僕は社長に向いていない

「社長」という職業をマスターすることは難しい。

クオリティの高いプロダクトを作るプロダクトマネージャーであり、時には社員のメンタルケアもする精神科であり、他社との連携開拓をする政治家でもあり、はたまた時には優秀な人材を確保するヘッドハンターであり…その他にもたくさんの役割を担っている。

時には頑固で時には柔軟に。時には自信過剰で時には謙虚に。時には慎重すぎるくらい慎重に、でも時には積極的にリスクを自ら取りに行く。

矛盾点の多い不自然な職業なのだと思う。

社長になるためのトレーニングは無い。社長になって初めて経験することが山のようにあるのだから、社長になるための準備が万全に出来ている社長予備軍などいないはずだ。

多種多様な性格を持つメンバーがたくさんいる組織、変化の激しい市場、容赦なく攻撃してくる競合相手を、常に上手にアレンジして会社を経営していかなくてはいけない。

こんなにコンプレックスだらけの職種なのだから、どんなに優秀な人物であっても誤った判断をしてしまったり、思うように成果に繋がらないこともある。そんな自分に落胆して、「自分は社長に向いてない」と思ってしまう事も何度もあるだろう。特に負けず嫌いで、学校や仕事で優等生だった人であればあるほど、そう思う頻度が高いかもしれない。

はじめから社長に向いている人はいない。

恐らく完全にマスターするのは不可能だと思う。大きな責任を背負いながらマスターできない仕事をし続ける精神的な負担は計り知れない。不安、恐怖、混乱の状態のなかで、時に「自分は社長に向いていない」と思ってしまうのは当たり前だ。きっとどの社長もそう思ったことがあるだろう。でも、これは一流になるまでのプロセスにすぎない。

メンタルマネージメント

重要なのは、自信をなくして不安や恐怖などネガティブな感情のループに陥ったときのメンタルマネージメントだ。以下は、僕が推奨するテクニック。

メンターを探す:自分と同じ立場や状況を一度でも経験したことのある相談相手がいるとだいぶ楽になる。心を開いて気ままに相談できる相手がいればさらにベストだ。

再校正: 自分の考えをもう一度すべて紙に落とし込んで、自分がくだした判断のロジックを可視化する。何度考えても同じ結論にたどり着くことができて、自分自身が何を求めているのか、何をゴールにしているのかなど、考えがぶれていないことを再確認する。

もう1つ僕が良くやる事は「勝つためには」という言葉を真っ白な紙の一番左上に書いて、自分にとっての「勝った状況」は何なのかをその下にリストアップする。そして「今の状況」を一番右上にリストアップする。
勝った状態と今の状態のリストの間に今の状態から勝った状態にたどり着く為に取るべきアクションをリストアップして、自分が今行っている事が本当に重要なのかどうかを確認したり、今のうちにやらないといけないことを整理する。

長期的に考える: とにかく長いスパンで物事を考える。自分が考えたビジョンや長期的な目標にメンタルをフォーカスする事によって、いま目の前で直面している壁や課題が小さく感じる。

減速する: 常にハイスピードな状態を維持したままで高いパフォーマンスを出し続けることは難しい。時には減速してアウトプットも減らして、インプットを増やしたり、仕事のペースを落としたり、状況が許すのであれば数日休んだり。加速する為には減速することも必要だ。

しつこく言っているけれど、社長という職業に就いたら、たくさんのコンプレックスの渦の中で生きていかなくてはならない。だから、最初から完璧にできる人などいない。ただ重要なのは、決して諦めないこと。究極はそこなのかもしれない。

P.S

自分の運が悪いと思っているのであれば「Uber創業者のFailcon」を見るといい。本当に勇気づけられる。


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会社のコア・バリュー

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コア・バリューは、組織が大きくなってから心配すればいい

忙しい!ハッスルする!それが俺たちのコア・バリューなんだ!

と言って、自分たちの「コア・バリュー(会社が持つ中心的な価値観)」について考えて議論することを後回しにしてしまうスタートアップが多い。
でも実は、コア・バリューというのは後回しにすればするほど、会社全体の価値観が決まらないまま走り続けるということになってしまい、立て直しが難しくなってしまう。だから、1人目の社員を採用する前に、組織が小さいうちに、「コア・バリュー」を決めておくべきだ。

コア・バリューの重要性

コア・バリューは、会社の雰囲気、文化を作る。メンバーそれぞれの判断基準となり、決断スピードを上げる。コア・バリューが明確な会社は、会社の文化に合った人材を雇用するためのしっかりとした採用基準を持つことができる。そして、メンバー同士の絆そのものとなって、メンバー全員を同じ方向に向かわせるための重要な要素となる。

もしコア・バリューを決めずに組織が大きくなってしまったら、組織の中のある特定の人の意思や出来事に影響された「勝手に出来上がった会社の文化」が成立してしまう。メンバー同士の仕事に対するパッションやそれぞれのスキルに大きな差が生まれて、メンバーがお互いをリスペクトし合えなくなり、全体の生産性が落ちてしまうという結果に繋がりかねない。

社長= 会社の価値

組織が小さい間は、その組織の中で象徴的存在となる人物がコア・バリューとなる。そしてそれは「社長=会社」というコア・バリューになる。

だからコア・バリューを決めるときは、社長の長所、 社長が仲間を集めるときに一番大事にしていること、 社長が一番苦手のタイプ、 社長の短所などをきちんと理解することが必要だ。

他社のコア・バリュー

下記は、Facebookが提示しているコア・バリュー。ハッカー文化をものすごく大事にしているのがとても良く分かる。

  1. 影響を見据える
  2. 素早い行動
  3. 大胆になること
  4. オープンであること
  5. ソーシャルバリューを確立する

そして次はZapposのコア・バリュー。顧客に感動を与えるために常に創造することを大事にする内容になっている。

  1. サービスを通じて,WOW(驚嘆)を届けよう。
  2. 変化を受け入れ,その原動力となろう。
  3. 楽しさと,ちょっと変わったことを創造しよう。
  4. 間違いを恐れず,創造的で,オープン・マインドでいこう。
  5. 成長と学びを追求しよう。
  6. コミュニケーションを通じて,オープンで正直な人間関係を構築しよう。
  7. チーム・家族精神を育てよう。
  8. 限りあるところから,より大きな成果を生み出そう。
  9. 情熱と強い意思を持とう。
  10. 謙虚でいよう。

常に意識して行動する

社長をはじめとするマネージメントメンバーは、他のメンバーに会社のコア・バリューを正しく伝えていく必要がある。だからこそ、常にこのコア・バリューを意識して行動し、コミュニケーションをしなければならない。1回のミーティング、メール1通の中でも、コア・バリューを意識する。

会社のコア・バリューを正しく理解して、それを部下に伝えることが大切だ。

会社の文化が崩れ始めるきっかけは、マネージメントメンバーが、コア・バリューを持たない、もしくは、意識せずに人材採用を続けてしまうことが大きいと思う。社長は、マネージメントメンバーの1人1人に対して、常にコア・バリューを意識することをしつこくリマインドする事が大事だ。

会社のコア・バリューは早い段階で明確にして、厳しく守り続けた方がいい。後回しにしてしまうと、結果思わぬ方向に会社が進んでしまい、これを立て直すには会社全体に大きな負荷がかかる。

なにより、自分が自ら作った会社と組織をいつまでも愛し続けるための「コア・バリュー」なのだと思う。


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崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくる

img_9578LinkedInの創業者 リード・ホフマンの名言の1つに、「スタートアップとは、崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」という言葉がある。

僕もまさにその通りだと思う。

起業家は、「やばい、やばい、やばい」と日々言いながら(もしくは頭の中で言いながら)仕事をしている。それは、人材採用が間に合っていなかったり、サービスを作り上げるための体制や仕組みにボトルネックが生じてしまったり、はたまたプロダクトに対する需要が供給を上回ってしまったり。とにかく起業家は、日々多くの「追い込まれた状況」の下にいる。

僕は、これがスタートアップの正しい姿だと思う。ある意味、「やばい」と感じているのであれば、安心と言っても良いのかもしれない。なかには、この「やばい」状況から逃げるためにサービスのローンチを必要以上に先延ばしにしたり、改善や新しい取り組みをすることなく現状を維持したままでオペレーションを続けたりする起業家がいる。でも、怖いからこそ、順調と感じているからこそ、逆に「どうすれば崖から飛び降りれるか」を常に一生懸命考えた方がいい。

崖から飛び降りる方法はいくつかある。

さっさと顧客からお金をもらう

もしそのサービスが有料サービスなのに無償Beta版の提供を続けて、まだ有料会員や企業など顧客がいないのであれば、さっさと課金を始めた方が良い。ユーザーからお金を受領しサービスを提供するとなれば、もう後戻りは出来ない。とにかく走り続けて、ユーザーを満足させるために、改善を繰り返しながらオペレーションを回していけないといけない。

スケールしない事をする

特に最初の段階は、正直オペレーションの仕組みは重要視しなくても良い。人力でも良いので、とにかくオペレーションを回し続けてみることが重要だ。例えば、もしエンタープライズサービスを展開しているのであれば、顧客のオフィスに常駐させてもらって、サービスを提供してみればいい。もしデリバリーサービスをやってるのであれば、実際に自分自身で顧客に商品を配達してみればいい。とにかく最初は、スケールしないことをする。YCombinatorのポールも同じことを言っていたが、最初は顧客の事やオペレーションの中身を学ぶことこそが大事。仕組みや体制作りに集中して注力するよりも、サービス自体をスピーディに検証して学び改善することを最優先にするべきだ。

先ずは限界を目指す

限界を経験しなければ、組織も経営者もプロダクトも成長することは出来ないし、イノベーションは起きない。今の組織、そして自分自身の限界値がどこにあるのかを考えて、とにかく「限界」を目指ざす。

このとき大切なのは、常に崖から落ちている状況下にいるのではなくて、飛び降りては着地して飛び降りて着地はしての繰り返しであるべきということ。飛び降りたあと着地ができた時は、頑張ってくれた仲間達と自分自身をちゃんと褒めて祝う。ただ、着地した状態はとても居心地が良いものなので、ついつい長居してしまわないように注意すること。

まだ自分は飛び降りて無いと思うのであれば、さっさと自分を追い込んで、崖の上から飛び降りるべきだ。


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学習マシン

起業家は、常に新しい事を学んで、スキルを磨き続けないといけない。

プロダクトマネージメント、マーケティング、採用、法務、組織づくりなど、学ぶべきことは尽きない。プロダクトが完成して、会社をスケールする時期になっても学び続けることが重要だ。なぜなら、社員10名程のスタートアップでのマネージメントと、100人以上の社員をもつ企業でのマネージメントでは、全く異なるテクニックと戦略が必要になるからだ。

だから僕は、投資実行や人材採用時、その “人” が 「学習マシン」である事を必須条件にするようにしている。学習マシンの素質を持つ人は、何に関する知識が足りないのか、何を修得するべきなのかを理解していて、それをどこで誰から学ぶことができるかを自ら見出すことが出来る。そして、学んだことをすぐにビジネスで実行できる。

でも、その人が学習マシンであるかどうかは、実際一緒に働いてみて初めて分かることが多い。ましてや、1回や2回の面接で判断することは難しい。僕の今までの経験でも、最低4週間程度一緒に働いてみて、やっと見えてきたりすることがある。

では、どのようにそれを判断しているのか。

僕が思う「学習マシン」の素質がある人の共通点をまとめてみる。

ボードゲーム、RPG、戦略ゲームが大好き

僕が知る学習マシンの素質を持つ人は、ボードゲームやRPG、戦略ゲームなど「学ぶ期間」を必要とするゲームが好きな人が多い。一緒にゲームで遊ぶと、負けるのが嫌で熱くなってしまうようなタイプだ。

常に情報収集に励んでいる

特に、自分が課題としているテーマに関するブログ記事や本を沢山読んでいる人。

学んだ事を実行できる

一度学んだことは、すぐに実行にうつすことができる力を持つ人。学んだ事を自分なりに噛み砕いて語ることができたり、人に伝えて教えていくことができる人。

ソーシャル

社交的で、人とのコミュニケーションが上手い人。誰が何についてアドバイス出来るかを理解している。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを活用して、自分のネットワーク内で起きていることを把握できる人。メールのレスポンスも早い。

いい大学から来てる(事が多い)

例外のケースももちろんある。でも全体的に見て、やっぱりいい大学から来ている人がこの素質を持っていることが多い。

プレゼンが上手い

色んなスキルを取得する事ができるから、プレゼンテーションの質も高く、上手い。そしてきれいなスライドを作れるスキルを持っている。

これらが、僕が考える学習マシンの素質を持つ人の共通点だ。
特に、人材採用をする時は、その人の過去の実績よりも学習能力を優先した方がいいと思う。なぜなら、前の会社で成功したことをそのまま丸ごと他の会社で実行しても上手くいく事は少ないから。文化や人など、色々な状況が会社ごとに違えば、そこからまた学び直していく必要がある。だからこそ、「学習マシン」が組織にいることが重要だと思う。


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リーン・スタートアップに必要な「メンタリティー」

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2011年にEric Riesの著書「リーン・スタートアップ」が出版されてからというもの、たくさんの起業家がこの本をベースにしてアイディアを検証しているが、同じ本を読んで、同じように進めているのにも関わらず、すぐに市場に適合するプロダクトにたどり着くことができる起業家がいれば、何ヶ月も何年も迷走し続ける起業家もいる。僕は、その差が出てしまう理由の1つに、起業家の「メンタリティー」が大きく関係していると思っている。リーン・スタートアップをベースにアイディアの検証をする時は、強い信念と論理的思考が必要だ。

信念を曲げない強さ

起業家がリーン・スタートアップを実践する場合、強い信念を持って取り組む必要がある。持っているアイディアが最初からスムーズに上手くいくケースは、可能性としてかなり低いと思う。ユーザーヒアリングで思ったような反応がでなかったり、仮説が間違っていたり。思い通りに行かないことが多くあるはずだ。そんな中、リーン・スタートアップの中では「ピボット(方向転換)」という言葉が数多く登場している。この言葉は、便利だし有効な方法だけど、誤った使い方をしてしまうと、本来の目的を見失ってしまう。例えば、時にはアプローチの方法を微妙に変えながらチャレンジをし続けるべき状況でも、ちょっと思い通りにいかなかったからと言って、そのアイディアを「ピボット」して逃げてしまうこともできる。

起業家は、自分の中で「世界はいずれこうなる、その世界を実現するのは自分だ」といった様な強い信念を持たないと、「永遠のピボット」を続けることになるだろう。

論理的思考

信念の強さと同じくらい必要なのが、論理的な思考。これは信念だけで進めてしまうと、いつの間にか現実が見えない状態に陥ってしまいがちなためだ。だから、ロジカルな視点でユーザーや市場、競合などを分析して、次のアクションを決断していける論理的な思考が必要になる。

そして最後に。起業家は、頑固な人が多い。もちろん良い起業家である為には、ある程度の頑固さは必要だと思う。ただ、感情的になって細かいところで必要以上に頑固になってしまうと本質的な部分を見落としてしまい、良いプロダクトにたどり着けなくなる。

「リーン・スタートアップ」は、起業家に取って凄く良い著書だと思う。でも、起業家のメンタリティーによっては、結果の差が大きく出る。だからこそ、リーン・スタートアップを実践する前にアイディアを自身のビジョンにして、強い信念を育てるフェーズが必要である。そして、そのアイディアを検証する時は、常にロジカルに考える、またはロジカルに考えることができる信頼のおけるパートナーが必要になると思う。


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日本人の起業家がシリコンバレーで成功するには

僕はこの3年の間で、シリコンバレーを目指す日本人の起業家が率いるスタートアップ6社に出資をしてきた。出資後、その6社のうち3社が500 Startupsに参加し、1社がY Combinatorに参加した。そして残りの3社は、シリコンバレーに残らずに日本に帰国している。その後、シリコンバレーの投資家から調達を成功をさせた4社のうち、シリコンバレーに残って順調に成長しているのは2社という結果となった。

今までも現在も、シリコンバレーを目指す起業家が僕を訪ねてくることがよくあるのだが、実は僕が彼らに対してシリコンバレーを目指すことを勧めることは滅多にない。その主な理由は、「レバレッジ」だ。

スタートアップは、はじめから不利なことが多い。資本力、マンパワー、ブランドなど大手に劣る点が多い中で、スタートアップは少ないリソースを最大限にレバレッジして競合に勝っていく必要がある。

アメリカに住んだ経験や現地でのネットワークに乏しく、また、現地の文化をきちんと理解できていない日本人の起業家がシリコンバレーでスタートアップを実践しようとする場合、より一層不利な状況になってレバレッジできる事がさらに減ってしまう。

なので僕は、1番良い形でレバレッジを効かせられる環境が国内になるだろうと判断した起業家に対しては、日本で事業を拡大させていくことを勧めている。

成功するための前提条件「現地採用」 

日本人起業家がシリコンバレーで成功するためには、人材を現地で採用する必要がある。僕の投資先以外のケースを見ても、シリコンバレーで順調に成長している日本人起業家のスタートアップに共通している点と言える。

米国のマーケットや競合を相手に勝ち進んで行く為には、現地でトップクラスの人材を獲得する必要がある。セールスやマーケティング、カスタマーサポートといったほとんどのビジネスシーンでは、現地の人間と対面してコミュニケーションを取ることが必要とされるからだ。ネイティブレベルの英語スキルを持ち、且つ現地の文化を理解できる人材がいないと、圧倒的に不利になってしまう。

ただし、現地の人材を獲得するだけでなく、採用した後も雇用した人たちのモチベーションを高く維持して、成長し続けていくことができる環境を提供する必要がある。特にシリコンバレーでは、人材の獲得戦争になっている状況が続いていて、少しでもやりがいを感じなくなると他社に移ってしまう傾向がある。

だから僕は、シリコンバレーで起業を目指す起業家には先ずこの2つの事を問いかけたいと思う。

現地の人を採用できる自信はあるか?

そして、

日本より何倍も人材獲得の競争が激しい場所で、会社を経営する覚悟があるか?


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効果的に働く

組織やチームを率いるリーダーにとって、いかに効果的で上手なタイムマネージメントをするかは重要なポイントとなる。理由はシンプルで、リーダー自身の働きが効果的でなければ、効果的な組織を創り、マネージメントをすることは出来ないからだ。

そこで、様々な企業や組織のリーダーやマネージャーが実践して成功させてきたテクニックの中で、僕自身も実践しているタイムマネージメントテクニックを紹介したいと思う。ただし、このテクニックが全ての人に当てはまることは無い。リーダーは、たくさんのタイムマネージメントテクニックを試しては改善しを繰り返すことで、自分が最も効果的になれるテクニックを見つけて身につけなくてはいけない。

日々テーマを持って働く

Twitterの共同創業者であるJack Dorseyがあるインタビューで、自分は毎日「1日のテーマ」を決めて、そのテーマにフォーカスして1日を過ごすようにしていると話している。会社にとって重要なトピックだけをテーマに選んで、なるべく1日の多くの時間をそのテーマのために使う。例えば僕は、こんなテーマを設定している。

月曜日:文化とマネージメント
火曜日:新規事業の促進
水曜日:海外投資
木曜日:ブランドとPR
金曜日:国内投資
土曜日:休み
日曜日:振り返り、未来の戦略

でも、Jackも言及していることだが、すぐにこのやり方に慣れるのは難しくて、継続していくには忍耐力と練習が必要だ。僕もこのテクニックを試し始めてから1ヶ月程度でやっと慣れ始めて、効果を感じ始めたのは3ヶ月目くらいからだった。ちなみに、テーマは毎週固定しないで、自分の考えや意識が別のテーマに変化していくのに気がついたら、臨機応変にテーマを変えて1日集中するようにしている。

このテクニックの優れた点は、特にたくさんの心配ごとに直面することが多いリーダーが、こうして日々のテーマを持つことによって、無駄なことをシャットアウトして、テーマに沿った重要なポイントだけに集中出来るようになることだ。

そして、他に対応しなくてはいけないことが発生して、自分が集中している事を中断しなくてはならなくなったとしても、テーマさえ決まっていれば作業に戻りやすくなるのもメリットの1つだ。

1日3つの結果を出す

僕は毎日、翌日中に結果を出したいと思うテーマに沿った3つの目標を設定するようにしている。このとき重要なのは、3つの「タスク」ではなくて、3つの「結果」であること。

そして1日の最後に、その3つの結果を出すことができたのか、改善できる点があるのかを振り返って考えることが大切だ。毎日30分程この振り返りの時間を持つようにしている。

 Prioritisation Matrix

これはRedpoint VenturesのTomasz Tunguzのブログで紹介されていたPrioritisation matrix (優先順位のマトリックス)だ。

その日に設定したテーマや結果に関係なく、他の人や何らかのイベントによって、その日のタスクが増えてしまうのはよく起こること。そんな時このマトリックスを使って、そのタスクを今行うべきなのか、それとも他の人に任すべきなのか、もしくは今は行わずに無視する選択肢もあるのかを判断しやすくする。

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緊急性(高い)重要性(高い):すぐに対応すべきタスク。例えば、重要な顧客や取引先の対応や、緊急性の高い重要な契約書の対応など。

緊急性(低い)重要性(高い):別途時間を作って対応内容を考えたりする必要のあるタスク。例えば、パートナーシップの開拓や会社の長期戦略の計画を立てるなど。

緊急性(高い)重要性(低い):部下や他のメンバーに任せるタスク。

緊急性(低い)重要性(低い):今は無視するタスク。

ハーバードビジネスレビューでも、このマトリックスのタスクとリズムに関する面白い記事があった。

本来無視すべきはずの緊急性が低く重要性の低いタスクと他の人に任せるべき緊急性が高く重要性の低いタスクは、作業のリズムとペースの両方が早くなることが多い。これらは、テレビを見ている時やゲームで遊ぶ時と同じような居心地の良いリズムでペース早くタスクを進められるため、効率よく進捗させているかのような錯覚に陥る。だから人は、このリズムが早くなりがちのタスクをやりたい衝動に駆られる。

逆に緊急性が低く重要性の高いタスクは進捗のリズムが遅く、すぐに成果を感じることができないため、罪悪感を抱いてしまったりする。でも実は、緊急性が低く重要性の高いタスクこそ、組織やチームを前に進めるために優先させる必要がある。早いペースでリズム良くタスクを消化していることが、効果的に働けていることだと勘違いしないことが大切だ。

僕は、緊急性と重要性の組み合わせの異なるタスクに移るときは、一旦休憩を取って音楽を聞いたりすることで、リズムとペースを自分の中で調整している。

自分に合ったタイムマネージメントテクニックを作り出す

最初に書いたように、今回紹介したテクニックが全ての人に適しているとは思ってない。自分に合ったタイムマネージメントテクニックを探して、改善し、練習を繰り返す事によってより効果的なリーダーになれるだろう。


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スタートアップを生み出す組織「Startup Studio」

ここ数年の間に、シリコンバレーでは「Startup Studio」というスタートアップを生み出すための新たな組織概念が誕生して、注目を浴び始めている。

Startup Studioの特徴は、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、そしてその他のオペレーションをすべてインハウスで持つこと。Startup Studioは、これらのリソースを駆使して、新しいスタートアップを生み出したり、投資先の事業を成長させたりしている。

そしてもう一つの特徴は、実際に事業を創った事のある起業家たちが、このStartup Studioの運営・マネージメントをしていているところだ。Twitterの創業者であるEvan WilliamsとBiz StoneのObvious Corp, PaypalやSlideを創業したMax LevchinのHVF、MySpaceの社長だったMike JonesのScience、Time WarnerのSVPだったJohn Borthwickが率いるBetaworksなどがStartup Studioのカテゴリーに入る。

ただし、それぞれのStartup Studioのモデルは若干異なる。Obvious CorpやHVFはアイディアやチームをゼロから生み出しているのに対し、BetaworksやScienceはゼロから始めるスタートアップもあれば、すでに事業を進めているスタートアップ、既に成長拡大フェーズに入っているレイターステージ、もしくはスタートアップを丸ごと買収したりしているケースもある。

経験の蓄積、拡大、そして実行スピード

Startup Studioのメリットは複数ある。

1つは、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、マネージメントなど会社を成長させるために必要なあらゆる面でスタートアップと深く関わることで、その経験や知識がStartup Studioに蓄積していき、そして、これらをスピーディーに他の支援先の企業に伝達し、実行することできる。

こういったオペレーションレベルでのサポートや経験、知識の蓄積は、アクセラレーターやベンチャーキャピタルでは実現できていなかったことだ。

そしてもう1つのメリットは、Evan Williamsが ”Parallel Entrepreneurship” と呼ぶ、複数の事業を並行して同時に生み出す仕組みが実現できること。例えば、1人の起業家が、複数のアイディアを持っている場合、Studio内にいる他の起業家にアイディアを渡して同時に実行させたり、起業経験が少ない若手起業家同士でコンビを組んで二人三脚で事業を創造させる。これによって、経験やアイディアを持つ起業家が、他の起業家にその知識やスキルを上手に伝えていくことができるようになる。

Startup Studioモデルを採用したBEENOSの事業創造プラットフォーム

去年7月に僕たちが発表した「BEENOS」は、Startup Studioモデルを日本で初めて採用し、企業の創造と育成を目的にした組織だ。現在、エンジニアチーム、デザイン、リクルーティング、マーケティングのスペシャリスト、投資マネージメントチーム、ベンチャーパートナー、オペレーションチームの7チーム計24名で運営している。

BEENOSでは、起業家と共にスタートアップの立ち上げをゼロから二人三脚で行い、そして、また、シードステージやミドルステージのスタートアップに対し投資を行い、その企業のオペレーション業務に深く関わっていく。

BEENOSは、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、マネージメント、データ分析に関する知識、そして起業に関する実績、経験を持つ集団であり、その知識、経験を今後の起業家たちに伝えていくことをミッションとし、従来とは異なる起業家支援の形を実行する「起業家のための事業創造プラットフォーム」を目指していきたい。

僕は、この「Startup Studio」モデルは支援を受ける側、そして支援を提供して行く側の双方にとってメリットが多いモデルだと考えている。今後、日本国内でBEENOSの他にもStartup Studioをモデルとした取り組みが増えていくだろう。 


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編集長になれ

3年ほど前にSquareやTwitterを創業したジャック・ドーシーは、スタンフォード大学での講義で「CEOは会社の編集長になるべきだ」と語った。

ジャックは、3つの編集ポイントが大事だと言う。

一つ目はチーム。最高な仕事ができるように最高なチームになるための編集をする。新しい人材を入れたり、時には外したりする。これによってネガティブ要素を取り除いていくのだ。

二つ目はコミュニケーション。社外に対しては、ユーザーの共感を得られるように会社のストーリーを編集する。そして、社内に対しては、社員一人一人が組織としてどの方向を向いていて何が一番大事かが理解できるようなストーリーを見せる。

三つ目は会社を成長させるためのお金の流れの編集。売り上げや資金調達から得たお金を違う形の価値のあるものに編集することで、会社を成長をさせていく。

さらに、Squareの元COOだったキース・ラボイスも、CEOが会社の編集長になることを意識する重要性について語っている。

キースは、自分がいま取り組んでいることは、「編集」をしているのか、それとも「書いている」のかを常に意識することが大事であると言う。「書いている」というのは、マーケティング戦略を企画したり、プロダクトデザインやロードマップを作ったり、戦略を考えてたりするなど、何かを生み出す作業だ。

すなわち、この「書く」作業の割合が多いという事は、部下や社員への信用が足りていない、もしくはCEOが様々なタスクを任せていける人材を雇用できてないという事に繋がっているのだ。

特に、スタートアップが組織を拡大(スケール)させて行かないといけないフェーズにいる時、CEOはできるだけ「編集長」になる事を意識する必要があるわけだ。

そして最後に、僕自身がもう一つ思っていること。それは、CEOは自分自らをも編集する必要があるということだ。スタートアップのCEOは、様々な役割を並行して担わなくてはならない。変化をもたらすプロダクトを作れるイノベーターであり、組織を作ってチームを引っ張るリーダーであり、そしてオペレーションを最適化することができるオペレーターである必要もあるのだから。

僕が関わっているスタートアップの中で急成長している会社の多くは、創業者自身、人が変わったかのように自分を「編集」し、あらゆる人、物、そしてお金を上手に組み合わせて「編集」している。その結果、大きな価値が生まれているのだと思う。


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投資家やメンターのアドバイスをどう処理するべきか?

Always-Be-Closing

アクセラレーターに参加する初期段階のチームやスタートアップは、投資家やメンターに出会う機会が多くある。それぞれから色々な指摘やフィードバックを受け、その結果、ピボットしたり、戦略を変えたり、はたまたプロダクト自体を変えることだってある。しかしあまりにも素直に、すべてのフィードバックを受け入れた結果、迷走してしまって軸がブレてしまうケースをよく見かける。

どのフィードバックが正しいのか?どれを優先して反映するべきか?など、スタートアップの創業者はもらったフィードバックを的確に分析していく必要がある。

アジェンダ

まず始めに理解しないといけないのは、アドバイスをするメンターや投資家はそれぞれ違うアジェンダを持っているという事。
特に投資家のアドバイスには細心の注意を払った方が良い。投資家は「ビッグなアイディア」に投資したがるので、「アイディアが小さすぎる」と言及してくることが多い。でも、そのアイディアが本当に小さいのかどうかはほんの数分間話を聞くだけでは分かるはずがない。アイディアの大小は、サービスをローンチしてマーケットとユーザーの反応を見てからではないと分からない事が多い。一流のVCでさえアイディアの大小の判断を間違える事がある(例えば初期の段階のTwitterやGoogleへの出資を断った一流VCもいる)。

そして、初対面のスタートアップに対してたくさんのアドバイスをする投資家がいる。その中には、「この人は知識が豊富で、今後一緒に組めれば色々と教えてもらえる」という印象を起業家に与えるためにこうしたスタイルを取る投資家もいるのだ。今そのスタートアップにとって何が大事なのかを理解しようとする前に、とにかく「自分と組めばうまくいく」と思わせるために色々な知識やアドバイス、ビジョンを語りかけるのだ。これは、投資家自身「どれだけ優秀な起業家と組むことができるか」が1つの重要なキーポイントなのだから、仕方のないことなのだが。だからこそ、起業家がアドバイスを求める時、人はそれぞれ違うアジェンダを持っている事を理解しないといけない。そしてそのアドバイスが本当に正しいかどうかは必ず自分で判断する必要がある。

プロダクト

  1. ターゲットユーザー
  2. クオリティーが高く、たくさんの人に愛用されたプロダクトを作った事がある
  3. スペシャリスト

極端に聞こえるかもしれないが、そのメンターや投資家が上記のいずれかにも当てはまらないのであれば、そのプロダクトに対するフィードバックは無視しても良いと思う。

プロダクトのフィードバックは、ターゲットとなるユーザー(お客さん)から聞くことを優先する。

ビジョン

ビジョンは創業者が自分自身で考えて作るべき。他の人に言われたビジョンを選択肢にしてはいけない。

プライオリティ

では実際に今後たくさんもらうであろうアドバイスは、どう分析して判断すれば良いのか。

それは自分のスタートアップが今どんなフェーズにいて、プライオリティが一番高い大事な課題が何なのかを把握する事によって整理しやすくなる。

課題検証なのか、プロダクトの検証なのか、プロダクトやオペレーションの最適化なのか、それともスケールするフェーズなのかなどを把握する事によって、どのようなアドバイスが必要なのかが判断できる。もらったアドバイスをリストに落とし込んで、今のフェーズに適しているアドバイスをハイライトする。ハイライトされなかったポイントは、無視するくらい強気で良い。

ドメイン

誰からアドバイスをもらっているかも重要なポイント。起業家は、アドバイスをしてくれた人がどのような経験、実績を持ち、どういった分野の専門家なのかを理解しておく必要がある。その人の専門がマネージメントなのか、データ分析なのか、プロダクトデザインなのか、など。自分のプロダクトやサービス、企業にとって一番必要なアドバイスをもらえるよう、起業家自身も予め考え理解しておくべき。

何度も言うが、出始めのスタートアップは、色々な人からたくさんのアドバイスをもらう。だからこそ、きちんと整理をすることが大事。

  • ビジョンは自分自身で見出して信じるべきで、決してブレてはならない。
  • プロダクトはユーザーファースト。
  • プライオリティの把握。
  • 誰からのアドバイスを得るべきかを起業家がきちんと整理し、理解しておくこと。

そして最後に分かっておいてもらいたいのは、アドバイスは「指示」ではなくて、あくまでも「アドバイス」であるということ。自分が立ち上げたスタートアップなのだから、自分が一番正しいと思った方向を進むべきなのだ。その結果それが正しかったかどうかはすぐに見えてくるし、それが正しかったとしても、誤りだったとしても、起業家人生というのはそういう経験の連続であり、それによって「判断力」を磨くことが一番大事なのだ。


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