スタートアップはスピード重視

スタートアップにとって最大の武器はスピードである。柔軟性に加え、凄まじい決断力と、それを実行に移すための猛烈なエネルギーが不可欠だ。だからこそスタートアップは、スピードを最大化できるように構成していく必要があるのだと思う。

アンチ・ダイバーシティー

最近、グローバルな市場を狙うために多国籍な創業メンバーで構成するスタートアップをよく見かけるようになった。僕は、スタートアップはアンチ・ダイバーシティーの方が良いと思ってる。
特に創業初期の少人数(2〜3人)で運営しているスタートアップにとって、文化や言語の壁は決断するスピードを落とすので、そのような構成で創業はしない方が良い。もちろん、視点やスキルの多様性は創業メンバーに必要だが、何よりも重要なのは、価値観を統一し、最もコミュニケーションが取りやすい環境を作ることが望ましい。

最後は社長が決める

物事を決める時、メンバー同士で議論して考え抜くことは大切だ。ただ、メンバー全員の合意がないと何も決められないような民主的なやり方は、スタートアップにとって逆効果になると思う。みんなの意見が合わなかった時やデッドロックが起きた時に物事をどう決断するかは、あらかじめ創業メンバーの間で決めておく必要がある。

ミッション

「今、何が一番大事なのか」を常にメンバー全員が共通の認識を持つことで、優先順位の決め方や議論の仕方がより効率化される。Googleが掲げる「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」や、Facebookの「よりオープンに繋がれた世界をつくり、シェアすることで、人々に力を与えること」のようなミッションを会社で持つことをお勧めする。

スタートアップは、スピード力が重要。創業チームを組成する時や会社のポリシーを決める時はスピード重視で進めることだ。


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海外展開のスコアシート

ca. 2000 --- Keeping Score for the Team --- Image by © Royalty-Free/Corbis

iOS、アンドロイドなど様々なプラットフォームの普及によって、事業の海外展開はより行いやすい状況になっている。そのため、海外展開を目指すスタートアップの数も増加している。でも、ただ海外を目指せば良いということではない。海外展開を行うためには、いくつかの条件を満たしている必要がある。そこで、どういう条件や状況が望ましいのか、そして現在のフェーズが海外展開に進むフェーズとして適しているかをスコアリングするフレームワークを紹介する。

99%は、まず日本

まず何よりも重要と考えていること。それは、創業者が自分が育った国の市場をしっかりと狙えているかということ。例えば日本人または日本育ちの創業者が海外展開を計画する際、僕は99%の確率で、まずは日本市場を確実に狙うべきとアドバイスする。

スタートアップは、人材、資金、時間など、ありとあらゆる面で不利な状況からスタートすることになるため、自分たちのリソースを最大限にレバレッジしていく必要がある。この「自分たちを一番レバレッジできる市場」こそが、自分自身が育った場所なのだ。

他の国に行くと、人脈をいちから構築し、その国の文化や言語を学ぶ必要が出てくる。現地にいる企業やスタートアップと比較をしても、非常に不利な状況だ。だからこそ、スタートアップのほとんどには、まずはじめに人脈の基盤を持ち、状況を一番把握している市場を狙うよう勧めている。

海外展開のスコアシート

海外展開のスコアシートには、「フェーズ」「言語」「人材」「ランドスケープ」「ネットワーク効果」の5項目がある。それぞれの項目に最大5点まで採点することができ、全5項目の点数の合計で25点満点を獲得できれば、海外展開に適していると判断することができる。

それぞれの項目の採点方法は以下。

フェーズ

会社のフェーズを意識する。まだプロダクト/マーケットフィットを達成できていないスタートアップは、そもそも海外展開を考えない方が良い。最適なフェーズは、最初に狙った市場を独占できる状態であること。独占までの道筋が見えていいて、戦略も固まっている状態であること。

  • 採点
    • 5点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できていて、独占までの道筋が見えている
    • 3点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できているが、独占はまだ見えていない
    • 0点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できていない

文化 / 言語

参入しようとしている国の言語を話せるか?文化を理解できているか?言語を話せなかったり、文化を理解できていないというのは、ビジネス展開上大きな不利となる。例えば、現地での採用が難しくなったり、マネージメントがしにくくなる。また、サービスを展開するときにターゲットユーザーを理解することが難しくなったり、細かいニュアンスなどをピックアップする事ができなくなってしまう。

  • 採点
    • 5点 – ネイティブレベルで現地の言語を話すことができ、その国に住んだ事もある
    • 3点 – ビジネスレベルで話せる、文化をそこそこ理解している
    • 2点 – 全く話せない

人材

最高の人材を現地で採用できている必要がある。戦略・採用・実行などは現地のチームに任せる事になるので、初期メンバーはかなりトップクラスである必要がある。

展開先のメンバーの採用の際、人材のデューデリジェンスが手薄くなってしまうことが多い。同じ言語を話せないとさらに難しくなる。でも実は、共同創業者を選ぶとき同じぐらい厳しくデューデリジェンスをする必要がある。

  • 採点
    • 5点 – Aクラスのチームを採用できる
    • 3点 – そこそこのメンバーは集まっているが、まだ完全に任せるのは難しい
    • 0点 – 良い人が採用できない

 

ランドスケープ

海外展開先となる国での競合分析、市場分析、法律、文化、そして現地の資金調達環境を分析する必要がある。

現地に競合はいるのか、いる場合は本当にそれら競合に勝てる見込みがあるのかを調査、検証する。現地の競合に対して多額な資金を投資するプレイヤーがいるのかを探る必要もある。例えばUberの場合、インド、東南アジア、中国などの現地プレイヤーが何百億円もの資金調達を成功させ力をつけていることから、類似サービスの激戦区となっている。

他にも、展開しているサービスと狙っている国の文化的適合性や、法律面の問題点が無いかなども確認する必要がある。

  • 採点
    • 5点 – 文化や市場の適合性があり、現地の競合に勝てる見込みがある
    • 3点 – 文化や市場の適合性はあるが、現地の競合に勝つのは厳しそうだ
    • 0点 – 市場や文化の適合性がない

ネットワーク効果

ネットワーク効果とは、同じプラットフォームやサービスを利用するユーザが増えると、それ自体の効用や価値が高まる効果のこと。例えば電子メールのユーザーが増えれば増えるほど、メールを送ることができる相手が増加し、メール自体の価値が高まる。

そして海外展開で特に重要になってくるのが「グローバルネットワーク効果」だ。

現在展開しているサービスの新規ユーザー、在庫、コンテンツなどを増やすことが、他国のユーザーを含む全ユーザーにとってのサービス利用価値の向上に繋がるのか?ネットワーク効果が他の国にいるユーザーにも行き渡るのか?

「グローバルネットワーク効果」のあるサービス例の1つはAirBnBだろう。サービス利用者は旅行者が大半であり、アメリカで泊まれる場所(供給)が増えればアメリカに旅する他の国のユーザーが得られる価値も上がる。そして日本での供給が増えれば、日本に旅行するAirBnBユーザーがサービスの価値を感じる。AirBnBが世界で広まれば広まるほど、ひとりひとりのユーザーが得られる価値は上がっていく。

もう1つの例として挙げるとすれば、Instagramだ。写真を中心としたSNSなので、日本人がアメリカのユーザー、台湾人が日本人のユーザーをフォローしあうことができる。ユーザーやコンテンツがどの国で増えても、全体としてユーザーひとりひとりが得られる価値が上がっていく。

  • 採点
    • 5点 – グローバルネットワーク効果が強いサービスを展開している
    • 3点 – 少しだけグローバルネットワーク効果がある
    • 2点 – ネットワーク効果がない

集計

合計で25点満点をスコアリングできている場合、海外展開をする準備は整っていると判断しても良いだろう。合計が15点以上で、1つも0点にならなかった場合(文化/言語とネットワーク効果は0点取れないようになっている)は、海外展開を検討しても良いが慎重にアクションをとる必要がある。15点未満の場合は、海外展開はまだ先のフェーズであると判断すべき。まずは国内市場でのビジネス展開にフォーカスするべきである。

海外展開を検討している起業家は、是非このスコアシートを参考に使ってもらいたい。


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フィードバックループを短くする

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スタートアップをメンタリングする中で、僕はよく「フィードバックループは、もっと短くすることができる」とアドバイスする。

「フィードバックループ」とは、ユーザーとコミュニケーションをとり、その声を集めて改善につなげていくこと。特に初期の段階で、まだ自分たちのプロダクトがユーザーを満足させているかどうかが分からない場合は、コンバージョンやスケール、最適化などは後回しにして、ユーザーからのフィードバックをできるだけ収集してサービスを実際に利用するユーザーについて学ぶことを最優先にすべきだ。

この「フィードバックループ」をより効率的に実行する方法の例は以下である:

電話で話す
過去に起業経験のない起業家がよく陥る落とし穴は、数値の分析をしすぎること。KPIやユーザーデータを基に、ユーザーの満足するポイントや、不便な部分、分かりにくい部分を分析しようとする。特に初期の段階はデータサイズが小さいので、あまり参考にならないし、データがたまるまで時間がかかったりする。だから、ユーザーとできるだけコミュニケーションを取る機会を作る必要がある。例えば、ユーザーが登録したタイミングで、登録のサンキューメールと共に電話でも話す機会を作る。

ここでポイントなのは、電話でのヒアリングを通して何を検証・確認したいのかを明確にして、ヒアリングに適切なユーザーが誰なのかを予め決めておくことだ(ターゲットユーザーなのか、アクティブユーザーなのか、もしくは非アクティブユーザーなのか 等)。

よくある効果的な流れの例は、まずメールで簡単なアンケートを実施する。このアンケートの結果を通してヒアリングをしたい対象ユーザーをフィルタリングし、電話インタビューに繋げる。この時、簡単なプレゼント(Amazonギフト券500円 等)を付けてみても良い。実際、検証したいユーザーデータが集まるのを1週間も2週間も待つよりも、500円支払ってユーザーと直接話して確認したほうが確実に効率的だ。

トリガーメール
機能やページ単位の細かい検証をする時に効果的なのは、サイトやアプリ上で特定の動きをしたユーザーに対してメールを自動配信することだ。例えば、決済ページの離脱が異常に高い場合、そこまで辿り着いたユーザーに対してフィードバックを依頼するメールが自動配信されるよう設定しておく。返事が来たら、フォローアップして電話インタビューに繋げる。
その他にも、アクティブユーザーとなるきっかけを検証するために、5日間連続でログインしたユーザーが現れたときにメールを自動配信することで、アクティブユーザーだけのメーリングリストを作ることもできる。

ユーザーグループ
オフラインでもオンラインでも、過去に話してきたユーザーの中で今後も関係性を保ちたいユーザーを集めてディスカッションをする場を作ると良い。すぐにフィードバックが欲しい時には、その場で意見を求める事もできるし、もし熱量が高ければサービスの「応援団」になることもある。そのためにも、改善されている部分を定期的に知らせたり、ユーザーがその改善に貢献していることを感じさせることがポイントになる。

常駐サポート
これはエンタープライズ向けサービスを提供している場合に効果的な方法で、古いやり方と思えるかもしれないが、サービスをβ利用してくれる企業に常駐してサポートをする。
サービス利用者の近くにいることによって、質問があった時は迅速に対応することができ、更にフィードバックをもらえるきっかけができる。可能であれば、利用者を観察できる場所に常駐させてもらえると多くの貴重な学びがあるだろう。

これらがフィードバックループを短くする例だ。とにかく重要なポイントは、何を検証・確認したいのかを予め決めて、プロダクトを使っているユーザーとコミュケーションをとるきっかけを作ること。そして(特に初期段階のスタートアップは)フィードバックループを短くすること。まずはスケールすることを考えずに、ユーザーのニーズや考え、プロダクトがどこまでユーザーに適合しているかを学ぶことを最優先にすることが重要だ。


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ベンチャーキャピタルはサービス業

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世界中でベンチャーキャピタル(VC)の “キャピタル(お金)” がどんどんコモディティー化している中で、北米では様々なやり方で差別化を図ろうとするVCが特に増えてきているように感じる。アクセラレーターのように起業家やメンターのコミュニティーを結成させようとするVCもあれば、スペシャリストやエージェントを内部に在籍させるVCもある。また、技術を使って投資先とVCパートナーのコミュニケーションを促進するプラットフォームを提供しているところもある。

でも、世界の様々なVCそして起業家と話をしてきた中で僕が考える「VCに求められる絶対要素」というものがある。

信 頼:約束を守ったり、情報の透明性、起業家を信頼すること。

プロフェッショナリズム:スピーディーかつプロフェッショナルな姿勢で物事を対処できること。一定の対応品質を期待できてパフォーマンスに波がない。

専門知識:会社の成長を加速させるための知識や経験の提供できること。

アクセス:会社を次のステージに持っていけるネットワークを持っていること。

ブランド:採用、営業、次の調達などにレバレッッジできるブランドを持ってること。

実はこれらの要素は、日常生活をする上で利用する様々なサービスを選ぶ際の基準と変わらないものが多い。ちなみにサービスとは「人のために力を尽くすこと」と定義されている。
起業家とその起業家が経営しているスタートアップの成長のために尽くす。これが、ベンチャーキャピタリストが起業家に提供する「サービス」である。

ベンチャーキャピタルはサービス業である。
今まで色々な形や取組みで起業家を支援してきたが、結局は投資を担当する人と起業家と言う人との関係性がサービスの質に一番影響する。今更ながら自分が提供するサービスを意識するようになった。


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4軸の成長

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シード期のスタートアップに出資をするとき、僕はそのスタートアップの「成長の素質」に注目するようにしている。

僕が特に着目しているのは「人」「ユーザー」「プロダクト」「戦略」。この4軸の成長を主に見ている。

最初から完璧な経営ができる起業家はいない。
最初から良いアイディアを持つ起業家もいない。
重要なのは、その起業家が将来良いアイディアを生み出して発展させることができる素質を持っているか、良い経営者に成長できる素質を持っているか。

ほんの数回のミーティングで、人としての成長性を見極めるのはものすごく難しい。見極め方としてはその人物が「自分をより良くするためのドライブ」を持っているかどうかを確認することだ。例えば、アドバイスをした時にそのアドバイスを自分できちんと判断をして実行に移しているのは1つの良いシグナル。他の人や本から学んだことを、まるで自分で考えたことかのように説得力を持って上手く伝えられるというのも、また1つの良いシグナルだ。

ユーザー

プロダクト利用者数の成長状況はもちろん重要だ。でも僕は、顧客をきちんと理解しているか、その市場の理解度が深まっているかどうかが、特に大切だと思っている。ユーザーは誰なのか?モチベーションは?どういったシグナルがあればユーザーがサービスを使う傾向があるのか?ユーザーがサービス登録するときに期待していることは何か?はたまた期待外れに思うことは?などたくさんの質問と答えを繰り返すことで、会う度にどんどん相手を理解できる。そしてさらに実際そのユーザーが存在する市場が、どんな構成で隣の市場にいるユーザーと具体的にどう違うのか、その規模がきちんと見えていることが重要である。

プロダクト

ユーザーの理解度が深まる度に、プロダクトを改善する。プロダクトがまだ無い場合は、そのプロダクトの設計がユーザーから得た学び(又は学びたい事)を根拠にした改善を実装することが重要。プロダクトの開発スピード、PDCAを回すスピードは、サービスの成長と比例することが多い。

戦略

そして最後の軸が、戦略。戦略の組み方や伝え方、そして発展性をきちんと見ること。正しいか間違っているかは問題ではなく、その戦略を裏付ける考えやインサイトは何なのか、組み方や伝え方がロジカルかどうかが重要である。

成長は重要な説得材料

資金調達時のフェーズに、一時的に成長速度を落としてしまうスタートアップをよく目にする。資金調達フェーズでは、資料作成、そして投資家や関係者との会話に多くの時間を費やさなくてはならない。結果、現状のオペレーションを維持するだけで精一杯になってしまうのだ。でも、事業を成功に導くための成長なのだから、成長の状況は投資家にとって最も重要な説得材料の一つになるわけだ。資金調達時期にもちゃんと4軸の成長ができるタイムマネージメントやプランを組むことによって、より多くの投資家を説得することができるだろう。


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経営のPower Law

ベンチャーキャピタルの世界には、冪乗則(Power Law)と言う概念がある。

これは、ベンチャーキャピタルファンドの価値を測ると、ポートフォリオの中で最も企業価値の高い会社数社が、ファンド価値の半分以上を占めているという原理。

例えばYcombinatorは、400社のポートフォリオに出資しているが、そのなかでDropboxとAirbnbの2社がポートフォリオ全体の6割以上の価値を占めている。もし残りの398社の価値をすべて合わせても、DropboxとAirbnbの2社の価値の合計には届かない(Source)。また、北米でベンチャーキャピタルからの出資を受け、2012年に上場した会社を軸に見てみても、その年のベンチャーキャピタル全体のリターンのうち77%がFacebookからきているものだった。

僕がOnlabをやっていた時代も、現在のBEENOSのポートフォリオも、すべてこの「Power Law」が成り立っている。

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経営のPower Law

Yammerを創業したDavid Sacksが、Power Lawはベンチャーキャピタルだけではなく、日々のオペレティングの中でも適用できるとつぶやいている。これに僕も、同感だ。

過去に決断してきた様々なことの100倍の価値を、たった1度の決断で生み出せることがある。Power index (べき指数)の価値を生み出すための決断が出来るようになるには、とにかく決断の数を増やすことしかない。

ロジックや思考だけで決断のインパクトの大きさを予測するのは難しい。大きなインパクトがあると分かっていても、人は、べき指数を過小評価してしまうことが多い。だから、決断して実行してからじゃないと本当のインパクトは分からない。

Startup = Growth

Ycombinatorを創業したPaul Grahamは、スタートアップは成長し続けないといけないと述べた。成長が止まったと感じたときこそ、決断を迫られているときと考えるべきだ。べき指数的な決断はチームや会社のみんなが満場一致で合意しないケースが多い。50:50で分かれて長い議論を必要とされることが多い。ただ、留意すべきなのは議論の結果「何もしない」「このまま維持する」という選択も立派な「決断」であることを忘れないでほしい。

考えて、決断して、実行する。

とにかくこれを繰り返す事が大事。「決断する」ことは怖い。「決断しない」方がよっぽど楽だ。

でも、起業家は成長し続けるために、「決断」をし続けないといけないのだ。


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チェスボクシング

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経営者や大きな事業を任されているマネージャーが身につけるべきスキルの1つは、瞬時に思考モードやコンテクストをスイッチすることができる「ハイコンテクスト・スイッチング」と言うスキル。

「コンテクスト・スイッチ」とは、複数のプロセスが1つのCPUを共有できるように、CPUの状態(コンテキスト)を保存したり復元したりする過程のこと。実行中のプロセスの状態を保存して、後にそのプロセスを再開する際にその状態を復元して、実行をする(ウィキペディアから)。

会社を経営をしていると、マーケティングから採用へ、採用からプロダクトへ、プロダクトからまたマーケティングへと1日を通して何度も思考モードを切り替えないといけない。そこで重要なのは、その時その時のテーマに100%集中すること。他のテーマや直前のミーティングでの議論内容に引きずられないようにすること。

BEENOSの津田と「ハイコンテクスト・スイッチング」について話していたら、「まるでチェスボクシングだね」と言われた。チェスボクシングは、チェスとボクシングを交互に行うアンダーグラウンドな協議。戦術モードと戦略モードを交互に行う「コンテクスト・スイッチング」。

悩まない

「ハイコンテクスト・スイッチング」をマスターするには、悩みをできるだけ無くすことが重要。悩みを引きずると上手くスイッチングが効かなくなる。以下は僕が考える悩みを減らして、スイッチングを上手くするポイント。

クリアな優先順位 :会社の優先順位そして自分自身の価値観を明確にする事によってよりスピーディーに物事を決断できるようになる。スピーディーな決断は、効率的なスイッチの切り替えに繋がる。

ルール化:テーマごとにその課題を解決するアプローチをルール化したりすると、問題の本質に早くたどり着く事ができる。例えば僕の場合、オペレーションについて課題を抱えている時は、そのボトルネックとなっている要因を探し出すことに集中するし、もしα版のプロダクトについて検討課題がある時は、初期ユーザーのファネル(導線)を中心に解析しようとする。こんな風に、経験を重ねてどんどん自分の中のルールを作っていく。ただ、気をつけないと行けないのは、作ったルールに執着し過ぎない事。他により効果的で最適なルールがあれば、常にチャレンジし続けること。

時間を作る:以前のブログにも書いたことだが、考える時間を作るのは大事なこと。考える時間を作る事によって悩むべきことと「今は悩まなくていい」ことが判断できる。

実践と経験によって身に付く「ハイコンテクスト・スイッチング」のスキルを着実に自分のものにするためには、学習する力を常に意識していかなくちゃならない。


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僕は社長に向いていない

「社長」という職業をマスターすることは難しい。

クオリティの高いプロダクトを作るプロダクトマネージャーであり、時には社員のメンタルケアもする精神科であり、他社との連携開拓をする政治家でもあり、はたまた時には優秀な人材を確保するヘッドハンターであり…その他にもたくさんの役割を担っている。

時には頑固で時には柔軟に。時には自信過剰で時には謙虚に。時には慎重すぎるくらい慎重に、でも時には積極的にリスクを自ら取りに行く。

矛盾点の多い不自然な職業なのだと思う。

社長になるためのトレーニングは無い。社長になって初めて経験することが山のようにあるのだから、社長になるための準備が万全に出来ている社長予備軍などいないはずだ。

多種多様な性格を持つメンバーがたくさんいる組織、変化の激しい市場、容赦なく攻撃してくる競合相手を、常に上手にアレンジして会社を経営していかなくてはいけない。

こんなにコンプレックスだらけの職種なのだから、どんなに優秀な人物であっても誤った判断をしてしまったり、思うように成果に繋がらないこともある。そんな自分に落胆して、「自分は社長に向いてない」と思ってしまう事も何度もあるだろう。特に負けず嫌いで、学校や仕事で優等生だった人であればあるほど、そう思う頻度が高いかもしれない。

はじめから社長に向いている人はいない。

恐らく完全にマスターするのは不可能だと思う。大きな責任を背負いながらマスターできない仕事をし続ける精神的な負担は計り知れない。不安、恐怖、混乱の状態のなかで、時に「自分は社長に向いていない」と思ってしまうのは当たり前だ。きっとどの社長もそう思ったことがあるだろう。でも、これは一流になるまでのプロセスにすぎない。

メンタルマネージメント

重要なのは、自信をなくして不安や恐怖などネガティブな感情のループに陥ったときのメンタルマネージメントだ。以下は、僕が推奨するテクニック。

メンターを探す:自分と同じ立場や状況を一度でも経験したことのある相談相手がいるとだいぶ楽になる。心を開いて気ままに相談できる相手がいればさらにベストだ。

再校正: 自分の考えをもう一度すべて紙に落とし込んで、自分がくだした判断のロジックを可視化する。何度考えても同じ結論にたどり着くことができて、自分自身が何を求めているのか、何をゴールにしているのかなど、考えがぶれていないことを再確認する。

もう1つ僕が良くやる事は「勝つためには」という言葉を真っ白な紙の一番左上に書いて、自分にとっての「勝った状況」は何なのかをその下にリストアップする。そして「今の状況」を一番右上にリストアップする。
勝った状態と今の状態のリストの間に今の状態から勝った状態にたどり着く為に取るべきアクションをリストアップして、自分が今行っている事が本当に重要なのかどうかを確認したり、今のうちにやらないといけないことを整理する。

長期的に考える: とにかく長いスパンで物事を考える。自分が考えたビジョンや長期的な目標にメンタルをフォーカスする事によって、いま目の前で直面している壁や課題が小さく感じる。

減速する: 常にハイスピードな状態を維持したままで高いパフォーマンスを出し続けることは難しい。時には減速してアウトプットも減らして、インプットを増やしたり、仕事のペースを落としたり、状況が許すのであれば数日休んだり。加速する為には減速することも必要だ。

しつこく言っているけれど、社長という職業に就いたら、たくさんのコンプレックスの渦の中で生きていかなくてはならない。だから、最初から完璧にできる人などいない。ただ重要なのは、決して諦めないこと。究極はそこなのかもしれない。

P.S

自分の運が悪いと思っているのであれば「Uber創業者のFailcon」を見るといい。本当に勇気づけられる。


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会社のコア・バリュー

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コア・バリューは、組織が大きくなってから心配すればいい

忙しい!ハッスルする!それが俺たちのコア・バリューなんだ!

と言って、自分たちの「コア・バリュー(会社が持つ中心的な価値観)」について考えて議論することを後回しにしてしまうスタートアップが多い。
でも実は、コア・バリューというのは後回しにすればするほど、会社全体の価値観が決まらないまま走り続けるということになってしまい、立て直しが難しくなってしまう。だから、1人目の社員を採用する前に、組織が小さいうちに、「コア・バリュー」を決めておくべきだ。

コア・バリューの重要性

コア・バリューは、会社の雰囲気、文化を作る。メンバーそれぞれの判断基準となり、決断スピードを上げる。コア・バリューが明確な会社は、会社の文化に合った人材を雇用するためのしっかりとした採用基準を持つことができる。そして、メンバー同士の絆そのものとなって、メンバー全員を同じ方向に向かわせるための重要な要素となる。

もしコア・バリューを決めずに組織が大きくなってしまったら、組織の中のある特定の人の意思や出来事に影響された「勝手に出来上がった会社の文化」が成立してしまう。メンバー同士の仕事に対するパッションやそれぞれのスキルに大きな差が生まれて、メンバーがお互いをリスペクトし合えなくなり、全体の生産性が落ちてしまうという結果に繋がりかねない。

社長= 会社の価値

組織が小さい間は、その組織の中で象徴的存在となる人物がコア・バリューとなる。そしてそれは「社長=会社」というコア・バリューになる。

だからコア・バリューを決めるときは、社長の長所、 社長が仲間を集めるときに一番大事にしていること、 社長が一番苦手のタイプ、 社長の短所などをきちんと理解することが必要だ。

他社のコア・バリュー

下記は、Facebookが提示しているコア・バリュー。ハッカー文化をものすごく大事にしているのがとても良く分かる。

  1. 影響を見据える
  2. 素早い行動
  3. 大胆になること
  4. オープンであること
  5. ソーシャルバリューを確立する

そして次はZapposのコア・バリュー。顧客に感動を与えるために常に創造することを大事にする内容になっている。

  1. サービスを通じて,WOW(驚嘆)を届けよう。
  2. 変化を受け入れ,その原動力となろう。
  3. 楽しさと,ちょっと変わったことを創造しよう。
  4. 間違いを恐れず,創造的で,オープン・マインドでいこう。
  5. 成長と学びを追求しよう。
  6. コミュニケーションを通じて,オープンで正直な人間関係を構築しよう。
  7. チーム・家族精神を育てよう。
  8. 限りあるところから,より大きな成果を生み出そう。
  9. 情熱と強い意思を持とう。
  10. 謙虚でいよう。

常に意識して行動する

社長をはじめとするマネージメントメンバーは、他のメンバーに会社のコア・バリューを正しく伝えていく必要がある。だからこそ、常にこのコア・バリューを意識して行動し、コミュニケーションをしなければならない。1回のミーティング、メール1通の中でも、コア・バリューを意識する。

会社のコア・バリューを正しく理解して、それを部下に伝えることが大切だ。

会社の文化が崩れ始めるきっかけは、マネージメントメンバーが、コア・バリューを持たない、もしくは、意識せずに人材採用を続けてしまうことが大きいと思う。社長は、マネージメントメンバーの1人1人に対して、常にコア・バリューを意識することをしつこくリマインドする事が大事だ。

会社のコア・バリューは早い段階で明確にして、厳しく守り続けた方がいい。後回しにしてしまうと、結果思わぬ方向に会社が進んでしまい、これを立て直すには会社全体に大きな負荷がかかる。

なにより、自分が自ら作った会社と組織をいつまでも愛し続けるための「コア・バリュー」なのだと思う。


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崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくる

img_9578LinkedInの創業者 リード・ホフマンの名言の1つに、「スタートアップとは、崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」という言葉がある。

僕もまさにその通りだと思う。

起業家は、「やばい、やばい、やばい」と日々言いながら(もしくは頭の中で言いながら)仕事をしている。それは、人材採用が間に合っていなかったり、サービスを作り上げるための体制や仕組みにボトルネックが生じてしまったり、はたまたプロダクトに対する需要が供給を上回ってしまったり。とにかく起業家は、日々多くの「追い込まれた状況」の下にいる。

僕は、これがスタートアップの正しい姿だと思う。ある意味、「やばい」と感じているのであれば、安心と言っても良いのかもしれない。なかには、この「やばい」状況から逃げるためにサービスのローンチを必要以上に先延ばしにしたり、改善や新しい取り組みをすることなく現状を維持したままでオペレーションを続けたりする起業家がいる。でも、怖いからこそ、順調と感じているからこそ、逆に「どうすれば崖から飛び降りれるか」を常に一生懸命考えた方がいい。

崖から飛び降りる方法はいくつかある。

さっさと顧客からお金をもらう

もしそのサービスが有料サービスなのに無償Beta版の提供を続けて、まだ有料会員や企業など顧客がいないのであれば、さっさと課金を始めた方が良い。ユーザーからお金を受領しサービスを提供するとなれば、もう後戻りは出来ない。とにかく走り続けて、ユーザーを満足させるために、改善を繰り返しながらオペレーションを回していけないといけない。

スケールしない事をする

特に最初の段階は、正直オペレーションの仕組みは重要視しなくても良い。人力でも良いので、とにかくオペレーションを回し続けてみることが重要だ。例えば、もしエンタープライズサービスを展開しているのであれば、顧客のオフィスに常駐させてもらって、サービスを提供してみればいい。もしデリバリーサービスをやってるのであれば、実際に自分自身で顧客に商品を配達してみればいい。とにかく最初は、スケールしないことをする。YCombinatorのポールも同じことを言っていたが、最初は顧客の事やオペレーションの中身を学ぶことこそが大事。仕組みや体制作りに集中して注力するよりも、サービス自体をスピーディに検証して学び改善することを最優先にするべきだ。

先ずは限界を目指す

限界を経験しなければ、組織も経営者もプロダクトも成長することは出来ないし、イノベーションは起きない。今の組織、そして自分自身の限界値がどこにあるのかを考えて、とにかく「限界」を目指ざす。

このとき大切なのは、常に崖から落ちている状況下にいるのではなくて、飛び降りては着地して飛び降りて着地はしての繰り返しであるべきということ。飛び降りたあと着地ができた時は、頑張ってくれた仲間達と自分自身をちゃんと褒めて祝う。ただ、着地した状態はとても居心地が良いものなので、ついつい長居してしまわないように注意すること。

まだ自分は飛び降りて無いと思うのであれば、さっさと自分を追い込んで、崖の上から飛び降りるべきだ。


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