SaaSの起業チャンスは、先行プレイヤーのサービスに不満な顧客

いま成功していると言われるSaaS企業が、その事業を立ち上げた時。そこには、既に先行している既存B2Bプレイヤーが存在していたケースが多い。

そのなかで彼らが成功を掴むことができた大きな要因として『先行しているプレイヤーが完璧に満たすことができていなかった顧客の要望』を満たすことだけに注力し、それを拡大させたということが挙げられるだろう。

例えば、このような例がある。

  • Siebel SystemsはCRMを提供していた。しかし、彼らのサービスは、オンプレミスだったため、導入までに時間のかかるカスタマイズと継続的なメンテナンスが必要だった。そこで1999年、革新的なCRMサービスを登場させたのがセールスフォースだ。彼らは、クラウドを通してオンデマンドでスピーディーに導入とアップデートができるサービスを提供し、これまで顧客が抱えていた(従来のサービスでは満たせていなかった)顧客ニーズを満たした。
  • カスタマーサポートチーム向けのSaaSを提供するZendeskは様々な業界で使われていたが、In-App Message (アプリ内メッセージ)の強化を希望する顧客や、チャットを使ったリードクオリフィケーションのニーズを完全に満たせていなかった。そこで、誕生したのが、Intercomだ。
  • Workdayは、大企業向けに人事や財務を含めた経営管理を効率化させるSaaSを提供していたが、その仕様は中小企業にとっては使いにくく、ニーズを満たせているものではなかった。そこで中小企業を主なターゲットとしたRipplingやGustoなどが誕生した。
  • CISCOのWebexは、ビデオカンファレンスの市場を独走していたが、操作性や使用環境の制限など、すべての顧客の満足度を満たすことはできていなかった。そしてそこには、より簡単にインストールができて、どのOSを使っているかを気にすることなく、ビジネス利用できるクラウドサービスを求めている顧客が存在していた。そこで登場したのが、Zoomだ。
  • Jiraをはじめ、先行しているプロジェクト管理ツールが多く存在するなか、施工現場を意識したUX、建設・建築業界が取り扱うデータの管理に向いてるソリューションが無かった。AndPadは、このニーズを取り込み生まれたソリューション。
  • セールスフォースなど先行しているCRMツールが山ほどある中でも、保険業界に完璧に寄り添ったプレイヤーがいなかった。しかし、保険という特殊な分野には、特有のニーズが存在しており、今までのCRMツールではそのニーズを満たすことができなかった。そこで登場したのがhokanだ。

他にもこうした例はたくさんある。では、このように先行しているB2Bのプレイヤーがいる中で、こうしたチャンスが生まれる理由は何なのか?

技術のシフト

オンプレミスからクラウドへ。メールからチャットへ。データベースからAIへ。デスクトップからモバイルへ。

技術的パラダイムシフトが発生するとき、従来の技術とは異なる全く新しい体験やサービスの提供ができるようになる。今まで解決できなかった課題が解決できるようになったり、今までリーチできなかったセグメントへのリーチができるようになる。これらが新たなSaaS企業を誕生させるチャンスになるのだ。

また、SaaSの普及や技術の進歩によって、新たな需要を生み出すこともある。

世の中に存在するSaaSプロダクトやサービスを利用することで、潜在していた需要が表に現れたり、新しいニーズが生まれるためだ。また、普段プライベートで使い慣れてるサービスの体験をB2Bのシーンでも活用したいという需要も出てくる。

規模のジレンマ

直近で発表されたSalesforceの年間売上が1.7兆円。来年は、2.3兆円を目指しているという。そして、現在の売上が900億円のZendeskは、来年1100億円の売り上げを目指しているという。

このように、企業規模が大きくなるにつれて、100億、1000億円単位の売り上げを生み出すことが可能なセグメントを最優先ターゲットにしていく必要が出てくる。一方SaaSスタートアップがまず最初に目指すセグメントは、売り上げ単位が10億円程の市場で、大手先行プレイヤーにとってはニッチ過ぎるセグメントとなり、高い優先度がつく対象とならないことが多い。

プロダクトの複雑性と技術的負債

SaaS企業が、大手企業、または特定の業界に向けたサービスやプロダクトを展開した場合、そのままの状態で規模の異なる企業や他の業界にまで参入することは難しい。UIやプロダクトの複雑性や技術的負債を抱えることにもなる。よって、〈既存SaaSプレイヤーが満たせてない顧客ニーズ〉が存在するセグメントが必ず残る。

SaaS市場は、拡大の一途を辿っている。そして成長スピードも加速している。SaaSが普及すればするほど、SaaSを取り入れたい顧客が現れ、同時に、既存のSaaSプレイヤーが満たせられていない顧客ニーズが見えてくる。

SaaSの起業チャンスは、今後もさらに増える。今こそ、SaaSで起業する絶好のタイミングだと言えるだろう。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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不況こそがチャンス。SaaSスタートアップのブラックスワン対策。

シリコンバレーの著名VCセコイアキャピタルが先日、投資先の起業家に宛てて書かれたレター「2020年のブラックスワンに対しての警告とガイダンス」を公開した。まだ読んでいない人は、是非読んでみてほしい。

今直面しているこの状況がどのくらい長く続くのか。どれほどの社会的、そして経済的インパクトを与えるのかは分からない。でも、現段階は希望的観測をする時期でもなく、業績不調を環境のせいにする時期でもない。

起業家や経営者は、この状況下だからこそ『不況に強い会社とは何なのか、どうしたら不況に強い会社になれるのか』をもう一度考え、実行に移していくタイミングなのではないかと僕は思う。

苦しい時こそ成長するチャンスだ。セコイアのレターに記載されていたダーウィンの言葉の通り「強い者、賢い者が生き残るのではない。変化に対応できる者が生き残る。」のだ。

今回のブラックスワンは、国内に止まらず世界中にあらゆる変化を起こしている。

前置きは長くなったけれど、今回はSaaS経営者がその変化にどう対抗するべきなのか。そして、不況時に改めて考えるべきポイントについて書くことにした。

リード獲得戦略を考え直す

この状況のなか、どのリード獲得戦略が引き続き好調で、どの戦略の効果が下がってしまっているのか。やはり展示会などのオフラインイベントの効果は下がってしまうだろう。ならば、より強化すべき既存の戦略はあるのか。それとも、今まで実行していなかった戦略(アウトバウンドやWebinar等)で、新たに試すべきものはあるのかなどを考えてみると良い。

ナーチャリングを強化

今、リードの存在がより重要になってくる。セグメント別、スコア別、時期別などでカテゴライズして、さらに戦略的にリードを温めていく取り組みが必要になる。

商談フェーズの考え方を変える

普段、有効リードに対してはすぐに対面営業を行っているという企業も、今はオンライン商談に切り替えてるところが多いだろう。商談後、どのフェーズまでオンラインのみで進めることができるのか。場合によっては、注文書が入るまでの全てのフェーズを完全にオンラインへ切り替える必要が出てくるかもしれない。その場合「商談フェーズ」そのものの定義、そして進め方も変わってくる可能性がある。

カスタマーサクセスの強化

顧客サイドの予算状況が変わるかもしれない。その結果顧客は、きちんと使いこなせていて業務の効率化に役立っていることを実感できる、所謂〈依存度の高い〉SaaSのみの契約を更新し、そうでないサービスやプロダクトは解約する動きが出てくる可能性がある。顧客に対して、きちんとバリューを発揮できているかどうかの重要度がより一層高まることになる。

セールスピッチのアップデート

「リモートワーク」「自動化」「コストカット」。今は特にこれらのキーワードが顧客のマインドのトップに浮上しているだろう。顧客が今一番考えていることに合わせて、セールスで強調するべきポイントや説明の流れをアップデートする必要があるかもしれない。

チームワークを強化

より一層チームの団結力を上げるタイミングだ。限られたリソースの中でアウトプットを高めることが非常に重要になる。部署間の壁をなくして、コラボレーション頻度とその質を高め、全員が一丸で会社の目標を達成するのだ。

コスト意識を高める

セコイアのレターにも書いてあるように、9ヶ月、長くて12ヶ月はこの状況が続くかもしれない。経済が回復するまでには、さらに長い時間を要するかもしれない。残高、キャッシュフロー、ランウェイ、そして計画対比などの意識をより高めていく必要がある。

僕は決して恐怖やパニックを煽ろうとしているわけではないし、この先を予想しようとしているわけでもない。不確実性の時期に入ったときは、最悪の場合に備えた準備を行うこと、そして変化に素早く適応できる姿勢でいることが重要なのだと思う。

チームの団結力を上げて、強い会社を作り、これはみんなで共に成長するチャンスなのだと捉えて欲しい。

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CEOのポテンシャルを上げる3つの変化

(zapmole756)

CEOは、大変だ。

時には孤独を感じ、時には自分の置かれている状況に不自然さを感じ、そして、自分はもうこの仕事には向いていないのではないかとさえ思うこともある。

僕は、「最初から良いCEOになる」というのは無理な話だと思っている。今、世の中で尊敬されている「良いCEO」と呼ばれるような人たちは、過去に沢山の失敗をして山ほどの物事を学んで、そして成長してきたはずだ。

今まで多くのCEOたちの活動を支援してきた中で、僕はその人が「良いCEO」に近づいてきていると感じる瞬間がある。その”フィーリング”を感じる時というのは、気が付きにくい本当にちょっとした変化で、最初は些細な事に見えるかもしれないが、この変化こそがCEOとしてのポテンシャルを大きく上げるのだと僕は思う。

今回は、CEOのポテンシャルを上げる〈3つの変化〉について書いてみよう。

失敗を愛せるようになる

CEOになると、自分が「常に正しくないといけない」と思い込んでしまうことが多い。間違いや失敗を起こすと周囲からの信頼を無くしてしまうのではないか、と恐れてしまうからだ。でも実は、間違いを認めるCEOの方が周りから信頼され、巻き込む力も強い。

間違いを認めることは、フィードバックを求める姿勢を周囲に見せることになり『プライドを守るよりも正しい行いを優先する人なんだ』という印象と安心感を人に与える。

良いCEOへと着実に成長する人は、失敗を愛し、その失敗から学ぶことを忘れない。誤りに気づいた時は、それをすぐ認めて修正する。そして、自分の間違いや失敗を発見しやすい状況や場所に自分を置く事に対して恐れを抱かない。

成長するポテンシャルの高いCEOは、フィードバックを歓迎し、学ぶことにコミットしている。

気にかけていることを姿勢で示せるようになる

CEOは多忙だ。決断の数も膨大で、背負っている責任も大きい。そんな状況下で、他のメンバー達を気にかけようとすれば、そこにはさらなるエネルギー、時間、思考が必要になる。これがなかなか難しい。特に、今までCEOである自分が、一番パフォーマンスを出してきたという場合は、まず自分の時間を最優先にしてしまいがちだ。

でも、良いCEOは他のメンバーをハッピーにさせて、ポテンシャルを引き出すことの重要性に気付いている。組織の力を上手く活用できるようになると、自分一人の何百倍もレバレッジを効かせることができるということを認識している。

チームのみんなを気にかけていることをきちんと姿勢で示すようになると、たちまちメンバーは幸せを感じ、パフォーマンスが向上する。その結果、会社の業績が改善し、忙しさも決断の数も責任も、組織に分散させやすくなる。

メンバーとの信頼関係の構築、育成やエンパワーをするプログラムに注力したりすることも重要。でも、当たり前のようだけれど「感謝の気持ち」をちゃんと表現することを忘れないのが良いCEOだ。

大きく考えられるようになる

ビジョンや目標が、常に上へ上へと上がり続けるCEOは、ポテンシャルが高い。すでに勝利していることや、成功していることは気にせず、「誰も行き着いたことがないような場所に、自分自身や会社を連れて行くんだ。」と強く思い、それを目指し続ける。

CEOが物事を大きく考えることは、会社全体のスタンダードを高めることに繋がる。実行の質が上がり、人材の質も上がり、そして改善への危機感も上がる。

CEOになる前のほとんどの人の人生は、基本的に他の人に設定された目標を目指してることが多い。だから、最初から自分で目標を決めるという状況に慣れていない。大きく考えられるようになっているCEOは「限界」というのは、結局自分で決めるものなのだと気付く。

これが僕が実際に感じたCEOのポテンシャルを上げる3つの変化だ。人によって最初からできていることもあれば、失敗を経験してはじめてできることもある。この中に、自分の直感に矛盾すると感じたものがあったかもしれない。不自然に感じてしまったものもあったかもしれない。

ならば、CEOのみんなに考えて欲しい。

「自分自身のポテンシャルの最大化を妨げることとは何なのか?」

そうすれば、自分にどんな変化が必要なのかが見えてくるかもしれない。

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起業家に薦めたい。SaaSの使いこなしで1日あと2時間確保する方法

SaaSに特化した投資を実行する身としては、僕自身も様々なSaaSプロダクトを使いこなして、自分の生産性を最大化することを積極的にやっていきたいと思っている。今回は、自分がどういうSaaSプロダクトを、どういう風に使っているのかについて書いてみる。感覚としては、これから書く以下を実行したことで、1日のうち新たに確保できた時間は、1〜2時間ほど。これは大きい。

Hubspotで日程調整

HubspotとGoogleカレンダーと連携させることによって、日程調整がとても楽になる。日程調整をしたい相手には、Hubspotのミーティングリンクを送るだけで自分が空いている時間を共有できて、そしてカレンダー登録も自動化できる。

ミーティングの合間の調整タイムを入れたり、スロットあたりの長さも調整が可能など自由度が高い。僕が薦めたい活用方法は、Hubspotミーティングのリンクを2バージョン作ること。一つは緊急度が低いミーティング用、そしてもう一つは緊急度の高いミーティング用だ。

後者のカレンダー上では1日2時間ほどの時間を確保する。そうすることで、もう一つのカレンダー上では、その時間帯は空き時間ではなくなり、緊急案件が発生しても確実に時間を確保することができる。Hubspotは、Zoomとも連携ができる。予定が登録された瞬間に、そのミーティング専用のZoomリンクを自動生成する機能があるので、僕はデフォルトでZoomリンクを自動生成するように設定している。

Hubspotで人間関係を管理

基本的にヒトの情報は全てHubspotで管理している。特に便利だと思う機能はタスクの機能。誰かと打ち合わせした後に、Hubspotにそのとき話した内容を記録し、次にその人と会うタイミングをその場で決めてHubspotのタスクに入れている。タスクの期限が来た時には、メールでリマインダーが送られるように設定している。これによって、フォローアップやキャッチアップの漏れが大幅に削減されるし、しばらく話をしていなかった人の情報にもきちんとアクセスできるのは嬉しい。

Superhumanでメールのスーパーサイヤ人に

メールクライアントは、Superhuman。主に使っている機能は、リマインダー機能。返信をもらいたいメールを送信した時に、予め設定した時間までに返事が来なかったら通知が来るようにする。これで、メールのフォローアップ漏れも無くなるし、いちいちフォローアップが必要なメールをTo Doリストに入れる必要もなくなる。

リマインダー機能の活用方法は、もう一つある。僕のメールの基本ルールは、2〜3分で返信ができるものはその場で返信して、検討したり調査したりする時間が必要など、返信に時間がかかると判断したメールは、リマインダー機能を使って、一旦夕方までInboxから消えるようにしている。こうすることによって、Inbox自体がスッキリするので、情報に左右されることなく1日のスケジュールを着実にこなすことができる。夕方になったらその隠したメールたちがInboxに表示されるようになるので、それらをまとめて対応できる。

Superhumanのテンプレート機能もとても便利で、良く繰り返して使う文章(例えばオフィスへまでのアクセス案内を説明する時など)は、ショートカットでメールに挿入できるようにしている。

1Passwordでパスワード管理

1日を通して、少なくとも10回は色々なサービスにログインする。そんな時に必ず必要になるのが「パスワード」なわけだが、セキュリティーのために各サービスのパスワードは、ユニークで複雑な異なるパスワードである必要がある。このパスワードを覚えたり入力したりするのは、とにかく時間が取られるし、ましてや記憶しておくことなど不可能だ。1passwordは、そういう悩みをすべて解決してくれるので、パスワード管理においては必須ツールだ。

Notionで人生を管理

To Doリストや人生計画、読みたいものリスト、運動スケジュール、書きたいブログテーマ等とにかく僕のほぼすべてをNotionで管理している。たくさんの情報を整理、管理するにはもってこいのツールで、さらにアイコンやクリップなども使えるので見た目も楽しい。

To Do管理で僕が薦めたい方法は、

・じっくり考えて進めないといけないタスク
・あまり考えなくてもできるタスク

の2つに分けること。じっくり時間をかけて熟考しながら進めなくてはいけないタスクは、1日2個までに限定して、毎日1〜2時間そのタスクに集中する時間を確保する。とにかくひたすら手を動かすような、あまり考えなくても進められるタスクは、打ち合わせの合間や夕方の時間帯など、頭の回転が少し鈍ってきているなと感じる時にバッチ処理で進める。

おやすみモードの活用

色々なサービスがたくさん出てくると、人は知らず知らずのうちに、常に通知や連絡に追われる日々を過ごす。僕は日中1日2時間くらいiPhoneの〈おやすみモード〉をONにする(Mac OSでも同時に通知OFFにしている)。その間、前述した時間をかけて熟考する必要があるタスクに集中する。これをやり出してから、実際自分はどれぐらい通知に追われているのか気が付くきっかけになった。

Zapierで領収書管理

Zapierは使い始めたばかりで一番上手な使いこなし方を検証しているフェーズだが、最近は、請求書管理に使っている。メールで届いた請求書や領収書にラベルをつけると、Zapierがそのラベルに応じてGoogle Drive上の該当フォルダーにPDFファイルで自動保存してくれる。これでメールを検索して請求書などをPDFに変換してフォルダに整理するという作業が自動化され、請求書関連で要していたストレスフルな時間を大幅削減できるようになった。

以上が、僕が今メインで活用しているSaaSの使い方だ。使いこなせばこなすほど大幅な生産性アップに繋がる。みんなが他にどういうツールをどのように使っているのかも知りたいので、もしお奨めがあればツイッターで@DJTOKYOにメンションで教えてくれると嬉しい。

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ARR目標を達成するためにSaaSスタートアップ経営者ができること

Photo by: Philo Nordlund

明けましておめでとうございます。今年もブログやポッドキャストでの情報をより頻度をあげて発信していきたいと思っているので、2020年もどうぞよろしくお願いします。

さて、起業家のみんなは、2020年の初営業日を迎えて、今年のARR目標の設定も完了し、多くが目標に向けて行動に移し始めている頃だろう。今回のブログは、今年の目標の達成確度を高めるために経営者やマネージャーができること、について。

パイプライン、パイプライン、パイプライン:各経営メンバー、マネージャー、そしてリーダーたちとパイプラインのレビューを行い、ディスカッションする。

例えば、以下の通り今年の目標を設定したとしよう。

• 新規顧客からのARRを2億円に
• リードからの成約率が25%を維持
• クロージング期間を平均して半年

この場合、逆算すると今年6月までに8億円分のリードを獲得する必要がある。マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトなど各セグメントのリーダーのパイプラインと数値目標への強いコミットが必要だ。もし、ARR8億円分のリードを生み出すコミットができないのならば、リードあたりの収益(ARR / リード)を上げて調整する必要がある。

パイプラインの状況や商談フェーズについて、各メンバーと毎週ディスカッションする機会を作れば、組織全体の数値管理能力と推進力が上がるだろう。

もっとコーチングを:リーダーの役割は、部下やメンバーが目標を達成できるようなガイダンス、スキル、ノウハウやリソース等を提供すること。部下との1 on 1の頻度を増やし(週に一度が理想)、目標達成にどのぐらい自信を持っているのかを確認。自信が足りていないようであれば、必要なサポートをしていく。

ゴールをクリアにし、必達の意識を高める:会社の目標、各チームの目標、そして個人目標はもう設定されていたとしても、設定だけで終わらすのではなく、《共有と確認》を毎週徹底すべき。負け越す状況には決して慣れさせず、各自ゴールにコミットし、常に勝ちに行く姿勢、必達の意識を高める。

カスタマーサクセスにダブルダウン:売上チャーンが下がれば、新規獲得しなくてはいけない売上が減る。アップセルやエキスパンションによって売上継続率を100%以上にできたなら、なおさら良い。売上規模が大きいほど、チャーンやアップセルによるインパクトも大きくなるので、カスタマーサクセスをさらに強化しレベルアップを図るべし。

採用計画を達成させる:SaaSは、採用計画が未達だと売上計画の達成も難しくなる。採用を社長の目標に入れてコミットさせる。もし毎月1名の採用を目指すなら、採用担当者がいることが必須になるだろう。会社に十分なキャッシュがあるのなら、2ヶ月に一名を採用する計画であったとしても、担当者を入れても良いと思う。

セグメントと分析:既存顧客をセグメント化してパターンを探す。リードあたりの売上が、レストラン業界で特に高いかもしれない。従業員人数300人以上の顧客のチャーンが圧倒的に低いかもしれない。プレミアムプランの顧客の方がNPSが高いかもしれない。他より上手く機能しているセグメントを探して、そこにリソースと予算をもっと寄せていく。

Sales Opsへの投資:ダッシュボードの管理、セールスプロセスの改善、情報やノウハウの体系化、部署間の連携力アップなど図るSales Opsの専任がいると営業効率が上がる。特にARR 1億円超えているスタートアップにとっては、メンバー各自が目標達成をするための重要な役割になる(Sales Ops とは?)。

以上が1年間のARR目標の達成確度を上げるポイントだ。目標を達成して、今年もさらに良い年を築いていこう。

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KARAKURIに投資をした理由

コールセンターの就労人口は、おおよそ100万人、そしてその市場は1兆円以上と言われている。コールセンターやカスタマーサポート部隊を持つ企業も非常に多く、サービスを提供するなかで重要な役割を持っている。

でも同時に、多くの人が働く大きな業界であるということは、課題も多いということだ。

コールセンターは離職率が高い。業務内容も環境も〈忙しく大変〉というイメージが強く、採用も難しい。お客様に対して丁寧な対応を心がけたいのはやまやまだが、現実は一人当たりの対応件数が増えるばかり。育成にかけるリソースも足りていない。このコールセンターやカスタマーサポートが抱える課題を全体的に解決しようとしているのがKARAKURIだ。先日総額5億円のラウンドをALL STAR SAAS FUNDで投資させてもらった。

Vision

初めてKARAKURIに出会ったのは2018年の前半。当時は、チャットボットスタートアップが多く生まれ、ブームのようになっていた。僕もすでに多くのチャットボットスタートアップからのピッチを受けていて、すでにこの分野は「バズワード」として聞き疲れ気味だった。実はKARAKURIからコンタクトをもらったときも「きっとまた同じようなピッチを聞くのだろう」と思っていた。でも、違った。

CEOの小田さんが語ったメッセージは、チャットボットの話ではなかった。それは、コールセンターやカスタマーサポートの話だった。前職でコールセンターBPO業務を立ち上げてきた小田さんは、課題に対する理解度が非常に深かった。

課題の大きさ、機会の多さ、そして業界全体に変革を起こしたい気持ち。業界やクライアントに関する理解度も深く、ビジョンも大きかった。僕は、そんな彼に惹かれて去年8月に投資を決めた。

Technology

そして彼らのもう一つの魅力は、技術力だ。大きなビジョンを描いたら、それについて行ける技術職が必要。この技術力が、KARARKURIには存在している。CTOの中山さんが率いるエンジニアチームは、レベルが高く、開発スピードも速い。クライアントとの満足度インタビューの結果にも現れている。仲間集めも順調に進み、一流の技術チームになれるポテンシャルを秘めていると思う。

Customer Success

クライアントのオンボードから導入後のフォローアップまで、KARAKURIは会社全体を通してカスタマーサクセスへのコミット力が高い。カスタマーサクセスという名前のチームは存在せず、複数の部署が連携して顧客の成功にコミットする体制を取っている。このタッグ制によって、クランアントが様々な面でスピーディなサクセスを体験できるようになっている。結果、既存顧客のアップセルやエクスパンションから成る売上拡大率が高いのだ。

KARAKURIは、そんな優秀なメンバー達と共に、多くの課題を持つ重要な市場に挑んでいる。彼らのビジョンを実現できるように僕も全力でサポートしていきたいと思っている。現在も様々なポジションで絶賛採用中なので、一緒にチャレンジしたいと思う人はぜひ連絡をして欲しい。 ⇒ https://karakuri-ai.co.jp/?page_id=1009

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ARR1000億という名の山の登り方

今回のポストでは、サブスクリプション・ビジネスにおける収益化のためのプラットフォームを提供するZuora社の社長、Tien Tzuo氏が来日中に開催したイベントのディスカッション内容を書き起こしたものだ。彼が語った、セールスフォースでの経験や学び、そしてARR 1000億円に到達するまでの『7つのフェーズ』とは。

セールスフォースでの時間

僕(Tien Tzuo氏)のセールフォースでの従業員番号11番。1999年創業間もない時にジョインして、まだオフィスもプロダクトもない時だった。僕らは「インターネット時代のエンタープライズサービスを作る」をビジョンで事業展開した。セールスフォースは、SaaSの事例が全くない中、イチからSaaSを設計して事業を伸ばしてきたので、みんなが最近聞くようなコンセプト(例えば、カスタマーサクセスやSDR/BRD)や指標(ACV等)は、セールスフォースが発明したものだ。

ほぼ同時期に創業されたエンタープライズサービスを提供する企業は、オンプレを提供していたけれど、セールスフォースはオンプレを提供する事を強く否定し続けた。「インターネット時代のエンタープライズサービスを作る」と言うビジョンに執着した。この執着心は、自分たちに〈フォーカス〉を与えてくれて、そしてSaaS市場が確立したタイミングで、僕たちはその市場のリーダー的存在になれた。

ストーリーを語る力

これはセールスフォースで学んだ事で、大きな概念を描いて発信していく。セールスフォースは、自分達のことを語る時、SFA (セールスフォース・オートメーション)については言及せず、「ソフトウェア時代を終わらせる」と言うストーリーを語った。

Zuoraでもその学びを活かして、ビリングツールのサービスプロバイダーとして自らを語るのではなく、「サプスクリプション・エコノミー」のストーリーを語り続けている。

The Climb

SaaS企業を成長させる時に気をつけなければならないのが、『自分が今どのコンテキストやフェーズにいるのか』だ。これを意識せずに伸ばしていくと、思わぬ落とし穴にハマってしまう。また、急成長しているときはとにかく色々壊れてしまう。過去に囚われず、自分たちを再発明していく必要がある。

この7つのフェーズの総称を「The Climb」と言う名前にした理由は、SaaS企業を伸ばすとき、登山と同じようにスィッチバック(ある方向から概ね反対方向へと鋭角的に進行方向を転換するジグザグに登っていく)が必要だからだ。「今までとは違うことをやらなくてはいけない」というマインドセットが重要なのだ。

アイデアの証明(0ドル〜100万ドル)

起業家がよくする間違いの1つは、ニーズを確認する前にプロダクトを作ってしまうこと。
開発をする前に、完成されたプロダクトがない状態でも、自分たちが売ろうとしているプロダクトが、まずは1億円分売り上げることができるのかを確認しなくてはならない。プロトタイプの状態でユーザーにぶつけることで、自分のアイデアが求められているものなのかを確認、証明すべきだ。

製品の証明(100万ドル〜300万ドル)

ARR 1億円を超えるタイミングまでには、プロダクトの最終形態の解像度を上げておきたい。最終版を完成させるにはあと5年かかるかもしれない。でも、完成に向けてどういった順番でどの機能を開発するのか、どのクライアントを取りに行くのかなどは、ARR 3億円のフェーズに行くタイミングまでには明確に答えられるようにしておきたい。Zuoraでは、早い段階からSaaS企業だけでなく、他の業種や業界を狙っていくという判断をしているから、それを考慮したプロダクト設計にしていた。

市場の証明(300万ドル〜1,000万ドル)

特にベンチャーキャピタルから資金調達をした場合、本当の市場規模を理解する必要がある。今自分が経営している会社は、どのくらい大きくなるポテンシャルがあるのか。評価額はどの位までになれるのか。これを知らずに大型調達をしてしまうと売却も上場もできない会社になるリスクが出てくる。

ARR 100億円を達成したタイミングでどのくらいの顧客数になりそうなのか ー 平均単価100万円の顧客を1万社持つのか、はたまた平均単価1000万円で1000社の顧客を持つのか。そして、将来的にターゲットとなりえる顧客数の規模はどの程度なのか。こういった質問にしっかりと答えらえるようにしなくてはならない。

並行して、マネージメントの仕方も大きく変える必要がある。組織の中で1人のリーダーが効果的に直接影響を与えらえる人数は、大体7人まで。それを越えたらレイヤー(層)を1つから2つに増やす必要がある。従業員57人くらいになればリーダーのレイヤーは3つに増やす。そして従業員150人となればレイヤーは4つに。マネージメントの仕方や情報共有の仕方、そして目標設定の仕方は、レイヤーを増やすたびに大きく変えていくべきだ。

ビジネスモデルの証明(1,000万ドル〜3,000万ドル)

ARR 10億円から30億円の間では、ビジネスモデルに焦点を絞り始める必要がある。
顧客獲得コスト、解約率、LTV、粗利益、NRRやコホート別に見たトレンドなど様々な視点での指標を用いて、ビジネスを成立させるために何をどこまで持っていく必要があるのかを考え抜く。

特にARR 30億円規模になると、予算の割り振り方が今後の成長に大きなインパクトを与える。顧客セグメントや取り組み毎に、どのくらいのセールスとマーケティング予算を割り振るべきなのか。今後のさらなる成長のためにR&Dに割くべき先行投資額はいくらなのか。これらをはっきりとしておきたい。

ビジョンの証明(3,000万ドル〜1億ドル)

ARR 30億円を超えた時点で上記すべてを明確化することができたのなら、もうARR 100億円は見えてくる。大体2〜3年で達成できるだろう。
特に上場を目指すのであれば、組織であれ投資家であれ、より強い「巻き込み力」が必要だ。たくさんの企業があるなかで、何故自分たちを選ぶべきなのか?ビジネスの証明、明確化は出来ているのだから、あとはビジョンを語り説得する。

Zuoraの上場時には、「世界がサブスクリプションに転換することを信じるなら弊社に投資した方が良い」というストーリーを強く訴えかけて投資家を巻き込んだ。

業界の証明(1億ドル〜3億ドル)

ARR 100億円を越えると、「プラットフォーム」を創造できる規模になってくる。太陽の周りにたくさんの小さな惑星があるように、自分の周りに小さい企業が多数集まり始める。プロダクトを連携したい、一緒に販売したいという企業が集まる。だからこの時点でどういったエコシステムを作りたいか、一緒に成長し続けるためにはどのような相手とどのように組むべきなのかを考える。

会社の証明(3億ドル〜10億ドル)

僕たちは、今ちょうどARR 1000億円を目指してる段階なので、ここからはあまり語れないが、ここまで来るともう長期に物事を考えなくてはならない。長期的に成長できる会社であり続けるには、どうすれば良いのか。業界の中で僕らはどういった立ち位置にいるべきなのか。そして、さらなる高みをどう探しにいくのか。

最後に

何か違和感を感じた時や、今まで上手くやってきていたことが上手くいかなくなっていると感じたら、それは会社に変化があった時。その時は、会社と自分自身の〈再発明〉をしなくてはいけない。前の一歩で成功の要因となったものが、今の一歩では足かせになることがある、ということを忘れてはいけない。白紙に戻った気持ちで課題に向き合えれば、おのずと答えが見えてくるはず。変化に適応し続ければ、ARR 1000億円のSaaS企業を創りあげることができると信じてる。

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SmartHR

今年2019年7月、僕はSaaSベンチャー企業への投資と支援に特化したファンド「ALL STAR SAAS FUND」を設立した。これを機に、今後可能な限りこのファンドでリード投資をしたスタートアップについて、僕の想いを投稿をしていきたいと思う。

それぞれのスタートアップのどういったところを見て投資を決断したのか、どういう想いで支援をしているのか、などを伝えることができれば嬉しい。

投資を発表して数ヶ月程経過しているが、今回のポストでは「ALL STAR SAAS FUND」にとって記念すべき第一号案件となった SmartHR について書いていこう。

僕がSmartHRに対して初めて投資を実行したのは、2015年のシードラウンドの時。実は最初に出会った時、彼らは全く別のサービスを展開していて、その時のサービスは正直あまりピンと来るものがなかった。でもその数ヶ月後にSmartHRというサービスにピボットをしたタイミングで、投資することを決めた。この時の決め手は、(1)ユーザーに対する理解度が非常に深かったこと、(2)その理解を基にユーザー目線のプロダクトを設計できていたところ。そして、宮田さんと内藤さんの素直さや学習能力の高さを感じたところにある。

このシード投資以降、僕は継続してほぼ全てのラウンドでSmartHRに追加投資をしている。そして今回のラウンドでは、共同リードで55億円を投資させてもらった。ALL STAR SAAS FUNDからの直接投資と、僕が窓口となって交渉、調整をさせてもらった投資金額を合わせると、合計で30億円近くになる。これは、僕自身のキャリアの中でも、一番大きい投資だ。

サクセス

強い魅力として感じた点の1つは、Customer Successへのコミットメント。ここで重要なのは、このコミットが組織全体規模で実行できていることだ。プロダクトチームやエンジニアチームがリリースするプロダクトや、その中の機能一つをとっても顧客中心で設計されていて、クオリティーが高い。そして、セールスやマーケティングチームもカスタマーサクセスに対する意識がとても高いと感じた。CSチームだけでなく、全部署がCSにコミットしているからこそ、99.5%という継続率を実現出来ているのだと僕は考えている。

僕がSmartHRのクライアントにインタビューをした時も、SmartHRのプロダクトとブランドに対する愛を感じたほどだ。サービスに対する満足度の高さはもちろんだが、それ以上にクライアントが、SmartHRのことを、今後も共に業界を向上させていくための〈パートナー〉として考えてくれている姿勢が在った。顧客との特別な関係性がそこに存在していることを感じた。

文化とマネージメント

僕が最も強く魅力を感じたのは、SmartHRの文化とマネージメントのスタイル。創業当初から毎年、SmartHRの従業員との面談機会を持たせてもらっているのだが、毎回特別なものを感じている。とにかく透明性が高く、メンバーそれぞれの責任感も高い。そして、コアバリューの理解がハッキリしている。経営層は自分たちと組織全体に高いスタンダードを求め続け、さらに高いスタンダードに進化し続けられるポテンシャルを秘めていると感じた。必ず、一流の組織になれると確信した。

マーケット

最後に、マーケットのポジショニングも魅力的だった。スモール、ミディアム、そしてラージのエンタープライズ顧客が存在していて、その対象となる業界は、ITやテック業界に止まらず幅広い業種や業界を巻き込んでいくことができる。つまり、対象となる潜在顧客が、日本全国に存在していて、その数は300万社以上にもなるのだ。同時に、HR Techの市場自体も直近の約350億円から、2023年までに1000億円近くまでに急成長する言われている。まさに、巨大な波に乗っている。ARR 100億円以上の企業を作れる条件が揃っていると思う。

二つ目のモチベーション

この3つが、僕がSmartHRに投資を実行した大きな投資理由だ。でも実は、直近のラウンドで僕が投資を行ったのには、もう一つのモチベーションがあった。正直言えば、今回のラウンドへの需要はとても高く、僕が投資をしなくても資金は十分に集まっていただろう。でも僕は、SmartHRの経営メンバーが今まで作り上げてきた(そして成長し続けている)マネージメントスタイルや素晴らしい文化作りを継続して欲しかった。

どんな大口の投資家が入ってくるのか。サポートのスタイルはなんなのか。新規投資家が入ってくることによって経営チームとの間で予想外な化学反応が起きる可能性があるのか。過剰に組織を管理してくることがないのか。

投資家は様々で、企業との相性によってはその繋がりがプラスに働くこともあれば、マイナスになることも、ゼロになることもある。SmartHRの場合、すでに対投資家との関係性が上手く機能している状態だったこともあった。だから、これから相性の良い新たな出資者を探すプロセスをゼロから始めるよりも、僕自身が共同リードのポジションに入って調整をさせてもらう方が、様々なリスクを減らせるのではと考えたのだ。こうしてALL STAR SAAS FUNDは、当初の予定よりも3ヶ月前倒しをして誕生することになった。

シリーズC

実はこのラウンドでは、ALL STAR SAAS FUNDの組成、資金調達、SmartHRへの投資をほぼ同時並行で行っていたので、僕にとって大きな挑戦だった。つい最近のことではあるけれど、この時のことを良く振り返る。そして毎回、この挑戦をして本当に良かったと思う。シードから支援させてもらっているSmartHRを、レイターステージでもサポートし続けられるのは、とても嬉しく光栄なことだ。

今後も、SmartHRのようにアーリーからレイターのステージにかけて支援を続けられる関係性を築いて行ける支援先を増やしていきたい。レイターステージの企業への投資は、アーリーステージの投資の数よりは少なくなるけれど、年に1社は、今回のようなレイターステージ投資を実行できたら最高だ、と思っている。

SmartHRは、自信を持って最高のスタートアップだと言える。こんなに最高な環境はなかなか見つからないと強く思う。現在様々なポジションで絶賛採用中なので、是非さらなる高みを目指して一緒にチャレンジしてみてはどうか。=> https://smarthr.co.jp/recruit

(edited by kobajenne

エグゼキューションの質

Photo by: Michelin Motorsport WEC_24 Heures du Mans

スタートアップに投資をした後、僕たちVCは様々な指標や情報をもとに、会社の状態や事業の進捗状況を把握しようとする。その中でも僕が、定性的ではあるけれど、そのスタートアップの成功を予測するために一番重要だと思っている要素は『エグゼキューションの質』だ。経営チームによるエグゼキューションの質が高ければ、どんな問題にぶつかっても解決方法を見つけることができ、スタートアップのポテンシャルを最大化できる。

エグゼキューションの質が高くなければ、一流の会社にはなれないと僕は信じている。

では、「エグゼキューションの質が高いと思う経営」とは、どういったところを見て感じるものなのか。

  • 課題に対するアクションのスピード:エグゼキューションの質が高いチームは、潜在、顕在に関わらず、抱える課題に対してスピーディーに対応できている。3ヶ月以内には課題を解決させていることが多い。
  • 目標の達成率:設定した目標や計画の達成率が高く、目標値を上回ることが多い。例え未達の月があっても、2ヶ月以上未達が続くことはあまり無い。
  • 優先順位とフォーカス:会社にとって一番重要なことにフォーカスできていて、意識が散らばっていない。
  • 一貫性:優先順位や目標が、社長や経営層はもちろんのこと、会社全体で一貫して正しく理解され認識されている。また、方針やビジョンにブレや矛盾がない。
  • クリアな考え:考えが整理されていて、次に取るべきアクションが明確になっている。
  • 高いスタンダード:経営チームが、自分達、そして会社全体に対して高いスタンダードを求めていて、そのスタンダードの高さを抜かりなく徹底的に維持している。

これらが、僕がエグゼキューションの質が高いと感じる経営チームだ。では、エグゼキューションのレベルを上げるためにどうすれば良いのか?

  • 良いプランニングと計測:どんなことでも、計らなければ客観的に状態を分析することはできない。大事だと思う指標を計測し、プランニングの解像度を上げ続けていく。そのためにも、プランニングのための時間を確保することが大事。
  • 良い人の採用:エグゼキューションのレベルを上げるために良い人材を確保し、委任と権限譲渡を積極的に遂行する。これは、考える時間を確保するためにも重要なこと。
  • 違和感を無くす:何か違和感を感じたならば、事態が悪化する前にその理由を突き止めてその原因を潰す。時間の経過と共に解決するだろうなどという考えは持たないこと。逃げずにすぐに課題に立ち向かうべき。
  • 透明性と責任:不都合な情報を隠さず、透明性高く経営をしてる。それぞれの役割や責任をハッキリさせて、言い訳できるシチュエーションを無くす。
  • グッドで満足せず、常にグレートを目指す:現状に満足せず、さらに高いレベル、最高な状態を目指し続ける。フィードバックを求めて、インスピレーションを探す姿勢を忘れないこと。

自分達のエグゼキューションの質は高いと言えるのか。
もしその答えが「No」なのであれば、これからレベルを上げにいけば良い。質が上がれば、自分自身と会社に対する愛と誇りも強まって、より高いところを目指し続ける原動力になると僕は思う。

(edited by kobajenne

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長期にわたるSaaS経営マラソンを走り切るには

SaaSスタートアップの経営は、とにかく時間がかかる。ゼロからARR100億円に到達するには、早くても8年は必要と考えたほうが良い。でも、その間ずっと全力で走ってる状態では、途中でバーンアウトしてしまうだろう。持続性のある経営を行うためにも、自分自身と会社、そして組織全体のメンテナンスを強化していく必要がある。

この記事では、現役のSaaS起業家からコメントやアドバイスをもらったので、彼らのコメントをもとに「長期なSaaS経営マラソンを走り切る方法」について書いていきたいと思う。

顧客と話してリチャージする

エネルギーを維持するためにやってることは、顧客と頻繁に会うこと。
人生をかけて創り上げた製品やサービスに対して、顧客から直接感謝の言葉をもらったり、さらなる改善点を教えてもらえる体験はエネルギーをもらえるし、ツライことを乗り越えてきて良かったと心から思える。― 福山 太郎 (Fond)

Fondの太郎くんが、彼自身そしてチーム全体のエネルギーを持続するために行っているのは、顧客と積極的に会って話をすること。これが今後の開発ロードマップのヒントになったり、カスタマーサクセスへの貢献にも繋がっているので、少なくとも週に一度はお客さんと会う機会を作っている。

顧客と定期的に会うこと。最低週に一社、できれば二社。顧客に会うことは、一番エネルギーをもらえるし、最も勉強になる。特にインターネットの会社を経営していると顧客に会う機会が自然と少なくなってしまいがちだから、意識することが大事!事件は会議室では起きていない!― 福山 太郎

COOやCクラスのメンバーを入れる

自分の役割を他のメンバーに委任できれば、新しい取り組みや事業など、未来を考えるためにより多くの時間を割くことができる。ARR1億円を超えたタイミングで自分の役割の大部分を担ってくれるCOOクラスを採用できればそれが理想だが、カスタマーサクセスやセールス、プロダクトなど部分的に委任できるVPやマネージャーを積極的に採用すると良い。

COOに仕事を任せ始めたのは、ARRが1億円を超えたタイミング。アドバイザーのFOND福山太郎さんから「ARR1億円まではアートで、ARR1億からはサイエンスの世界」と聞いていたので、そのバトンタッチがうまくできたなと思っています。― 宮田 昇始(SmartHR)

考える時間を確保する

スタートアップの経営はとにかくやることが尽きない。だからこそ、考える時間の確保は重要だ。実はこの時間は、起業家にとっての〈精神安定剤〉にもなる。気が付けばカレンダーが埋まっている・・・という事も多いなか、考えるための時間を予めブロックして、その時間は場所を変えてみるなど、環境にも工夫を取り入れると良い。

どうしても日々のオペレーションに追われていると、短期目線になりやすい。中・長期の未来について考えたり、他の経営者や専門家と話したり、自身の業界とは全く関係のない業界の人と話したりすることは、普段使わない思考を活性化できるので、リフレッシュした気持ちになるし、エネルギーが湧くきっかけになるだろう。

以下は、Plaid社の倉橋さんが考える「良いエネルギー」で自分を満たすために実施していること。

・未来、理想を考える時間がとれている。

・新鮮な気持ちに定期的に戻れている。

・累積思考バイアスを壊せている。

・具体的にはオフィスに行かない時間を作る(AMは基本行かない、毎週X曜日は行かない、この週は行かない)。

・未来の話をしている時間を増やす。

・学習と発見をメンバーに求め、結果を認める。

・無駄な時間、無駄なインプットを許容する。

・CPO(Chief Product Officer)の柴山とただただ話す。

・思考が切れる時間を作る。

・2週間以上、強制的に業務から離れる(半年に1度程、旅行など)。

・起業初期いたコワーキングスペースを”サード・プレイス”として持ち続ける。

倉橋 健太(Plaid)

採用ミスは辛い、でも乗り越えたら勝機が見える

初めて本格的なマネジメントチームを組成しようとした時。特に、間違ったマネージメント採用をしてしまった時のストレスは非常に大きかった。経験豊富なマネージメントチームを組成すると、仮に採用後に違和感を感じても、自分が間違っているのかと思ってしまいがちだけど、何か違和感を感じたら必ず介入して、必要に応じて方向転換を行うことを学んだ。マネージメント面接慣れをするのには時間がかかった。― 福山 太郎

まだチームが全部で50人のとき、ミドルクラス人材の組織ミスマッチが数件起こり、組織の空気が悪くなった。ファイナンスを推進する傍ら、1on1を繰り返し、経営の余裕もなくなっていた。 痛みは伴ったが、会社視点で前向きなリーダーへの裁量を広げ、配置変更し、チームビルティングをし直した。― 稲田 武夫 (Oct)

採用ミス、特にマネジメント層はストレスが大きい。カルチャーフィットの確認、採用基準の明確化、リファレンス、そして他の経営者からのアドバイスを聞くなどして、できる限りミスは回避はしたい。でも、100%回避することは不可能なので、どこかでミスは発生する。
その時重要なのは、とにかく早期に行動すること。問題を解消することができたら、今までより断然強く良いチームとなり、その結果、勝機が見えてくるようになるはず。とにかく乗り越えるしかない。

長期に経営できるマインドセット

2つあります。1つ目は「水は低きに流れ、人は易きに流れる」を意識しています。無理に努力するのではなく、自然と努力できる環境をつくっています。自分も会社も。2つ目は「三方よし」です。誰かが過剰に得したり、損する仕組みは長続きしません。例えば「顧客」「社員」「会社」の三者ともがハッピーになる仕組みづくりを意識しています。― 宮田 昇始

長期の経営を意識したマインドセットも重要。働き方や環境づくり、サービスや組織の設計など、長く自然と働けるようするのが大事だ。

・長期に正義を置く。長期と短期は常にセットで考え、発信し、問題提起する。

・プロダクトとビジネス以外の側面についても、一切妥協せず同一の目線感で意思決定する。

・組織や売上は最後に考える。とはいえちゃんと売上は作る(理想を言っていられる自信とステークホルダーからの信頼)。

・今のリズム、重心を設計する。固定化(思考停止)してくる部分を意図的に壊す。

・予定不調和な採用を心がける(スキルや人員計画ドリブンな採用を行わない)。

― 倉橋 健太

体の安らぎ、心の安らぎ

1日1時間の筋トレ。8時間睡眠。平日はお酒を飲まない。― 福山 太郎

今年からランニングを月間100kmやってます。走っている間が、深く内省する時間です。あとお酒は週6〜7回ほど。 ― 宮田 昇始(SmartHR)

宮田くんは、お酒を減らした方が良いと思うのだが(苦笑)、運動する起業家は多い。やはりリラックス効果があるのと、肉体の強化は自信にもなるし、精神面の強化にもなる。体と心の安らぎを満たす方法は人それぞれだが、そのための時間の確保が重要だ。

PMFを達成したらすぐに採用

人事の採用と、広報の採用!もし次回があるならば、PMFを感じた瞬間に彼らを採用できるように関係づくりをしておきます!あと、英語ももっと早くやれば良かった!― 宮田 昇始

もっと早くやれば良かった事は採用リーダーの採用、マーケティングリーダーの採用、技術負債の解消と社内システム開発組織の構築。― 稲田 武夫

PMFを達成すると人の足りなさを直ぐに感じてしまう。PMF達成前から関係づくりできるとよりスムーズになる。特に、採用ペースが月に1名以上になりそうな段階で、採用担当者や人事担当者は採用するべき。

時間は必ずかかる。焦らない。

SaaSで一番大事なのは、淡々と正しいことを行い続けること。時間は必ずかかるので、焦らない。そして社員もツライことを一緒に乗り越えてくれているので、マイルストーンを達成したら、必ず社員とお祝いをすること。顧客の声を聞いて、より良い製品を作って、顧客にさらに喜ばれるのは、最高の幸せ!福山 太郎

とにかく時間がかかるので、そのロードトリップを楽しむことが大事。会社やチームメンバーが記録を更新した時、プロダクトをリリースした時、今まで獲得できなかった顧客を初めて獲得できた時など、マイルストーンを達成した時は、社員とお祝いをしてチームの一体感を強化しよう。

SaaSの経営マラソンは長く、時には辛く感じられる時があるかもしれない。
でも、正しくやれば誇りに思える会社と組織になる。
みんなも是非彼らのアドバイスを取り入れながら、走り切って欲しい。

ご協力いただいた稲田くん宮田くん太郎くん倉橋さんに感謝!

(edited by kobajenne



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