編集長になれ

3年ほど前にSquareやTwitterを創業したジャック・ドーシーは、スタンフォード大学での講義で「CEOは会社の編集長になるべきだ」と語った。

ジャックは、3つの編集ポイントが大事だと言う。

一つ目はチーム。最高な仕事ができるように最高なチームになるための編集をする。新しい人材を入れたり、時には外したりする。これによってネガティブ要素を取り除いていくのだ。

二つ目はコミュニケーション。社外に対しては、ユーザーの共感を得られるように会社のストーリーを編集する。そして、社内に対しては、社員一人一人が組織としてどの方向を向いていて何が一番大事かが理解できるようなストーリーを見せる。

三つ目は会社を成長させるためのお金の流れの編集。売り上げや資金調達から得たお金を違う形の価値のあるものに編集することで、会社を成長をさせていく。

さらに、Squareの元COOだったキース・ラボイスも、CEOが会社の編集長になることを意識する重要性について語っている。

キースは、自分がいま取り組んでいることは、「編集」をしているのか、それとも「書いている」のかを常に意識することが大事であると言う。「書いている」というのは、マーケティング戦略を企画したり、プロダクトデザインやロードマップを作ったり、戦略を考えてたりするなど、何かを生み出す作業だ。

すなわち、この「書く」作業の割合が多いという事は、部下や社員への信用が足りていない、もしくはCEOが様々なタスクを任せていける人材を雇用できてないという事に繋がっているのだ。

特に、スタートアップが組織を拡大(スケール)させて行かないといけないフェーズにいる時、CEOはできるだけ「編集長」になる事を意識する必要があるわけだ。

そして最後に、僕自身がもう一つ思っていること。それは、CEOは自分自らをも編集する必要があるということだ。スタートアップのCEOは、様々な役割を並行して担わなくてはならない。変化をもたらすプロダクトを作れるイノベーターであり、組織を作ってチームを引っ張るリーダーであり、そしてオペレーションを最適化することができるオペレーターである必要もあるのだから。

僕が関わっているスタートアップの中で急成長している会社の多くは、創業者自身、人が変わったかのように自分を「編集」し、あらゆる人、物、そしてお金を上手に組み合わせて「編集」している。その結果、大きな価値が生まれているのだと思う。


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投資家やメンターのアドバイスをどう処理するべきか?

Always-Be-Closing

アクセラレーターに参加する初期段階のチームやスタートアップは、投資家やメンターに出会う機会が多くある。それぞれから色々な指摘やフィードバックを受け、その結果、ピボットしたり、戦略を変えたり、はたまたプロダクト自体を変えることだってある。しかしあまりにも素直に、すべてのフィードバックを受け入れた結果、迷走してしまって軸がブレてしまうケースをよく見かける。

どのフィードバックが正しいのか?どれを優先して反映するべきか?など、スタートアップの創業者はもらったフィードバックを的確に分析していく必要がある。

アジェンダ

まず始めに理解しないといけないのは、アドバイスをするメンターや投資家はそれぞれ違うアジェンダを持っているという事。
特に投資家のアドバイスには細心の注意を払った方が良い。投資家は「ビッグなアイディア」に投資したがるので、「アイディアが小さすぎる」と言及してくることが多い。でも、そのアイディアが本当に小さいのかどうかはほんの数分間話を聞くだけでは分かるはずがない。アイディアの大小は、サービスをローンチしてマーケットとユーザーの反応を見てからではないと分からない事が多い。一流のVCでさえアイディアの大小の判断を間違える事がある(例えば初期の段階のTwitterやGoogleへの出資を断った一流VCもいる)。

そして、初対面のスタートアップに対してたくさんのアドバイスをする投資家がいる。その中には、「この人は知識が豊富で、今後一緒に組めれば色々と教えてもらえる」という印象を起業家に与えるためにこうしたスタイルを取る投資家もいるのだ。今そのスタートアップにとって何が大事なのかを理解しようとする前に、とにかく「自分と組めばうまくいく」と思わせるために色々な知識やアドバイス、ビジョンを語りかけるのだ。これは、投資家自身「どれだけ優秀な起業家と組むことができるか」が1つの重要なキーポイントなのだから、仕方のないことなのだが。だからこそ、起業家がアドバイスを求める時、人はそれぞれ違うアジェンダを持っている事を理解しないといけない。そしてそのアドバイスが本当に正しいかどうかは必ず自分で判断する必要がある。

プロダクト

  1. ターゲットユーザー
  2. クオリティーが高く、たくさんの人に愛用されたプロダクトを作った事がある
  3. スペシャリスト

極端に聞こえるかもしれないが、そのメンターや投資家が上記のいずれかにも当てはまらないのであれば、そのプロダクトに対するフィードバックは無視しても良いと思う。

プロダクトのフィードバックは、ターゲットとなるユーザー(お客さん)から聞くことを優先する。

ビジョン

ビジョンは創業者が自分自身で考えて作るべき。他の人に言われたビジョンを選択肢にしてはいけない。

プライオリティ

では実際に今後たくさんもらうであろうアドバイスは、どう分析して判断すれば良いのか。

それは自分のスタートアップが今どんなフェーズにいて、プライオリティが一番高い大事な課題が何なのかを把握する事によって整理しやすくなる。

課題検証なのか、プロダクトの検証なのか、プロダクトやオペレーションの最適化なのか、それともスケールするフェーズなのかなどを把握する事によって、どのようなアドバイスが必要なのかが判断できる。もらったアドバイスをリストに落とし込んで、今のフェーズに適しているアドバイスをハイライトする。ハイライトされなかったポイントは、無視するくらい強気で良い。

ドメイン

誰からアドバイスをもらっているかも重要なポイント。起業家は、アドバイスをしてくれた人がどのような経験、実績を持ち、どういった分野の専門家なのかを理解しておく必要がある。その人の専門がマネージメントなのか、データ分析なのか、プロダクトデザインなのか、など。自分のプロダクトやサービス、企業にとって一番必要なアドバイスをもらえるよう、起業家自身も予め考え理解しておくべき。

何度も言うが、出始めのスタートアップは、色々な人からたくさんのアドバイスをもらう。だからこそ、きちんと整理をすることが大事。

  • ビジョンは自分自身で見出して信じるべきで、決してブレてはならない。
  • プロダクトはユーザーファースト。
  • プライオリティの把握。
  • 誰からのアドバイスを得るべきかを起業家がきちんと整理し、理解しておくこと。

そして最後に分かっておいてもらいたいのは、アドバイスは「指示」ではなくて、あくまでも「アドバイス」であるということ。自分が立ち上げたスタートアップなのだから、自分が一番正しいと思った方向を進むべきなのだ。その結果それが正しかったかどうかはすぐに見えてくるし、それが正しかったとしても、誤りだったとしても、起業家人生というのはそういう経験の連続であり、それによって「判断力」を磨くことが一番大事なのだ。


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受け入れられないということの恐怖

起業をしたら、ときに自分の信念や考え方を色々な人から否定されるという状況に直面する覚悟が必要だ。
ユーザーインタビューをした結果、自分が作ったサービスがユーザーから受け入れられないこと、営業電話をかけてもきちんと話さえ聞いてもらえないこと、投資家に対してピッチをするときや、アクセラレータープログラムに応募をしても自分のアイディアやサービスが受け入れられないこと、自分が挑戦していることを家族や友人に説明しても理解してもらえないことなど、自分が取り組んでいることが受け入れられないということは頻繁に起きる。

しかしこれは当たり前のことで、起業家はその恐怖に立ち向かう必要がある。

ユーザーからの受け入れ

その中でも特に向き合っていく必要があるのは、ユーザーやお客さんからのフィードバック。一番良くないパターンは、ユーザーの反応を恐れてユーザーヒアリングを行わなかったり、プロトタイプのフィードバックをユーザーに求めず、それを避けるかのように開発をどんどん進めること。良いプロダクトを作るためには、ユーザーとの距離感を縮める必要がある。距離を縮めるということは、ユーザーとコミュニケーションを取る頻度を増やして、フィードバックを受けて、理解や共感を深める事。

決して、自分のユーザーを恐れてはならない。

何が間違っていたのか?

もしユーザーから受け入れられなかった場合は、「何故なのか」を振り返って分析し、学ぶ必要がある。伝え方が悪かったのか、ユーザーの課題を理解していなかったからなのか、ソリューションが適合していないのか等、原因を探る必要がある。その学びを生かして次に繋げていく。

起業家の道を進む過程で、自分の何かを「否定される」ということは当たり前のこと。恐怖心を持つことも当たり前のこと。でも、恐れたままで大丈夫。

ただ、その恐れを理由にリスクを取ることを止めないこと。そして必ずその恐怖に立ち向かう事。逆にその恐れをモチベーションを高める武器にするといい。


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起業家を理解する事

シードアクセラレーターを3年半前に立ち上げて、35のスタートアップを支援してきた中での一番の気付きは、シードステージの投資家やシードアクセラレーターの運営者は起業家をきちんと理解する能力がものすごく重要だと言うこと。これ無しでは起業家にポジティブなインパクトを与える事はできない。

アイディア

起業家と初めて出会う際に先ず最初に理解しないといけないのが、起業家とその起業家が進めようとしているアイディアが適合しているか。以前にも書いた事があるのだが、起業家の経歴、働き方、性格、長所と短所を理解して、アイディアを成功に導くために必要な要素が揃っているかを分析する必要がある。経験上ほとんどの場合、起業家が最初に考えるアイディアは、その起業家に適合してない事が多い。僕が関わってきたスタートアップの中で成功しているのは、大半が元とは別のアイディアになっている。

実際僕も、過去に何度か起業家とその起業家のアイディアが適合していない事に気づかず、その起業家が思い付いたアイディアに惚れすぎてしまった事や、自分が考えたアイディアに惚れてしまってそれを起業家に押し付けてしまった事がある。結果、両方とも上手くいかなかった。

アイディアに惚れすぎてはならない、アイディアを押し付けてはいけない。起業家を理解することが最優先。理解していない状態で、アイディアを進めないこと。

アドバイス

アドバイスを提供したい人は沢山いるのだが、日本で最も足りてないと思うのが、「聞き上手」な投資家。今対話している起業家は現在どんな状況下にいて、何が一番の悩みなのかを理解せずにアドバイスをしてしまうと、起業家が混乱してしまう事が多い。まず大事なのは状況を把握すること。そして、その起業家はどういう考えをもって「今」にたどり着いたのかを理解する事。アドバイスをしないという判断が正しい事も多々ある。「今」大事じゃない事について、アドバイスをしても起業家は混乱するだけだ。

成功確率

実は、僕は投資家が起業家の成功する確率を伸ばすことができるとは思っていない。僕が関わってきたスタートアップで成功している企業は、僕がいてもいなくても成功することはできたと思っている。それと同じように失敗しているスタートアップも、僕がいてもいなくても失敗しているのだと思う。ただ、唯一貢献できているのだろうと信じているのは、成功や失敗にたどり着くまでのスピードと成功と失敗の大小。今までの経験を活かしながら、より早い段階で成功もしくは失敗に起業家を導く。これによって成功の規模を最大限に引き出し、また、失敗を最小限にとどめる。これがシードステージの投資家やシードアクセラレーターの運営者に特に必要とされていることだ。

感情

起業家は日々、感情のジェットコースターに乗っているようなものだ。不安、恐怖、混乱の状態に入る日もあれば、自信に溢れて無敵になった気分にさえなる日もある。でも、どんな状態でもハードワークを続けて、決断スピードを落としてはならないし、社員に対してリーダーシップをとっていかないといけない。だからこそ、起業家がどのような感情状態にあるのかを理解して、コミュニケーションの仕方を変えていく必要がある。

僕自身も、まだまだ起業家や人を理解する力を磨く必要があると思う。これをマスターしてこそ、起業家をサポートする人間として一流と言えるのだろう。


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創業者の時間

スタートアップの創業者は常に忙しい。やる事が多すぎて遅い時間まで働き、今やっている事以外の事は考えられない状態に入る事が多い。経営経験が少ない創業者はよく自分が忙しいから会社が前に進んでいると勘違いをしてしまい、「忙しい事」によって安心感を得てしまうことがある。

しかし本来創業者の時間は何に一番使うべきか?
それは「今、会社にとって一番大事な事」に使うべき。創業者は現在何に時間を割いていて、そしてそれが自分の会社にとって本当に最優先すべきことなのかを意識する必要がある。

時間の作り方

先ずやるべき事は時間の確保。
会社がどのフェーズにあったとしても、創業者は時間を作る必要がある。会社が「一番大事な事」をやり遂げるには、たいてい時間を集中的に確保する必要がある。毎日寝る前に30分ほどかけて、その日何の事にどれくらいの時間を割いたかを振り返り、記録する。

次にやるべき事は「今、会社にとって一番大事な事」を考える。
考え方としては、今一番の課題は何なのか?もしくは、会社の成長を妨げる一番のボトルネックは何か?を考える。恐らくたくさん出てくると思うが、これをあえて一個に絞る事が大事。

そして、記録してきた日々の時間の配分を見て、「一番大事な事」にどれくらい時間をかけられているかを見る。もしそれが1日4時間未満だった場合、他の事に時間を割き過ぎだと判断する。

時間の確保がきちんと出来ていないと判断した場合は、それらが今本当に必要なことなのかを考えて、もし必要な場合それを他の人に任すことができるかを考える。他の人が担うことができるのであれば、そのオペレーションを他の人に任す。経営者は、できる限り最低1日4時間程度は今直面している課題の為に時間を集中的に確保出来るようにする。その時間が途切れるほど生産性が下がるので、4時間連続で確保する事がベスト。

採用

「一番大事な事」の大半は採用になる事が多い。採用は必ず創業者自らやるべきだと思う。会社が小さければ小さいほど、そして埋めようとしているポジションが重要であれば重要なほど創業者自身が判断をする重要性が高まる。自分が作った会社の文化を大事にするべき

オペレーションモードの罠

会社が軌道にのりとにかく今やっている事を継続すれば、売上も利益もユーザーもどんどん増えていく ー この、今やっている事だけを繰り返す「オペレーションモード」に入らない事。トップに立つ人間の役割は、常に先の事を考え、機会を探し、先手を打つ。先の事を考える時間を確保する事。

マスターするまで時間がかかる

タイムマネージメントは、すぐに上手くはならないし、時間確保ができるようになるまで時間がかかる事が多い。僕自身もまだ完全にマスターできていなくて、自分の時間配分に不満足な時もある。とにかく繰り返し繰り返し自分の時間配分の最適化に挑戦する事。いずれ効果的で生産性の高い創業者になり、自分の会社の成長スピードも加速する事になる。


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自分が働きたい会社をつくれ

スタートアップにとって最も大事な資産は”共に働く人”だ。Virgin Groupを創業したRichard Bransonが「成功への一番の秘訣は?」と聞かれた時「自分より賢い人を探し出し、彼らを仲間として迎え入れ、自分が会社のビジョンにフォーカスできるように彼らに自由と権限を与えたことが全てである。」とRichardは答えた。Richardはビリオンダラーカンパニーを8社も生み出した唯一無二のアントレプレナーである。

僕は一週間ほどGitHubの創業者であるPJ HyettとScott Chacon、そしてGitHub従業員のDavidと共に活動する幸運な機会があった。GitHubは300万人以上のプログラマーが利用しており、会社の評価額は$750Mと報告されているシリコンバレーで今最も注目の企業である。

一週間一緒に活動していちばん印象的だったことは、創業者同士の信頼関係と、Richardと同様に従業員を大切にしていることである。GitHubは2008年の創業から雇用してきた従業員150名のうち、1人たりとも自分から辞めたことがないという驚くべき実績を持つ。

採用プロセス

GitHubの採用プロセスで特に気にかける点は「頭が良いか」そして「文化が適合しているか」の2つである。文化の適合性では、他の従業員と一緒に上手く働けるか、そしてGitHubの独特な職場環境にフィットするかが含まれる。GitHubではほとんどのコミュニケーションがオンラインで行われていて、従業員の大半は会社に出社せずリモートで作業をしている。また、マネージャーという役職が存在しないフラットな組織で何を開発するかは個人の自由のため、従業員には時間を効率よく管理し自発的にプロジェクトを遂行できる能力が必須である。

またGitHubでは採用の最終段階で「Beer Test」というものがあり、採用候補者と一緒にお酒を交えて会話をし「その人とまた一緒に呑みに行きたいか」によって、採用・不採用を決めるという興味深い採用プロセスが存在する。どれだけ優秀でも、他の従業員と上手く働ける事が絶対条件である。

優秀な人材を惹き付ける

Open Network Lab第6期生のメンタリング中、投資先企業からの「どのようにしたら自分の会社に優秀な人材を惹き付けることができるのか?」という質問に対し、PJは「それはとてもシンプルなことで、”自分たちが本当に働きたい会社をつくること“である。」と答えた。PJ達はGitHub創業の際に、とにかく自分たちが働きたい会社をつくる事に専念した。殆どの社員がリモートで働いているため、その分オフィスは従業員同士のコミュニケーションの場として機能するよう、人が集まりやすい楽しい場所になるよう設計した。また仕事意外の心配を軽減させるため福利厚生を充実させ、医療費は会社が全額負担をし、産休も長く取れるようにしている。自分が働きたい会社をつくることで、自然と自分と同じ価値観を持った人間が集う場所になるのである。

それとPJは言及しなかったが、優秀な人材を惹き付けるための重要な要素の一つは”ブランディング”である。GitHubの技術者に対するブランディングとても上手くいっており、GitHubが主催する交流会「DrinkUp」を定期的に開催しエンジニア同士の交流をはかったり、社内で作った最先端の技術を使ったプロジェクト等を沢山公開することで、技術者にとって魅力的な会社というブランドを確立している。

最高な会社は、最高な人々を引きつける賢く野心的な創業者によって創られる。自分が働きたい会社を創り最高な人材を採用して彼らに自由と権限を与えるべきである。


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スタートアップの基盤

スタートアップの基盤とはスタートアップの創業チームの事である。創業チームからアイディアが生まれ、実行され、そして会社を動かすパッションが作られる。組織は創業チームと言う名の基盤の上に作られる。

スタートアップの創業時はその後会社の将来に大きな影響を与えるFacebookの出資者でもありPaypalを創業者でもあるPeter Thielは「創業時の基盤がぐちゃぐちゃだと直す事はできない」と述べている。創業時に最も時間をかけるべきことは基盤作りである。スタートアップにおいて強い基盤を作るためには適した人達、スキル、メンタリティー、チームメンバーの関係性、そして文化を必要とする。

スキル

創業チームは様々なスキルを必要とする。その中でも最も必要とするスキルは開発力と分析力である。開発力の必要性は明らかでユーザーにとって価値のある物を作るためには創業メンバー自身で開発するスキルを持っていることが必須である。また分析力は開発力と同等に創業メンバーに必要なスキルである。スタートアップではユーザー動向、市場動向、競合、財務状況など日々分析しなければならない事象が沢山あり、また分析だけに留まらずスピーディーに決断する力も必要とされる

頑固さと柔軟性

経験上”頑固すぎる創業者”はチームの規模を拡大するのに苦労し、”柔軟すぎる創業者”はプロダクト開発にかける時間が長くなってしまう傾向がある。好調なスタートアップは頑固さと柔軟さのバランスが取れている。Amazon創業者Jeff Bezosは「創業者はビジョンで頑固になれ、詳細に柔軟になれ」と語る。ユーザーに提供する本当の価値と会社のビジョンに対しては頑固にその価値の提供方法やプロセスの詳細については柔軟に対応することが創業チームには必要である。

バランスと関係

スタートアップの創業チーム内の関係は非常にインテンシブで「セックス以外は結婚している子持ちのカップル」と一緒である。創業チームはスタートアップという子供を作り、それを育てるためにいろんな悩み事やストレスを一緒に解決していく。創業チームはお互いを尊敬し合う存在であることが大事で、関係の良い創業チームは前職で一緒に働いた経験や、大学の研究室で一緒に働いた経験、一緒のスポーツチームで競った経験など、一つの小さなコミュニティにおいて濃厚なコミュニケーションを既にとっている場合が多い。

創業メンバーはお互いの能力を補える関係が望ましく、作れる人、デザインができる人、そしてハッスルできる人の3人構成が理想的である。

文化

創業チームは会社の文化を作る。組織にとって文化は必要不可欠で創業チーム内そして従業員全員の文化が一致している事が必要である。文化に合わないメンバーを採用してしまいチームが解散したり、創業者が辞めてしまったりするケースは少なくない。Zyngaなどに投資をしているBrad Feldは「人を採用する時は文化の適合性が一番大事」と言う。Bradは文化とスキルの決定行列(デシジョンマトリックス)を作る時、文化の適合性の高い人材を優先するべきと述べている。

会社の文化コアバリューを強調した良い例として、以下は実際Facebookで使われた採用基準である。

  • 高いIQ
  • 強い目的志向
  • 成功に対する執着心
  • 積極的かつ野心的
  • 完璧主義、品質に対するこだわり
  • 変化を好みディスラプティブ
  • より良くするためのアイディア
  • 高い整合性
  • 善良な人々に囲まれている事
  • 知覚な価値よりも真の価値を作る事へのこだわり

どの組織も上記のようなバリューを中心に独自の文化を作ることが必要である。

順調でも基盤が弱いスタートアップはいずれは崩れる運命にある。たとえアイディアが間違ってても、創業時の基盤が強ければスタートアップは自身のビジネスを柔軟に変化しながら強く長く継続することができる。適したスキル、メンタリティー、関係、そして文化を持つ人たちと時間をかけて創業チームという基盤をつくるべきである。


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創業者とマーケットの適合性

2010年に開始したスタートアップ育成プログラム「Open Network Lab」は2012年11月に5期のDemo Dayを終えた。5期を通して25社以上の育成を行う中で、どの期にも必ず1社のスタートアップがプログラム期間中に自分たちに最適のアイディアを見つけ出し、エントリー時とは全く別のビジネスを展開している。

スタートアップが行うべきアイディアは、創業メンバーにとっての”最適なマーケット”と対応している。SV AngelのDavid Leeは、これを「founder/market fit」(創業者とマーケットの適合性)と呼び、市場に対する深い知識を持ち「創業者自身が製品、ビジネス、そして会社の象徴となる」ほどに、創業者とマーケットが適合していることは最も重要なことだと語っている。

また、Y CombinatorのPaul Graham曰く、良いスタートアップアイディアには3つの共通点がある。創業者が自ら求める製品を作ること、彼らにしか作れないものを作ること、作っているものが世の中にとって重要だという事を気づいている人が少ないこと、である。

創業者とマーケットの適合性を見いだしたスタートアップの成長の速度には毎度驚かされている。Open Network Labの投資先の中でトップ3の成長率を誇るスタートアップは、プログラムエントリー時のアイディアを捨て、彼らの適合するマーケットを1から見直しアイディア探し出したチーム達である。

ではどうしたら創業者とマーケットの適合性を見いだすことができるのだろうか。適合性とはターゲットユーザーとの会話とフィードバックの繰り返しで見つかることが多い。

僕は、適合性を探しているチームのメンタリングを行う際に重要視していることは主に3つある。

1. 創業者の過去の経歴は?

良いアイディアは創業者が前職などで気づいた非効率な体験や業務で気づいた事から出てくることが多いため、創業者自身の過去の経歴に注目している。

2. 社長が忙しい理由は何か?

Open Network Labのプログラムを行う中で、「スタートアップの成長率と社長の忙しさは比例する」ことに気づき、また数々のスタートアップを支援する中で”成長を続ける企業のターゲットとするマーケット”と、”社長が忙しい理由”には共通するパターンがあることに気づいた。例えば、成長を続けるコンシューマー向けのサービスは社長が自らコーディングしている事が多く、成長率の高いエンタープライズ向けのサービスは社長がビジネス経験が豊富であり、そして良いコマーススタートアップには分析能力の高いビジネスマンが率いている場合が多く見られる。コンシューマ向けのサービス展開をした投資先2社の社長は、コーディングを行わないビジネス経験豊富な方だったが、両社共にコンシューマ向けからエンタープライズ向けのサービスに転換した途端、それまでの不調とは裏腹に急激に会社の成長率が上がり社長達も一気に忙しくなっている。

3. 彼らのパッションは何か?

創業メンバーが毎晩眠れなくなるほどパッションを抱いている分野は何か。スタートアップは非常にハードで時間がかかるものであり、Steve Jobsも以下の動画で「愛していなければ失敗する」と述べている。

Open Network Labでは、3ヶ月のプログラムを終了する前に解散してしまうスタートアップも何社かあった。チーム解散の大抵の原因は、創業メンバーの間でパッションと目標が一致していないことが主な理由。メンバーが一人でも妥協してしまうと必ずスタートアップは解散の道をたどることになる。創業メンバーが同じだけのパッションを持っていることはとても重要なこと。

創業者とマーケットの適合性を探すことは、スタートアップのプロセスの中でも非常に重要なステップである。適合性を見つけずに次のステップに急ぐと数ヶ月、数年を無駄にすることに成りかねない。適合性を探せ!


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「Focus, Focus, Focus!!」フォーカスした起業家が勝つ

Open Network Labでは数々の起業家達が立ち寄る。投資先も15社になり、メンターもTwitterの共同創業者やEvernoteの創業者等、50名以上が関わっている。

今まで関わってきた起業家やメンターの中に会社が絶好調な人がいればあんまり調子が良くない人もいる。絶好調な会社を起業している人たちには一つ共通点がある。。。それがフォーカスだ。

1) プロダクトのもっとも重要な価値にフォーカス
起業家はアイディア豊富だ。いろんな機能をプロダクトに付け加えたくなる傾向がある。しかし無駄な機能を排除し、コアバリューにフォーカスしたプロダクトが上手くいく傾向がある。Twitter, Evernote, Instagram等、人気のあるプロダクトはコアバリューごものすごく明確になっている。

2) ユーザーにフォーカス
Pathの創業者のDaveも言っている事だが、ユーザーにフォーカスし、サービスどういう風に使っているかを観察・分析してユーザーをエンパワーする事が大事。Facebookで最も使われている「写真」機能は、ユーザーを観察する事によって機能追加が決まった。ユーザーヒアリングやAnalytics等を使ってユーザーを分析するのは大事。

3) KPIにフォーカス

好調なスタートアップはKPI(重要業績指標)が明確になっている。”来週のリテンション率はなん何か%、来月のアクティベーション率は何%か、再来週は何件クローズしないと行けないのか”等、週単位でKPIの目標が明確になっている。

4) スタートアップにフォーカス
フォーカスの高い好調なスタートアップほど、あまりイベントやメディアにでない事が多い。他にもっと重要でやるべき事が多いから1秒も無駄にしない。

フォーカスしろフォーカスしろフォーカスしろ!!

いろんな側面でフォーカスするのが大事。今支援している15社の中でも、フォーカスしているスタートアップとあまりできていないスタートアップにかなりの差がある。

フォーカスが高く、ハッスルしているスタートアップほど支援してて楽しいものは無い。毎回話す度にアドレナリンが走る。だから今の仕事が止められない。投資家にとってのハイ。僕の役割は支援先にフォーカスするべき事は何かをガイダンスする事だと思っている。


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