参入障壁を生み出す「13種類のネットワーク効果」

本記事は、https://www.nfx.com/essays を要約したものです。著作者(James Currier)から転載の許可を得て掲載しています。
※一部説明を加えています。

PayPal、Microsoft、Facebook、Uber、Twitter、 Salesforce。どの企業も世界に大きなインパクトをもたらし、そして、大きな「価値」を持つ。

これらの会社に共通することとは何なのか。
それは、彼らが強力な「ネットワーク効果」を持っているということだ。

「ネットワーク効果」は、参入障壁を生み出すための4つの要素のうちの1つ。その他にも参入障壁を作るための要素として「ブランド」「スケール」そして「エンベッド(埋め込み)」があるが、「ネットワーク効果」は、特に強い影響を持つ。

ネットワーク効果とは、同じプラットフォームやサービスを利用するユーザが増加することによって、それ自体の効用や価値が高まる効果のこと。例えば、電子メールを使うユーザーが増えれば増えるほどメールを送信できる相手が増加し、メール自体の価値が高まる、というのも1つの例だ。

ネットワーク効果は、13のタイプに細かく分類することができ、それらは全て大きく5つのカテゴリーに属している。下図は、これら13のタイプをカテゴリー別に色分けしたもの。円の中心にある〈Physical (物理的)〉は、ネットワーク効果の中でも一番強い影響を持つ(参入障壁が一番高い)。円の外にいけばいく程、ネットワーク効果が弱くなる。

これから、ネットワーク効果が強い順に、それぞれのタイプを紹介していこう。

Physical (Direct)
上図で、青色にカテゴライズされているのは「Direct Network Effects」。
一番シンプル、且つ強いネットワーク効果で、プロダクトが利用されればされるほどユーザーに還元される価値が上がる。

フィジカル・ネットワークの分かりやすい例は、電話回線のネットワーク。電話をかける相手が1人しかいなければ「電話」自体に大きな価値は無いが、かけられる相手が増えれば増えるほどその価値は上がる。電話回線を引くという多額な先行投資こそ必要なものの、一旦整ってしまえばマーケットを独占できる程の強力なパワーを持つ。

例:道路、線路、水、電気やケーブルテレビなど。

Protocol (Direct)
プロトコル・ネットワークは、コミュニケーションや情報処理がスタンダード化され、誰でもそのプロトコルに沿ってネットワークを活用できる。

例:FaxやTCP/IP。最近ではビットコインや、イーサリアムなど

Personal Utility (Direct)
パーソナル・ユーティリティー・ネットワークには、主に2つの特徴がある。
まず、ユーザーのアイデンティティー(身元)がネットワークに紐づいていること。もう1つは、ビジネスや個人的な理由で、そのプロダクトまたはサービスが毎日利用されていること。主にコミュニケーションやコラボレーションの手段になることが多い。

例:Facebook Messenger、Slack、SkypeやSMSなど。

Personal (Direct)
パーソナル・ネットワークは、利用者の「アイデンティティー」と「評判」が紐づいているネットワーク。このネットワークを活用して自身の評判を築いている人が増えれば増えるほど、ネットワークに参加するインセンティブも増え、価値も上がる。

例:Facebook, LinkedIn, Twitterなど。

Market Network (Direct)
マーケット・ネットワークは、「アイデンティティー」と「コミュニケーション」の要素に「トランザクション(取引)」の要素が加わったネットワーク。
純粋な取引だけを目的としたマーケットプレイスのネットワークと違って、ワークフローやコラボレーションができるネットワークで、プロとしての評判を築くこともできるのが特徴。

例:Houzz、AngelList、HoneyBookなど。

Marketplace (2-Sided)
2-Sided(2面性)・ネットワークは、「需要サイド」と「供給サイド」という2種類のユーザーが存在するときに生まれる。例えばクラウドソーシングサービスでは、サービスを提供する側(供給)とサービスを受ける側(需要)の2種類のユーザーがいる。

例:eBay、Alibaba、Amazon Marketplace、Etsyなど。

Platform (2-Sided)
プラットフォーム型・ネットワークは、先ほど紹介したマーケットプレイス型とは異なり、供給サイドがプラットフォームに統合させるための開発を行う必要がある。つまり供給サイドは、技術者やプロダクトを開発している会社になる。

例:iOS、Microsoft、Nintendoなど。

Asymptotic Marketplace (2-Sided)
2面性のマーケットプレイス・ネットワークは、1つとして同じになることはない。特に大きく異なるのは、ネットワークへの参加者が増えたときの、「需要の価値」が上がるスピード。以下グラフを見ると、UberやLyftのような「Asymptotic(漸近的な)・マーケットプレイス」(赤色)よりも、eBay や Craigslist といったマーケットプレイス型・ネットワーク(オレンジ色)の価値の上がりかたの方が、早いことが分かる。

例えば Uber や Lyft は、運転手が増えれば増えるほど、乗客にとってのメリットは増える。その一方で、乗客が得られる価値は急激に減少する。
車が捕まるまで8分かかっていたものが、4分になるのは大きな違いを感じるかもしれないが、それが4分から2分に変わった場合はどうだろう?先ほどよりは、価値を感じなくなるだろう。特定のエリアに一定数の運転手や車が集まってしまえば、それ以上増えたとしてもユーザー体験自体はそこまで変わらなくなるのだ。

Data Network Effects
データ・ネットワークは、名前の通りデータが集まれば集まるほど、そのデータを元にユーザーに提供できる価値が上がるということ。
データのネットワーク効果は、人と人との繋がりから生まれるネットワーク効果よりも弱い。それは「Asymptotic(漸近的な)・マーケットプレイス」同様、一定の数を集めてしまえば、それ以上を集めても得られる価値が大きく上がらないからだ。

例:Google、食べログ、Wazeなど。

Tech Performance Network Effects
テックパフォーマンス・ネットワークとは、ネットワークに参加するユーザーが増えるほど、パフォーマンスも上がるというもの。
例えば、BitTorrent のような Peer-to-Peer でファイル共有をするネットワークは、その同じファイルを共有(Seed)しているユーザーが増えることで、ダウンロードのスピードが上がる。

例:BitTorrent、global VPN、Hola

Language (Social)
言語もネットワーク効果の1つだ。世界には、日本語より英語を話す人の方が10倍近く多く存在する。そこから、「英語」という言語によるネットワーク効果の強さの差が生まれる。

人は、何かを検索する時に「ググる」と言ったり、『仮想通貨』といえば真っ先に「ビットコイン」を思い浮かべる。このようにスタートアップは、言語の中に入り込むことによって、言葉のネットワーク効果を活用することができる。

例:英語、日本語、グーグル、ゼロックスなど。

Belief (Social)
宗教など多くの人が信じる概念には、信念のネットワーク効果が生まれる。
最近の事例として、ビットコインの価値を信じる人が増加したことで、ビットコインの価値が急激に上がるという現象が起きたことが挙げられるだろう。

例:ビットコイン、金、宗教など。

Bandwagon (Social)
最後に、Bandwagonは「仲間外れになりたくない」など人間が生きている中で感じる社会的なプレッシャーによってネットワークに参加したくなる効果。

例えば、テック業界でSlackを使ってない会社は、モダンなコミュニケーションを取り入れられていない印象を持たれてしまうことがある。

Appleも、彼らのブランディングやPR活動により「Apple製品を持つことで “クール” な集団の一員になれる」という社会的プレッシャーを生み出すネットワーク効果を構築することに成功している。

例:Apple、Slack、Githubなど。

以上が「13種類のネットワーク効果」だ。

それぞれのネットワーク効果には、特徴や強さの違いがある。自分が展開しているサービスやプロダクトにどういったネットワーク効果があるのか、そして、それを強化するためにはどうすれば良いのかを考えるための参考にして欲しい。

(edited by kobajenne

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難しい決断、楽な人生。楽な決断、難しい人生。


Photo by: U.S. Naval Forces Central Command

“Hard choices, easy life. Easy choices, hard life.”– Jerzy Gregorek.

重量挙げの世界チャンピョンに4度輝いたジェルジー・グレゴレックの名言。

今のうちに難しい決断をすれば人生は後から楽になるけれど、逆にいま楽な決断しかしなければ後に難しい人生を過ごすことになる。多くの人は、緊急度が高く決めやすい事から先に決断していく。でも、そもそも緊急度が高くなってから決断するということは、すでに厳しい状況に担っているまたは、すでに手遅れに近い状態になっていることが多い。そうならないために「考える時間」を作り、状況が難しくなる前に、緊急度が低いうちに、「難しい決断」をするよう心がけることが大切だ。

では、今のうちにできる難しい決断とは何か?

健康:たとえ健康診断の結果で指摘されても、自覚症状が無ければ誰もが後回しにしてしまう決断の一つ。「食べたい物を食べる、忙しいから運動はしない」など楽な決断をしてしまうと、後に大きな代償を払うことになるかもしれない。早めに健康を意識する決断をすれば、我慢の少ない楽な人生になる。

人間関係:〈自分〉という存在が「最も時を長く共にする5人の人間の平均」から作られるものと考えたら、周りに置くべきは『自分がもっと良くなれる影響をもたらしてくれる人』だ。自分の周りに、ポジティブな影響がない人がいるのなら、早めに関係を無くした方が良い。残酷に感じることでもあるし難しい決断になるかもしれないが、自分の成長に繋がる重要な決断だ。

経営の先手:プロダクト・マーケット・フィットを達成しているスタートアップにとっての次の難しい決断は、プロダクト戦略やチーム・組織構成になることが多い。
そんな時は3〜4年後、自分の会社をどのような形にしたいのかをイメージする。そのイメージに向かって達成すべきマイルストーンや、プロダクトの状態、売上構成、組織構成を考えることで、今のうちにできる「決断」を見極めることができる。

不都合な真実:比較的緊急度が低く、でも重要な事柄を決断するためにも、自分の状況を客観的に理解できるよう心がけるべき。「感情」の邪魔が入って、自分の事や事業について客観視できていないと感じた時は、メンターや株主を活用して、自分が避けてる〈不都合な真実〉から目を逸らさないよう努力して欲しい。

「緊急度が低く 重要度が高い 難しい決断」は、考える時間を要する。忙しくしている間は楽な決断の優先度を上げてしてしまいがちなので、週に1日〜2日は、予定を全く入れずに「考える時間」を積極的に作ってみる。後から少しでも楽な人生を過ごせるように、真実を求めて、早めに「難しい決断」をしよう。

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急成長する起業家のマインドセット


Photo by: Filip Stepien

起業家たちの成長スピードはそれぞれ違うし、決して同じになることはない。
そんな中、僕が支援している起業家の中で、いつの間にか僕が〈師匠〉や〈先生〉と仰いでしまうほど急成長する起業家がいる。この成長率の差に何か理由があるとしたら、それは、起業家の『マインドセット(考え方)』にあるのではないかと僕は思う。

今回は「事業の成長」という見方ではなくて「人としての成長」という面に重点をおいて、そのマインドセットの違いについて書いてみようと思う。

強みと弱み
成長率が高い起業家と低い起業家に生じる大きな差の一つは、自分自身の強みと弱みに対する意識の違いだ。
成長率が高い起業家は、自身の強みと弱みを深く理解していて、短所を隠さず周りに伝えることができる。そして自分の短所を補完できるような人を積極的に周りに置こうとする。常に周りからのフィードバックを求めて、自分の失敗や苦労をオープンに共有する。
以前、急成長している支援先の起業家に「株主や仲間をどういう基準で選んでいるのか」と聞いたところ、「この人を自分の周りに置くことで、会社はもちろんのこと自分自身も成長できるのか、を自分に問うようにしている」という回答が返ってきた。
色々な視点の意見を取り入れたり指摘に耳を傾けたりすることで、自分や会社に対する問題点を洗い出し、常に成長に繋げていこうとする。そういった高い意識がある。
逆に成長率が低い起業家は、自分の弱みを隠そうとする。自分や事業の状況をオープンにせず、仲間や株主など支援している側の人間からのフィードバックもあまり受け付けない。閉鎖的な状況を作り上げていく傾向がある。

成功と失敗
「成功」の定義の仕方と、「失敗」を経験した時の反応にも差がある。
成長率が高い起業家は、失敗を経験した時こそモチベーションをさらに上げて、同じ失敗を繰り返さないように素早くアクションを取る。先日も支援先の急成長起業家に、組織に関する問題を指摘したところ、彼らはすぐに改善に向けて行動を始めた。後日、ある程度時間が経過した後で再度組織を評価したところ、問題視していたポイントが見事に解消されていた。その一方で、成長率が低い起業家は、失敗を経験した時点でモチベーションが低下してしまい、真正面から問題に立ち向かうことができず、問題がいつまでも改善されない。

失敗だけじゃない。成功したときも同じだ。
成功を体験したとき、成長率の低い起業家は、目の前に出た結果の話だけをしようとする。でも成長率の高い起業家は、結果だけでなく、どういった施策や要因によって良い結果を導くことができたのか、「結果の出し方」に物凄いこだわりを持っている。もし、その結果の出し方に納得しなければ、逆に反省して、根拠をもって同じ結果を出せるようにアクションを取る。勝つことだけに執着するのではなく、「勝ち方」と「自身を成長させること」に高いモチベーションを持つ。

チャレンジ
難しいことや困難に直面したとき、ほとんどの人は思考を止めて逃げ出したくなる衝動に駆られるだろう。成長率が高い起業家は、そんな時こそ立ち止まらず、前へ前へと進もうとする。急成長している起業家からは、
「事例がなければ自分が事例を作る」
「成り立たないと言われていることだとしても、自分が成り立たせてみせる」
「不可能を絶対に可能にする」
という言葉を聞くことが多い。もしかするとチャレンジそのものを楽しんでるのかもしれない。

目線とモチベーション
急成長する起業家は、目線がどんどん上がっていく。目標の達成が近づいてきたら、もっと高い目標を目指し、それを繰り返していく。自分の限界にチャレンジし続ける。そして、その高いモチーベーションを維持し続ける秘訣は、決して金銭的なことではなく、社会に対するインパクトや、偉大な ”何か” を創造したいという強い想いにある。

これらが、これまでたくさんの起業家たちと出会ってきた中で僕が感じている『起業家のマインドセット』の違い。マインドセットは持って生まれたものではなく、自分を置く環境や日々の練習によって変えられるものだと思う。だから、自分を成長させるためのマインドセットに変えていくことは、今からでも十分可能だ。肝心なのは「自分をもっと良くしよう」を優先的に考える姿勢。その為には、エゴを捨てて弱みをさらけ出して、周りに頼ることも重要なのだと思う。

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VCとして、理想の自分


Photo by: Erik Drost

職人やアスリート、アーティストたちが最高の結果を導くための「理想の自分像」を持っているように、起業家やベンチャーキャピタリストも自分にとっての「理想な状態」のイメージがある。どんな職に就いていても、この「最高」の定義は統一することはできず、最高のレベルに達する道も一つではない。自分の性格や長所を活かしたプレイスタイルを見つけるのが肝だ。

僕にも自分が理想とする『ベンチャーキャピタリスト像』がある。
でも、この「理想」に近くまでには、まだまだ時間がかかると思っているし、最低でも10年、いや、最悪30年かけても達成できないかもしれない。実は今回のポストは、もともと自分のためのメモとして書き留めていたもの。でも、自分へのリマインダーとして、そしてコミットメントを共有する意味も兼ねてここに公開してみたいと思う。

感情コントロール:常に感情を安定させること。起業家はものすごいスピードで変化する環境の中で、様々な側面から発生する会社の課題を解決する。ハイな時は自分が〈無敵だ〉と感じ、ローな時にはこれは〈地獄か〉と感じる。まさに感情のローラーコースターに乗っている。ここで、起業家を支援するパートナーである僕が同じ状態になってはならない。どんな状況下にあっても感情をコントロールして、常に客観的なフィードバックをし、適切な対応ができる人間であるべきだ。

この感情のコントロールは、投資判断をする時にも重要だ。ベンチャーキャピタリストは起業家のビジョンやパッション、可能性を深く知ろうとする。その過程の中で、強いパッションの”伝染”や、大きな機会を見逃しているのではないかという恐れなど、色々な感情や想いが芽生える。でも、過度な楽観性や恐怖心は、結局良い投資判断に結びつくことはない。感情に振り回されないこと。

勇気:たとえどれだけ険しい道が待ち構えていようとも、自分が信じる起業家、そして事業をサポートし続ける勇気を持つこと。起業家たちに対する僕の信念が強ければ強いほど、僕は多くの時間、評判、そして資金を使う。リスクを背負う勇気を持つ。リスクを避けていては、僕が目指す最高のVCにはなれない。

「勇気」を持つべきは自分だけでなく、起業家も同じこと。僕は、ここでも起業家の勇気を引き出す助けをしていきたい。さらに大きな目標を立てる勇気、もっと早く行動する勇気、難しい決断をする勇気。起業家が偉大なゴールを達成するための ”もうひと押し” ができる人間である必要がある。

ポジティブ:僕と話をした後、その人の自信やエネルギー、野心、インスピレーションが増すような、周りの人にポジティブなインフルエンス(影響)を与えられる存在であること。
自分がポジティブなエネルギーを放出し続けるためにも、自分の健康とエネルギーは常に高く維持する努力が必要。そして、自分の周りにポジティブなエネルギーを持つ人を置く必要がある。

ハッスル:「僕」という存在を常に進化させるためには、僕自身がどれだけ努力し自分を成長させるかにかかっている。スマートに働くのは当然のこと。ハードにハッスルし続けなければ、理想の自分に近づくことはできない。諦めるな、常にハッスルしろ。

知的好奇心:知的好奇心は、ベンチャーキャピタリストにとって強い武器になる。業界、トレンド、テクノロジーについての情報をより多く吸収することによって、投資の精度も上がる。そして、経営に関するあらゆる経験とノウハウを築くことにより、一段と強力な起業家のサポーターになれる。マインドは常にフレッシュで、知的にハングリーであり続けることを忘れない。

信頼と透明性:人との強い絆を創るためには、強い信頼を得る必要がある。常に正直であること、フェアであること、そしてブレないこと。ペイ・フォワードを意識し、まずは ”GIVE” することを大事にする。

自分の経験と知識のレベルが上がるにつれ、世界中で活躍する偉大な人々と出会い、信頼を築けるようになる。

バイアスを無くす:過去に挑戦されて失敗したアイディアが、別の起業家、違うアプローチ、そして異なるタイミングで挑戦した結果大成功したケースはたくさん存在する。「一度失敗したから」を理由にアイディアを却下するべきではない。次の大きな機会を捕らえるためにもバイアスを無くし、今そこにある真実を追求し続けるべきだ。

ベンチャーキャピタリストとしての理想の自分像。上手く実践できていると思える点は少ない。実際のところ、ほとんどが「まだまだ」だ。冒頭でも述べたように、一流になる方法は一つではない。僕は、自分の長所と短所、自分の性格、そして自分が戦いたい方向からこのような考えを生み出している。これを読んでくれているみんなにも、「理想の自分」を文章にすることを試してみてほしい。そして、将来その理想が現実になるように、挑戦し続けてほしい。

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株主を最大限活用するコミュニケーション方法


Photo by: US Department of Education

支援先の起業家からよく相談される内容のひとつに、「株主との有効なコミュニケーションの取り方を教えて欲しい」というものがある。
せっかく投資を受け、会社に迎え入れた株主だ。彼らとの間で発生するコミュニケーションが、ただ単に事業の進捗を報告するだけでは勿体なさすぎる。そこで今回は、特に株主の数が多い状況下で効率良く、かつ効果的にコミュニケーションをとる方法について書くことにした。

株主ミーティング
全株主を集めて、定期的にミーティングを開催する。
株主が2〜3人程であれば、月に一度または、2ヶ月に一度の1 on 1を実施する方が効率的にコミュニケーションを取れるが、5人以上の株主となると「株主ミーティング」を開催した方が双方にとってメリットが多い。このミーティングを開催する上でのポイントは以下:

  1. 株主全員に会社の状況を知ってもらう事はもちろん重要だが、一番の目的は課題を洗い出して解決策について議論すること。いろんな視点を混ぜて経営軍が見落としている課題や、今のうちに考えるべきことを見つけて、株主の知見とネットワークを活用して解決策について話し合う。
  2. 1 on 1でのフォローアップは重要だ。人数が多い株主ミーティングの中で、全ての結論や解決策を見出す必要はない。ミーティングの中で、特定のトピックについて強い意見を持つ株主や、持っている課題の解決のためにサポートしてくれそうな株主がいれば、後でじっくりと1 on 1でフォローアップする場を持つと良い。
  3. グループでミーティングをしているその場で、重要な決定事項を決めないこと。重要度の高い決議事項があるのであれば、株主と1 on 1で話をして、それぞれのスタンスや考えを確認した上で、その情報を消化する時間を設ける。より良い判断をするには、考える〈時間〉を持つことが大切だ。
  4. 事業の状況報告に費やす時間は最小限に止めること。事業の進捗やKPIの達成報告にあまり時間をかけず、なるべく議論の時間を多めにとった方が良い。ミーティングの時間が90分間なのであれば、報告に使う時間は15分以下に収める。できればミーティングの2日前には使う予定の資料を株主に共有し、事前に目を通してもらうと良い。報告の時間をできる限り短縮し、効率の良い有意義なミーティングを実施できるよう努力すべき。
  5. 株主ミーティングは、基本的に経営者が必要と感じる頻度・タイミングで行えば良い。ちなみに僕は、2ヶ月に一度ぐらいがちょうど良いと思っている。
  6. ミーティング最中の質問が少なければ、経営者はホッとするかもしれない。でも、経営者の考えに ”挑戦” されて様々な議論が発生する方が、ミーティングの目的を果たしていると思う。
  7. 取締役会と株主ミーティングは、切り分けて考えるべき。会社法上の事項や社内の規定に関する内容の決定は取締役会で行う。株主ミーティングは、起業家が株主を「活用する」ことを目的として実施すると良い。

メールでの報告
株主ミーティングを実施する代わりに、メールやFacebookグループを活用してコミュニケーションを取る起業家も多い。この場合の効果的なコミュニケーションをとるためのポイントは以下:

  1. 事業の重要KPI
    月次、四半期、そして年度の成長率が分かるように記載する
  2. 財務状況
    特にあと何ヶ月存続するできるかを含めて書くこと
  3. 上手くいったこと、上手くいかなかったこと
    マーケティング施策、マネジメントの施策などをまとめる
  4. プロダクト進捗
    新機能のリリースやその効果、今後の開発予定など
  5. 課題、悩んでることや助けてほしいこと
    事業戦略や採用計画など、なるべく詳細に伝える
  6. その他重要な動き

上記の要素を含めることで、より現在の状況やニーズを明確に理解することができ、株主はアドバイスをしやすくなる。また、株主ミーティングと同様で、特定のトピックスで意見を持っている株主がいれば、1 on 1のフォローアップを行うことが重要。

これらが、株主と効率的かつ効果的にコミュニケーションを取るためのポイントだ。経営者と株主がダイナミックに良い連携を取ることができれば、事業に大きなポジティブ・インパクトを与えられる可能性がある。ぜひ、株主を ”使い倒し” て欲しい。

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SaaSの40%ルール。SaaS企業はどこまで赤字を出して良いのか?


Photo by: Arek

たくさんのB2B SaaS企業の決算公告や決算資料を見ていると、多くの企業が赤字を出していることが分かる。これは、シェア拡大や成長のための投資なのか?それとも、厳しい状況下で苦労しているのか?
今回は、B2B SaaS企業の赤字の許容範囲はどこまでなのか、その指標について書くことにした。

SaaSの40%ルール
北米SaaS VCの間では「40%ルール」というワードがよく登場する。
このルールに従って許容範囲の指標を求めようとすると:

40% = MRR年度成長率 + 営業利益率

*MRR = 月間定額収益

という方程式が成り立ち、この方程式に数字を当てはめてみると:

・MRR年度成長率が100%・・・営業利益率が(-)60%までは許容範囲内
・MRR年度成長率が40% ・・・営業利益率が0%以上である必要あり
・MRR年度成長率が20% ・・・営業利益率が20%以上である必要あり

でも、このルールはアーリーステージのスタートアップには適応できない。適応すべきタイミングは人によって意見が異なるのだが、年度売上50億円程度から適応すべきだと言われることが多い(参考記事 12)。

参考までに、米VC RedpointのTomaz Tunguzが作った以下のグラフを見てみよう。これは、北米のSaaS上場企業の売上成長率と営業利益率を足した数値(以下 GP Ratio)の中央値をグラフ化したものだ。Y軸がGP Ratio、X軸は会社設立から経過した年数。グレーの太線はGP Ratio 40%のライン。

上グラフを見ると、他社との比較やビジネスの状況を把握するために「40%ルール」を使うべきタイミングは、会社設立後6年程度経ったところからであると言える。

ただこれは、あくまでも北米のSaaSスタートアップの数字を基に算出した方程式。北米はSaaS企業同士の競争が日本より激しい。マーケティングコストも比較的高く、また、特にシリコンバレーでは家賃や給料も非常に高いので全体コストが膨れ上がる。そのためこの結果をそのまま日本に当てはめることは難しいだろう。

実際、日本のサンプルサイズはまだ少ないのだが、MRRが1億円を超えてるB2B SaaS企業の年間売上成長率と営業利益率を足すと、60%を超えているケースが多数存在する。日本国内のSaaS企業がさらに増加することで、近い将来、適正な指標がハッキリしてくるだろう。

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資金調達のファーストステップ。考えるべき事、理解するべき事、そしてやるべき事。


Photo by: David McDermott

僕に問い合わせをしてきてくれる起業家のフェーズは様々だ。でもその中でも特に多いのが、これから初めての資金調達を行う起業家からの相談。
そこで今回は、初めての資金調達をする時に考えるべきこと、理解するべきこと、そしてやるべきこと、についてまとめてみた。

いくら必要なのか?
まずは、いくら必要なのかを考える。「当たり前だろう」と思うかもしれないが、実はこの問いの答えの出し方に悩む起業家も多い。
理想は12ヶ月 〜 15ヶ月の間事業に専念できるだけの資金を確保することだが、特に、まだプロダクトやプロトタイプがなかったり、チームにエンジニアがいなかったりすると12ヶ月分の資金を確保するハードルはかなり高くなる。その場合は、チームとプロダクトができるまで調達することを一旦待つか、集める金額を下げて調整する必要がある。

VCから調達するべきか?
VCは、M&AやIPOといったエグジットを期待し、求めてくる。だから、どんなエグジットをイメージしているのか、そして、最終的にどの程度の事業規模を目指しているのか、自分の中で明確なビジョンを持つこと。10〜30億円のM&Aエグジット見込みでも投資を実行するVCもいれば、300億円以上でのIPOの可能性をイメージできないと投資を行わないVCもいる。このようにVCによってそれぞれ期待値が異なるため、彼らと自分との期待値が合致しているのかを確認する必要がある。(参考記事:VCが期待する投資リターン

VCのスイートスポットとレンジ
VCには、それぞれ異なる〈スイートスポット〉と〈レンジ〉がある。1500万円の出資によって、株式の保有比率を15%確保したいVCもいれば、1億円の出資で保有比率が1%でも投資を実行するVCもいる。これは、ファンド規模や投資戦略によって変わるため、VCに会うときに1社に対する出資額と保有比率の目安を聞いてみると良い。これによって、彼らのスイートスポットを探ることができる。
僕のスイートスポットは、2500万円の出資で株式10%の保有だが、レンジは大きい。1億円万円以上を出資して、より低い比率を保有したこともあれば、1000万円を出資してもっと高い比率を保有したこともある。事業の進捗やチームの強さ、説得力や成功する可能性の度合いをによって出資額と保有比率が変わってくる。VCのスイートスポットとレンジを把握することによって、そのVCが調達元の対象になるか否かの判断ができるだろう。

企業価値と外部放出率
シード期スタートアップの企業評価方法には、正直あまり根拠がない。その理由は、たいていの場合、評価する数字や実績がほとんどないからだ。VCの投資戦略や、他の支援先の当時の状態と比較して、チームの強さ、事業の進捗具合を全て考慮して「感覚」で決めてる場合が多い。
僕の感覚では、株式の外部放出を20%以下に抑えて12〜15ヶ月分の資金を調達できる程度がフェアだと思っている。それが15%に抑えることができれば起業家にとってさらに好条件となり、10%以下ともなれば、起業家にとって有利なものとなる。

相性と感情
シード期の起業家が意外と誤解していること。それは資金調達に必要な要素が「その事業がただ儲かるかどうか」だと思われていること。実際は、VCによるシード期の投資判断において「ただ儲かる」だけでは十分な判断材料にならない。起業家との相性や、ミッションへの共感、”ワクワク” するのかなど、感情的な要素も多いのだ(参考記事:VCやエンジェルを興奮させる要素)。

そして一方的ではなく、起業家からも「相性が良い、信頼できる」と感じてもらえることが重要だ(参考記事:スタートアップのファーストラウンド)。

起業家と5人話す
最低でも5人くらいのシードファイナンスを行ったことのある起業家と話をしてみることを勧める。その人達に今までの自分の経験や体験談、良いと思ったVC、逆に少し疑問や迷いを感じたVCについての話をピッチしてみて、フィードバックを求めてみると良い。

連絡方法
VCへの連絡の取り方で一番確実なのは、そのVCが支援している起業家からの紹介。ほぼ100%の確率で会えるはずだ。ただ、シード期に投資を行っているVCは、TwitterのDMやFacebookでも繋がることができたり、定期的に相談会を開いているVCも多数いるので、比較的会う機会を得やすいと思う。

その他以下の記事も参考にしてみて欲しい:

以上が、VCからシードラウンドを集める時のファーストステップ。これはあくまでもシード期に特化したVCの話で、エンジェル投資家、シードアクセラレーター、そしてシリーズA以降に投資するVCは、また違う投資基準や投資戦略を持っているので注意が必要だ。

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VCやエンジェルを興奮させる要素


Photo by: Josh Janssen

実績も少なく特段アピールできる数字もない、成功よりも失敗する理由の方が多く挙げられるシード・アーリーステージのスタートアップへの投資を決めるにあたっては、〈感情〉が大きなファクターになる。

起業家と話した後、どれだけ自分が「ワクワク」したか。

僕は、どれだけ事業計画がよく出来ていても、理論上 ”儲かる” と思ったとしても、自分が最後に「ワクワク」を感じなければ、ほとんどのケースで投資は実行しない。今回は、この「ワクワクの要素」を分解してみようと思う。

僕がスタートアップに対して「ワクワク」する3つの時。

1.「機会」にワクワクする:
スタートアップが解決しようとしている課題に強い共感を感じたり、「自分も欲しい」と思えるサービスに出会った時。
投資家にピッチする時は、この「共感」を得られるまで、「機会」についてじっくり話し込んで欲しい。できる限り相手がイメージしやすいように、その課題を持つ人物のストーリーを描くように、シナリオを持って説明すると良い。
そして、「機会」の大きさを理解してもらうことも重要だ。どれだけプロダクトや数値に自信があったとしても、それだけではなく、「機会」に対する共感を得てもらえるよう徹底した方が良い。

2.「チーム」にワクワクする:
そのチームが狙っている機会に対して「このチームだったら絶対に勝てるだろう」と思った時。この「絶対に負けない」要素は、誰よりも強いパッションを持っているか、そして誰よりも早く実行に移す力を持っているのか、がキーとなる。

パッションの強さ

  • ユーザー目線でこだわり抜いたプロダクト設計になっているかどうか
  • 業界についてどこまで詳しく知り尽くしているかどうか

この2つの点が重要。

実行に移す力

  • 自分たちの戦略がどこまで解像度高く見えているのか
  • 進捗にスピード感を感じられるのか
  • そして良い人材が集まっているのか

この3つのポイントによって示すことができる。

3.「ビジョン」にワクワクする:
起業家が目指す世界を実現するために、積極的に関わり支援したいと思えた時。起業家と同じ夢を実現させたいと思う気持ちの強さは、個人差もあるし相性にもよるが、そんな中で僕が特に重要視しているのは、ユーザーはもちろんのこと、プラットフォームに関わるプレイヤー全員が〈勝者〉になれるのか、誰か一部の人間が搾取されるようなことはないのか、だ。すなわち、「このサービス・プロダクトによって世界が良くなるのか」。ここが一番大事だと思っている。

伝染とエネルギー

「ワクワク」する気持ちは伝染すると思う。
だからまず、起業家自身が心の底から自分がやっていることに「ワクワク」して欲しい。もちろん、人間走り続ければ、気持ちが薄まることもある。そんな時には、ユーザーと話したり、他の起業家と話したりすることで、自分で自分をインスパイアする。

そして、エネルギーに溢れることも重要だ。疲れている時、他人に「ワクワク」を伝染させるのは難しい。運動をしたり、自分の周りをポジティブなエネルギーを持っている人で囲んでみたり、時には休んでみたりして、エネルギーを溜めていく必要がある。

他人をワクワクさせることは、VCやエンジェルだけでなく社員やパートナーとの間でも大事なことで、採用活動にも活かすことができるはずだ。

「自分は、他人をワクワクさせているか?』を常に意識してみて欲しい。

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暗号通貨で35億円調達!?ICOの可能性、そしてVCの仕事は無くなるのか?


仮想通貨「イーサリアム」の共同創業者 Photo by: Duncan Rawlinson

今月頭、ウェブブラウザを開発する企業 Brave が、暗号通貨の売却を通じて資金を調達する「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」によって、3500万ドルをたった30秒で調達したことが話題になった(参照ソース元)。

そこで今回はICOの可能性、そしてICOがVC業界にもたらすであろう影響について書くことにした。

ICOとは何か?
ICOとは、プロダクトやサービスまたは企業が、独自のトークンやコイン(仮想通貨)を発行して暗号通貨取引所に上場、資金調達を行うプロセスである。ベンチャーファイナンスやIPO等で、株式を発行し、それを購入してもらうことで資金調達をするのと似たプロセスだ。

トークンの可能性
トークンは誰でも発行することができ、誰でも買うことができる。そしてこのトークンは、ビットコインや他の仮想通貨と同様、需要と供給によって価値が変動する。これらの特徴によって、新たなビジネスモデルやサービスの設計が可能になる。

例えば、ユーザーがコンテンツを生み出すCGM系サービスやコミュニティーサービスの運営企業の場合、ネットワークに貢献しているユーザーがトークンを受け取れるよう設計したり、早い段階でそのネットワークに参加した〈アーリーアダプター〉に、ICO時にトークンを購入させたりすることができる。このトークンは、暗号通貨取引所で売却したり、別の仮想通貨と交換することも可能だ。

ネットワーク需要やユーザーが増えれば増えるほど、そのネットワークの「トークンの価値」が上がる。
つまりトークンを所有するユーザーにとって、そのネットワークに貢献することが大きなインセンティブに繋がる。トークンによって一般ユーザは、ベンチャー投資家と似たようなインセンティブを得ることができるわけだ。

ICOブーム
ICOによる資金調達額は、2016年の時点で、すでに100億円を超える額だったが(参照ソース元)、ここ3ヶ月をみると、なんと300億円を超える規模に拡大しているのだ。(参照ソース元)。下図は、毎月行われているICOの件数を表している。


(参考ソース元:TechCrunch)

VC業界への影響
ICOへの参加に関して、現時点では細かい規制(ルール)が存在しない。そのため、トークンを購入するユーザー側のリスクが非常に高く、様々な問題や限界が顕在している。「完璧なシステム」と呼ぶにはほど遠く、どんなスタートアップでもICOで資金調達をするという時代がすぐに来るとは考えにくい。でも、仮にICOを通じた資金調達が主流になった場合、VC業界にどんな影響を与えるのだろうか?

  1. 価値提供のシフト
    〈リスクマネー〉を提供できるベンチャーキャピタルには、今後も一定の価値が存在し続けると思う。しかし、ICOによってこの〈リスクマネー〉へのアクセスが多少なりとも容易化すれば、企業はベンチャーキャピタリストに対し、資金提供以上の価値提供を求めるようになる。起業家をサポートする力やその他事業を成長させるための「サービス」を提供できるようにならないといけない。これら資金提供以外の価値を提供できないVCは、ICOによって置き換えられてしまう日が訪れるだろう。
  2. VCのビジネスモデルが変わる
    ベンチャーキャピタルは、投資実行からエグジットまで大体7年〜10年がかかる。しかし、投資した対価として得るものが「株式」ではなく「トークン」であれば、流動性が高まる。近い将来、株式をトークンに転換するという条項が投資契約の内容に組み込まれるようになるかもしれない。これによってVCのリスク・リターンの考え方、エグジットのタイミング、ファンド資金の集め方、そしてビジネスモデルそのものが変わるかもしれない。
  3. 新しいタイプの投資家が生まれる
    ICOの普及によって起業家が重要視し始めるのは、トークンの発行後、そのネットワークに人を呼び込む力や、ネットワーク自体の価値を高めるスキルだ。つまりアーリーアダプターであることや、インフルエンサーであること自体が一つの〈価値〉となり、結果、トークンの価値を向上させることを専門とする新しいタイプの投資家が生まれるかもしれない。

VCの仕事は無くなるのか?
どれだけ資金アクセスが簡単になって、お金のコモディティー化が加速しても、ベンチャーキャピタリストの仕事がなくなることは無いと思う。事業をつくるために必要な戦略、採用、マネージメント、プロダクト、パートナーシップ、カウンセリングなど多面の支援ができる「プロフェッショナル」としての需要は残るからだ。

参考記事:完璧である必要はない。ベンチャーキャピタリストによる起業家支援。

そして、トークンによって誰もが短期的にいつでも売買できるような時代になるからこそ、長期的に良い場面でも悪い場面でも逃げない、信頼できる良いパートナーを持つことの需要が高まるはずだ。

ICOの動きはまだ始まったばかり。まだまだ未熟な状態だ。これからどうなっていくのか、予想することは難しい。でも、これが主流になれば新しいチャンスがたくさん生まれることは間違いないだろう。

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起業家とVCでは「ゲーム」が違う


Peter Miller

起業家とVCの違いについてよく聞かれることがある。表面上は似たようなキャリアパスに見えるかもしれないが、実は共通点よりも違いの方が多いのだ。

考える vs. 決断する

VCと起業家では、まず時間の使い方と決断の数が全く異なる。起業家はプロダクト、採用、戦略、マネージメント、資金の使い方など、日々決断して実行に移していく必要がある。この一つ一つの決断の積み重ねが大きく結果に繋がる。
一方、VCは出会ったスタートアップについて、市場について、支援先についてなど、考える時間や起業家と議論をすることに多くの時間を費やす。決断する数は起業家に比べて少なく、VCにとって一番重要な決断は「どのスタートアップに投資するか」になる。

フィードバック

決断から結果が現れるまでの期間の長さも違う。起業家は、会社を動かしていく中で決断したことが数日、数週間で結果として現れる。一方VCは、投資を決めてから、その判断が良い判断だったのかどうかかが見えてくるのは1〜2年後。そして、実際結果(イグジット)として現れるのは、5〜10年程度は先となる。

アクティブ vs パッシブ

起業家は会社の中の様々なオペレーションにアクティブに関わるのでテンポが早い環境にいる。一方VCは10~30社ほどのポートフォリオを組むので常に支援先のオペレーションにアクティブに関わることができない。ほとんどはパッシブに関わっていて、重要だと思ったタイミングでアクティブに関わる場面が時々ある。

コントロール

会社経営に対するコントロールの差もある。起業家は、ほとんどの事柄を自ら決めることができる。VCがその権利を一部持ってはいるものの、仮に意見が噛み合わなかったとして、経営者が信じないことを無理矢理やらせるのは難しい。
VCは起業家に近い立場にいることから、影響力はあっても、会社を直接コントロールすることは少ない。

リスク vs リターン

起業家が、VCよりリスクを背負っているのは当然のこと。起業家は自分の会社に対して全ての力を注ぐのに対して、VCは、10〜30社にリスクを分散させる。でもその代わり、リターンにも差が出てくる。

とあるスタートアップで起業家とVCが、その会社の株を同じ25%ずつ保有しているという仮のシナリオがあるとしよう。そのスタートアップが100億円で買収されると、起業家には直接25億円が入ってくる。一方VCの場合、この25億のリターンが運用しているファンドに入る。

VCは、多くのパートナーから資金を集めて運用していることが多く、大体は売却益の20%を成果報酬(「キャリー」)として受け取る。もし、そのVCが50億円のファンドを運用していたら、25億円を受け取れるまでには、前述のようなエグジットをあと6回は実現させないといけない。

計算式:(7社 x 25億円 – 50億円の投資元本)x 20%成果報酬 = 25億円

起業家とVCでは「ゲーム」がまったく違う。だから元起業家がVCになって、すぐにまた起業家に戻るケースも多く見られるし、元起業家だからと言って、優秀なVCになれる訳でもない。
「VCとして成功するために、起業家としての成功は必要なのか?」も合わせて読んでみてほしい

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