効果的に働く

組織やチームを率いるリーダーにとって、いかに効果的で上手なタイムマネージメントをするかは重要なポイントとなる。理由はシンプルで、リーダー自身の働きが効果的でなければ、効果的な組織を創り、マネージメントをすることは出来ないからだ。

そこで、様々な企業や組織のリーダーやマネージャーが実践して成功させてきたテクニックの中で、僕自身も実践しているタイムマネージメントテクニックを紹介したいと思う。ただし、このテクニックが全ての人に当てはまることは無い。リーダーは、たくさんのタイムマネージメントテクニックを試しては改善しを繰り返すことで、自分が最も効果的になれるテクニックを見つけて身につけなくてはいけない。

日々テーマを持って働く

Twitterの共同創業者であるJack Dorseyがあるインタビューで、自分は毎日「1日のテーマ」を決めて、そのテーマにフォーカスして1日を過ごすようにしていると話している。会社にとって重要なトピックだけをテーマに選んで、なるべく1日の多くの時間をそのテーマのために使う。例えば僕は、こんなテーマを設定している。

月曜日:文化とマネージメント
火曜日:新規事業の促進
水曜日:海外投資
木曜日:ブランドとPR
金曜日:国内投資
土曜日:休み
日曜日:振り返り、未来の戦略

でも、Jackも言及していることだが、すぐにこのやり方に慣れるのは難しくて、継続していくには忍耐力と練習が必要だ。僕もこのテクニックを試し始めてから1ヶ月程度でやっと慣れ始めて、効果を感じ始めたのは3ヶ月目くらいからだった。ちなみに、テーマは毎週固定しないで、自分の考えや意識が別のテーマに変化していくのに気がついたら、臨機応変にテーマを変えて1日集中するようにしている。

このテクニックの優れた点は、特にたくさんの心配ごとに直面することが多いリーダーが、こうして日々のテーマを持つことによって、無駄なことをシャットアウトして、テーマに沿った重要なポイントだけに集中出来るようになることだ。

そして、他に対応しなくてはいけないことが発生して、自分が集中している事を中断しなくてはならなくなったとしても、テーマさえ決まっていれば作業に戻りやすくなるのもメリットの1つだ。

1日3つの結果を出す

僕は毎日、翌日中に結果を出したいと思うテーマに沿った3つの目標を設定するようにしている。このとき重要なのは、3つの「タスク」ではなくて、3つの「結果」であること。

そして1日の最後に、その3つの結果を出すことができたのか、改善できる点があるのかを振り返って考えることが大切だ。毎日30分程この振り返りの時間を持つようにしている。

 Prioritisation Matrix

これはRedpoint VenturesのTomasz Tunguzのブログで紹介されていたPrioritisation matrix (優先順位のマトリックス)だ。

その日に設定したテーマや結果に関係なく、他の人や何らかのイベントによって、その日のタスクが増えてしまうのはよく起こること。そんな時このマトリックスを使って、そのタスクを今行うべきなのか、それとも他の人に任すべきなのか、もしくは今は行わずに無視する選択肢もあるのかを判断しやすくする。

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緊急性(高い)重要性(高い):すぐに対応すべきタスク。例えば、重要な顧客や取引先の対応や、緊急性の高い重要な契約書の対応など。

緊急性(低い)重要性(高い):別途時間を作って対応内容を考えたりする必要のあるタスク。例えば、パートナーシップの開拓や会社の長期戦略の計画を立てるなど。

緊急性(高い)重要性(低い):部下や他のメンバーに任せるタスク。

緊急性(低い)重要性(低い):今は無視するタスク。

ハーバードビジネスレビューでも、このマトリックスのタスクとリズムに関する面白い記事があった。

本来無視すべきはずの緊急性が低く重要性の低いタスクと他の人に任せるべき緊急性が高く重要性の低いタスクは、作業のリズムとペースの両方が早くなることが多い。これらは、テレビを見ている時やゲームで遊ぶ時と同じような居心地の良いリズムでペース早くタスクを進められるため、効率よく進捗させているかのような錯覚に陥る。だから人は、このリズムが早くなりがちのタスクをやりたい衝動に駆られる。

逆に緊急性が低く重要性の高いタスクは進捗のリズムが遅く、すぐに成果を感じることができないため、罪悪感を抱いてしまったりする。でも実は、緊急性が低く重要性の高いタスクこそ、組織やチームを前に進めるために優先させる必要がある。早いペースでリズム良くタスクを消化していることが、効果的に働けていることだと勘違いしないことが大切だ。

僕は、緊急性と重要性の組み合わせの異なるタスクに移るときは、一旦休憩を取って音楽を聞いたりすることで、リズムとペースを自分の中で調整している。

自分に合ったタイムマネージメントテクニックを作り出す

最初に書いたように、今回紹介したテクニックが全ての人に適しているとは思ってない。自分に合ったタイムマネージメントテクニックを探して、改善し、練習を繰り返す事によってより効果的なリーダーになれるだろう。


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スタートアップを生み出す組織「Startup Studio」

ここ数年の間に、シリコンバレーでは「Startup Studio」というスタートアップを生み出すための新たな組織概念が誕生して、注目を浴び始めている。

Startup Studioの特徴は、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、そしてその他のオペレーションをすべてインハウスで持つこと。Startup Studioは、これらのリソースを駆使して、新しいスタートアップを生み出したり、投資先の事業を成長させたりしている。

そしてもう一つの特徴は、実際に事業を創った事のある起業家たちが、このStartup Studioの運営・マネージメントをしていているところだ。Twitterの創業者であるEvan WilliamsとBiz StoneのObvious Corp, PaypalやSlideを創業したMax LevchinのHVF、MySpaceの社長だったMike JonesのScience、Time WarnerのSVPだったJohn Borthwickが率いるBetaworksなどがStartup Studioのカテゴリーに入る。

ただし、それぞれのStartup Studioのモデルは若干異なる。Obvious CorpやHVFはアイディアやチームをゼロから生み出しているのに対し、BetaworksやScienceはゼロから始めるスタートアップもあれば、すでに事業を進めているスタートアップ、既に成長拡大フェーズに入っているレイターステージ、もしくはスタートアップを丸ごと買収したりしているケースもある。

経験の蓄積、拡大、そして実行スピード

Startup Studioのメリットは複数ある。

1つは、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、マネージメントなど会社を成長させるために必要なあらゆる面でスタートアップと深く関わることで、その経験や知識がStartup Studioに蓄積していき、そして、これらをスピーディーに他の支援先の企業に伝達し、実行することできる。

こういったオペレーションレベルでのサポートや経験、知識の蓄積は、アクセラレーターやベンチャーキャピタルでは実現できていなかったことだ。

そしてもう1つのメリットは、Evan Williamsが ”Parallel Entrepreneurship” と呼ぶ、複数の事業を並行して同時に生み出す仕組みが実現できること。例えば、1人の起業家が、複数のアイディアを持っている場合、Studio内にいる他の起業家にアイディアを渡して同時に実行させたり、起業経験が少ない若手起業家同士でコンビを組んで二人三脚で事業を創造させる。これによって、経験やアイディアを持つ起業家が、他の起業家にその知識やスキルを上手に伝えていくことができるようになる。

Startup Studioモデルを採用したBEENOSの事業創造プラットフォーム

去年7月に僕たちが発表した「BEENOS」は、Startup Studioモデルを日本で初めて採用し、企業の創造と育成を目的にした組織だ。現在、エンジニアチーム、デザイン、リクルーティング、マーケティングのスペシャリスト、投資マネージメントチーム、ベンチャーパートナー、オペレーションチームの7チーム計24名で運営している。

BEENOSでは、起業家と共にスタートアップの立ち上げをゼロから二人三脚で行い、そして、また、シードステージやミドルステージのスタートアップに対し投資を行い、その企業のオペレーション業務に深く関わっていく。

BEENOSは、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、マネージメント、データ分析に関する知識、そして起業に関する実績、経験を持つ集団であり、その知識、経験を今後の起業家たちに伝えていくことをミッションとし、従来とは異なる起業家支援の形を実行する「起業家のための事業創造プラットフォーム」を目指していきたい。

僕は、この「Startup Studio」モデルは支援を受ける側、そして支援を提供して行く側の双方にとってメリットが多いモデルだと考えている。今後、日本国内でBEENOSの他にもStartup Studioをモデルとした取り組みが増えていくだろう。 


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編集長になれ

3年ほど前にSquareやTwitterを創業したジャック・ドーシーは、スタンフォード大学での講義で「CEOは会社の編集長になるべきだ」と語った。

ジャックは、3つの編集ポイントが大事だと言う。

一つ目はチーム。最高な仕事ができるように最高なチームになるための編集をする。新しい人材を入れたり、時には外したりする。これによってネガティブ要素を取り除いていくのだ。

二つ目はコミュニケーション。社外に対しては、ユーザーの共感を得られるように会社のストーリーを編集する。そして、社内に対しては、社員一人一人が組織としてどの方向を向いていて何が一番大事かが理解できるようなストーリーを見せる。

三つ目は会社を成長させるためのお金の流れの編集。売り上げや資金調達から得たお金を違う形の価値のあるものに編集することで、会社を成長をさせていく。

さらに、Squareの元COOだったキース・ラボイスも、CEOが会社の編集長になることを意識する重要性について語っている。

キースは、自分がいま取り組んでいることは、「編集」をしているのか、それとも「書いている」のかを常に意識することが大事であると言う。「書いている」というのは、マーケティング戦略を企画したり、プロダクトデザインやロードマップを作ったり、戦略を考えてたりするなど、何かを生み出す作業だ。

すなわち、この「書く」作業の割合が多いという事は、部下や社員への信用が足りていない、もしくはCEOが様々なタスクを任せていける人材を雇用できてないという事に繋がっているのだ。

特に、スタートアップが組織を拡大(スケール)させて行かないといけないフェーズにいる時、CEOはできるだけ「編集長」になる事を意識する必要があるわけだ。

そして最後に、僕自身がもう一つ思っていること。それは、CEOは自分自らをも編集する必要があるということだ。スタートアップのCEOは、様々な役割を並行して担わなくてはならない。変化をもたらすプロダクトを作れるイノベーターであり、組織を作ってチームを引っ張るリーダーであり、そしてオペレーションを最適化することができるオペレーターである必要もあるのだから。

僕が関わっているスタートアップの中で急成長している会社の多くは、創業者自身、人が変わったかのように自分を「編集」し、あらゆる人、物、そしてお金を上手に組み合わせて「編集」している。その結果、大きな価値が生まれているのだと思う。


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