シード期のスタートアップに出資をするとき、僕はそのスタートアップの「成長の素質」に注目するようにしている。
僕が特に着目しているのは「人」「ユーザー」「プロダクト」「戦略」。この4軸の成長を主に見ている。
人
最初から完璧な経営ができる起業家はいない。
最初から良いアイディアを持つ起業家もいない。
重要なのは、その起業家が将来良いアイディアを生み出して発展させることができる素質を持っているか、良い経営者に成長できる素質を持っているか。
ほんの数回のミーティングで、人としての成長性を見極めるのはものすごく難しい。見極め方としてはその人物が「自分をより良くするためのドライブ」を持っているかどうかを確認することだ。例えば、アドバイスをした時にそのアドバイスを自分できちんと判断をして実行に移しているのは1つの良いシグナル。他の人や本から学んだことを、まるで自分で考えたことかのように説得力を持って上手く伝えられるというのも、また1つの良いシグナルだ。
ユーザー
プロダクト利用者数の成長状況はもちろん重要だ。でも僕は、顧客をきちんと理解しているか、その市場の理解度が深まっているかどうかが、特に大切だと思っている。ユーザーは誰なのか?モチベーションは?どういったシグナルがあればユーザーがサービスを使う傾向があるのか?ユーザーがサービス登録するときに期待していることは何か?はたまた期待外れに思うことは?などたくさんの質問と答えを繰り返すことで、会う度にどんどん相手を理解できる。そしてさらに実際そのユーザーが存在する市場が、どんな構成で隣の市場にいるユーザーと具体的にどう違うのか、その規模がきちんと見えていることが重要である。
プロダクト
ユーザーの理解度が深まる度に、プロダクトを改善する。プロダクトがまだ無い場合は、そのプロダクトの設計がユーザーから得た学び(又は学びたい事)を根拠にした改善を実装することが重要。プロダクトの開発スピード、PDCAを回すスピードは、サービスの成長と比例することが多い。
戦略
そして最後の軸が、戦略。戦略の組み方や伝え方、そして発展性をきちんと見ること。正しいか間違っているかは問題ではなく、その戦略を裏付ける考えやインサイトは何なのか、組み方や伝え方がロジカルかどうかが重要である。
成長は重要な説得材料
資金調達時のフェーズに、一時的に成長速度を落としてしまうスタートアップをよく目にする。資金調達フェーズでは、資料作成、そして投資家や関係者との会話に多くの時間を費やさなくてはならない。結果、現状のオペレーションを維持するだけで精一杯になってしまうのだ。でも、事業を成功に導くための成長なのだから、成長の状況は投資家にとって最も重要な説得材料の一つになるわけだ。資金調達時期にもちゃんと4軸の成長ができるタイムマネージメントやプランを組むことによって、より多くの投資家を説得することができるだろう。