを不快な気持ちにさせたくない。
  3. 自分が失敗したという事実を作りたくない。その可能性が少しでもあるなら避けたい。

この3つのことを考えるだけでも、一歩踏み出そうという気は失せる。

でも、これまで僕が「本当に素晴らしい」と感じ、尊敬するリーダーたちは、みんな「恐怖に向かって走る」人たちだ。彼らは、自身や会社の課題を発見するスピード、対策を打ち推進するスピード、全てが速い。だから、進化と成長スピードの速い会社を経営できている。

今回のブログでは、恐怖への立ち向かい方、について伝えよう。

まず最初に、人は「恐怖やリスクを過大評価してしまう」ということを理解しなくてはいけない。著名な心理学者 ダニエル・カーネマン の本 によると、判断をする場面で、人は、悪い結果やリスク、失う物にフォーカスし過ぎてしまう傾向があるという。悪いシナリオが起きる確率を過大評価してしまい、上手くいくシナリオを過小評価してしまう。恐怖やリスクが、頭の中で必要以上に強調されてしまうのだ。

でも振り返ってみてほしい。勇気を振り絞って恐怖に立ち向かってみたら、こんな結果になったことはないだろうか?

  • 実際やってみたら、想像していたほど恐れる必要もないことだった。
  • 行動に移してみたら、それまで恐怖だと思っていたものが恐怖ではなくなった。
  • 想定通りの結果にはならなかったけれど、自分の姿勢や言動によって、信頼を得ることができた。
  • 今回の結果は悪かったかもしれないけれど、自分がより前向きにポジティブになることができた気がする。

そう。つまり自分が恐れ、避けていたことの大部分は「もっと早くに向き合うべきだった」ことである可能性が高く、もっと早くに向き合わなかったことへの後悔に繋がることが多いのだ。

では、恐怖を感じてそこから逃げたいと思ってしまった時はどうすれば良いのか。僕は、こんな順番で自分の思考を整理している。

  1. 様々な判断や行動を考えて、それぞれのシナリオをできる限り詳細にシミュレーションする。
  2. シミュレーションのなかで恐怖を感じる要素があったら、「恐怖を過大評価しているのでは?」と自分に問いかけてみる。その上で、恐怖に対する対策を考える。
  3. その結果の自分の決断が、「一番簡単な選択肢ではなく、一番正しい選択肢である」かどうかを再度確認してみる。

このプロセスを進めていくと、恐怖への立ち向かい方が変わってくる。

ただ、一人でこのプロセスを進めることは、かなりの練習とマインドセットの変化が必要になる。人は一人だと、どうしても楽しくて、希望を感じるテーマに目が行きがちになるから。こればかりは、人間だから仕方ない。

そんな時は、コーチやメンターと一緒に恐怖に立ち向かう、という方法もあるだろう。客観的な考えを伝えてくれるパートナーがいることで、より深いところまで考え抜くことができるから。

今度、恐怖を感じることがあったら、その恐怖から逃げるのではなく、恐怖に向かって走ってみてほしい。逃げるよりは、良い結果にたどり着けるはずだ。
最後に。自分自身で、またはコーチと一緒に恐怖に向き合おう、向き合ってみたいと考えている人に、観てほしいセッションがある。11月17日(木)に僕たちが開催する ALL STAR SAAS CONFERENCE で、Coinbase、Notion、Reddit、OpenAIなどのCEOが実際に受けているコーチングメソッド「Mochary Method」からスピーカーを招聘し、恐怖に立ち向かうためのコーチングテクニックについてディスカッションをする。このセッションを観た後は、きっと「恐怖への向き合い方」に対する意識、考えがさらに変わるはずだ。

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(記事の編集してくれたkobajenneに感謝)


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