自分が働きたい会社をつくれ

スタートアップにとって最も大事な資産は”共に働く人”だ。Virgin Groupを創業したRichard Bransonが「成功への一番の秘訣は?」と聞かれた時「自分より賢い人を探し出し、彼らを仲間として迎え入れ、自分が会社のビジョンにフォーカスできるように彼らに自由と権限を与えたことが全てである。」とRichardは答えた。Richardはビリオンダラーカンパニーを8社も生み出した唯一無二のアントレプレナーである。

僕は一週間ほどGitHubの創業者であるPJ HyettとScott Chacon、そしてGitHub従業員のDavidと共に活動する幸運な機会があった。GitHubは300万人以上のプログラマーが利用しており、会社の評価額は$750Mと報告されているシリコンバレーで今最も注目の企業である。

一週間一緒に活動していちばん印象的だったことは、創業者同士の信頼関係と、Richardと同様に従業員を大切にしていることである。GitHubは2008年の創業から雇用してきた従業員150名のうち、1人たりとも自分から辞めたことがないという驚くべき実績を持つ。

採用プロセス

GitHubの採用プロセスで特に気にかける点は「頭が良いか」そして「文化が適合しているか」の2つである。文化の適合性では、他の従業員と一緒に上手く働けるか、そしてGitHubの独特な職場環境にフィットするかが含まれる。GitHubではほとんどのコミュニケーションがオンラインで行われていて、従業員の大半は会社に出社せずリモートで作業をしている。また、マネージャーという役職が存在しないフラットな組織で何を開発するかは個人の自由のため、従業員には時間を効率よく管理し自発的にプロジェクトを遂行できる能力が必須である。

またGitHubでは採用の最終段階で「Beer Test」というものがあり、採用候補者と一緒にお酒を交えて会話をし「その人とまた一緒に呑みに行きたいか」によって、採用・不採用を決めるという興味深い採用プロセスが存在する。どれだけ優秀でも、他の従業員と上手く働ける事が絶対条件である。

優秀な人材を惹き付ける

Open Network Lab第6期生のメンタリング中、投資先企業からの「どのようにしたら自分の会社に優秀な人材を惹き付けることができるのか?」という質問に対し、PJは「それはとてもシンプルなことで、”自分たちが本当に働きたい会社をつくること“である。」と答えた。PJ達はGitHub創業の際に、とにかく自分たちが働きたい会社をつくる事に専念した。殆どの社員がリモートで働いているため、その分オフィスは従業員同士のコミュニケーションの場として機能するよう、人が集まりやすい楽しい場所になるよう設計した。また仕事意外の心配を軽減させるため福利厚生を充実させ、医療費は会社が全額負担をし、産休も長く取れるようにしている。自分が働きたい会社をつくることで、自然と自分と同じ価値観を持った人間が集う場所になるのである。

それとPJは言及しなかったが、優秀な人材を惹き付けるための重要な要素の一つは”ブランディング”である。GitHubの技術者に対するブランディングとても上手くいっており、GitHubが主催する交流会「DrinkUp」を定期的に開催しエンジニア同士の交流をはかったり、社内で作った最先端の技術を使ったプロジェクト等を沢山公開することで、技術者にとって魅力的な会社というブランドを確立している。

最高な会社は、最高な人々を引きつける賢く野心的な創業者によって創られる。自分が働きたい会社を創り最高な人材を採用して彼らに自由と権限を与えるべきである。


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スタートアップの基盤

スタートアップの基盤とはスタートアップの創業チームの事である。創業チームからアイディアが生まれ、実行され、そして会社を動かすパッションが作られる。組織は創業チームと言う名の基盤の上に作られる。

スタートアップの創業時はその後会社の将来に大きな影響を与えるFacebookの出資者でもありPaypalを創業者でもあるPeter Thielは「創業時の基盤がぐちゃぐちゃだと直す事はできない」と述べている。創業時に最も時間をかけるべきことは基盤作りである。スタートアップにおいて強い基盤を作るためには適した人達、スキル、メンタリティー、チームメンバーの関係性、そして文化を必要とする。

スキル

創業チームは様々なスキルを必要とする。その中でも最も必要とするスキルは開発力と分析力である。開発力の必要性は明らかでユーザーにとって価値のある物を作るためには創業メンバー自身で開発するスキルを持っていることが必須である。また分析力は開発力と同等に創業メンバーに必要なスキルである。スタートアップではユーザー動向、市場動向、競合、財務状況など日々分析しなければならない事象が沢山あり、また分析だけに留まらずスピーディーに決断する力も必要とされる

頑固さと柔軟性

経験上”頑固すぎる創業者”はチームの規模を拡大するのに苦労し、”柔軟すぎる創業者”はプロダクト開発にかける時間が長くなってしまう傾向がある。好調なスタートアップは頑固さと柔軟さのバランスが取れている。Amazon創業者Jeff Bezosは「創業者はビジョンで頑固になれ、詳細に柔軟になれ」と語る。ユーザーに提供する本当の価値と会社のビジョンに対しては頑固にその価値の提供方法やプロセスの詳細については柔軟に対応することが創業チームには必要である。

バランスと関係

スタートアップの創業チーム内の関係は非常にインテンシブで「セックス以外は結婚している子持ちのカップル」と一緒である。創業チームはスタートアップという子供を作り、それを育てるためにいろんな悩み事やストレスを一緒に解決していく。創業チームはお互いを尊敬し合う存在であることが大事で、関係の良い創業チームは前職で一緒に働いた経験や、大学の研究室で一緒に働いた経験、一緒のスポーツチームで競った経験など、一つの小さなコミュニティにおいて濃厚なコミュニケーションを既にとっている場合が多い。

創業メンバーはお互いの能力を補える関係が望ましく、作れる人、デザインができる人、そしてハッスルできる人の3人構成が理想的である。

文化

創業チームは会社の文化を作る。組織にとって文化は必要不可欠で創業チーム内そして従業員全員の文化が一致している事が必要である。文化に合わないメンバーを採用してしまいチームが解散したり、創業者が辞めてしまったりするケースは少なくない。Zyngaなどに投資をしているBrad Feldは「人を採用する時は文化の適合性が一番大事」と言う。Bradは文化とスキルの決定行列(デシジョンマトリックス)を作る時、文化の適合性の高い人材を優先するべきと述べている。

会社の文化コアバリューを強調した良い例として、以下は実際Facebookで使われた採用基準である。

  • 高いIQ
  • 強い目的志向
  • 成功に対する執着心
  • 積極的かつ野心的
  • 完璧主義、品質に対するこだわり
  • 変化を好みディスラプティブ
  • より良くするためのアイディア
  • 高い整合性
  • 善良な人々に囲まれている事
  • 知覚な価値よりも真の価値を作る事へのこだわり

どの組織も上記のようなバリューを中心に独自の文化を作ることが必要である。

順調でも基盤が弱いスタートアップはいずれは崩れる運命にある。たとえアイディアが間違ってても、創業時の基盤が強ければスタートアップは自身のビジネスを柔軟に変化しながら強く長く継続することができる。適したスキル、メンタリティー、関係、そして文化を持つ人たちと時間をかけて創業チームという基盤をつくるべきである。


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創業者とマーケットの適合性

2010年に開始したスタートアップ育成プログラム「Open Network Lab」は2012年11月に5期のDemo Dayを終えた。5期を通して25社以上の育成を行う中で、どの期にも必ず1社のスタートアップがプログラム期間中に自分たちに最適のアイディアを見つけ出し、エントリー時とは全く別のビジネスを展開している。

スタートアップが行うべきアイディアは、創業メンバーにとっての”最適なマーケット”と対応している。SV AngelのDavid Leeは、これを「founder/market fit」(創業者とマーケットの適合性)と呼び、市場に対する深い知識を持ち「創業者自身が製品、ビジネス、そして会社の象徴となる」ほどに、創業者とマーケットが適合していることは最も重要なことだと語っている。

また、Y CombinatorのPaul Graham曰く、良いスタートアップアイディアには3つの共通点がある。創業者が自ら求める製品を作ること、彼らにしか作れないものを作ること、作っているものが世の中にとって重要だという事を気づいている人が少ないこと、である。

創業者とマーケットの適合性を見いだしたスタートアップの成長の速度には毎度驚かされている。Open Network Labの投資先の中でトップ3の成長率を誇るスタートアップは、プログラムエントリー時のアイディアを捨て、彼らの適合するマーケットを1から見直しアイディア探し出したチーム達である。

ではどうしたら創業者とマーケットの適合性を見いだすことができるのだろうか。適合性とはターゲットユーザーとの会話とフィードバックの繰り返しで見つかることが多い。

僕は、適合性を探しているチームのメンタリングを行う際に重要視していることは主に3つある。

1. 創業者の過去の経歴は?

良いアイディアは創業者が前職などで気づいた非効率な体験や業務で気づいた事から出てくることが多いため、創業者自身の過去の経歴に注目している。

2. 社長が忙しい理由は何か?

Open Network Labのプログラムを行う中で、「スタートアップの成長率と社長の忙しさは比例する」ことに気づき、また数々のスタートアップを支援する中で”成長を続ける企業のターゲットとするマーケット”と、”社長が忙しい理由”には共通するパターンがあることに気づいた。例えば、成長を続けるコンシューマー向けのサービスは社長が自らコーディングしている事が多く、成長率の高いエンタープライズ向けのサービスは社長がビジネス経験が豊富であり、そして良いコマーススタートアップには分析能力の高いビジネスマンが率いている場合が多く見られる。コンシューマ向けのサービス展開をした投資先2社の社長は、コーディングを行わないビジネス経験豊富な方だったが、両社共にコンシューマ向けからエンタープライズ向けのサービスに転換した途端、それまでの不調とは裏腹に急激に会社の成長率が上がり社長達も一気に忙しくなっている。

3. 彼らのパッションは何か?

創業メンバーが毎晩眠れなくなるほどパッションを抱いている分野は何か。スタートアップは非常にハードで時間がかかるものであり、Steve Jobsも以下の動画で「愛していなければ失敗する」と述べている。

Open Network Labでは、3ヶ月のプログラムを終了する前に解散してしまうスタートアップも何社かあった。チーム解散の大抵の原因は、創業メンバーの間でパッションと目標が一致していないことが主な理由。メンバーが一人でも妥協してしまうと必ずスタートアップは解散の道をたどることになる。創業メンバーが同じだけのパッションを持っていることはとても重要なこと。

創業者とマーケットの適合性を探すことは、スタートアップのプロセスの中でも非常に重要なステップである。適合性を見つけずに次のステップに急ぐと数ヶ月、数年を無駄にすることに成りかねない。適合性を探せ!


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「Focus, Focus, Focus!!」フォーカスした起業家が勝つ

Open Network Labでは数々の起業家達が立ち寄る。投資先も15社になり、メンターもTwitterの共同創業者やEvernoteの創業者等、50名以上が関わっている。

今まで関わってきた起業家やメンターの中に会社が絶好調な人がいればあんまり調子が良くない人もいる。絶好調な会社を起業している人たちには一つ共通点がある。。。それがフォーカスだ。

1) プロダクトのもっとも重要な価値にフォーカス
起業家はアイディア豊富だ。いろんな機能をプロダクトに付け加えたくなる傾向がある。しかし無駄な機能を排除し、コアバリューにフォーカスしたプロダクトが上手くいく傾向がある。Twitter, Evernote, Instagram等、人気のあるプロダクトはコアバリューごものすごく明確になっている。

2) ユーザーにフォーカス
Pathの創業者のDaveも言っている事だが、ユーザーにフォーカスし、サービスどういう風に使っているかを観察・分析してユーザーをエンパワーする事が大事。Facebookで最も使われている「写真」機能は、ユーザーを観察する事によって機能追加が決まった。ユーザーヒアリングやAnalytics等を使ってユーザーを分析するのは大事。

3) KPIにフォーカス

好調なスタートアップはKPI(重要業績指標)が明確になっている。”来週のリテンション率はなん何か%、来月のアクティベーション率は何%か、再来週は何件クローズしないと行けないのか”等、週単位でKPIの目標が明確になっている。

4) スタートアップにフォーカス
フォーカスの高い好調なスタートアップほど、あまりイベントやメディアにでない事が多い。他にもっと重要でやるべき事が多いから1秒も無駄にしない。

フォーカスしろフォーカスしろフォーカスしろ!!

いろんな側面でフォーカスするのが大事。今支援している15社の中でも、フォーカスしているスタートアップとあまりできていないスタートアップにかなりの差がある。

フォーカスが高く、ハッスルしているスタートアップほど支援してて楽しいものは無い。毎回話す度にアドレナリンが走る。だから今の仕事が止められない。投資家にとってのハイ。僕の役割は支援先にフォーカスするべき事は何かをガイダンスする事だと思っている。


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