変化が激しい困難な時期のなか、想定以上に様々なハードルやチャレンジに直面しているというSaaS企業も多いだろう。この状況下でSaaS企業はどういった判断軸で行動するべきなのか。
僕は、今のARRを最大化することよりも未来のARRを最大化することを最優先にすべきだと思っている。今回の記事では、カスタマーサクセス、営業、そして戦略の3つの側面で「未来のARRを最大化すること」の考え方について書くことにした。
カスタマーサクセス
今までプロダクトを提供している中で、ダウングレードされたり解約されたりすることが少なかったSaaS企業の多くは、ダウングレードや解約に関して、あまり柔軟性のある規約を定めていないだろう。例えば、ダウングレードは契約更新時のみしかできない、解約すると今まで溜めてきたデータを消去するなどの決まりを定めているところが多い。
でも、困難な時期ほどカスタマーロイヤリティを大事にしていきたい。
利用率が低い顧客が簡単にダウングレードできる仕組みを提供したり、解約の申し出があればデータを消去せずに一定期間アカウントを休眠させられる等のオプションを提供し、将来その顧客が戻ってきやすい状態を作ったり、それぞれの企業にとっての〈より本質的なカスタマーサクセスの姿〉を考えてみると良いだろう。
顧客の利用率が通常の数字に回復し、休眠状態から戻ってこられる状態になった時には、元々の単価に戻ってもらえるようなプライシングにすることも重要だ。
柔軟性の低い硬めのルールは、短期的に収益性を高めるかもしれないが、それはカスタマーロイヤリティを犠牲にしてしまう。ロイヤリティを優先した対応は、将来のARRを最大化する可能性がある。
営業
従来よりもさらに業務効率化や自動化のニーズが高まっているが、業界によってはSaaSにかける予算が厳しくなっているところもある。
困難な状況下にある顧客を対象に、導入のハードルを下げられる方法はあるのか。例えば、最初はより手軽なプランでスタートし、業界の回復と共に顧客が成功したところで、SaaSから実際に得られている価値に比例する形でARRを上げるプランを用意できるか。
向かい風が吹いている状態の顧客に対しては、今のARRを最大化するよりも、実績を積み上げてマインドシェアをより大きく得ることに注力し、将来のARRを最大化させることの方が大切だ。
ここで、整合性のあるプライシングがより重要になる。顧客の成功や成長と共にARRが上がるプライシングでなくてはならない。
戦略
顧客の頭の中の「優先順位」が、変わってきている。SaaS企業がこの変化に対応して、厳しい状況が長期化しても売れるプロダクトにすることは、もちろん大事なこと。でも同時に、3年後、5年後にもプロダクトが生き残り、伸び続ける需要を捉えることも重要だ。
今の状況が落ち着いたら、元に戻るものは何か。逆に元に戻らないものは何か。そして、これをきっかけに変わり、社会に新たに定着していくものは何なのか。
顧客の頭の中の優先順位は、今と未来では変わるだろう。さらなる成長のためにも、将来有意なポジショニングが取れるプロダクトとマーケティング戦略を考えよう。
SaaSは、顧客がより進化できるような「インフラ」になるのがミッションだ。そのためにも、顧客と寄り添い、本質的なセールスとカスタマーサクセスが必要だと思う。未来のポテンシャルを最大化させる考えを持つことは、その実現に近づくための強い一歩になると僕は信じている。
(編集してくれたkobajenneに感謝)
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