創業者とマーケットの適合性

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2010年に開始したスタートアップ育成プログラム「Open Network Lab」は2012年11月に5期のDemo Dayを終えた。5期を通して25社以上の育成を行う中で、どの期にも必ず1社のスタートアップがプログラム期間中に自分たちに最適のアイディアを見つけ出し、エントリー時とは全く別のビジネスを展開している。

スタートアップが行うべきアイディアは、創業メンバーにとっての”最適なマーケット”と対応している。SV AngelのDavid Leeは、これを「founder/market fit」(創業者とマーケットの適合性)と呼び、市場に対する深い知識を持ち「創業者自身が製品、ビジネス、そして会社の象徴となる」ほどに、創業者とマーケットが適合していることは最も重要なことだと語っている。

また、Y CombinatorのPaul Graham曰く、良いスタートアップアイディアには3つの共通点がある。創業者が自ら求める製品を作ること、彼らにしか作れないものを作ること、作っているものが世の中にとって重要だという事を気づいている人が少ないこと、である。

創業者とマーケットの適合性を見いだしたスタートアップの成長の速度には毎度驚かされている。Open Network Labの投資先の中でトップ3の成長率を誇るスタートアップは、プログラムエントリー時のアイディアを捨て、彼らの適合するマーケットを1から見直しアイディア探し出したチーム達である。

ではどうしたら創業者とマーケットの適合性を見いだすことができるのだろうか。適合性とはターゲットユーザーとの会話とフィードバックの繰り返しで見つかることが多い。

僕は、適合性を探しているチームのメンタリングを行う際に重要視していることは主に3つある。

1. 創業者の過去の経歴は?

良いアイディアは創業者が前職などで気づいた非効率な体験や業務で気づいた事から出てくることが多いため、創業者自身の過去の経歴に注目している。

2. 社長が忙しい理由は何か?

Open Network Labのプログラムを行う中で、「スタートアップの成長率と社長の忙しさは比例する」ことに気づき、また数々のスタートアップを支援する中で”成長を続ける企業のターゲットとするマーケット”と、”社長が忙しい理由”には共通するパターンがあることに気づいた。例えば、成長を続けるコンシューマー向けのサービスは社長が自らコーディングしている事が多く、成長率の高いエンタープライズ向けのサービスは社長がビジネス経験が豊富であり、そして良いコマーススタートアップには分析能力の高いビジネスマンが率いている場合が多く見られる。コンシューマ向けのサービス展開をした投資先2社の社長は、コーディングを行わないビジネス経験豊富な方だったが、両社共にコンシューマ向けからエンタープライズ向けのサービスに転換した途端、それまでの不調とは裏腹に急激に会社の成長率が上がり社長達も一気に忙しくなっている。

3. 彼らのパッションは何か?

創業メンバーが毎晩眠れなくなるほどパッションを抱いている分野は何か。スタートアップは非常にハードで時間がかかるものであり、Steve Jobsも以下の動画で「愛していなければ失敗する」と述べている。

Open Network Labでは、3ヶ月のプログラムを終了する前に解散してしまうスタートアップも何社かあった。チーム解散の大抵の原因は、創業メンバーの間でパッションと目標が一致していないことが主な理由。メンバーが一人でも妥協してしまうと必ずスタートアップは解散の道をたどることになる。創業メンバーが同じだけのパッションを持っていることはとても重要なこと。

創業者とマーケットの適合性を探すことは、スタートアップのプロセスの中でも非常に重要なステップである。適合性を見つけずに次のステップに急ぐと数ヶ月、数年を無駄にすることに成りかねない。適合性を探せ!


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