起業家を見極める時

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僕がシード期のスタートアップへの投資を検討する時は、ほとんど起業家自身を見ていることが多い。シード期のスタートアップは、まだプロダクト/マーケットフィットを達成しておらず、組織や仕組みもできていないケースが大半のため、シード期のスタートアップへの投資で最大のリスクは「プロダクト/マーケットフィットを達成できるのか?」になる。

だからこそ僕が重要視するのは、起業家自身となるわけだ。

見極めのポイントとしては、以下の要素を持っているかどうかを見るようにしている。

クリアな考え (Clarity of Thinking) – 起業と経営は、とにかく試行錯誤の繰り返しだ。「分析して、考えて、試す」これを幾度となく繰り返していく必要がある。そのためにも、分析する力、考える力、そしてその考えを整理する力が必要だ。何が起きて何を試して、今の考えに至ったのか、その考えを元に次に実行すべきことは何なのか。そして、その先にどういう未来を描こうとしているのかなどを起業家との話を通して確認していく。起業家が、それをいかに明確に伝えられるかを重要視する。

学習マシン (Learning Machines)以前のブログにも書いたことだが、起業家は常に新しい事を学んで、スキルを磨き続けないといけない。プロダクトマネージメント、マーケティング、採用、法務、組織づくりなど、学ぶべきことは尽きることがない。最初のミーティングから2回目そして3回目のミーティングの間でどのくらい学習して新しい知識を吸収できているか。人として、どのくらい成長できているかを確認している。

勇気 (Courage) – 難しい決断をする勇気、大きなビジョンや目標を掲げる勇気、失敗を恐れない勇気、ユーザーから直接フィードバックを求める勇気等、起業や経営にはとにかく勇気を求められる場面が多い。起業という重要な決断のタイミングはもちろんのこと、様々な事柄に対するアクションをいつ決心して、どのくらいのスピードで行動に移したか、そしてそれらの理由などをヒアリングするようにしている。

パッション (Passion) – パッションがないと長続きしない。今やってること、やろうとしていることに起業家自身がハマっているのかどうか。その情熱が僕にも感染するぐらい溢れているかどうかが大切な判断ポイントとなる。

反発力 (Resilience) – 人生においてガッカリする場面は多い。でも、起業家に求められるものはガッカリした後の立ち直るスピード、その失敗を熱に変えて加速させることできるかだ。過去に大きな失敗した経験はあるか、その時どういった行動を取ったのかを分析して、反発力があるかどうかを確認している。

プロダクト/マーケットフィット。
それを達成できるかどうかがシード期のスタートアップで一番重要だ。そのために僕達は起業家を見極める必要がある。上記に書かれているポイントが揃っている起業家は、それを達成できる可能性がかなり高い。そして将来的にもトップクラスの経営者に成長できるポテンシャルを持っていると言えると思う。


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メールを返す速さと成功確率の相関性

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「メールを返す速さ」と「成功する確率」には強い相関性があると思う。

多くのコミュニケーションがメールやメッセンジャーなどで行われるようになった時代の中で、基本的なことと思うかもしれないが、気づけばハッとする人も多いのではないだろうか。

なぜメールを返す速さと成功の相関性が高いのか。

決断の数が多い – 日々受け取るメールの数が多ければ多いほど、決断場面も多くなる。いかにすばやく決断をして、メールを迅速に返すことができるか。これが、メールボックスに入ってくる様々な機会や課題を溢さずアクションに起こすことができる秘訣だ。言うまでも無いが、メールの返信が遅い人は決断スピードも遅い=様々な機会を逃したり課題の解決に長い時間がかかってしまう。

物事が早く進む – 特に調整ごとは、1時間以内に必ず返信する人と12時間以内に返信する人とでは、物事の進むスピードが全く異なってくる。メールの返信が遅いだけで、物事を進めるために必要以上の時間がかかることもある。

信頼が高まる – すぐにメールを返してくれる人は信頼性が高まり、また、気持よくコミュニケーションを取ることができる。

メールの処理が上手くなる方法。

定期的に見る癖をつける – できる限り定期的にメールチェックをする癖をつける。ミーティングとミーティングの間でも、1時間に1回程度はチェックすること。ちなみに、スマホでメールがくるたびに通知が鳴る設定は、逆に集中力が途切れる原因となるので逆効果になると思う。スマホでは、通知設定はオフにしておいて、ホーム画面でメールのタイトルが見れるよう設定すると良い。

優先順位 あたりまえだが、重要案件、社員、パートナー、提携先、重要人物からのメールは、最優先で即返信をする。そのほか、その場で返信しなくてもよいものは後で処理をする。メールの処理は、”ファースト・イン・ファースト・アウト” ではなく、優先度の高いものから返信するようにしよう。

VIP機能を使う – iPhoneを使っている人は、「VIP機能」を使うと良い。重要な人のメールアドレスを登録しておくと、その人からメールを受信した時だけ通知するよう設定することができる。[VIP機能の設定方法はこちら]

Meet by Sunriseを使う – 移動中にスマホで日程調整する時には特にお勧めのアプリ。いちいちアプリの切り替えをしなくてもキーボードから自分のカレンダーが見れる。 [Meet by Sunriseはこちら]

Gmailショートカットを使う マウスを触らなくてもキーボードだけでメールの処理ができる。このショートカットを覚えるだけでもだいぶ処理スピードがあがるので、1日〜2日かけてでもマスターすることをお勧めする。[Gmailショートカットの設定方法はこちら] 

今や、実際に会わなくても世界中の人々とのコミュニケーションがとれる便利な時代になっているわけだが、今度はいかにそのコミュニケーションツールを上手にマスターして、処理スピードをさらに上げることができるかが重要になってきていると思う。物事をよりスピーディに進めて、たくさんの機会を掴み、信頼性を高める。これが、成功に繋がっていくのだと思う。


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スタートアップはスピード重視

スタートアップにとって最大の武器はスピードである。柔軟性に加え、凄まじい決断力と、それを実行に移すための猛烈なエネルギーが不可欠だ。だからこそスタートアップは、スピードを最大化できるように構成していく必要があるのだと思う。

アンチ・ダイバーシティー

最近、グローバルな市場を狙うために多国籍な創業メンバーで構成するスタートアップをよく見かけるようになった。僕は、スタートアップはアンチ・ダイバーシティーの方が良いと思ってる。
特に創業初期の少人数(2〜3人)で運営しているスタートアップにとって、文化や言語の壁は決断するスピードを落とすので、そのような構成で創業はしない方が良い。もちろん、視点やスキルの多様性は創業メンバーに必要だが、何よりも重要なのは、価値観を統一し、最もコミュニケーションが取りやすい環境を作ることが望ましい。

最後は社長が決める

物事を決める時、メンバー同士で議論して考え抜くことは大切だ。ただ、メンバー全員の合意がないと何も決められないような民主的なやり方は、スタートアップにとって逆効果になると思う。みんなの意見が合わなかった時やデッドロックが起きた時に物事をどう決断するかは、あらかじめ創業メンバーの間で決めておく必要がある。

ミッション

「今、何が一番大事なのか」を常にメンバー全員が共通の認識を持つことで、優先順位の決め方や議論の仕方がより効率化される。Googleが掲げる「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」や、Facebookの「よりオープンに繋がれた世界をつくり、シェアすることで、人々に力を与えること」のようなミッションを会社で持つことをお勧めする。

スタートアップは、スピード力が重要。創業チームを組成する時や会社のポリシーを決める時はスピード重視で進めることだ。


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*image from Wikipedia

海外展開のスコアシート

ca. 2000 --- Keeping Score for the Team --- Image by © Royalty-Free/Corbis

iOS、アンドロイドなど様々なプラットフォームの普及によって、事業の海外展開はより行いやすい状況になっている。そのため、海外展開を目指すスタートアップの数も増加している。でも、ただ海外を目指せば良いということではない。海外展開を行うためには、いくつかの条件を満たしている必要がある。そこで、どういう条件や状況が望ましいのか、そして現在のフェーズが海外展開に進むフェーズとして適しているかをスコアリングするフレームワークを紹介する。

99%は、まず日本

まず何よりも重要と考えていること。それは、創業者が自分が育った国の市場をしっかりと狙えているかということ。例えば日本人または日本育ちの創業者が海外展開を計画する際、僕は99%の確率で、まずは日本市場を確実に狙うべきとアドバイスする。

スタートアップは、人材、資金、時間など、ありとあらゆる面で不利な状況からスタートすることになるため、自分たちのリソースを最大限にレバレッジしていく必要がある。この「自分たちを一番レバレッジできる市場」こそが、自分自身が育った場所なのだ。

他の国に行くと、人脈をいちから構築し、その国の文化や言語を学ぶ必要が出てくる。現地にいる企業やスタートアップと比較をしても、非常に不利な状況だ。だからこそ、スタートアップのほとんどには、まずはじめに人脈の基盤を持ち、状況を一番把握している市場を狙うよう勧めている。

海外展開のスコアシート

海外展開のスコアシートには、「フェーズ」「言語」「人材」「ランドスケープ」「ネットワーク効果」の5項目がある。それぞれの項目に最大5点まで採点することができ、全5項目の点数の合計で25点満点を獲得できれば、海外展開に適していると判断することができる。

それぞれの項目の採点方法は以下。

フェーズ

会社のフェーズを意識する。まだプロダクト/マーケットフィットを達成できていないスタートアップは、そもそも海外展開を考えない方が良い。最適なフェーズは、最初に狙った市場を独占できる状態であること。独占までの道筋が見えていいて、戦略も固まっている状態であること。

  • 採点
    • 5点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できていて、独占までの道筋が見えている
    • 3点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できているが、独占はまだ見えていない
    • 0点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できていない

文化 / 言語

参入しようとしている国の言語を話せるか?文化を理解できているか?言語を話せなかったり、文化を理解できていないというのは、ビジネス展開上大きな不利となる。例えば、現地での採用が難しくなったり、マネージメントがしにくくなる。また、サービスを展開するときにターゲットユーザーを理解することが難しくなったり、細かいニュアンスなどをピックアップする事ができなくなってしまう。

  • 採点
    • 5点 – ネイティブレベルで現地の言語を話すことができ、その国に住んだ事もある
    • 3点 – ビジネスレベルで話せる、文化をそこそこ理解している
    • 2点 – 全く話せない

人材

最高の人材を現地で採用できている必要がある。戦略・採用・実行などは現地のチームに任せる事になるので、初期メンバーはかなりトップクラスである必要がある。

展開先のメンバーの採用の際、人材のデューデリジェンスが手薄くなってしまうことが多い。同じ言語を話せないとさらに難しくなる。でも実は、共同創業者を選ぶとき同じぐらい厳しくデューデリジェンスをする必要がある。

  • 採点
    • 5点 – Aクラスのチームを採用できる
    • 3点 – そこそこのメンバーは集まっているが、まだ完全に任せるのは難しい
    • 0点 – 良い人が採用できない

 

ランドスケープ

海外展開先となる国での競合分析、市場分析、法律、文化、そして現地の資金調達環境を分析する必要がある。

現地に競合はいるのか、いる場合は本当にそれら競合に勝てる見込みがあるのかを調査、検証する。現地の競合に対して多額な資金を投資するプレイヤーがいるのかを探る必要もある。例えばUberの場合、インド、東南アジア、中国などの現地プレイヤーが何百億円もの資金調達を成功させ力をつけていることから、類似サービスの激戦区となっている。

他にも、展開しているサービスと狙っている国の文化的適合性や、法律面の問題点が無いかなども確認する必要がある。

  • 採点
    • 5点 – 文化や市場の適合性があり、現地の競合に勝てる見込みがある
    • 3点 – 文化や市場の適合性はあるが、現地の競合に勝つのは厳しそうだ
    • 0点 – 市場や文化の適合性がない

ネットワーク効果

ネットワーク効果とは、同じプラットフォームやサービスを利用するユーザが増えると、それ自体の効用や価値が高まる効果のこと。例えば電子メールのユーザーが増えれば増えるほど、メールを送ることができる相手が増加し、メール自体の価値が高まる。

そして海外展開で特に重要になってくるのが「グローバルネットワーク効果」だ。

現在展開しているサービスの新規ユーザー、在庫、コンテンツなどを増やすことが、他国のユーザーを含む全ユーザーにとってのサービス利用価値の向上に繋がるのか?ネットワーク効果が他の国にいるユーザーにも行き渡るのか?

「グローバルネットワーク効果」のあるサービス例の1つはAirBnBだろう。サービス利用者は旅行者が大半であり、アメリカで泊まれる場所(供給)が増えればアメリカに旅する他の国のユーザーが得られる価値も上がる。そして日本での供給が増えれば、日本に旅行するAirBnBユーザーがサービスの価値を感じる。AirBnBが世界で広まれば広まるほど、ひとりひとりのユーザーが得られる価値は上がっていく。

もう1つの例として挙げるとすれば、Instagramだ。写真を中心としたSNSなので、日本人がアメリカのユーザー、台湾人が日本人のユーザーをフォローしあうことができる。ユーザーやコンテンツがどの国で増えても、全体としてユーザーひとりひとりが得られる価値が上がっていく。

  • 採点
    • 5点 – グローバルネットワーク効果が強いサービスを展開している
    • 3点 – 少しだけグローバルネットワーク効果がある
    • 2点 – ネットワーク効果がない

集計

合計で25点満点をスコアリングできている場合、海外展開をする準備は整っていると判断しても良いだろう。合計が15点以上で、1つも0点にならなかった場合(文化/言語とネットワーク効果は0点取れないようになっている)は、海外展開を検討しても良いが慎重にアクションをとる必要がある。15点未満の場合は、海外展開はまだ先のフェーズであると判断すべき。まずは国内市場でのビジネス展開にフォーカスするべきである。

海外展開を検討している起業家は、是非このスコアシートを参考に使ってもらいたい。


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フィードバックループを短くする

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スタートアップをメンタリングする中で、僕はよく「フィードバックループは、もっと短くすることができる」とアドバイスする。

「フィードバックループ」とは、ユーザーとコミュニケーションをとり、その声を集めて改善につなげていくこと。特に初期の段階で、まだ自分たちのプロダクトがユーザーを満足させているかどうかが分からない場合は、コンバージョンやスケール、最適化などは後回しにして、ユーザーからのフィードバックをできるだけ収集してサービスを実際に利用するユーザーについて学ぶことを最優先にすべきだ。

この「フィードバックループ」をより効率的に実行する方法の例は以下である:

電話で話す
過去に起業経験のない起業家がよく陥る落とし穴は、数値の分析をしすぎること。KPIやユーザーデータを基に、ユーザーの満足するポイントや、不便な部分、分かりにくい部分を分析しようとする。特に初期の段階はデータサイズが小さいので、あまり参考にならないし、データがたまるまで時間がかかったりする。だから、ユーザーとできるだけコミュニケーションを取る機会を作る必要がある。例えば、ユーザーが登録したタイミングで、登録のサンキューメールと共に電話でも話す機会を作る。

ここでポイントなのは、電話でのヒアリングを通して何を検証・確認したいのかを明確にして、ヒアリングに適切なユーザーが誰なのかを予め決めておくことだ(ターゲットユーザーなのか、アクティブユーザーなのか、もしくは非アクティブユーザーなのか 等)。

よくある効果的な流れの例は、まずメールで簡単なアンケートを実施する。このアンケートの結果を通してヒアリングをしたい対象ユーザーをフィルタリングし、電話インタビューに繋げる。この時、簡単なプレゼント(Amazonギフト券500円 等)を付けてみても良い。実際、検証したいユーザーデータが集まるのを1週間も2週間も待つよりも、500円支払ってユーザーと直接話して確認したほうが確実に効率的だ。

トリガーメール
機能やページ単位の細かい検証をする時に効果的なのは、サイトやアプリ上で特定の動きをしたユーザーに対してメールを自動配信することだ。例えば、決済ページの離脱が異常に高い場合、そこまで辿り着いたユーザーに対してフィードバックを依頼するメールが自動配信されるよう設定しておく。返事が来たら、フォローアップして電話インタビューに繋げる。
その他にも、アクティブユーザーとなるきっかけを検証するために、5日間連続でログインしたユーザーが現れたときにメールを自動配信することで、アクティブユーザーだけのメーリングリストを作ることもできる。

ユーザーグループ
オフラインでもオンラインでも、過去に話してきたユーザーの中で今後も関係性を保ちたいユーザーを集めてディスカッションをする場を作ると良い。すぐにフィードバックが欲しい時には、その場で意見を求める事もできるし、もし熱量が高ければサービスの「応援団」になることもある。そのためにも、改善されている部分を定期的に知らせたり、ユーザーがその改善に貢献していることを感じさせることがポイントになる。

常駐サポート
これはエンタープライズ向けサービスを提供している場合に効果的な方法で、古いやり方と思えるかもしれないが、サービスをβ利用してくれる企業に常駐してサポートをする。
サービス利用者の近くにいることによって、質問があった時は迅速に対応することができ、更にフィードバックをもらえるきっかけができる。可能であれば、利用者を観察できる場所に常駐させてもらえると多くの貴重な学びがあるだろう。

これらがフィードバックループを短くする例だ。とにかく重要なポイントは、何を検証・確認したいのかを予め決めて、プロダクトを使っているユーザーとコミュケーションをとるきっかけを作ること。そして(特に初期段階のスタートアップは)フィードバックループを短くすること。まずはスケールすることを考えずに、ユーザーのニーズや考え、プロダクトがどこまでユーザーに適合しているかを学ぶことを最優先にすることが重要だ。


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ベンチャーキャピタルはサービス業

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世界中でベンチャーキャピタル(VC)の “キャピタル(お金)” がどんどんコモディティー化している中で、北米では様々なやり方で差別化を図ろうとするVCが特に増えてきているように感じる。アクセラレーターのように起業家やメンターのコミュニティーを結成させようとするVCもあれば、スペシャリストやエージェントを内部に在籍させるVCもある。また、技術を使って投資先とVCパートナーのコミュニケーションを促進するプラットフォームを提供しているところもある。

でも、世界の様々なVCそして起業家と話をしてきた中で僕が考える「VCに求められる絶対要素」というものがある。

信 頼:約束を守ったり、情報の透明性、起業家を信頼すること。

プロフェッショナリズム:スピーディーかつプロフェッショナルな姿勢で物事を対処できること。一定の対応品質を期待できてパフォーマンスに波がない。

専門知識:会社の成長を加速させるための知識や経験の提供できること。

アクセス:会社を次のステージに持っていけるネットワークを持っていること。

ブランド:採用、営業、次の調達などにレバレッッジできるブランドを持ってること。

実はこれらの要素は、日常生活をする上で利用する様々なサービスを選ぶ際の基準と変わらないものが多い。ちなみにサービスとは「人のために力を尽くすこと」と定義されている。
起業家とその起業家が経営しているスタートアップの成長のために尽くす。これが、ベンチャーキャピタリストが起業家に提供する「サービス」である。

ベンチャーキャピタルはサービス業である。
今まで色々な形や取組みで起業家を支援してきたが、結局は投資を担当する人と起業家と言う人との関係性がサービスの質に一番影響する。今更ながら自分が提供するサービスを意識するようになった。


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OKR (目標と主な結果)

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OKRというゴール設定テクニックがある。

「Objective and Key Result(目標と主な結果)」の略で、企業のチームメンバーそれぞれの目標と期待されている結果を明確にし、組織のオペレーションとコミュニケーションを効率化するためのシステムだ。1970年代にIntelがこのシステムを採用して以降GoogleやLinkedInなど数々のシリコンバレー企業がこのシステムを実践している。

OKRのメリット

OKRを組織に導入するメリットはいくつかあるが、一番大きなメリットはゴールを明確にすることによって何にフォーカスするべきなのか、何を無視しても良いのかをクリアにできることだろう。そして、OKRは会社全体に公表されるのでコミュニケーションの効率化にも繋げることができる。

OKRのプロセス

まず四半期ごとに会社全体のOKRを設定する。

これは社長や役員の話し合いで決められることが多い。会社全体のOKRは各チームリーダーや部署のリーダーに共有され、その内容を基に次は自分が担当するチームや部署のOKRを設定する。この時留意してほしいことは、会社全体のOKRとの整合性だ。チームや部署のOKR設定が済んだらチームメンバー全員に内容を共有し、その後チームメンバーが個人のOKRを設定する。個人のOKRは、チームリーダーとの複数回の一対一ミーティングを経て、そこで受けたフィードバックの内容を反映させながら固めていく。特に注意深く見るべきなのは、チーム全体のOKRとの整合性と高い目標が掲げられているかだ。

但しこのミーティングの場は、チームが実践すべきことや新たなアイディアなどをチームリーダーに提案する機会にもなるため、話し合いの中でチームリーダーがチームのOKRの修正を検討するきっかけになることもあれば、時には会社全体のOKRの見直しに繋がることもある。

全メンバー、チーム、部署、会社全体のOKRが確定したら、全てのOKRを会社全体に公表し、いつでもアクセスできる場所にファイルを置く。

OKRの設定

OKRの設定のポイントは以下を見てほしい:

  • OBJECTIVE (目標)
    • 野心的であり、チーム全体そして会社全体で整合性がとれていること。
    • 定量的である必要は無い。
    • ここでのポイントは、少し高めの無理をした設定にする事。
      100%以上を出し切らないと100%の達成率には届かないように、目標値を高めに設定することによって人はより効率よく働く工夫をするようになり、結果的に本人の成長に繋がったりする。100%出し切って6割〜7割ぐらいの達成率がちょうど良い。
  • KEY RESULTS(主な結果)
    • 1つのOBJECTIVE(目標)に対して1から最大4つのKEY RESULTSを設定する。
    • 目標の達成度を測るために必要となるため、定量的な要素を含める必要がある。
    • 客観的に評価できるような内容で設定する。

例1(プロダクトの場合):

OBJECTIVE(目標)
  最も使いやすいニュースアプリを作る
KEY RESULTS(主な結果)
  ロードタイムを30%削減
  新規登録ファネルの達成率20%増
  3月10日までにバージョン2をデプロイ

例2(コミュニティーの場合):

OBJECTIVE(目標)
  アクティブなコミュニティーを結成
KEY RESULTS(主な結果)
  1ユーザーあたりの掲示板投稿数を50%増
  返信率を30%増
  新たなキャンペーンを3つローンチ

会社全体とチームや部署のOKRは最大5つまで、個人のOKRは最大3つまで設定することができるが、目標に更にフォーカスしていくためには、OKRの数は少ない方が良いだろう。

OKRの評価

四半期が終わったら、個人で設定したOKRの達成率を個別に振り返る。全社メンバーを集めて、チームや部署そして会社全体の達成率を評価する。

例1(プロダクトの場合):

OBJECTIVE(目標)
  最も使いやすいニュースアプリを作る(以下の結果から算出する平均達成率は、71%)
KEY RESULTS(主な結果)
  ロードタイムを30%削減(19%削減を達成、達成率63%)
  新規登録ファネルの達成率20%増(10%増加、達成率50%)
  3月10日までにバージョン2をデプロイ(3月10日に無事ローンチ、達成率100%)

例2(コミュニティーの場合):

OBJECTIVE(目標)
  アクティブなコミュニティーを結成(以下の結果から算出する平均達成率は、59%)
KEY RESULTS(主な結果)
  1ユーザーあたりの掲示板投稿数を50%増(返信率40%で、達成率80%)
  返信率を30%増(返信率20%で、達成率66%)
  新たなキャンペーンを3つローンチ (1つしかローンチできず、達成率33%)

その他のポイント

Key ResultとObjectiveの整合性:会社のKey Resultsは、それぞれの部署または個人のObjectiveに紐付く。部署のKey Resultは、下図のように、その組織に属す部署または個人のObjectiveに紐付ける必要がある。

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組織図が重要:チームの目的を明確にし、各メンバーが適正なチームに配置されているのかを確認するためには組織図を設計する必要がある。組織図がちゃんと設計されていないと、OKRの設定自体が難しくなったりレポートラインが複雑になってしまう。

しつこいと思うほどOKRについて話す:特に最初にOKRを導入する組織が陥りやすい失敗は、OKRの設定は出来たものの、その後のコミュニケーションに活かすことができず放置してしまうというケースだ。だからチームや会社全体のミーティングでは必ずOKRを見ながら会議を進行するべきだし、日々のコミュニケーションでもOKRについての会話が起きるようにメンバー1人1人が推進していく必要がある。特にチームリーダーや会社の経営メンバーはしつこいと思うほどOKRについて語るくらいがちょうど良い。

OKRの導入は5人から:まだ2人や3人しかいないスタートアップの場合は、人数が少ないためOKRを導入する必要はないかもしれない。でも、メンバーが5人以上になった時点で、目標をより正確に共有するための手段としてOKRの導入を推奨する。

結果の達成率よりもプロセスが大事:OKRは、コミュニケーションの効率化やメンバー1人1人の目標を明確にするためのシステムであり、結果の達成率ばかりを気にする必要は無い。連続で低い達成率であった場合でも、考えるべきはOKRの設定方法や目標達成に向けた取り組み方、人員体制などの見直しを行う必要性があるかどうかだ。

このOKRというシステムを確実に実践するためには、メンバー1人1人の協力と、かなりの努力が必要となる。でも的確に実施することができれば、たくさんの無駄をなくし、組織のフォーカスをより高めることができる。みんなも自分たちの組織で是非実践してみてほしい。

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アイディアの迷路

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“a good founder doesn’t just have an idea, s/he has a bird’s eye view of the idea maze.” ~ Balaji Srinivasan
“良い起業家はアイディアを持っているだけでなく、そのアイディアの迷路の様子を鳥瞰図で見ているかのように把握することが出来る。 
~ バラジ・スリニヴィサン

自分が持っているアイディアの中で、実行可能な数々のシナリオをすべて頭の中でシュミレーションできている起業家は、トップクラスの起業家だと思う。

どの道を辿れば良いのか、どこで曲がれば良いのかをしっかりシュミレーションして、その道の先に何があるかを正確に伝えることができる。その他の道に関しても何故その道を選ばなかったのか、そしてそれぞれの道の先にある行き止まりを伝えることができる。状況を把握して、その「アイディアの迷路」を鳥瞰図で見ることが出来ている。

僕は、アイディアの迷路はこれらの要素によって作り上げられていると思う:

市場 – アイディアが狙っている市場はどう変化しているのか。市場に変化をもたらす新たな規制、イベントは何なのか。

競合 – 競合はどんな道を選んでいるのか、同じ道を辿って戦うのか、違う道を選ぶのか。

テクノロジー – どんな技術が生まれてきているのか、新たなプラットフォームが生まれてきているのか、それらを応用するべきか。

ユーザー – サービスに満足しているのか、サービスに対する不満は何なのか?

チーム – 今の人員で足りるか?どこを補充するべきか?このままの体制で良いのか?

資金 – 今の資金力で行きたい道を進む事ができるのか?調達は必要か?

アイディアの迷路を正確に作り上げるためにも、これらの要素を深いところまで調べ尽くす必要がある。調べて、アイディアの迷路を作り、そしてその攻略方法を考える事をお勧めする。


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周りに誰を置くか

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“You’re The Average Of The Five People You Spend The Most Time With” ~ Jim Rohn
あなたが最も長く時を共にする5人の人間の平均が、”あなた” という存在だ。 
~ ジム・ローン

人のモチベーションや考え、自信は、周りの人や環境に大きく影響される。だからこそ、自分の周りにどういった人を置くかが非常に重要だ。

例えば起業する時。一緒に起業する仲間、メンター、そして投資家など、自分がこれから最も長い時間を共に過ごす人を選ぶ場面がある。そんな時、僕はこんな人たちを周りに置くことを勧めている。

自分より目線が高い人

その人と話をすることで、自分が持つ目標やビジョンがどんどん大きくなって、自分自身をもっと成長させたいと思うきっかけを与えてくれる人を置くと良い。なぜなら経営者には、目標を設定してくれる人がいない。自分の成長の上限は、自分自身で決めることが出来てしまう。

だらこそ、その目標が中途半端にならないように、会社の成長を止めないように、さらに上へ上へと挑戦する気持ちを与えてくれる人が必要である。

自分より努力してる人

きっとたくさんの起業家が人一倍の努力を経て起業し、経営者になっている。
でも、自分が一番努力してる環境にいることで、時には少しペースを落としても良いのではないかという誘惑に惑わされることがある。そんな時、自分より何十倍も努力している人が近くにいると、焦りを感じるし、もっと努力が必要であることを気付かせてくれる。

自分より頭が良い人

知識や専門性など、自分よりも頭が良い人に直接相談できる環境を作っておくのが良い。考えをまとめたり、構想した企画や戦略に欠点がないかを試すことができる。

自分より経験を持っている人

自分より経験豊かな起業家がメンターにいると、自分の企業経営に参考になることが多いだろう。ただ、会社というのはそれぞれがユニークであるため、他の会社で成功した事例がすべてそのまま自分の会社でも上手く行くとは限らない。実行に移すときは、きちんと考えて、選択することが必要だ。

自分よりネットワークが強い人

様々な業界に強いネットワークを持つ人が近くにいると、事業を展開する上で重要な繋がりをつくる手助けにもなる。たとえ自分の事業の分野とは異なる業界からのネットワークでも、そこから得た情報が新たなチャンスを生み出すこともある。

信頼とリスペクト

自分の周りに置く人たちに対して必ず必要なこと。それは信頼とリスペクトだ。そして、その人達も自分に対して同じように信頼とリスペクトしてもらう関係性であることが不可欠だ。そうでないとお互いが協力し合い助け合う最適な関係性を作ることが出来ない。どれだけ自分より優秀な人を見つけたとしても、信頼関係が欠けていたり、一方通行の関係性である場合は、自分の周囲に置くべきではない。

起業家としてだけでなく、人として、常に自分を成長させて自身の限界に挑戦し続けるのが生きる意味の1つなのではないかと思う。だから、「もっと良くしよう」「もっと頑張ろう」「もっと上を目指そう」と思わせるような人を身の回りに置いて欲しいし、自分もそうしたいと思っている。


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4軸の成長

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シード期のスタートアップに出資をするとき、僕はそのスタートアップの「成長の素質」に注目するようにしている。

僕が特に着目しているのは「人」「ユーザー」「プロダクト」「戦略」。この4軸の成長を主に見ている。

最初から完璧な経営ができる起業家はいない。
最初から良いアイディアを持つ起業家もいない。
重要なのは、その起業家が将来良いアイディアを生み出して発展させることができる素質を持っているか、良い経営者に成長できる素質を持っているか。

ほんの数回のミーティングで、人としての成長性を見極めるのはものすごく難しい。見極め方としてはその人物が「自分をより良くするためのドライブ」を持っているかどうかを確認することだ。例えば、アドバイスをした時にそのアドバイスを自分できちんと判断をして実行に移しているのは1つの良いシグナル。他の人や本から学んだことを、まるで自分で考えたことかのように説得力を持って上手く伝えられるというのも、また1つの良いシグナルだ。

ユーザー

プロダクト利用者数の成長状況はもちろん重要だ。でも僕は、顧客をきちんと理解しているか、その市場の理解度が深まっているかどうかが、特に大切だと思っている。ユーザーは誰なのか?モチベーションは?どういったシグナルがあればユーザーがサービスを使う傾向があるのか?ユーザーがサービス登録するときに期待していることは何か?はたまた期待外れに思うことは?などたくさんの質問と答えを繰り返すことで、会う度にどんどん相手を理解できる。そしてさらに実際そのユーザーが存在する市場が、どんな構成で隣の市場にいるユーザーと具体的にどう違うのか、その規模がきちんと見えていることが重要である。

プロダクト

ユーザーの理解度が深まる度に、プロダクトを改善する。プロダクトがまだ無い場合は、そのプロダクトの設計がユーザーから得た学び(又は学びたい事)を根拠にした改善を実装することが重要。プロダクトの開発スピード、PDCAを回すスピードは、サービスの成長と比例することが多い。

戦略

そして最後の軸が、戦略。戦略の組み方や伝え方、そして発展性をきちんと見ること。正しいか間違っているかは問題ではなく、その戦略を裏付ける考えやインサイトは何なのか、組み方や伝え方がロジカルかどうかが重要である。

成長は重要な説得材料

資金調達時のフェーズに、一時的に成長速度を落としてしまうスタートアップをよく目にする。資金調達フェーズでは、資料作成、そして投資家や関係者との会話に多くの時間を費やさなくてはならない。結果、現状のオペレーションを維持するだけで精一杯になってしまうのだ。でも、事業を成功に導くための成長なのだから、成長の状況は投資家にとって最も重要な説得材料の一つになるわけだ。資金調達時期にもちゃんと4軸の成長ができるタイムマネージメントやプランを組むことによって、より多くの投資家を説得することができるだろう。


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