Y Combinator Demo Day から感じたSaaSトレンド

今年も3月20日から3日間「第24回 Y Combinator Demo Day」が開催された。僕にとってはこれが10回目の参加。今回も電動飛行機や印刷ができるOLEDなど、100を超えるスタートアップによる興味深いプレゼンテーションの数々が繰り広げられた。
そこで今日は、Demo Dayから感じたSaaSのトレンドについて書いてみようと思う。

音声認識を使ったSaaS
音声認識を応用した新たなソリューションを提供しているSaaSスタートアップが2社あった。Clover Intelligenceは、営業電話の内容を分析し営業スクリプトの最適化やコーチングを行うサービス。Tetraは、会議の音声を記録し議事録に落とし込むサービス。

様々なセンサーの精度が上がると同時に、音声やジェスチャー等で画面の無いインターフェースのSaaSソリューションは今後もどんどん増えるだろう。

SDRのリプレイス
問い合わせや営業電話で獲得したリード(案件)を営業マンに渡すSDR業務の委託を受けたり、自動化させるサービスが多数あった。Scribeは、企業の問い合わせフォームから問い合わせをしてきた顧客を分析し、その顧客が有料ユーザーになる確率を自動でランク付けするサービス。RileyはSDR業務をクラウドワーカーに委託できるサービスで、Upcallは営業電話を委託できるサービス。

こういったSaaS企業向けのSaaSはサブスクリプションマネージメントのZuoraや、カスタマーサクセスのGainsightを筆頭に次々と現れている。すでにこの分野はレッドオーシャン化しつつある。

SaaS / マーケットプレイスのハイブリッド
導入ポイントはSaaSと同じだが、マーケットプレイスの要素を持つスタートアップも多かった。Hivyは総務の仕事を一元管理できるSaaSで、マーケットプレイスから名刺の発注やフードデリバリー、石鹸の購入などができる。Algorizはトレーダーが簡単にアルゴリズムを作りテストすることができるツールで、アルゴリズムを購入できるマーケットプレイスも提供している。

ハイブリッドモデルの優れた点は、マーケットプレイスのネットワーク効果によって参入障壁を強化させることができること、そして手数料による収益など、SaaS以外のところで利益を上げることができること。こういったハイブリッドモデルのSaaSビジネスは今後も注目したい。

MLが活用したSaaS
マシンラーニング(ML)を活用したSaaSもいくつか発表された。Quikiは、カスタマーサポートのチャットやメールログ内容を解析し、自動でFAQ(よくある質問)ページを自動生成する。Bicycle AIは、カスタマーサポートをA.I化するソリューション。

MLを活用したSaaSはここ数年で特に増えている分野だ。MLの活用は今後どの業界でも必須になり、さらに加速していくだろう。

現場が使えるSaaS
工事や製造の現場に携わる人間が、主にスマホを使って活用できるSaaSも多数あった。従業員が、ビルや工場の管理・メンテナンスをスマホやPCから行えるUpkeep。そして工事現場にいる従業員がスマホを使ってプロジェクトやタスクの管理ができるサービスFIBO

今後はスマホだけでなく、IoTやARを活用したソリューションによって現場の人間の業務効率化を実現させるサービスが増加していくだろう。

以上が「第24回 Y Combinator Demo Day」のSaaSトレンド。特に「SaaS / マーケットプレイスのハイブリッド」「MLを活用したSaaS」と「現場でも使えるSaaS」は、日本でも注目したい分野である。

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MRR 革命!月額課金に転換したAdobeやMicrosoft、そして日本でも。

ソフトウェアのライセンス販売で展開してきた Adobe が月額課金サービスを発表し、Microsoft もOfficeの月額課金プラン〈Office 365〉を発表。さらにAmazonの〈Amazon Prime〉やAppleの〈Apple Music〉など、特にここ5〜6年前から、一度きり課金モデルから月額課金制へと課金モデルを次々と転換する企業が増えている。

なぜ MRRへの転換が起きているのか?
この転換が起きている理由はいくつかある。

テクノロジー:従来ソフトウェアを提供するためには、物理的にパッケージを販売し、インストールする必要があったが、今ではクラウド上でサービスを提供したり、ソフトウェアを配布することができる。これによって導入や販売コスト、そしてメンテナンスコストを格段に下げることができるようになった。

顧客からの需要:パッケージ販売は一度きりの関係性のため、販売後、サービスを提供する側から継続的に顧客サポートを行うインセンティブが低い。これが月額課金制にすることにより「いかに継続的に長く使ってもらうか」が企業にとって重要なポイントとなるため、顧客の満足度を導入後も維持させないといけないというインセンティブが強く働く。
また、”導入コストゼロ” の月額課金制にすることによって、顧客は自分が利用した分だけサービス利用料を支払うという、よりフレキシブルな料金体系を提供することが可能になる。

ウォールストリートが好む:月額課金モデルはソフトウェア販売と違ってボラティリティーが小さく、売上予測がしやすい。これにより、業績予想も外しにくく、企業の評価もしやすくなる。

Adobeの株価が4倍近くに
Adobeが2012年4月に月額課金制の〈Creative Cloud〉を発表した日から、株価は4倍近くに上がり、月額課金のビジネスが年間売上4000億円以上までに伸びている。2012年、月額課金による売上は全体売上の27%しかなかったところが、今では8割以上を占めるまでに成長した。


Adobe社の株価グラフ


月額課金ビジネスのARR(年間契約金)のグラフ。今では年間4000億円以上のビジネスに。

Adobe全体売上の8割以上が月額課金制

日本でも創業20年の企業が
日本でも同じような動きを見ることができる。さまざまな企業向けツールをパッケージやライセンスで販売していた Cybozu も月額課金モデル展開を始めており、クラウドサービスによる売上の割合が5割を超えている。

参考までに、Cybozu が展開しているプロダクトの一つ〈ガルーン〉のライセンス版とクラウド版の料金体系の違いは以下である。

ライセンス版:初期費用に加えてアップグレード時に支払うライセンス費用や、継続ライセンス費用などがある。

クラウド版:初期費用なし、アップグレード費用なし、ユーザー数に応じて課金されていくわかりやすい料金体系。

既存プレイヤーがMRRモデルに転換し、同時に次々とTo BでもTo Cでも新たなサブスクリプションビジネスが生まれている。近い将来、ほぼ全てのサービスが月額課金制になるだろう。

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未上場のSaaS企業336社をベンチマーキング。ACVによって変わっていく営業戦略

2016年10月 Pacific Crest が発表した、未上場SaaS企業336社を対象に行ったアンケート調査の結果をまとめた資料が興味深かったので、要点をまとめてみたいと思う。
まずこの調査に参加した企業について:

  • 75%は北米を拠点としている企業
  • 社員数15名以下で年間売上$750K (約8400万円) 以下の会社から、社員数500名以上、売上$100M (約112億円) 以上まで、企業規模はさまざま
  • 年間売上の中央値は$5M(約5.6億円)で、社員数の中央値は50人ほど

従業員1人あたりの年間売上の中央値は$130K: これは売上$2.5M(2.8億円)以下の企業を除いた中央値。従業員1人あたりの売上は、年間売上$15M~$25M(16.8億円~28億円)の企業で$133K(1500万円)、年間売上$100M(112億円)以上の企業で$214K(2400万円)になる。

平均年間成長率の中央値は35%: 平均成長率が60%を超えるのは、年間売上$7.5M〜$15M(8.4億円~16.8億円)の企業。これをACV(一顧客あたりの平均年間契約金額)別にすると、ACV$15K〜$25K(168万円~280万円)の企業が一番成長スピードが高く、平均年間成長率の中央値も年間50%になっている。

規模が小さい時はInside Salesが中心、規模が大きくなったらField Salesを中心に: 44%の企業は、年間売上$2.5M(2.8億円)を超えた時点で営業手法を Field Sales にシフトしている。

特に面白いと思ったのはACV別に見たとき。ACVが小さい会社の営業手法は、Inside Sales(会社の外ではなく電話やオンラインで行う営業のアプローチ)やセルフサーブの割合が大きいが、ACVが$25K(280万円)を超えたところから、Field Sales(会社の外に出て潜在顧客と直接会う営業のアプローチ)が中心になっていることが分かる。

マーケティングとセールスとの内訳は7:3 : CAC(顧客獲得コスト)の内訳を見ると、マーケティング(マーケティングの人件費も含まれる)のコストはCACの30%、そしてセールス(営業メンバーの人件費も含まれる)のコストがCACの70%。この比率は、営業手法に関わらず同じ結果だった。

CACの回収期間の中央値は18ヶ月: 一顧客にかかった獲得コストを回収するまでには、18ヶ月間かかっている。なお一般的に望ましいとされている回収期間は、ACV$12K (134万円)未満の場合が6ヶ月以内、ACV$12K〜$50K(134万円〜560万円)の場合は12ヶ月以内、そしてACV $50K(560万円) 以上の場合は24ヶ月以内と言われている。

年間グロスチャーンの中央値は8%: 年間グロスチャーンをACV別にみた場合、ACV$5K (56万円)以下の場合17.5%(月次1.46%)、ACV$250K(2800万円)以上だと3.3%(月次 0.27%)。このことから、ACVが上がるにつれて年間退会率が低くなっていることが分かる。

以上が Pacific Crest のレポートで僕が注目したポイントのサマリー。特に注目したのは、ACVによって営業手法や戦略、退会率、そしてCACの回収期間が変わるところだ。

十分なサンプルサイズになってきたら将来、日本のSaaS企業に絞ったレポートもまとめて見たいと思う。

※ Pacific Crestのレポートの全内容は、ここから ダウンロード できる。
※ グロスチャーンをはじめSaaSの重要キーワードリストはこちら。

為替レートは、2月26時点 $1=112円で換算

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注目SaaS企業20社のウェブサイトを見て分かったこと

Intercom、Workday、Gainsight、Salesforceなど注目の北米SaaS企業20社の料金ページとプロダクトページを見ていて、気づいたことをまとめてみようと思う。

提供しているプロダクトの数は平均して5つ
20社のSaaS企業が、平均して提供しているプロダクト・ソリューションの数は5つ。ShopifyやSurvey Monkeyのように、シングルプロダクトを提供していた企業はたったの3社。多いケースでは、Salesforceが20以上、Atlassianが12以上のプロダクトを提供していた。

70%の企業が、複数部署に展開できるプロダクトを提供している
例えばAtlassianでは、エンジニア向けのプロダクトだけでなく、カスタマーサービス向けのツールやプロジェクトマネージメント用のツール、複数の部署でも横断して使うことができるコラボレーションツールを展開している。このように、部署別に広くプロダクトを展開している企業が20社中14社。約70%を占めている。

45%がフリートライアルを提供、20%が無料プランを提供
SurveyMonkeyやBoxのように、セルフサーブ型の無料プランを提供している企業の多くは、そのプロダクトを1人で使っていても、そのプロダクトの価値を感じてもらえるサービスやプランを用意している。

一方で、BetterworksやGustoのように、フリートライアルを提供している企業は、複数人又は会社全体規模で導入されないと、プロダクト自体の価値を得られないというソリューションがほとんどだった。

料金を記載していなかった企業が45%
WorkdayやVeeva Systemsのように、大手企業を主なプロダクト提供先としている企業は、サービスプランや料金情報を掲載していないケースが多い。また、エンタープライズプランを提供していた企業の70%が料金を表示せずに、営業担当者への問い合わせを必須にしている。

平均して3.8個の料金プラン
複数の料金プランをサイトに掲載している企業は、平均して3.8個の料金プランを掲載している。これら企業は、SMBからエンタープライズまで、様々な企業規模の顧客を対象としてサービスを提供している企業がほとんど。

1人ユーザーあたりの月額単価は、平均して116ドル
料金プランをサイトに公開している会社のなかで、従業員数毎に課金しているケースを見てみると、低いところではGustoが1人当たり毎月6ドルを課金していて、高いところではSalesforceのSales Cloudが毎月1人300ドルを課金している。

以上がSaaS企業20社のサイトを見て分かったこと。

これらの内容から僕の見解をまとめると:
複数のプロダクトを出すことによっていくつかの戦略を取れるようになる。
1つは、企業への導入ポイントを増やせること。例えばHubspotの場合、セールスやCRM、マーケティングソフトなど、異なるビジネスニーズにフィットするプロダクトを展開することで導入ポイントを増やしており、Atlassianは、エンジニアやプロジェクトマネージャーが使うツールを複数展開して導入ポイントを増やしている。
もう1つは、複数の部署を巻き込めること。導入先企業が、複数の部署をまたいでプロダクトを使うことでロックイン(依存性)が高まる。例えばAppDyinamicsでは、ITスペシャリストやエンジニアが集まる部署だけでなく、経営企画やマーケティング関連の部署にもプロダクトを展開することによって、サービスへの依存性を高めている。

対象顧客の規模やサービスの特徴によって適切な対応手法が変わる。
1人で使っていてもそのプロダクトの価値を感じられるならば、セルフサーブや無料プランの提供でもサービスを拡めていくことができるだろう。でも、まとまった人数での利用、またはデータの蓄積が必要になるプロダクトで、大規模な導入となる場合は営業プロセスが複雑になるため、営業メンバーからの説明を必須にしたり、無料トライアル期間を設定することで、導入に繋がる確率をあげていく。

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A.I+SaaS:4つのモデルとスタートする時の注意点


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今さまざまな業界で、A.Iブームが到来しているのは言うまでもない。今回は、米大手VCのGreylock PartnersのSarah Guoが先日発表した、「A.I+SaaS」に関するプレゼン について、そしてA.Iスタートアップを立ち上げる時に考えるべきポイントについて書いていこうと思う。

「A.I+SaaS」4つのモデル
Sarah Guoのプレゼンによると、「A.I+SaaS」には主に4つのモデルがある:

1. 新しい情報を提供(提案)する
データを収集し機械学習を活用して、事業に必要な新しい情報を提供する。

例として:
Rhumbix – 建設現場の様々の情報(労働者のシフト、工材の受注発注等)を収集、解析し、生産性を上げる方法等を提案する。
Medallia – アンケートデータや電話のログ、購入データなどを解析し、顧客満足度とロイヤリティーの向上を提案する。
Orbital Insight – サテライトイメージを分析し、店舗へのトラフィック、国の経済成長率、原油在庫量等の情報を提供する。

2. ルールの置き換え
機械学習を活用し、より優れた発見や判別ルールを作る。

例として:
Cylance – マルウェアやサイバー攻撃を機械学習を活用して判別する。
Prosper – ローンの与信を機械学習を活用し判別する。
Clover – 病気の発症を早期に防ぐ、優れた健康保険。

3. アイアンマンスーツ
人のアウトプットを増幅する支援型A.I。

例として:
Inbox by Google – 返信メールの内容を予測し、より効率よくメール処理ができるようにする。
Awakens Network -サイバー攻撃に対応するオペレーションチームに対し、最適な対応方法を提示する。

4. 人のリプレイス
人が行うタスクを完全にリプレイスするA.I。

例として:
Clara – スケジューリング業務の置き換え。
AiCure – 適正な薬を摂取しているかを確認するタスクを画像認識で行う。

A.Iはプラットフォームではない

Sarahのプレゼンの中で「A.Iはプラットフォームではなく、差別化のための1つの要素にすぎない」という言葉があった。有能なA.Iを作っても、スタートアップが持つ全ての問題が解決されるわけではない。以下は、特に注意すべきポイントだ:

マーケット戦略が必要
A.Iスタートアップと話すときによく感じるのが、顧客獲得方法やポジショニングを含めたマーケット戦略が詳細に考え抜かれていないということ。先ほど述べたように、有能なA.Iを作っても勝手に人が集まるわけではない。戦略を立てて事業を遂行させるためには、他のSaaSスタートアップと同じくカスタマー・デベロップメント、プロダクトマーケットフィット、マーケティングやセールスオペレーションが必須だ。

残りの20%をA.Iで埋める必要があるか
A.Iスタートアップも、”LEAN” であるべきだ。できるだけ早い段階で、ユーザー検証とプロダクトマーケットフィットを確認する必要がある。
A.I.の完成度が100%だとしても、プロダクトマーケットフィットが100%達成できるわけではない。とすると、A.Iの精度が80%のときに、残りの20%を埋めるための研究と開発を半年以上続けるよりも、精度80%の段階でもMVP(実用最小限のサービスやプロダクト)を提供する方法を考えて、早めにプロダクトマーケットフィットの検証をすべきだ。
MVPを提供するときは、A.Iと人を組み合わせたソリューションとなることが多い。実例としては、パーソナルアシスタントA.iの「x.ai」が挙げられる。「x.ai」は、ベータローンチの段階で、A.I+人力でソリューションを提供して機械学習させている。

アルゴ勝負じゃなくデータ勝負
アルゴリズムよりも重要なのは、独自のデータ取得の手段。優良なアルゴリズムは徐々にオープンソース化されている。となると、差別化と参入障壁を生み出すのは、「データ」になる。他社よりもデータの量と質で勝る分野やポジショニングを狙っていく必要がある。

以上が「A.I+SaaS」の機会と立ち上げにあたっての注意点。これはあくまでも機械学習を取り入れたSaaSスタートアップについて述べている。A.Iに関連する技術が飛躍的なスピードで改善されているいま、もしかするとA.Iスタートアップの立ち上げ方についても近い将来大きな変革期を迎えるかもしれない。

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成功しているSaaS企業の価格設定とは?そして「死の谷」を避ける方法


Andreas Beutel

価格設定は、対象顧客の設定やセールスオペレーションの構築、そして目指すべき企業規模を決める上で重要なキーファクターとなる。今回はSaaSの価格設定において、考えておくべきポイントを書いていこうと思う。

成功しているSaaS企業の価格設定は?

以下の表は、Blossomstreetventuresが公開した、北米SaaS企業37社の上場時の売上、顧客数、そしてACV (一顧客あたりの年間平均単価)を一覧にしたものだ。

特に見て欲しいのは、Average Contract Size(以下、ACV)の列。高いところでは、2U (ACV 約11億円)、Veeva Systems (ACV 約8500万円)、Workday (ACV 約6900万円)などがあり、低いところでは、Lifelock (ACV 9千円)、Xactly (ACV 3万円) などがある。上記37社全体のACV 中央値は、$14,449(約160万円)。

ACV $15000〜$25000が “死の谷”!?

上の表をACV別にグラフ化すると、ACV$15,000〜$25,000の会社がないことが分かる。実は、ACV $5000〜$30,000は “死の谷” にハマりやすいと言われている。ここで言う「死の谷」とは、ACVと対象顧客がフィットせず売上の伸びが頭打ちとなり成長が止まる、またはビジネスモデルが破綻している、ということ。

しかし、自分が経営する会社のACVがACV$5,000〜$30,000だからと言って、”死の谷” に足を踏み込んでいるとは限らない。提供先となる企業の業種や業界によって、この “死の谷” となるACVが異なるからだ。実際上のグラフのように少ない数ではあるが、一般的に ”死の谷” と言われているACVでも、成功しているSaaS企業が存在している。

“死の谷” を避ける方法はあるのか。

仮に、年間売上50億円規模になることを目指す企業があるとしよう。ACVに応じて算出すると、この企業が必要とする顧客数は以下の通りとなる。

ACV ¥500,000の場合、10,000社の顧客が必要になる。ここで考えるべきは、「実際対象となる顧客数はどのくらいいるのか」。この答を求める際に考慮するべきポイントは、SaaSで独占的なマーケットシェアを取るのは難しい、と言うこと。創業18年のSalesforceでさえ、マーケットシェア19.7%と言われているのだ。

Source: Forbes

自社のACVに対してフィットする対象顧客数が、一体どのくらい存在しているのか。そして獲得できるであろう現実的なマーケットシェアから見ても、目指したい企業規模に成長させることができるのかを常に計算し、把握しておくことが重要だ。
もし、目指している規模に到達する前に頭打ちする可能性が見えたら、ACVを上げる(又は下げる)など価格設定戦略を見直す必要がある。

もう1つ考慮する必要があるポイントは、販売のプロセスがどのくらい複雑であるか。セルフサーブやインサイドセールスだけで完結するのであれば、低いACVでも成り立つだろう。しかし、販売のサイクルが長かったり、営業やカスタマーサクセスのタッチポイントが多かったりする場合、低いACVのままではゴールの達成は難しい。

段階的に。

もしも自社のACVが低すぎることが分かったとき、いきなり5倍以上のACVを狙うのではなく、機能拡充や営業プロセスの修正を行い、1.2倍、1.5倍、2倍というように段階的に見直していくことで、”死の谷” にハマることのない、企業になってほしい。

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チャーン(退会率)との戦い方


Hans Splinter

チャーンレート(退会率)を低く抑えることは、どのビジネスもが戦わないといけないこと。ほんの数パーセントの違いだけでもそのビジネスの成長率や利益率に大きくインパクトを与える。

下図は、ある企業の月次売上の推移。青い線は月次チャーンが2.5%の企業。赤い線は5%の企業。両社とも新規の売上成長率は全く同じだが、ビジネスの規模が大きくなればなるほど、差が開いていることが分かる。チャーンレートが高ければ高いほど成長するための時間とコストがかかるのは明らかだ。

チャーンと戦う時ときは、大きく3つのステップがある

Step 1: 「成功したユーザー体験」が何かを理解する

まずは、成功したユーザー体験を知ること。プロダクトやサービスを使ったことがあるユーザーへのインタビューを通じて、満足度の高いユーザーが、どういった体験をしているのかを理解する。

(成功したユーザー体験例)
B2B・・・「とあるタスクを〇〇分でできた」
コマース・・・「欲しい商品が購入できた」
ソーシャルアプリ・・・「特定の動作(いいね、コメント、お気に入り等)を行った」

もし分析できるユーザーデータがあるのであれば、アクティブ率が高いユーザーとそうでないユーザーの行動を登録からの時間軸で見てみると良い。そこから、アクティブ率が高いユーザーがどういう体験(行動)をしているのかを導き出していく。

(事例)
B2B・・・「導入から30日以内に社員データを70%以上記入している」
コマース・・・「登録から24時間以内に購入している」
ソーシャルアプリ・・・「登録から7日以内にお気に入りを10回押している」

Step 2: 成功したユーザー体験を提供する

チャーンレートが低いユーザーがどのようなユーザー体験(行動)をしているのかが理解できたら、その体験をできるだけ多くのユーザーに提供する方法を考えて実行する。これは、完全にマニュアル作業で良い。スケーラブルである必要は全くない。

(事例)
B2B・・・「導入から最初の30日はサポートやコンサルを手厚くする」
コマース・・・「商品をメールで提案する」
ソーシャルアプリ・・・「お気に入りに入れるコンテンツを提案する」

先ほど述べたように、この段階で自動化やスケーラビリティーを考える必要はない。なぜならこれは、チャーンレートを下げる施策の検証が主な目的だからだ。

Step 3: 再現性があり、スケーラブルなプロセスにする

Step 2で実施した内容が、チャーンレートを下げるための施策として有効であることが検証できたら、この施策を再現性のあるスケーラブルなプロセスにしていく。

(事例)
B2B・・・カスタマーサクセスのマニュアルを作って体制を大きくする
コマース・・・提案の自動化や品揃いを増やす体制をつくる
ソーシャルアプリ・・・パーソナライズされたコンテンツ増やす仕組みや体制をつくる

ベンチマーク

チャーンレートと戦う時に、同規模の顧客を対象にサービスを展開している企業や、同業他社のチャーンレートを把握できていると、自社のチャーンレートの状況を正しく理解することができたり、目指すべきチャーンレートを知ることができる。
例えばB2Bの場合、大企業向けのサービスなら月次チャーンレートは0.5~1%未満、中小企業向けのサービスなら3%~7%程度がベンチマークとなる。月額制コンテンツ課金サービスの場合は、月次チャーンが2%〜6%。サブスリプション型コマースの場合は、5%未満が望ましい。

これらが、常に続いていくチャーンレートとの戦いに備えて実践すべき3つのステップ。このステップ1〜3は、今後何度も何度も繰り返しまわしていくべきだ。

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B2B SaaSスタートアップへの投資基準


Fortune Brainstorm TECH 2014

ここ最近、僕はB2B SaaSスタートアップに出資する機会がとくに増えてきているので、自分の投資基準を一度書き上げてみようと思う。

僕が出資しているB2B SaaSスタートアップは、主にシード期のフェーズでMRR 0円〜500万円の間の企業が多い。まだローンチ前のプロダクトであることもあれば、ローンチして一年以上経過している場合もある。そんな中、僕が投資判断をするときに軸としているのは、この5つのポイントを信じられるかどうか、だ。

1) 顧客がサービスを愛してくれていること:スタートアップが提供しているサービスに対して、顧客の満足度が非常に高いこと。ローンチしてある程度時間が経過している場合は、Churn Rate (3%未満が望ましい)を見るし、あまり経過してない初期のベータ・プロダクトであれば、ユーザーのエンゲージメントを見る。そしてローンチ前であれば、顧客インタビューを通して予測する。

2) 対象顧客のTop 3の課題を解決していること:例えば、人事部長を説得して導入してもらうHR向けサービスを提供しているのであれば、その人事部長が日々感じているTop 3の課題を解決するソリューションでないといけない。そうでないと緊急度や重要度が低すぎてセールズサイクルが長くなったり、そもそもリーチすること自体が難しくなったりするからだ。

3) 世界レベルの開発スピード:僕が投資するとき、ここが一番気にしている部分だ。B2Bスタートアップは、既存顧客の満足度を高めるための機能開発、競合に対するポジショニングを固めるための開発、アップマーケット(大規模の顧客)に展開するための開発など、「開発」という言葉が常に隣にいる世界だ。開発スピードが勝負の鍵を握っていると言っても過言ではないと思う。だから、開発を外部に委託していたら、僕にとってはNG。
開発スピードは、技術メンバー単体のスキルだけでなく、優先順位の決め方、カスタマーフィードバックを効率よく取り入れる営業チームとカスタマーサクセスチーム、そして技術チーム間でのスムーズで効率的な連携が大きく影響する。

4) 社長が自ら売れること:社長がトップクラスの営業マンである必要はないが、まだ小規模なスタートアップならば、少なくとも最初の100社〜1000社は、社長が自ら営業する必要がある。そのためにも顧客に対しての理解力が必要不可欠だ。ターゲットユーザーを理解できていなければ、サービスを売ることなどできない。この、「自ら売れる力」を持っているかどうかは、かなり重要なポイントだ。

5) ARR 50億円のポテンシャル:大多数のスタートアップは、最初の段階ではACVが低い。最初のうちは低くても良いのだが、今後向上させることができて、将来的にはARR 50億円以上を見込める十分な市場規模であること。ARRの規模だけでなく、持続性のあるユニットエコノミックス(CACの回収期間が18カ月以内)等も重要になる。

ARR、MRR、ACVとは?分からない場合はこちらの記事をご覧ください。

以上が僕がシード期のSaaSスタートアップに投資する時に気にしているポイントだ。

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SaaSマーケティングでも無視できない「Jobs To Be Done」とは?

Matt Hodgesは、2008年から2014年までの6年間、Atlassian のコラボレーションビジネス(Hipchat と Confluence)のプロダクトマーケティングをリードし、年間売上60億円以上のビジネスにまで成長させた。そして現在は、SocialCapital、Bessemer Venture Partners、Iconiqなどから100億円以上を調達しているカスタマーコミュニケーションツール Intercom のマーケティングチームでシニアディレクターとして活躍しており、すでに1万3000件以上の導入実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMattとのセッション内容の一部をまとめてみた。
Intercomは最初、1つのプロダクトで4つのプライシングプランを提供するところから始まった。

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その頃のトップページは、以下のようなデザインだった。

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しかし今のIntercomは、「Acquire」「Engage」そして「Resolve」と言う3つのプロダクトに分けてそれぞれ違うプライシングモデルを提供している。

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Jobs To be Done

このように、1つのプロダクトだけでなく複数のプロダクトを提供するようになった背景には、「Jobs To Be Done」というフレームワークの存在がある。Intercomでは、この「Jobs To Be Done」を応用して取り入れているのだ。

「Jobs To Be Done」は、ハーバード大学の教授Clayton Christensenが生み出した、消費者のモチベーションを理解するためのフレームワーク。ポイントは、消費者は製品・サービスを「購入する」のではなく、自分の「用事(又は仕事)」)を片づけるために製品・サービスを「雇っている」ということだ(参考)。

例として挙げられる機能として、Intercomには、顧客が世界中のどこにいるのかが分かる 〈ライブマップ機能〉がある。

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この〈ライブマップ機能〉がどのように使われているのか、ユーザーの動向を観察した結果、ソーシャルメディアでの共有や、投資家にアピールするために使用されていたり、また、イベントでのPRツールとして利用されていることが分かった。

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ユーザー動向を “観察” することで、この〈ライブマップ機能〉が、どんな「仕事」のために「雇用」されているかを理解することができたのだ。

Intercomのユーザーが〈ライブマップ機能〉を「雇用」する理由は、自社のユーザーが世界中に拡大していることを上手く外部にアピールするという「仕事」をしてもらうためだった。Intercomは、この理解を元に機能改善に取り組んだ。

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そして完成したプロダクトは美しい見た目のほか、アニメーション付きでリアルタイムにアップデートされ、また、プレゼン時でも使える全画面表示機能や、ソーシャルメディアでも共有しやすいように個人データの非表示機能などが付くバージョンにアップグレードされた。

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その結果、さらに多くのユーザーが、この〈ライブマップ〉をソーシャルメディアで共有するようになった。

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“Focus on the job, not the customer”

マーケターとしてまず理解する必要があるのが、”人は、どんな「仕事」を片づけるために、プロダクトを「雇用」しているのか?” だ。それを理解するためには、たくさんのユーザーと話す必要がある。Intercom では、新規ユーザー、退会したユーザー、アクティブユーザー、非アクティブユーザーそれぞれにインタビューをした。

そしてユーザーは、主に3つの「仕事」を済ませるために Intercom を「雇用」していることが分かった。そこで、そのJob (仕事) を軸に、トップページやランディングページのデザインを変更し、プロダクトも3つに分けることになった。

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ランディングページは、Intercomを「雇用」することで、どんな「仕事」を済ますことができるかを明確に伝えられるようにデザインに変更し、細かい機能の説明など、この時点では “余分” な情報をすべて外した。

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マーケティングにも活用
プロダクトの「Jobs To Be Done」が理解できれば、マーケティング戦略にも活用することができる。

マーケティングは、主に5つの活動に分けられる。

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Reach: Intercomを「雇用」しそうな人たちにリーチをする活動。これはPR、イベントでの登壇やスポンサー、FacebookやGoogle広告といったチャネルでメッセージを発信する。

Attract: 顧客を呼び込む。これはブログを使ったコンテンツマーケティングや、本の出版、セミナー開催などから、潜在顧客を呼び込む。

Convince: リーチしたり、呼び込んだ顧客を説得する活動。主にランディングページの最適化や、成功事例をトップページに掲載するなどといった活動になる。

Educate: プロダクトを雇用してくれたユーザーが正しい使い方を行えるための教育。How-to動画や、プロダクトのデモ、ヘルプドキュメント等といった教育教材の用意や活動。

Delight:イベントの主催や高い頻度でのプロダクトアップデートなど、雇用したことを「喜び」に繋げるための活動。

まずは、Convinceから
スタートアップは、多くのマーケティング活動のなかで、どこから手をつけるべきなのか?まずは、ユーザーを説得するためのConvinceから始めるべきだ。そのためにも、ユーザーの「Jobs To Be Done」を理解し、言葉選びや適切なストーリーを伝えていくことが重要である。

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エンタープライズの変化とSaaSスタートアップの機会

Mamoon Hamidは、シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタル「Social Capital」のゼネラルパートナー。早期の段階で、BoxやSlack、IntercomといったB2B SaaSスタートアップへの投資を実行した実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMamoonとのセッション内容の一部をまとめてみた。
エンタープライス向けソフトウェアの変化
アメリカでは、時価総額1兆円を超えるエンタープライズ向けソフトウェア企業は10社しかない。そしてその10社の平均創業年数は30年。創業して成長させるには、ものすごい時間がかかる。

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エンタープライズ向けソフトウェアを提供する大手企業は、顧客に提供できるサービスやプロダクトを増やすために積極的に企業買収をしている。例えば、SAPのSuccessFactor買収や、SalesforceのExactTarget買収は記憶に新しいだろう。

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セールスチームによる営業活動、その後のソフトウェアのインストールやサーバー導入そして導入後メンテナンスなど、エンタープライズ向けソフトウェアを販売するためには、多くの時間や労力、費用、そして手間がかかる。そのためソフトウェアの購入単価は高くなり、結果、購入できる企業が限られてしまっていた。
しかし、ソフトウェアのクラウド化によって、顧客の獲得やサービスの提供、導入後メンテナンスを低コストで実現できるようになった。サービスを低価格で提供できるようになったことで、SaaSソリューションを購入できる対象顧客が一斉に拡大している。1995年時点では、対象顧客が20万社程度だったのに対して、2015年には2000万社にまで拡大した。そしてソフトウェアの平均単価は、12万ドルから1万ドルにまでいっきに下がった。また、導入コストが高かったために、複数のソリューションを1社の大手ベンダーのみから購入していた企業が、現在では、複数の企業からソリューションを購入する傾向に変化している。

市場の拡大、高利益率、VCやエンジェルの活発化、SaaSの経営ノウハウの成熟度レベルをみても、この時期にB2B SaaSの領域で起業することで、事業成功へのチャンスが格段に広がっていることが分かる。

SaaSスタートアップにとって重要な指標
1つはチャーンレート(退会率)。有料顧客の月次退会率が3%以上のサービスには投資できないし、良い事業はつくれない。退会率は、ユーザーの満足度やエンゲージメントを表す重要な指標だ。また、売上げ額が毎月3%以上下がるのであれば、事業を伸ばすために新しい売上げを3%以上獲得しなくてはならない。売り上げが1000万円程の企業にとってはたいしたインパクトはないが、売上げ額が40億円や100億円となったら、このチャーンのインパクトは無視できない。長期的に持続可能なビジネスをつくること自体が難しくなるからだ。

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もう1つは「Quick Ratio」を 4 にするべきだ。「Quick Ratio」とは、SaaSビジネスの成長の程度を計る指標。当月の増加収益(MRR増分)を、当月の減少収益(MRR減少分)で割った数値。方程式に割り出すと:

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となる

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プロダクトマーケットフィット
B2B SaaSが、プロダクトマーケットフィットを達成できたかどうかを見分ける方法の1つは、「ユーザーエンゲージメント」をみることだ。日常的に利用されるサービスであればDAU / MAUを見ると良い。業務用のソリューションであれば、WAU / MAUに着目すべき。これらの数字が、常に50%を超えているのなら、良い波に乗っていると言っていいだろう。気を付けてほしいのは、サービスによって適正な指標が変わるということだ。

もう1つは、オーガニックで獲得できた有料顧客がどれくらいいるのかだ。
毎月100ドル以上支払う有料顧客を100社以上オーガニックで獲得できていれば、それは「プロダクトマーケットフィットに近づいている」と思って良いだろう。

ボトムアップで自然に上がる
ACV(Annual Contract Value = 年間発注額が高いからといって、いきなりFortune 500や大規模の会社を狙ったサービスをつくるのは賢明ではない。まずは、中小企業を対象にサービスを展開して、自然と引っ張られるように大手企業に展開していくのが得策だろう。例えばZenefits社は、まずYconbinatorに参加しているスタートアップを最初の顧客として取り入れ、それぞれのスタートアップの成長とともに、大手企業への展開を段階的に進めていった。

Boxの場合は、大きな企業のなかでも、まず10名や20名程度の小規模な部署への導入から始めて、徐々に人数の多い部署へと展開していった。こうして、結果的に自然と会社全体でBoxが利用されるようになっていった。

SaaSの成長痛
SaaSスタートアップの初期の顧客は小規模な会社であることが多いため、セルフサーブでサービスを提供することができ、サポートやセールスチームがいなくても成り立たせることができる。しかし、従業員が100人または1000人いるような中規模〜大規模の企業を顧客に持つようになると、サポートやセールス、カスタマーサクセス、アカウントマネージャーなど、組織やオペレーションチームをつくることが不可欠になる。この「組織づくり」こそが、SaaS経営者がもっとも苦労することだろう。

プレイヤー / コーチ
最初にセールスチームやカスタマーサクセスチームをつくるときは、プレイヤーでありコーチにもなれる人材を採用するべきだ。なぜなら、初期の段階では顧客について学び、分析し、試行錯誤を繰り返しながら再現性のある「プレイブック」をつくらなくてはならないから。そして、そこからメンバーを増やし、他のメンバーに伝えていくコーチのような役割を果たさないといけないからだ。

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