SmartHR

今年2019年7月、僕はSaaSベンチャー企業への投資と支援に特化したファンド「ALL STAR SAAS FUND」を設立した。これを機に、今後可能な限りこのファンドでリード投資をしたスタートアップについて、僕の想いを投稿をしていきたいと思う。

それぞれのスタートアップのどういったところを見て投資を決断したのか、どういう想いで支援をしているのか、などを伝えることができれば嬉しい。

投資を発表して数ヶ月程経過しているが、今回のポストでは「ALL STAR SAAS FUND」にとって記念すべき第一号案件となった SmartHR について書いていこう。

僕がSmartHRに対して初めて投資を実行したのは、2015年のシードラウンドの時。実は最初に出会った時、彼らは全く別のサービスを展開していて、その時のサービスは正直あまりピンと来るものがなかった。でもその数ヶ月後にSmartHRというサービスにピボットをしたタイミングで、投資することを決めた。この時の決め手は、(1)ユーザーに対する理解度が非常に深かったこと、(2)その理解を基にユーザー目線のプロダクトを設計できていたところ。そして、宮田さんと内藤さんの素直さや学習能力の高さを感じたところにある。

このシード投資以降、僕は継続してほぼ全てのラウンドでSmartHRに追加投資をしている。そして今回のラウンドでは、共同リードで55億円を投資させてもらった。ALL STAR SAAS FUNDからの直接投資と、僕が窓口となって交渉、調整をさせてもらった投資金額を合わせると、合計で30億円近くになる。これは、僕自身のキャリアの中でも、一番大きい投資だ。

サクセス

強い魅力として感じた点の1つは、Customer Successへのコミットメント。ここで重要なのは、このコミットが組織全体規模で実行できていることだ。プロダクトチームやエンジニアチームがリリースするプロダクトや、その中の機能一つをとっても顧客中心で設計されていて、クオリティーが高い。そして、セールスやマーケティングチームもカスタマーサクセスに対する意識がとても高いと感じた。CSチームだけでなく、全部署がCSにコミットしているからこそ、99.5%という継続率を実現出来ているのだと僕は考えている。

僕がSmartHRのクライアントにインタビューをした時も、SmartHRのプロダクトとブランドに対する愛を感じたほどだ。サービスに対する満足度の高さはもちろんだが、それ以上にクライアントが、SmartHRのことを、今後も共に業界を向上させていくための〈パートナー〉として考えてくれている姿勢が在った。顧客との特別な関係性がそこに存在していることを感じた。

文化とマネージメント

僕が最も強く魅力を感じたのは、SmartHRの文化とマネージメントのスタイル。創業当初から毎年、SmartHRの従業員との面談機会を持たせてもらっているのだが、毎回特別なものを感じている。とにかく透明性が高く、メンバーそれぞれの責任感も高い。そして、コアバリューの理解がハッキリしている。経営層は自分たちと組織全体に高いスタンダードを求め続け、さらに高いスタンダードに進化し続けられるポテンシャルを秘めていると感じた。必ず、一流の組織になれると確信した。

マーケット

最後に、マーケットのポジショニングも魅力的だった。スモール、ミディアム、そしてラージのエンタープライズ顧客が存在していて、その対象となる業界は、ITやテック業界に止まらず幅広い業種や業界を巻き込んでいくことができる。つまり、対象となる潜在顧客が、日本全国に存在していて、その数は300万社以上にもなるのだ。同時に、HR Techの市場自体も直近の約350億円から、2023年までに1000億円近くまでに急成長する言われている。まさに、巨大な波に乗っている。ARR 100億円以上の企業を作れる条件が揃っていると思う。

二つ目のモチベーション

この3つが、僕がSmartHRに投資を実行した大きな投資理由だ。でも実は、直近のラウンドで僕が投資を行ったのには、もう一つのモチベーションがあった。正直言えば、今回のラウンドへの需要はとても高く、僕が投資をしなくても資金は十分に集まっていただろう。でも僕は、SmartHRの経営メンバーが今まで作り上げてきた(そして成長し続けている)マネージメントスタイルや素晴らしい文化作りを継続して欲しかった。

どんな大口の投資家が入ってくるのか。サポートのスタイルはなんなのか。新規投資家が入ってくることによって経営チームとの間で予想外な化学反応が起きる可能性があるのか。過剰に組織を管理してくることがないのか。

投資家は様々で、企業との相性によってはその繋がりがプラスに働くこともあれば、マイナスになることも、ゼロになることもある。SmartHRの場合、すでに対投資家との関係性が上手く機能している状態だったこともあった。だから、これから相性の良い新たな出資者を探すプロセスをゼロから始めるよりも、僕自身が共同リードのポジションに入って調整をさせてもらう方が、様々なリスクを減らせるのではと考えたのだ。こうしてALL STAR SAAS FUNDは、当初の予定よりも3ヶ月前倒しをして誕生することになった。

シリーズC

実はこのラウンドでは、ALL STAR SAAS FUNDの組成、資金調達、SmartHRへの投資をほぼ同時並行で行っていたので、僕にとって大きな挑戦だった。つい最近のことではあるけれど、この時のことを良く振り返る。そして毎回、この挑戦をして本当に良かったと思う。シードから支援させてもらっているSmartHRを、レイターステージでもサポートし続けられるのは、とても嬉しく光栄なことだ。

今後も、SmartHRのようにアーリーからレイターのステージにかけて支援を続けられる関係性を築いて行ける支援先を増やしていきたい。レイターステージの企業への投資は、アーリーステージの投資の数よりは少なくなるけれど、年に1社は、今回のようなレイターステージ投資を実行できたら最高だ、と思っている。

SmartHRは、自信を持って最高のスタートアップだと言える。こんなに最高な環境はなかなか見つからないと強く思う。現在様々なポジションで絶賛採用中なので、是非さらなる高みを目指して一緒にチャレンジしてみてはどうか。=> https://smarthr.co.jp/recruit

(edited by kobajenne

エグゼキューションの質

Photo by: Michelin Motorsport WEC_24 Heures du Mans

スタートアップに投資をした後、僕たちVCは様々な指標や情報をもとに、会社の状態や事業の進捗状況を把握しようとする。その中でも僕が、定性的ではあるけれど、そのスタートアップの成功を予測するために一番重要だと思っている要素は『エグゼキューションの質』だ。経営チームによるエグゼキューションの質が高ければ、どんな問題にぶつかっても解決方法を見つけることができ、スタートアップのポテンシャルを最大化できる。

エグゼキューションの質が高くなければ、一流の会社にはなれないと僕は信じている。

では、「エグゼキューションの質が高いと思う経営」とは、どういったところを見て感じるものなのか。

  • 課題に対するアクションのスピード:エグゼキューションの質が高いチームは、潜在、顕在に関わらず、抱える課題に対してスピーディーに対応できている。3ヶ月以内には課題を解決させていることが多い。
  • 目標の達成率:設定した目標や計画の達成率が高く、目標値を上回ることが多い。例え未達の月があっても、2ヶ月以上未達が続くことはあまり無い。
  • 優先順位とフォーカス:会社にとって一番重要なことにフォーカスできていて、意識が散らばっていない。
  • 一貫性:優先順位や目標が、社長や経営層はもちろんのこと、会社全体で一貫して正しく理解され認識されている。また、方針やビジョンにブレや矛盾がない。
  • クリアな考え:考えが整理されていて、次に取るべきアクションが明確になっている。
  • 高いスタンダード:経営チームが、自分達、そして会社全体に対して高いスタンダードを求めていて、そのスタンダードの高さを抜かりなく徹底的に維持している。

これらが、僕がエグゼキューションの質が高いと感じる経営チームだ。では、エグゼキューションのレベルを上げるためにどうすれば良いのか?

  • 良いプランニングと計測:どんなことでも、計らなければ客観的に状態を分析することはできない。大事だと思う指標を計測し、プランニングの解像度を上げ続けていく。そのためにも、プランニングのための時間を確保することが大事。
  • 良い人の採用:エグゼキューションのレベルを上げるために良い人材を確保し、委任と権限譲渡を積極的に遂行する。これは、考える時間を確保するためにも重要なこと。
  • 違和感を無くす:何か違和感を感じたならば、事態が悪化する前にその理由を突き止めてその原因を潰す。時間の経過と共に解決するだろうなどという考えは持たないこと。逃げずにすぐに課題に立ち向かうべき。
  • 透明性と責任:不都合な情報を隠さず、透明性高く経営をしてる。それぞれの役割や責任をハッキリさせて、言い訳できるシチュエーションを無くす。
  • グッドで満足せず、常にグレートを目指す:現状に満足せず、さらに高いレベル、最高な状態を目指し続ける。フィードバックを求めて、インスピレーションを探す姿勢を忘れないこと。

自分達のエグゼキューションの質は高いと言えるのか。
もしその答えが「No」なのであれば、これからレベルを上げにいけば良い。質が上がれば、自分自身と会社に対する愛と誇りも強まって、より高いところを目指し続ける原動力になると僕は思う。

(edited by kobajenne

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