人間の人格を形作るのは、これまでにどれだけ多くの「難しい決断」を下してきたか、それに大きく左右されると思う。そして、その「決断の質」も同じくらい重要だ。より困難で、より深く考えた決断を積み重ねるほど、強い人格が作られていく。僕がこれまでに出会った「人格者」と呼ばれる人たちは、経営者やリーダーとして多くの人を引っ張っりながら、数多の難しい決断を経験してきていた。
その理由は、シンプルだ。
- 難しい決断が、その人の価値観を強化する
- 難しい決断が、学びの機会を与えてくれる
- 難しい決断が、新たな視点を広げ、他者への共感力を育む
では、僕たちはどのように難しい決断に向き合うべきなのだろうか?
難しい決断とは?
そもそも、「難しい決断」とは何なのか?
僕が考える「難しい決断」とは、痛みを伴い、ときには自分を傷つける可能性がある選択だ。それは、自分ひとりの問題ではなく、複数の関係者が関わる場面で、全員を満足させる道が存在しない瞬間。多くの要因とトレードオフが絡んで、正解も明確な答えも見つからない場面。そんな時にこそ、僕たちは本当の意味で試される。
例えば、こんなシナリオを想像してみてほしい。
- パフォーマンスは高いけれど、カルチャーや組織に悪い影響を与えてしまっている役員を解雇すべきかどうか。
- 次の資金調達に向けた重要なマイルストーンに到達できる兆しが見えてきたなかで、どのタイミングでコスト削減を行なうべきか。削減のタイミングが早すぎると調達の確度が下がってしまうが、遅すぎれば倒産のリスクが高まる。
- 既存事業が頭打ちの状況だが、新規事業のアイデアはある。ただ、限りあるリソースをどこまで新規事業にかけるべきなのか。
どのシナリオもトレードオフがあり、どの道を選んでも誰かが苦しい状況に置かれてしまうだろう。
決断のためのヒント
そんな難しい決断を迫られたとき、僕はこんなことを意識するようにしている。
- ビジョンを大切にすること
会社のビジョンは何か?そのビジョンを実現するために、どのようなアクションを取るべきなのか?特にスタートアップでは、ビジョンこそがすべての礎。人も資本も、そのビジョンに共感して集まってくる。だからこそ、リーダーはそのビジョンの実現に忠誠であるべきだ。 - 信頼を最大化すること
これは、全員を幸せにすることを意味するわけではない。ときには自分の決断で、誰かを失望させることもあるだろう。でも、ここで忘れてはならないのは、「決断をどう遂行するか」ということ。厳しい選択でも、透明性をもって進めることができれば、失われるかも知れなかった信頼を守れることだってある。「不要なサプライズ」は避けた方が良い。 - 自分を信じる
周囲の人は、それぞれ自分が正しいと思うことを語るだろう。その意見は参考にするべきだが、最終的な決断を下すのは自分だ。自分の直感を信じ、最も正しいと思える道を選ぶべきだ。なぜなら、その決断に一番コミットして、実行するのは自分自身なのだから。信念がなくては、そのエネルギーを注ぐことはできない。
どれも当たり前な話だけれど、「難しい決断」を迫られている場面では、多くの人の感情や思惑がぶつかり合うことが多く、自分自身の考えが揺らぎがちになる。そんな時のために、俯瞰して一緒に考えてくれる中立的なパートナーやアドバイザーがいれば、とても頼りになるだろう。
難しい決断に向かって走れ
難しい決断を避けたり、逃げるという選択肢も、もちろん存在する。だけど、僕はあえて「逃げずに、その恐怖に向かって走ってほしい」と伝えたい。
なぜなら、その先にあるのは、あなた自身の成長とさらに強く磨かれた「人格」につながって行く道だから。
どちらにせよ、面倒なことというのは大抵の場合後からまた追いかけてくるもの。ならば、今のうちに立ち向かっておいた方が良いわけだ。
もし難しい決断を迫られたときは、今日この瞬間から堂々と前向きに、自分が信じるその道を進んでいこう。
(記事の編集してくれたkobajenneに感謝)