スティーブ・ジョブズが語ったソフトウェアの歴史と未来

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今回は、1992年Steve JobsがMIT Sloanで行った講演の中から、僕が紹介したいと思った内容を抜粋して投稿してみようと思う。

デスクトップの歴史、ソフトウェアの歴史、そして当時Steve Jobsが経営していたNeXT社の戦略が伝わる面白い内容だったので、ぜひ読んでみて欲しい。

なぜコンピューターの会社が必要とされているのか。

私たちがNeXTで何をしようとしているか、そしてなぜ世界には新しいコンピュータの会社が必要とされているのかを話したいと思います。

まず、私たちが犯した間違いについて話したいと思います。

Paul Strassmann(ポール・ストラスマン)という男性が書いたとても興味深い本があります。ポールはこの地球で最も面白い仕事をしています。彼は”ペンタゴン”という非常に大きな組織の最高情報責任者、CIOです。彼はその仕事に着く前に「The business value of computers」(ビジネスにおけるコンピュータの価値)という本を書きました。その中には驚くべき内容が書かれています。

彼は成功していない企業から、非常に成功している企業に至るまで多くの会社に対して調査を行い、2つの質問をしました。

一つ目の質問は「企業の収益に対し、どれくらいの割合の金額をITに費やしているか」というものでした。そこで彼は自分の直感とは反する答えを得ることになります。本当に成功している企業は、成功しなかった企業よりも多くい金額をITに使っているでしょうか?それとも少ない金額でしょうか?

答えは、全く同じだったのです。

どの企業も、収益の約2%をITに使用していたのです。彼は違和感を感じ、もう一つ質問をしました。「どのようにお金を使ったか?」というものです。

この問いで分かったこと。

それは、成功していない企業は、生産性管理〈マネージメント・プロダクティビティ〉の分野に多くの費用を費やし、一方成功している企業は、費用のほとんどをアプリケーションを使った業務効率化〈オペレーショナル・プロダクティビティ〉に使用しているということでした。

私にとって、この本は読んでいて気分の良いものではありませんでした。なぜなら、私は自分のキャリアの最初の10年間は、マネージメント・プロダクティビティに力を注いできたからです。

PCやMacは、生産性を管理するためにあるものであって、運用面での効率化に影響を及ぼすことはありません。

なぜなのか。

それは、近所の家電量販店では、株取引や病院の運営、オートメーション化したいと思う業務を支援するアプリケーションを購入することができないからです。小規模のビジネスであれば、会計ソフトを買うことができたかもしれませんが、中規模〜大規模サイズのビジネスではそうもいかず、運用効率について取り組むことはありませんでした。

では、人はどのようにしてインフォメーションテクノロジーを使って業務効率化を追求してきたのでしょうか。

60年代には、メインフレームや端末を使ってたくさんのCOBOLプログラマー達がこぞっていくつかのアプリケーションを作っていましたが、そのほとんどはバックルームアプリケーションでした。そしてそれは、資金に余裕のある一部の企業のみでした使われることはありませんでした。

70年代も引き続きメインフレームや端末を使って同じことを繰り返していました。ミニコンピューター、端末を使うことで費用を抑えようとした企業も現れてきました。80年代もこの状態は変化することなく、その後、恐らくここ2〜3年前(1989〜1990年頃)までは同じやり方を繰り返していました。

では、2〜3年前に何が起きたのか。それは、企業のフロントに立つ人たちからの業務効率化アプリケーションへのニーズが非常に強くなってきたのです。その結果、サーバーやデータベース、小規模のローカルエリアネットワークを構築し、2年の月日をかけて特定のミッションに対応できる業務効率化アプリケーションを生み出したのです。

こうして、企業のフロントオフィスからの業務効率化アプリケーションに対する需要がますます高まりました。そしてこの流れによって、業務効率化のアプリケーションが、デスクトップコンピューティングにおける次の大きな革命となることは明らかでした。

でもそれがどんな物なのか分かる人はいませんでした。それは奇妙でバーティカルな市場でしか需要がないものだと誰もが思っていました。でも私はこの市場はかなり大きなものだと考えています。そして今私たちは、このニーズがあることが間違いないバーティカルな市場に踏み込んでいて、とても順調に進んでいます。Sun社は、この分野で成功している唯一の企業ですが、私たちはそれに対抗するため、「NeXTSTEP」と呼ばれるソフトウェアを開発しました。これは、他のソフトウェアより5〜10倍の速さでアプリケーションを構築することができる、今までになかったソフトウェアになりました。

構築したアプリは、特別な知識を持たない人でも展開して使うことができるものです。また、そのアプリケーションは、既製の業務改善アプリケーションとシームレスに相互運用することもできます。そこで私たちは、Sunのシステムを使い2年の月日をかけてアプリケーションを構築している会社、またはSunとの契約を検討している段階の企業に会いに行って、NeXTなら90日ほどあればアプリケーションを構築できるという説明をしています。さて、あなたがウォール街で働いているとして。

NeXTなら90日でアプリケーションを1つ作ることができるのに、他社ではその1つのプロダクトに2年を要する。NeXTならば、その2年で8つのプロダクトを作ることができるわけです。これは、競合他社に対する優位性になります。

ハードウェアとソフトウェア

私たちが革新的なオブジェクト指向のソフトウェア「NeXTSTEP」を開発した時、私たちのターゲットである顧客は、Lotus、Adobe、WordPerfectなどパッケージ化されているアプリケーションのデベロッパーが王として君臨する、PCの世界からやってきた人々でした。私たちの目的は、このパッケージ化されているアプリケーションよりも5〜10倍の速さでアプリケーションを構築させることでした。そしてこの戦略は上手くいったのです。多くのパッケージ化されたアプリケーションが誕生し、それらのアプリケーションはほぼすべてのアプリケーションカテゴリのランキングに入っています。

でも、1991年の前半までは、このように上手くはいっていませんでした。1年ほど前、ある大手企業の担当者から、

Lotusよりも5〜10倍のスピードでアプリケーションを開発できるソフトウェアを持ちながら、君たちはその凄さを分かっていないと言われたのです。このソフトウェアを使用することによって、Lotusのアプリケーションが5〜10倍の速さで構築できるということは、社内で業務に必要なアプリケーションを5〜10倍の速さでつくることができる。これはかねてより私たち、そして全ての大企業、中規模サイズの企業が抱えていた大きな問題を解消してくれるものだ。そんな凄いものを持ちながら、その凄さを伝えられていない。

こう言われたのです。

これをきっかけに、私たちは全体の販売およびマーケティング戦略を見直し、集中させることで業績をロケットのように飛躍させることができました。昨年は今までの4倍、そして今年は恐らく約2倍に成長します。顧客リストもどんどん強力なものとなり、”クレイジー”な成長スピードを遂げています。今、私たちが話をする相手(顧客)というのは、まさに私たちがかねてより自分たちの顧客にすることを夢みていた相手なのです。

さて、これがいま私たちが取り組んでいることです。私たちの大敵であるSunは、私たちを潰しにかかるでしょう。彼らはそれをしてきません。いや、本来ならばもっと早くすべきだったのです。もうすでに遅すぎたと言えるでしょう。

重要なのは、ハードウェアには18ヶ月の周期があるということです。ハードウェアにおいて、サステイナブルな優位性を維持するというのは不可能と言ってもよいでしょう。運が良ければ、競合他社の1.5または2倍優れたものを作ることができるかもしれませんが、これを競争上の優位性とするには不十分です。ハードウェアの優位性は、6ヶ月持続すれば良いところですが、ソフトウェアはさらに長い期間の優位性を作ることができるのです。

これこそが、私達の戦略の根拠です。

私たちはソフトウェアだけの会社にならないのか?

私たちは、ソフトウェア会社であり、ハードウェア会社でもあるべきだと考えています。

私たちはNeXTSTEPを自社のプラットフォーム以外のプラットフォームに搭載することを決定するにあたり、NeXTSTEPのハードウェアは必ずしも一緒に販売する必要はないと決めていました。ただし、市場は成長していくので、私たちのハードウェアは今後もさらに売れていくことは間違いないでしょう。

もう一つ重要なのは、私たちのハードウェア部門としても最高のNeXTSTEPハードウェアを作ることこそが最も重要であるということです。私たちの作り出すハードウェアは一番安価なものではないかもしれませんが、それでも私たちは他では手に入らない最高のものをつくることができると考えています。もし、今後20〜25%のNeXTSTEPハードウェアしか売り上げることができなかったとしても、私はそれでもハードウェアビジネスが10億ドル以上のビジネスになると考えています。

いま私たちがどのようにコンピュータを販売しているかをみてみると、アメリカ国内に営業担当者がいて、130人の専門家たちがNeXTコンピュータを販売しています。彼らは、自分たちの仕事の90%の時間をNeXTSTEPソフトウェアの販売に、そして10%の時間をハードウェアの販売に使っています。言い換えると、お客様にソフトウェアを購入してもらうことができれば、ハードウェアも販売することができるということです。

過去数年間に渡ってコンピュータ業界の流通チャネルは、需要を生み出す力を失っています。需要を満たすことはできますが、作り出すことはできないのです。新製品が発売したときに、店でデモンストレーションができる店員を見つけることができたら、それだけで幸運ですよね?革新的な製品は、単に既存の商品に改善を加えたものではありません。既存のチャネルは需要を満たすことしかしていないため、行き詰まってしまうのです。

では、どのようにすれば市場にイノベーションをもたらすことができるのか。私たちが現在その方法を知ることができる唯一の手段は、営業部隊が顧客に対して製品を紹介し、その問題をどのように解決策と結びつけることができるのかを話すことだけなのです。

平均販売価格が500ドルのソフトウェアパッケージのみを販売する会社では、130名の専門家を雇い、ダイレクトセールスを行うことはできません。でも、平均販売価格が5,000ドルの会社なら可能です。だからこそ、私はこれ以上ソフトウェア企業が成功することはないと考えています。革命的な製品だとしても、平均単価が低ければ市場を育てるための資金を投入することはできないと思うのです。そして、革命的な製品を生み出せなければ、企業の成功もありません。

だから、私たちはソフトウェアビジネスを成功させるためにハードウェア企業でもあり続けるという戦略を取り、その両方が軌道に乗っているのです。

(パート2はこちら)

(編集と翻訳をしてくれたkobajenneに感謝)

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