必要なのは、今まで以上の「共感力」。不況下におけるSaaS企業のマーケティングフレームワーク。

マーケットが変化すると、顧客の頭の中の優先順位が変わる。SaaS企業は、この変化に適応しなくてはならない。では、SaaS企業がどのように顧客をセグメント化し、それぞれのセグメントに対しての戦略を立てるべきなのか。

顧客セグメント

フレームワークを紹介する前に、顧客のセグメント化とサービスのカテゴリーについて説明しよう。まずマーケットが大きく変化したとき、大きく分けて4つのセグメントに顧客をカテゴライズすることができる。

急ブレーキ:
大きな打撃を受け、売上も急激に減少しているセグメント。または、会社自体がすでに存続危機に陥っているセグメント。

向かい風:
ダメージ具合は軽症で、多少なりとも売上にインパクトが出ている。しかし、会社や事業は継続させられる可能性が高いセグメント。

変化無し:
シフト前と後で、特にマーケットに大きな変化は起きていないが、過去と比べてコスト意識が高まっているセグメント。

追い風:
マーケットシフトによって、需要と売上がさらに伸びているセグメント。

サービスの優先順位

企業が導入するサービスは、4つのカテゴリーに分けることができる。

エッセンシャル:
事業や仕事を進めるために、必要不可欠なサービス。

正当化可能:
ROI(投資対効果)によっては、導入を正当化できるサービス。

延期可能:
導入するメリットはあるが、導入タイミングは調整することができるサービス。

重要でない:
導入の正当化が難しいサービス。

不況時のマーケティングフレームワーク

不況時、顧客セグメントごとに各サービスカテゴリへのニーズがどう変化するのかを表したのが、下の表だ。

このフレームワークは、ハーバード・ビジネス・スクールのJohn Quelch氏が、不況時に起こる消費者の消費行動の変化を分析し作られた表を基に、これをB2Bの世界に応用してみたものだ。

(画像をクリックすると拡大します。)

グリーンゾーンに入ってるSaaSは、不況に陥ってもニーズが比較的安定している。イエローゾーンは、導入のハードル自体は通常よりも高くなってしまっているゾーン。そして、レッドゾーンが、導入検討さえも難しくなっているゾーンになる。

ゾーン別のアクション

それぞれのゾーン別に、実行すべきアクションや考えるべきこと。

グリーンゾーン引き続き、顧客はより良いソリューションを求めているゾーンになるので継続的に「認知」を取りに行くこと。そして同時に、安心、安全、そして信頼度を向上させるブランド力も重要だ。急ブレーキや、向かい風に打たれている顧客セグメントは予算取りが厳しくなっているので、プライシングの工夫などで導入のハードルを下げることも検討すると良いだろう。

イエローゾーン導入の緊急性を高められるかどうかがキーになる。ROIを今まで以上に分かりやすくすること。そして顧客に対し、導入を延期をすることで生じるであろう機会損失などを訴求する。顧客にとって、より『エッセンシャルなサービス』になれるよう、プロダクトやカスタマーサクセス、セールス、そしてマーケティングとも積極的に連携すべきだ。

レッドゾーンこのゾーンに入るSaaSは、根本から戦略を考え直す必要がある。景気の良い時だけにしか売れないSaaSではなく、不況下でも売れる状態に変わることが望ましい。高いROI生み出し、業務効率の向上が目に見えて実感できるようにするにはどうすれば良いのか。顧客から見て、より『エッセンシャルなサービス』になるためのポジショニングを獲得するための施策を、今一度練り直す必要があるだろう。

いつも以上に共感力が必要

顧客一人一人がどういう状況の中にいるのか。何に一番困っていて、何を優先的に進めているのか。SaaS企業は、顧客の状態を常に把握すること。そして、パーソナライズされた、より共感できるメッセージを持ち続けることが重要だ。

そしてそのメッセージは、プロダクト、マーケティング、カスタマーサクセス、そしてセールスを通して一貫性を持って伝えていくべき。ここで求められるのは、各部隊の連携力だ。

このフレームワークを、現状分析やプランニング時に活用してみてほしい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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SaaSは、今こそ「未来のARRを最大化すること」を優先すべき

変化が激しい困難な時期のなか、想定以上に様々なハードルやチャレンジに直面しているというSaaS企業も多いだろう。この状況下でSaaS企業はどういった判断軸で行動するべきなのか。

僕は、今のARRを最大化することよりも未来のARRを最大化することを最優先にすべきだと思っている。今回の記事では、カスタマーサクセス、営業、そして戦略の3つの側面で「未来のARRを最大化すること」の考え方について書くことにした。

カスタマーサクセス

今までプロダクトを提供している中で、ダウングレードされたり解約されたりすることが少なかったSaaS企業の多くは、ダウングレードや解約に関して、あまり柔軟性のある規約を定めていないだろう。例えば、ダウングレードは契約更新時のみしかできない、解約すると今まで溜めてきたデータを消去するなどの決まりを定めているところが多い。

でも、困難な時期ほどカスタマーロイヤリティを大事にしていきたい。

利用率が低い顧客が簡単にダウングレードできる仕組みを提供したり、解約の申し出があればデータを消去せずに一定期間アカウントを休眠させられる等のオプションを提供し、将来その顧客が戻ってきやすい状態を作ったり、それぞれの企業にとっての〈より本質的なカスタマーサクセスの姿〉を考えてみると良いだろう。

顧客の利用率が通常の数字に回復し、休眠状態から戻ってこられる状態になった時には、元々の単価に戻ってもらえるようなプライシングにすることも重要だ。

柔軟性の低い硬めのルールは、短期的に収益性を高めるかもしれないが、それはカスタマーロイヤリティを犠牲にしてしまう。ロイヤリティを優先した対応は、将来のARRを最大化する可能性がある。

営業

従来よりもさらに業務効率化や自動化のニーズが高まっているが、業界によってはSaaSにかける予算が厳しくなっているところもある。

困難な状況下にある顧客を対象に、導入のハードルを下げられる方法はあるのか。例えば、最初はより手軽なプランでスタートし、業界の回復と共に顧客が成功したところで、SaaSから実際に得られている価値に比例する形でARRを上げるプランを用意できるか。

向かい風が吹いている状態の顧客に対しては、今のARRを最大化するよりも、実績を積み上げてマインドシェアをより大きく得ることに注力し、将来のARRを最大化させることの方が大切だ。

ここで、整合性のあるプライシングがより重要になる。顧客の成功や成長と共にARRが上がるプライシングでなくてはならない。

戦略

顧客の頭の中の「優先順位」が、変わってきている。SaaS企業がこの変化に対応して、厳しい状況が長期化しても売れるプロダクトにすることは、もちろん大事なこと。でも同時に、3年後、5年後にもプロダクトが生き残り、伸び続ける需要を捉えることも重要だ。

今の状況が落ち着いたら、元に戻るものは何か。逆に元に戻らないものは何か。そして、これをきっかけに変わり、社会に新たに定着していくものは何なのか。

顧客の頭の中の優先順位は、今と未来では変わるだろう。さらなる成長のためにも、将来有意なポジショニングが取れるプロダクトとマーケティング戦略を考えよう。

SaaSは、顧客がより進化できるような「インフラ」になるのがミッションだ。そのためにも、顧客と寄り添い、本質的なセールスとカスタマーサクセスが必要だと思う。未来のポテンシャルを最大化させる考えを持つことは、その実現に近づくための強い一歩になると僕は信じている。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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SaaS業界のコロナ「ショック」とコロナ「チャンス」

リモートワークへの切り替え、自粛要請、マクロ経済の低下。コロナウイルスによって様々な変化やが起きている。今回は動画形式で、現状コロナによってSaaS業界にどんな影響が出ているのか、そして逆にどんな機会があるのかについて発信したいと思う。

特にSaaS経営者が今やるべき事とは、そして今後に向けて今のうちから考えておくべき事とは何か。僕の考えを話しているので、是非観て聴いてみてもらえたらと思う。

【ハイライト】

  • 2008年〜2009年、リーマンショック時のSaaSについて
  • コロナショックが今のSaaSにどんな影響を与えているか
  • 今、SaaS経営者がやるべきこと
  • 2020年の見通し
  • 逆にチャンスとなり得ることとは

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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