スティーブ・ジョブズのチーム作りとマネジメント

前回に続いて、Steve JobsがMIT Sloanで行った講演の紹介。今回は、Steve Jobsの採用ポリシー、彼がAppleで学んだこと、そしてチームとしての決断について話している部分をシェアしていきたいと思う。

チームは妥協してはいけない。

私たちが実行した大切なことの1つ、それは彼、Mike Sladeを雇ったことです。彼は、Microsoftに7〜8年在籍したあと、VP of Marketingとして私たちの会社にジョインしました。初めて彼に会った時は、彼はExcelのプロダクトマネージャーで、その後Microsoftの大規模なマーケティングプロジェクトを走らせていました。

現在Mikeは、NeXTのマーケティング業務の全てを担当しています。彼がNeXTに入ったのは、私たちがやっと大企業から業務に必要なカスタムアプリの話をヒアリングできるようになったタイミングだったので、私たちは密に連携をとって共に会社のマーケティング戦略を立て直しました。この時、Mikeは本当に素晴らしい仕事をしてくれました。

そしてつい最近、COOとしてPeter van Cuylenburgという人物を迎え入れました。もともとPeterは、私がセールスとマーケティングのエグゼクティブVP候補を探していたときに最初に出会った人物でした。でも、オファーを出した結果断られてしまい、それ以降私たちはこのポジションの採用を止めたのです。そして、それから1年半の間彼を追い続けました。彼はそれほど優秀な人材だったんです。

彼は、TI(テキサス・インスツルメンツ)のヨーロッパ支社の運営に長く携わり、そして3年前にUK版のMCIであるイングランドのMercury Communicationsという会社に参画しました。そこでこの企業の売上を20億ドル企業にまで成長させました。これは、Mercury社の親会社であるCable & Wirelessの半分(Cable & Wirelessの当時の売上は約60億ドル)に値するのです。

彼は、コミュニケーションとコンピューティングが一つの共同体となると考えてこの会社に入ったのですが、実現することはありませんでした。それが分かったと同時に、彼の本当の愛は、コンピュータービジネスにあることに気づいたんです。

そして彼は、私たちの仲間になりました。つい先週のことです。どうやら私が本当に雇いたいと思う人物は、参画してくれるまでに1年はかかるようなのです。Mikeの時は1年半をかけましたし、Appleの時も同じでした。でも全てその価値があったんです。とても優秀な人に出会い、でも、その人を仲間にすることができなかった時、他の人を探そうとする人もいるでしょう。そしてそこで出会った人と最初に出会った人を比べて、2番目と分かっていながらも、妥協してその2番目の人で落ち着こうとするかもしれません。でも私は妥協せず、自分が1番だと思った人にアプローチし続けるんです。

Appleでの経験で学んだこと

私がAppleにいた時に学んだこと、というよりはAppleにいたときのデータから学んだことがあります。それは、私はいま、人に対して長期的な視点をもつようになったということです。もし相手が、正しくない間違ったことをしたとき、私が最初に行うことはその問題を正そうとすることではありません。大切なのは、今私たちはチームを作ろうとしていること。そして、1年後のためではなく、10年先のために最高のものを作るためにここにいるのだということです。だからこそ、どうやって私が問題を解決するかではなく、その間違ってしまった人に学んでもらうために自分が何をすべきかを考えるのです。時にそれは苦痛なことです。私もまだ、手っ取り早く問題を解決したいと思うことがあります。でも、長期的な視点を持つということは、恐らく私が1番変わった点なのだと思います。

チームとしての決断

もし私たちが同じ経営陣に所属し何かを決断しなければならないとき、相手が賛成していない決断を無理やり通そうとすることが正しいとは思いません。なぜなら、あなたは彼らが正しいと思ったことをしてもらうために給料を払っているのに、これでは彼らが本当は正しくないと思っていることをむりやりさせることになり、遅かれ早かれ衝突することになってしまうからです。私が考える1番良い方法は、その決断したことを実行するために関わる全員の同意が取れるまで話し合うということです。これがNeXTで実際に行っているやり方です。NeXTの組織のトップには「ポリシーチーム」というチームがあります。そこには私とMikeを含む8人のメンバーがいます。このチームでやろうとしていることは2つ。1つは、本当に大切な決断と私たちが決断しなくても良いことを区別することです。本当に必要な決断に関しては、私たち全員が同意するまで話し合うを続けます。なぜなら、私たちが給料を払っている理由は、人に何かをさせるためではなく、何をすべきかを教えてもらうためだからです。何かをしてもらうためだけの人を探すのは簡単なことです。でも、何をすべきかを教えてくれる人を見つけるのは難しいことですよね。

これこそが私たちが求めていることです。私たちは人に多額の給料を支払い、そして彼らに何をすべきかを教えてもらうのです。これを前提に考えたとき、本当は全員が納得していないと分かっていながら、その状態から逃げるべきではないのです。ここでの成功の否決は、実は1つのチームが本当に決断しなくてはいけないことは、そんなに多くはないということを知ることです。私たちも1年のうちに本当に決断しなくてはいけないことは25個くらいです。そんなに多くはないのです。うまくいくこともあれば、試行錯誤していることもありますが、これが私たちが実践している方法です。

私は、「私がCEOなんだ!このやり方に全員従え!」と発言したことはありません。そして「同意できないのなら、チームから外れろ。」と言ったこともありません。いや、私の長いキャリアの中で1度や2度はそんなことがあったかもしれません。でもそれはせざるを得なかった時です。 もしチームがこっちの道に進みたいと良い、でも一人違う方向に進みたいと言った場合、それはもう上手くいかないと伝えることも仕事の一つですから。でも全員がチームとして動いているときは、共に課題を解決していくのです。

(編集と翻訳をしてくれたkobajenneに感謝)

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スティーブ・ジョブズが語ったソフトウェアの歴史と未来

今回は、1992年Steve JobsがMIT Sloanで行った講演の中から、僕が紹介したいと思った内容を抜粋して投稿してみようと思う。

デスクトップの歴史、ソフトウェアの歴史、そして当時Steve Jobsが経営していたNeXT社の戦略が伝わる面白い内容だったので、ぜひ読んでみて欲しい。

なぜコンピューターの会社が必要とされているのか。

私たちがNeXTで何をしようとしているか、そしてなぜ世界には新しいコンピュータの会社が必要とされているのかを話したいと思います。

まず、私たちが犯した間違いについて話したいと思います。

Paul Strassmann(ポール・ストラスマン)という男性が書いたとても興味深い本があります。ポールはこの地球で最も面白い仕事をしています。彼は”ペンタゴン”という非常に大きな組織の最高情報責任者、CIOです。彼はその仕事に着く前に「The business value of computers」(ビジネスにおけるコンピュータの価値)という本を書きました。その中には驚くべき内容が書かれています。

彼は成功していない企業から、非常に成功している企業に至るまで多くの会社に対して調査を行い、2つの質問をしました。

一つ目の質問は「企業の収益に対し、どれくらいの割合の金額をITに費やしているか」というものでした。そこで彼は自分の直感とは反する答えを得ることになります。本当に成功している企業は、成功しなかった企業よりも多くい金額をITに使っているでしょうか?それとも少ない金額でしょうか?

答えは、全く同じだったのです。

どの企業も、収益の約2%をITに使用していたのです。彼は違和感を感じ、もう一つ質問をしました。「どのようにお金を使ったか?」というものです。

この問いで分かったこと。

それは、成功していない企業は、生産性管理〈マネージメント・プロダクティビティ〉の分野に多くの費用を費やし、一方成功している企業は、費用のほとんどをアプリケーションを使った業務効率化〈オペレーショナル・プロダクティビティ〉に使用しているということでした。

私にとって、この本は読んでいて気分の良いものではありませんでした。なぜなら、私は自分のキャリアの最初の10年間は、マネージメント・プロダクティビティに力を注いできたからです。

PCやMacは、生産性を管理するためにあるものであって、運用面での効率化に影響を及ぼすことはありません。

なぜなのか。

それは、近所の家電量販店では、株取引や病院の運営、オートメーション化したいと思う業務を支援するアプリケーションを購入することができないからです。小規模のビジネスであれば、会計ソフトを買うことができたかもしれませんが、中規模〜大規模サイズのビジネスではそうもいかず、運用効率について取り組むことはありませんでした。

では、人はどのようにしてインフォメーションテクノロジーを使って業務効率化を追求してきたのでしょうか。

60年代には、メインフレームや端末を使ってたくさんのCOBOLプログラマー達がこぞっていくつかのアプリケーションを作っていましたが、そのほとんどはバックルームアプリケーションでした。そしてそれは、資金に余裕のある一部の企業のみでした使われることはありませんでした。

70年代も引き続きメインフレームや端末を使って同じことを繰り返していました。ミニコンピューター、端末を使うことで費用を抑えようとした企業も現れてきました。80年代もこの状態は変化することなく、その後、恐らくここ2〜3年前(1989〜1990年頃)までは同じやり方を繰り返していました。

では、2〜3年前に何が起きたのか。それは、企業のフロントに立つ人たちからの業務効率化アプリケーションへのニーズが非常に強くなってきたのです。その結果、サーバーやデータベース、小規模のローカルエリアネットワークを構築し、2年の月日をかけて特定のミッションに対応できる業務効率化アプリケーションを生み出したのです。

こうして、企業のフロントオフィスからの業務効率化アプリケーションに対する需要がますます高まりました。そしてこの流れによって、業務効率化のアプリケーションが、デスクトップコンピューティングにおける次の大きな革命となることは明らかでした。

でもそれがどんな物なのか分かる人はいませんでした。それは奇妙でバーティカルな市場でしか需要がないものだと誰もが思っていました。でも私はこの市場はかなり大きなものだと考えています。そして今私たちは、このニーズがあることが間違いないバーティカルな市場に踏み込んでいて、とても順調に進んでいます。Sun社は、この分野で成功している唯一の企業ですが、私たちはそれに対抗するため、「NeXTSTEP」と呼ばれるソフトウェアを開発しました。これは、他のソフトウェアより5〜10倍の速さでアプリケーションを構築することができる、今までになかったソフトウェアになりました。

構築したアプリは、特別な知識を持たない人でも展開して使うことができるものです。また、そのアプリケーションは、既製の業務改善アプリケーションとシームレスに相互運用することもできます。そこで私たちは、Sunのシステムを使い2年の月日をかけてアプリケーションを構築している会社、またはSunとの契約を検討している段階の企業に会いに行って、NeXTなら90日ほどあればアプリケーションを構築できるという説明をしています。さて、あなたがウォール街で働いているとして。

NeXTなら90日でアプリケーションを1つ作ることができるのに、他社ではその1つのプロダクトに2年を要する。NeXTならば、その2年で8つのプロダクトを作ることができるわけです。これは、競合他社に対する優位性になります。

ハードウェアとソフトウェア

私たちが革新的なオブジェクト指向のソフトウェア「NeXTSTEP」を開発した時、私たちのターゲットである顧客は、Lotus、Adobe、WordPerfectなどパッケージ化されているアプリケーションのデベロッパーが王として君臨する、PCの世界からやってきた人々でした。私たちの目的は、このパッケージ化されているアプリケーションよりも5〜10倍の速さでアプリケーションを構築させることでした。そしてこの戦略は上手くいったのです。多くのパッケージ化されたアプリケーションが誕生し、それらのアプリケーションはほぼすべてのアプリケーションカテゴリのランキングに入っています。

でも、1991年の前半までは、このように上手くはいっていませんでした。1年ほど前、ある大手企業の担当者から、

Lotusよりも5〜10倍のスピードでアプリケーションを開発できるソフトウェアを持ちながら、君たちはその凄さを分かっていないと言われたのです。このソフトウェアを使用することによって、Lotusのアプリケーションが5〜10倍の速さで構築できるということは、社内で業務に必要なアプリケーションを5〜10倍の速さでつくることができる。これはかねてより私たち、そして全ての大企業、中規模サイズの企業が抱えていた大きな問題を解消してくれるものだ。そんな凄いものを持ちながら、その凄さを伝えられていない。

こう言われたのです。

これをきっかけに、私たちは全体の販売およびマーケティング戦略を見直し、集中させることで業績をロケットのように飛躍させることができました。昨年は今までの4倍、そして今年は恐らく約2倍に成長します。顧客リストもどんどん強力なものとなり、”クレイジー”な成長スピードを遂げています。今、私たちが話をする相手(顧客)というのは、まさに私たちがかねてより自分たちの顧客にすることを夢みていた相手なのです。

さて、これがいま私たちが取り組んでいることです。私たちの大敵であるSunは、私たちを潰しにかかるでしょう。彼らはそれをしてきません。いや、本来ならばもっと早くすべきだったのです。もうすでに遅すぎたと言えるでしょう。

重要なのは、ハードウェアには18ヶ月の周期があるということです。ハードウェアにおいて、サステイナブルな優位性を維持するというのは不可能と言ってもよいでしょう。運が良ければ、競合他社の1.5または2倍優れたものを作ることができるかもしれませんが、これを競争上の優位性とするには不十分です。ハードウェアの優位性は、6ヶ月持続すれば良いところですが、ソフトウェアはさらに長い期間の優位性を作ることができるのです。

これこそが、私達の戦略の根拠です。

私たちはソフトウェアだけの会社にならないのか?

私たちは、ソフトウェア会社であり、ハードウェア会社でもあるべきだと考えています。

私たちはNeXTSTEPを自社のプラットフォーム以外のプラットフォームに搭載することを決定するにあたり、NeXTSTEPのハードウェアは必ずしも一緒に販売する必要はないと決めていました。ただし、市場は成長していくので、私たちのハードウェアは今後もさらに売れていくことは間違いないでしょう。

もう一つ重要なのは、私たちのハードウェア部門としても最高のNeXTSTEPハードウェアを作ることこそが最も重要であるということです。私たちの作り出すハードウェアは一番安価なものではないかもしれませんが、それでも私たちは他では手に入らない最高のものをつくることができると考えています。もし、今後20〜25%のNeXTSTEPハードウェアしか売り上げることができなかったとしても、私はそれでもハードウェアビジネスが10億ドル以上のビジネスになると考えています。

いま私たちがどのようにコンピュータを販売しているかをみてみると、アメリカ国内に営業担当者がいて、130人の専門家たちがNeXTコンピュータを販売しています。彼らは、自分たちの仕事の90%の時間をNeXTSTEPソフトウェアの販売に、そして10%の時間をハードウェアの販売に使っています。言い換えると、お客様にソフトウェアを購入してもらうことができれば、ハードウェアも販売することができるということです。

過去数年間に渡ってコンピュータ業界の流通チャネルは、需要を生み出す力を失っています。需要を満たすことはできますが、作り出すことはできないのです。新製品が発売したときに、店でデモンストレーションができる店員を見つけることができたら、それだけで幸運ですよね?革新的な製品は、単に既存の商品に改善を加えたものではありません。既存のチャネルは需要を満たすことしかしていないため、行き詰まってしまうのです。

では、どのようにすれば市場にイノベーションをもたらすことができるのか。私たちが現在その方法を知ることができる唯一の手段は、営業部隊が顧客に対して製品を紹介し、その問題をどのように解決策と結びつけることができるのかを話すことだけなのです。

平均販売価格が500ドルのソフトウェアパッケージのみを販売する会社では、130名の専門家を雇い、ダイレクトセールスを行うことはできません。でも、平均販売価格が5,000ドルの会社なら可能です。だからこそ、私はこれ以上ソフトウェア企業が成功することはないと考えています。革命的な製品だとしても、平均単価が低ければ市場を育てるための資金を投入することはできないと思うのです。そして、革命的な製品を生み出せなければ、企業の成功もありません。

だから、私たちはソフトウェアビジネスを成功させるためにハードウェア企業でもあり続けるという戦略を取り、その両方が軌道に乗っているのです。

(パート2はこちら)

(編集と翻訳をしてくれたkobajenneに感謝)

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ARR100億円が必然になった時。

ここ数年、Sansan、ラクス、マネーフォワード 、freeeなど、ARR 100億円を突破、または超えそうなSaaS企業が増えてきている。日本のSaaS業界はまだまだこれからで、ARR 100億円組に参画する企業が、今後も続々と現れるだろう。

売上もブランドもなく、チームもまだ小さい立ち上げ時のSaaS起業家にとっては、ARR 100億円は遠すぎる未来であり、なかなか実感もわかないだろう。

でも、顧客の数が10社から100社、1000社になり、従業員も3人から30人、300人と増えていくと、ARR 100億円というのは近い未来の話なのではないかと気付きはじめ、ある日それは必然のことだと感じ始めるだろう。そして、その予感は恐らく間違ってはいない。

では、ARR 100億円が必然と感じ始めた時に考えるべきことは何か?そして、その予感を現実のものにするためにはどうすれば良いのか?

リテンションを愛に転換する

SaaS企業にとって、リテンション率(顧客継続率)が非常に重要であることは誰もが知っていることだ。これについては以前にも話をしたが、規模が大きくなればなるほど、リテンション率が事業にもたらす影響は大きくなる。1億円売り上げのうち10%が退会すれば、1000万円を失うことになり、同じ比率でARR 100億円の事業だと10億円を失うことになる。

ARR 100億円が必然だと感じ初めた時点では、リテンション率は高いかもしれない。でも、それがイコール顧客に愛されているとは限らない。ここからは、退会されないSaaSから、愛されるSaaSに変わる必要があるのだ。

今経営しているSaaS事業の規模が大きくなればなるほど、その市場が魅力的な市場であることが明らかになる。つまり、隙を見つけてその市場に参入しようとする企業が増える。だからこそ、既存顧客が他社に乗り移らないようにするためにも、愛されるブランドや企業になる必要がある。

また、規模が大きくなるとリファーラルや口コミで活用できる顧客基盤ができる。他の人に教えたくなるような愛されるサービスに進化できれば、誰にも止められない勢いで成長を続けられるようになる。

NPSスコアなど、愛にリンクする指標を見つけて改善を目指すと良い。

組織とオペレーションを優位性にする

これまではタイミングやプロダクト、技術、そして複数の優秀なメンバーによって成長してきたかもしれない。でも、長期的に成長を続ける為ためには、組織とオペレーション重要視する必要がある。会社の文化と、従業員への投資がいつも以上に必要になるだろう。

課題が解決される、勝つことに執着する、そしてクリエイティブに働ける文化を浸透させて、ほぼ全ての従業員が成長を実感できる組織へと進化させていくのだ。

会社レベルではなく、個人が目標達成できている割合、そして文化の浸透率などを追うと良い。

市場の解像度を高めて戦略を固める

SaaS事業を推進している期間が長ければ長いほど、市場の解像度は上がっていく。どのセグメントに強く、どのセグメントに弱いのか。SaaSは、〈ニッチ〉の積み上げで拡大するので(参考記事)、今攻略できてるニッチ性でどこまでの事業規模を目指せるのか、さらなる拡大のために、今後攻めていくべきセグメントはどこなのか、そして、その攻め方までをも言語化する必要がある。

プロダクト、営業、マーケティングなどの各側面での中長期プランを立てて、今のうちに実行に移し始めていくべきだ。

ブランドを守る

時とともに、業界に対するブランド力はついてくる。ただし、長年築いてきた信頼と、ブランド力は、ほんの一瞬の出来事で失うことがあるので、徹底的に死守する必要がある。会社が大切にしている理念や、指針を浸透させるための取り組みや制度、顧客情報を守るチームや技術を構築する必要がある。

また、仮に何か起きてしまったときのため、迅速な対応ができるようなポリシーを決めておくことも重要だ。

レベルを上げ続ける

組織、チーム、技術、マネジメントなど、ありとあらゆる面で継続してレベルの引き上げをしていきたい。一度これを怠ってしまうと、ゆっくりゆっくりと、でも確実に後退していく企業になってしまう。

経営レベルからメンバーまで「チャレンジ」と「成長」に対して常に欲を持つことが大切。

他社ではなかなか辿り着くことができない規模まで成長することによって、今まで積み上げてきた実績と経験、そして集めてきた人と資金でできる範囲が拡大する。リソースをフル活用して、さらなる高みを目指すべき。

先にある世界

大規模な企業になると影響力が増し、発言の一つ一つが業界に大きなインパクトを及ぼすようになる。単にSaaSを提供する企業ということではなく、対象の顧客がいる業界を支える「インフラ」となる存在になり、同時に業界を進展させる力を持つ。

ここからどうすればこの業界を10倍良くできるのか。

ARR 100億円が必然と感じ始めたら、これらの要素を抑えて、さらにその先の大きな目標を持ち、より良い世界の実現を目指して欲しい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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日本発のグローバルSaaS企業をつくるには

Salesforce、Notion、Zoom、Microsoft Officeなど、僕たちが日常的に使う多くのSaaSプロダクトは、海外からやってきている。日本のSaaSイノベーションブームは最近始まったばかりだが、今後グローバルで活用される日本発のSaaSが出てくるのだろうか。

今回は、日本発のグローバルなSaaS企業をつくるにあたり、抱えるであろう課題は何なのか。そして、どのようにすればグローバルに通用するSaaS企業を作ることができるのかについて書いていきたいと思う。

難しい理由

グローバルで通用する日本発のSaaS企業の誕生が難しい理由はいくつかある。

競争環境:

SaaSのグローバル展開の難易度は、今まで以上に上がっている。SaaSのイノベーションは世界中で同時多発的に起きており、他の国に参入しようとした時には競合他社がすでに存在している可能性が高い。

特に営業主導型のSaaS企業にとっては、優れたソリューションを作るだけでなく、その市場での営業やマーケティング人材の確保の面でも競争がおこるだろう。その市場で勝ちたいのであれば、より優秀な人材を現地で採用し、非常に強い実行力を持つ必要がある。

ニュアンス:

バーティカルSaaSの場合は特に、同じ業界、分野の仕事でも、他の国とはマッチしない「ニュアンスの差」がある。例えば、企業の運営スタイル、法律、社会保障や税務の制度、ビジネスの取引方法などが挙げられるだろう。

これらのニュアンスの違いによって、顧客のワークフローが変化し、優先順位が変わる。ニュアンスの異なる他国に進出すると、プロダクト設計、ユーザーインターフェース、カスタマーサクセスをその国に合わせる必要が出てくる。場合によっては、一からプロダクトを設計し直す必要が出てくるだろう。

アダプション:

日本のSaaS普及率は勢い良く上がっているが、アメリカと比べればまだ遅れをとっているのが現状だ。日本は、アメリカに7年遅れを取っているクラウド「抵抗国」と言われている。

実際、日本がSaaS普及拡大フェーズに入るなかで、アメリカでは普及の先に出てくる2.0の需要を満たすプロダクトが誕生し始めている。例えば、Notionは、TrelloやEvernoteなど様々なSaaSプロダクトの要素を組み合わせたモダンなソリューションを提供している。他にも、SkypeやWebexが満たせていなかった顧客需要を捉えたZoomや、元々エンジニアにしかできなかったダイナミックなデータベースの構築を特別な知識がない人でも構築可能にしたAirtableなどがある。これらのプロダクトは、様々なSaaSが普及した後に顕在化されるニーズ、そして現れる機会であることが多く、北米のSaaS起業家はその需要に率先して気付くことができる優位性がある。

グローバルなSaaS企業を作るには

では、このようなチャレンジが多い中で、日本からグローバル展開をするにはどんな要素が必要なのか?

ボトムアップ

グローバル展開をする時は、営業ドリブンなモデルよりも、ボトムアップなプロダクトドリブンなユーザー獲得戦略を取る方が比較的進めやすいだろう。営業ドリブンの場合、参入市場となる各国で営業チームを構築しなくてはならないので、現地での採用面でも他社と競わないといけない。また、営業ドリブンは先行投資額が膨大となり、資金が多く必要になるので、海外展開のタイミングも遅れてしまう。

一方で、営業人員を求めない、プロダクトドリブンなユーザー獲得戦略ならば、海外展開へのスピードや資金効率の面で見ても比較的進めやすいだろう(参考記事:トップダウンなのか、ボトムアップなのか?SaaSのGTM(市場戦略)の考え方)。

世界レベルのUI / UX

ボトムアップ戦略を成功させるためには、他社を圧倒させるほどのレベルのUI/UXが必須となる。ほぼTo Cと変わらないような獲得戦略になるので、To Cプロダクトに求めらえる「サクサク動く」動作や使い勝手、使っていて「気持ちが良い」や「楽しい」感覚が必要だ。

ユニバーサルなユースケース

プロダクトのユースケースは普遍的で、仕事をする上での基本的なニーズを満たすものの方がグローバル展開がしやすい。それは、国や文化ごとに固有のものがあってはならない。Zoom、Notion、Slack、Superhumanが非常に早くグローバル普及している理由は、それらのユースケースが普遍的であるから。

コミュニティー

バイラル性や口コミ効果が強いSaaSプロダクトにする事が望ましい。特にエンジニアコミュニティーでは、これが分かりやすく健在していて、RubyやGoといったプログラミング言語には、世界中に熱烈なフォロワーがいる。また、プロダクティビティーのマニアや、学生YouTuberの中ではNotionのファンが多く存在しており、これによってサービスが世界中に広がるスピードを加速させている。ターゲットユーザーが思わず発信したくなるような高品質なプロダクト、熱烈なユーザーが各国に集まる取り組みなどがあると効果的かつ効率的に拡大させることができる。

先端にいる

前述の通り、グローバル展開の観点で北米が有利なのは、彼らがSaaSアダプションの先端にいるからだ。その遅れを取らないためにも、需要の先に顕在化するであろうさらに先の需要を常に見る必要がある。最先端の需要、最先端の事例、そして最先端の技術を掴むための取り組みが必要だ。

以上が、僕が考えるグローバルSaaS企業のチャレンジとそれを克服するための大要素だ。もちろん、機会によって展開の仕方は異なってくるし、必ずこれらの要素がないとグローバルで成功できないという訳ではないが、グローバル市場で闘う場合の勝率は上がると思う。多くのSaaSスタートアップが生まれ始めている日本から、グローバルに普及できるサービスが近い将来出てくることを僕は強く願っている。

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