SaaS誕生から22年 — 3世代に分けて考える成長戦略の変化

SaaSが誕生してから22年が経過した今、世界には1万社以上のSaaS企業が存在していると言われている。

そのような環境の中で、SaaS企業の特徴や成長戦略にも多くの変化が起きているわけだが、この変化を「3つの世代」に分けてみると、その変化の内容をより明確にみていくことができる。

今回は、それぞれの世代の特徴、成功するためのプレイブック、そしてベンチマークとなる指標について、動画で解説してみたいと思う。

(YouTubeと投稿を編集してくれたkobajenneに感謝)

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日本、シリコンバレーなどで活躍するSaaSスペシャリスト達と共に
実践的かつインタラクティブなセッションを繰り広げるSaaS特化型カンファレンス

SaaS企業は、少数精鋭では経営できないその理由

2020年、北米で上場したSaaS企業の従業員人数の中央値は、1192人

利用シーンがシンプルで、顧客獲得やカスタマーサクセスがセルフサーブ型で割と完結しやすいプロダクトを展開しているSlack、Zoom、HubSpotでも、2500人以上の従業員がいる。

僕は以前から「SaaS企業を少数精鋭で成り立たたせることは難しい」と言い続けている。今日は、この理由を改めて述べてみたいと思う。

ニーズの変化

テクノロジーの進化と、その進化によるお客様のニーズの変化は、非常に早い。

たとえば、スマートフォンのように新しいデバイスが普及すれば、そのデバイスへの対応ニーズが顕在化する。AIなどの新技術が誕生すれば、その技術の活用ニーズも顕在化する。To Cの使いやすいサービスが現れれば、to Bのサービスでも同じ基準のUXを求められる。

この変化に適応していくためには多くのエンジニアの力が必要になる。実際にSlackでは売り上げの約37%(一年で約450億円)を開発に投資しているという。

ニーズの変化にスピーディーに適応することが必須であり、SaaS企業にとって、開発は永遠に終わることのない取り組みの一つになる。

エンタープライズ

年間1000万円以上の費用を払っているエンタープライズ顧客数は、Zoomが約1650社、Slackが1300社ほど。両者とも初期の段階ではセールス部隊がいない状態でスタートしているが、今現在は多くのセールス部隊を抱えてエンタープライズ顧客を増やしている。

多くのSaaS企業はこのように、ある時期を越えたところでエンタープライズ顧客の獲得フェーズに入る。このフェーズを成功に導くことこそが、SaaS企業の成長を維持するための重要な鍵となるわけだが、購入プロセスが複雑化しやすいエンタープライズ顧客を攻略するには、強力なセールス部隊が不可欠だ。

競争環境

新しくユニークなSaaSプロダクトを作るハードルが下がってきている時代のなかで、オペレーションや技術への投資で優位性を築いていくのは基本的な戦略だ。しかし少数の人数でSaaS企業を経営しようとすると、この優位性を作るための投資がしにくくなり、競合他社によって追い越されやすい状態を生み出してしまう。

プロダクトを磨くスピードを上げ、市場へのリーチを拡大させて、競争環境が激しいSaaS業界で戦える体制を整えることが、PMFを達成した後企業の成長を加速させるポイントとなる。

SaaS事業をこれから立ち上げる起業家には、先行投資を続けて組織を大きくしていく覚悟を持っていてほしい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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起業家が野心的な目標を持つことが、戦略的に”アリ”な理由

起業家がスタートアップを始めるときに掲げる目標は様々だ。時価総額や売上を軸とした目標もあれば、社会への貢献度を目標にする場合もある。現実的な目標もあれば、人々の想像を遥かに超えるような大きな目標を掲げることもあるだろう。今回は、「大きな夢」を持つことについて僕の意見を話してみたいと思う。

目標の大小にかかわらず、起業をして事業を拡大することはとても難しいことなので、謙虚で現実的な目標を設定することが悪いとは決して思っていない。ただ、戦略的に大きな目標を設定することのメリットというものもいくつかする。

差別化

創業者が設定する会社のビジョンは、採用など人を巻き込むときに非常に強い存在感を表す。ビジョンは、忘れられない印象を与えるほどユニークで、自分も仲間に加わりたいと思わせるほどインスピレーショナルなものである必要がある。人は、社会に大きく貢献できる仕事に魅力を感じるのだ。

大きく野心的なビジョン・目標を設定することによって、インスピレーションが生まれ、その偉大さが優秀な人を巻き込み、定着させることに繋がってくる。

そしてこの高い目標に向けて実績を積み上げていくと自体が、差別化要素にもなる。野心的な目標にどんどん近づいて、目標を現実のものにしていくたびに信頼が積み上がり、「この会社ならできる」「この人となら実現できる」というユニークなポジションを確立することができる。

リスク

“Shoot for the moon. Even if you miss, you’ll land among the stars.(月を目指しなさい。たとえ辿り着けなくても、どこかの星には着陸するだろう。)” 〜 Norman Vincent Peale

僕も含めて、多くの人は失敗を恐れる。大きな失敗を避けるために控えめな目標を設定する起業家もいるだろう。「大きすぎる目標は、大きなリスクを伴う」と考えてしまうかもしれないが、僕はその逆だと思っている。

大きな目標を掲げることで、より多くの人を巻き込み、より多くの資本を持ち、より多くのレバレッジをもたらすことができる。これらのリソースをどう有効活用するかによって、失敗の可能性は最小限に抑えられる。

「大きな目標」を達成しようとした時、失敗するリスクは存在するかもしれない。でも、低い目標を掲げているよりも、はるかに高い場所に着地できるかもしれない。

幸福度

なにを「幸せ」とするのかは人によって違うけれど「目標を掲げて行動する」ことが自身の幸福度に与える影響は大きい。僕は、夢や社会へのインパクトが大きければ大きい物事ほどワクワクする。そのワクワクが、日々の自分の幸福度を向上させている。

今の目標に自分がワクワクしないのであれば、さらに野心的な目標やビジョンを設定してみるのはどうだろう。

大きな目標を達成した先に

起業家が大きな目標を達成した先に何があるだろう?大きな目標を達成すると、ブランドや信頼、経験、仲間が集まるようになる。ひと括りで言えばこれは「レバレッジ」という名の武器を得られるということだ。この武器を使って、他の人にはなかなか挑戦できない何かに挑戦したり、これまで実現できてこなかった世界の創造に向けて動き出すことができる。

起業家は野心的に

といっても、野心的な考えを最初から持つというのは難しい。僕がこれまで一緒に働いてきた起業家も、自分と会社が成長していく過程の中で、考え方自体が少しずつ大きくなっていくことが多い。焦らなくて良い。登ってからじゃないと見えてこない景色というものはある。

自己完結で野心を高めるのは難しい。刺激やインプットが必要で、周囲の環境を意識するのも重要だ。自分の近くに目線を高めてくれる人がいると良いだろう。

野心的に考えて行動することは、経験したことのないことにチャレンジし続けることになるので、なんとも居心地が悪いと思うだろう。でも、この居心地の悪さにこそ慣れる必要がある。そしてやがてこの状況に居心地の良ささえ感じるようになるかもしれない。

起業家は野心的であれ。

小さい目標を掲げようが大きな目標を掲げようが、どちらにしても大変な道を歩むことになる。自分や自分の周り、会社に対して、「野心的な目標」が与えるメリットは想像以上に多いはずだ。だとすると、戦略的に野心的な目標を持つことは、”ありよりのあり”ではないだろうか。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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SaaSの使い方と会社のカルチャーはマッチしているのか?

これまで、「会社のカルチャー」は毎日オフィスの中で顔を合わせながらする人同士の会話や行動が積み重なって形づくられるものだった。でも今は、リアルな場で対面したコミュニケーションを行うよりも、SlackやSalesforce、Notion、Zendeskなど、SaaSを通したコミュニケーションの方が多くなってきて、これらの使い方自体が「カルチャーづくり」に大きな影響を与える時代になっている。

では、実際SaaSを使ったカルチャーづくりにはどんな事例があるのだろうか?どんなことに気を付けるべきなのだろうか。

SaaSを活用した事例

透明性を高める – 多くの企業が透明性を高めようと積極的に取り組みを行っている。その中でも上手くできている例の一つとして、SmartHRのSlackの活用方法がとても参考になる。2019年12月に公開されたSmartHRの運用ガイドラインでは、アイコンの重要性、表示名の細かいルール、チャネルの使い方などが記載されているのだが、特に注目したいのが「DMを原則使わない」というルール。

以下のグラフにある通り、ほぼ全てのコミュニケーションがオープンなチャネルで行われている。これがSmartHRの透明性の高いカルチャーを支えている一つの柱になっているのだと思う。

オペレーション・エクセレンス – The Model文化を浸透させているセールス・フォースでは、自社のプロダクトを活用したKPI管理が徹底されている。下図のようなダッシュボードを使い、一日単位ではなく時間単位で定量的に自己のパフォーマンスを測っている。

KPIやフェーズをしっかり定義し、自分の活動を徹底的に記録する。メンバー全員にこの意識が根付いているからこそ実現できるカルチャーだ。

*参考記事「セールスフォース・ドットコムのトップインサイドセールスは、どんな一日を過ごしている?密着してわかった「詳細な活動計画

ズレを無くす – 10Xでは、ありとあらゆる情報の整理や管理がNotion上で行われていて、どこにどのような情報があるのかが分かる状態、分からない場合も誰に聞けばよいのかがすぐに分かる状態をつくることを大切にしていて、「情報の地図」というドキュメントが整備されている。(参照記事:神は「順序」に宿る。10Xの、バリューを軸に組織のスループットを最大化する方法

“ここには、我々はどういう状態を達成したいか、どの情報がどこに置かれているか、どんなメンバーがいてそれぞれ何に詳しいのか、情報をどう取り扱うか、などが記載されています。” ~ 10X 矢本真丈”

理解と認識を言語化してズレを無くすことで、一人一人の判断力を高めたり、コラボレーションしやすい環境をつくることができる。これは全てをドキュメント化するカルチャーが組織全体に根付いていないとできないことだ。

課題を課題として認識する – カミナシでは、会社や事業が抱えている課題をTrelloに残している。課題の認識を共通化することで「それを解決するぞ」というコミットを表す効果がある。ボトムアップで課題をきちんと拾い上げ、言語化し、アクションに落とし込む経営者がいるからこそ成り立つ。

SaaS活用で注意するポイント

では、SaaSを使ったカルチャーづくりで気を付けるべきポイントはなんなのか?

SaaSの活用方法とバリューの整合性 – 会社のバリューとSaaSの運用方法に、整合性をもたせることが大切だ。透明性を大事にするのであれば、SlackのチャネルやNotionの閲覧権限もそれに沿った設定にする必要がある。感謝の気持ちをしっかり伝えられるチームをつくりたいのであれば、SaaS上でも感謝の言葉が自然と出てくるような環境作りが大切だ。特に日々のコミュニケーションで使われるような利用頻度の高いサービスは、組織全体への影響力が高いので、気を付けておくと良いだろう。

ルールは明文化し、全員で守る – 特に、人が増えていくフェーズの企業では、運用のルールをできる限り明文化がさせた方が良い。どのような使い方を推奨するのか、そしてどのようなことが推奨されないのか。これらのルールを明確にすることで、組織全体にそのカルチャーを浸透させやすくなる。SmartHRのSlack運用ルールは、細かいところまで明記されていて、とても分かりやすい。

それでも話した方が良いときもある – SaaSはとても便利なツールだが、コミュニケーションをSaaS上で完結させないことも大事だ。人の感情やニュアンスは、どうしてもテキストだけで伝えるのには限界がある。何かを議論する時や感情的になりそうな議題は、対面、または少なくともZoomで話す。信頼関係を築く上でも、やはり声のコミュニケーションは欠かすことはできない。

チャレンジではなくチャンス – SaaSの普及は、カルチャーづくりを難しくしているのではなく、むしろ簡単にしてくれていると僕は思っている。今までは対面での限られた機会でしか自社のバリューを体現しにくかった。でもSaaSを使うことで、24時間いつどこからでも体現化させることができて、触れる頻度を高くすることができる。これは、カルチャーづくりがより実行しやすくなるチャンスだと考えている。

SaaSの使い方と会社のカルチャーはマッチしているか。

この記事が、SaaSを活用したより強いカルチャーの築き方について考えるきっかけになれば嬉しい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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部下との認識のズレを無くし、企業文化を強くする「経営者のトリセツ」

Airbnb、Coinbase、Instacart、Stripeなど数多くのデカコーン(時価総額1兆円以上)企業に投資を実行し、アドバイザーとしてたくさんの企業の成長を支援してきたElad Gil氏。

”起業家のバイブル”とも呼ばれる彼の著書「HIGH GROWTH HANDBOOK」の日本語版「爆速成長マネジメント」の発売にともない、3月17日にEladと一緒にウェビナーを開催することになった。当日は、企業を急成長させるための秘訣について、1時間みっちり深ぼってディスカッションしていきたいと思っている。

英語版が発売された2018年にStripeのPatrick McKenzieさんから「絶対読んだ方が良い」と渡されたことがきっかけで手に取ったこの本は、今も僕の本棚の手に取りやすい場所に在り続けている。

今回は、僕がこの本を読んで一番印象に残ったチャプター『経営者のオペレーションガイド』を紹介したいと思う。これは、StripeのCOOであるClaire Hugh Johnsonが実際にStripeで実践している取り組みで、「Claireがどんな事に関わりたいのか」「どんな時に話しかけて欲しのいか」「どんなコミュニケーションを好むのか」などが細かくまとめられている。簡単に言えば、”Claireの取扱い説明書” みたいなものだ。

この取り組みのメリットは2つあると思っている。

1つは、周りがClaireと連携したり、彼女を巻き込みたい時にどうすれば良いのかが分かりやすくなるということ。コミュニケーションスタイルを明文化することによって、誤解が生じることがなくなるし、彼女がどんな行動を評価しているのかも明確になるので、組織の文化作りへの貢献にも繋がる。

もう1つのメリットは、オペレーションガイドを書いている本人の自己認識を高めるきっかけになるということ。自分の強みや弱みが何なのか。改善すべきポイントを振り返ることができる。

では実際にどのようなことが書かれているのか。

以下に、Claireの「オペレーションガイド」を一部抜粋して翻訳したものを紹介する。
(*実際のガイドの内容を意訳しています。また、より分かりやすくするため内容を一部省略・消去しています。)

まず、皆さんと一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています。

オペレーションのアプローチ

  • 隔週または週に一度の1on1。計画を立てることができるように、時間を一定に保つようにします。私は、議題やアクション、目標、アップデートを追跡できる共通の1on1ドキュメントを使うことを好みます。
  • 毎週のチームミーティングは、アップデートと意思決定・仕事のレビューの両方をする場と認識しています。テレビ会議の設定や時間帯の調整は必要ですが、皆さんが準備をしてミーティングに参加すること期待しています。
  • 四半期ごとのプランニングセッションでは、万全な事前準備を行い、チームやパートナー(社内外)と共にその後のフォローアップもしっかり行っていきたいと考えています。
  • ストライプとは別の事業を検討する会議を実施する可能性もあります。でも、プランニングをしながら、きちんと仕事をマネージできるよう頑張っていきます。どうぞご期待ください。
  • 1on1について
    • 一緒に仕事をし始めてから数ヶ月経ったところで、あなたの経歴や将来の野望、あなたが今まで選択してきたこと、その選択をした理由などを聞きながらキャリアセッションを行います。これは、長期的な個人のキャリア・プランに対して、あなた今在どのような位置にいるのかを知るために役立ちます。
    • 四半期ごとに、あなたの個人的な目標の上位3~5つを私たち2人でレビューしていきましょう。四半期ごとに話し合い、その目標を達成するために必要な時間やスペース、サポートを明確に知り、計画を立てていきます。私は、3〜6ヶ月ごとにこれを実施して、みんなにも私の個人目標を共有していきます。
  • あなたのチーム
    • チームや、日々の業務を理解するために私が参考にできそうなメール(FYIとしCCをしたり転送したり)やドキュメントがあれば、積極的に私を追加して共有してください。
    • 仕事が順調に進行していたり、チームのメンバーが素晴らしい仕事をした時は、その内容を転送したり、私たちの1:1ドキュメントにリンクしたりして教えてください。私は、WIP(Work in Progress)を見るのが好きで、素晴らしい仕事をしてくれた人たちに会えることがとても嬉しいのです。

マネジメントスタイル

協調的

  • 私は、決定事項やオプションについてグループ内で議論したり、大きな事柄をホワイトボードに書き出したりすることが好きです。1つの立場や意見に固執することはほとんどありませんが、欠点としては、物事をすぐに判断するとは限らないということがあるでしょう。私は話をしながら、いくつかのアイデアやデータ、オプションを参照して判断しようとします。そのため、私の決断には時間がかかることがあります。すぐに決断をする必要がある場合は、そのことを私がしっかり認識できるようにしてください。

ハンズ・オフ

  • 私はマイクロマネージメントをするタイプではありませんし、物事が軸から外れていると考えられる場合を除いて、細かいところを気にすることもありません。もし軸から外れているとなった時には、懸念していることが何なのかを伝え、一緒にプランを立て直します。だから、私がプロジェクトやチームに参加したばかりのタイミングではハンズオンで参画します。これは、のちにもし私のサポートが必要になった時に、どのようにサポートすべきかを把握しておくための方法なのです。
  • 私がいなくても、あなたはたくさんの決断をしていると思うし、もしあなたが私のところに来たら、たいていは「あなたはどうしたいのか。」「どうしたらいいと思うのか。」と聞きながら、あなたを決断に導くための手助けをします。とはいえ、何か大きなことがあれば、それについて知りたいし、いつでも相談にのります。私は、あなたとあなたのチームで何が起こっているかを知るのが好きなのです。

整理と責任

  • 私は、アクションアイテムをとても重要視します。一つ一つを追いかけるようなことは好みませんが、物事がスムーズに進捗しなかった時には気がつきます。期限の再調整を行うことは良いのですが、その再調整のタイミングが期限の翌日になったりするのはイライラします….
  • 先手を打って対応できたかもしれないことができておらず、その仕事の対応に没頭している人から土壇場になって私に声がかかるのは好きではありません。大きな仕事はなるべく先回りして着手し、一緒に進めていきましょう。同様に、リソースは限られているからこそ優先順位はある意味 ”冷酷” になって見極めて決めて欲しい。皆さんには、そして私自身も正気であり続けなくてはいけません。

データ・ドリブン

  • 私はデータやダッシュボードが好きなので、進捗状況や結果を客観的に測定するするのは好きですが、データにとらわれたり、数字をいじったりするのは嫌いです。何が本当に重要なのか、一貫性のある情報を見直し、データを使って洞察を得るようにしましょう。
  • 私は、それぞれが個別のプロセスやフレームワークを持つより全員が「どのように物事を実行するのか」の合意を得たいと思っています。
  • 私たちが何かを議論している時、あなたが私たちの決定に役立つデータを持っていたり、思い当たるデータがある場合は、ぜひ教えてください。

でも直感的な面もある

  • 私はまた、事実やデータがあまりない状況でも、人やプロダクト、そして意思決定に直感的に対応することもあります。「ああ、彼女はすぐに結論に飛びつこうとするのだろう」思われがちですが、私はそのような人間にならないように努力してきました。最終的には、私は良い直感を持っていると思いますが、私はそれに縛られないようにしています。あなたの ”仕事” は、私の本心を読み取りながら議論することです。私はより良い結果に向けて熱く議論するのが好きです。
  • 私はよくタレントマネジメントで直感を使っていて、人のことを「読む」のが上手だと言われます。繰り返しになりますが、私は物事をジャッジしたり、結論に飛びつくことがないよう努力しています。でも同時に、あなたのチームメンバーについて仮説を立てます。あなたの仕事は、私が、あなたやあなたのチームメンバーについて本当に正しく知ることができているかどうかを確認することです。

コミュニケーション

1on1s

  • 口頭で話し合った方が良いトピックスや、毎週の1on1の機会まで待つことができる場合は1on1を使って話をしましょう。メールは時間を取られるので、賢く使いましょう。
  • しばらく1on1がない場合は、もちろん気軽にメールなどを使って連絡してください。

Email

  • 私は受信したEメールは素早く読むようにしています。でも、左腕に軽度の手根管症候群があり、超長文のメールを書くのが好きではありませんし、生産的だとも思いません。
  • 私は、受け取ったすべてのメールをその日のうちに読んでいますが、読んだことを知らせるために返事をすることはありません。皆さんが私に送信したメールは、18時間以内には読まれていると思ってください。ただ私は、質問やリクエストを受けている時にしかそのメールに返事をしません。もし、返事をすべきメールなのに返信がないと言う場合は、遠慮なく催促してください。私はそれで怒ることはありません。

チャット

  • 緊急、重要、タイムリーなことならば、いつでも自由に連絡してください。
  • 短い質問は問題ないのですが、私はミーティングに入っていることが多いので、すぐに回答ができないことも多いと思います。
  • 話したいトピックが長いもので、緊急度が低いものならば、1:1で話しましょう。

フィードバック

  • 好きです。フィードバックは、与えることも好きですし、受け取るのも好きです。特に建設的フィードバックは大好物です。四半期ごとに公式フィードバックセッションも行いますが、私が何かを見たり聞いたりした時には、タイムリーに共有します。皆さんも、同じようにしてください。覚えておいて欲しいのは、何を聞いても、何を見ても、私はあなたの味方です。気になった時には言う。もし、あなたのことで私に愚痴をこぼす人がいたならば、直接あなたに伝わるように徹底させます。

人とマネジメント

  • 私は、あなたとあなたの部下、そしてあなたの成長を大切にしています。私があなた個人、そしてチームの育成について定期的に話すことができているかを常に気に留めておいてください。スーパースターが現れた時でも、チャレンジングなことがあるときでも、みんなで助け合いたいと思っています。

結果

  • 良い結果を出すためには、測れる目標が重要です。

ヒューモア

  • 最後に、大笑いして、一緒に仕事をしている人たちと共に楽しむのが好きです。

以上が、Claireが書いた自身の “取扱説明書” の中で僕が特に関心を持った一部を抜粋したものだ。

このドキュメントは、従業員のオンボーディングで活用できると思う。カルチャーの理解、コミュニケーションの仕方、評価される行動やバリュー、良いリーダーの定義などがこのドキュメントに凝縮されている。

新しく入った社員は、仕事をしながら試行錯誤をしながら会社に「フィット」していくわけだが、このように言語化することによって、フィットするまでのスピードが格段にアップするのではないだろうか。

起業家、経営者、そして部下を持つリーダーも、自身の ”トリセツ” を作ってみてはどうだろう。

最後に。Eladの「爆速成長マネジメント」には、Eladのこれまでの経験や知識に加えて、こうした爆速成長企業が実践している様々な施策が載っている、まさに盛り沢山な一冊だ。

今回の投稿で紹介したのは、その中のほんの一部を切り取ったものだが、これだけでもこの本がなぜ「バイブル」とまで呼ばれ、起業家に愛され続けているのかが分かるのではないかと思う。

3月17日、直接この本の内容についてより深くディスカッションできることをとても楽しみにしている。

イベント参加申し込み受付中。詳細はこちら(2021年3月16日(火)午後12時まで)

※ 3月14日(日)午後3時までに参加申し込みをしてくれた方限定で、Eladに聞いてみたい質問も募集中。

ぜひご参加ください!

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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より上手に、よりハッピーなスタートアップ経営をするためにできる10のこと

課題のないスタートアップなんて存在しない。成長を続ける限り、人が増え続ける限り、会社は変化し、新しい課題が永遠と生まれ続ける。

ならば、スタートアップ経営者にできることとは、何か。

それは、課題との向き合い方を臨機応変に変えて、より上手く課題を解決できるようにすること。そして、自分がハッピーになれる状態を作り出すことだ。

今回は、みんながより上手く、よりハッピーなスタートアップを経営するためにできる「10のこと」について書くことにした。

考える時間を増やす:スタートアップ経営者は、多くのミーティングをこなしていく中で実務をもこなさなくてはならないので、なかなか考えれるまとまった時間を確保できない。

その結果、整理しておきたいこと、いつかやりたいこと、考えたいことのリストが、どんどんと溜まり、中長期の視点で重要になることになかなか手をつけられなくなっていきがちだ。

邪魔されることなく集中して考えられる時間を、無理矢理にでも予め2〜3時間ブロックすることをおすすめする。できれば週に2回その時間を作ると良い。

時間の使い方を見直す:最初のポイントと関連することで、考える時間を確保するためにも、自分の時間の使い方を把握して、変えていく必要がある。

直近のカレンダーやタスクリストを見て、本当に自分がやるべきことだったのか、他のメンバーに任せられるものはあるのか、または外部に委託できるものはないのか、一つ一つ確認してみてほしい。特に毎週・毎月繰り返し発生する業務などは、委任できるものが多かったりする。

やりたくない事、話したくない人のリストを作る:自分が抱えている業務で、やりたくないこと、自分が話していてストレスや不快を感じる人のリストを作る。

ある程度リストアップできたら、本当にそれは自分にしかできない事なのかどうかを考えてみる。

話をしていてストレスを感じる人がいるならば、そもそも自分が話さないといけない相手なのか?もし避けられない相手なのであれば、ストレスを生み出している原因はなんなのか?を今一度考えてみてほしい。

もしかすると、自分や相手のコミュニケーションをよりスムーズにできるよう見直すことで、そのストレスは解消できるかもしれない。

半年先のプランニングをする:今から半年後、どういう状態になりたいのか?今できていないことで、半年先にできていたいことは何か?

特にSaaSは、昨日や今日の施策がすぐに結果として現れない。規模が大きくなればなるほど、新しい取り組みが会社に影響し始めるまでの時間軸が長くなる。半年先のビジョンが見えてきたら、今のうちにプランニングを始めて、取るべきアクションを決めた方が良い。

ビジョンの再定義:もし元々設定していたビジョンに自分がワクワクを感じないのであれば、それを再定義するタイミングかもしれない。

これは必ずしも会社のビジョンである必要はなく、個人として目指しているビジョンの再定義でも良い。人のモチベーションやエネルギーは、目指している方向や世界観によって大きく影響される。

長期的に自分がワクワクするようなビジョンは何か?その問いに答えられるビジョンを持つと良いだろう。

コーチを取り入れる:必ずしもコーチングの資格を持っている人である必要はない思う。

  • オープンに自分が思っている事を共有できること
  • 客観的に状況や課題を整理・理解してくれる
  • どんなオプションがあるかを洗い出し、ゴール設定を一緒にできる

こんな相手が理想だろう。

一人で考え続けていると、考えるべき課題を見落としたり、無意識に妥協したゴールを設定してしまったり、振り返りが十分にできない状態に陥りがちになる。月に1〜2回、定期的に話せるコーチのような存在になってくれる人がそばにいることで、より着実に前進することができるだろう。

CXOやVPの採用に「全力」を捧げる:自分が抱えている大きな課題や役割を安心して任せられる人を1人仲間に入れることを考えてみてほしい。

ここで「全力」という言葉を使った理由は、ただ単に機械的な採用活動をするのではなく、候補者と真剣に向き合い、彼らを巻き込んでいく方法や、採用プロセスの進め方をしっかり考えて実行にうつしてほしい。

会社の魅力をもっと伝えられる方法を考えたり、採用決定に持っていくためにできることをに責任を持つ。この姿勢が重要だ。

1週間〜1ヶ月を犠牲にする:会社にとって重要度が高い課題があり、どうしても委任ができなくて、時間の確保もできないとなった場合。1週間〜1ヶ月という時間を犠牲にする覚悟で進めるのも一つのやり方だ。

自分が、最優先事項の課題に集中して取り掛かることを会社全体に周知し、定例やプロジェクトミーティングから離れ、外部とのミーティングも極力行わない期間を積極的につくる。もしかすると、これによって営業や売上計画が1ヶ月遅れるかもしれない。でも、最優先の課題を解決の方向に進めるための時間を確保できる。勇気のいる決断になるかもしれないが、決断のタイミングを逃してはいけない。

1on1に、より真剣になる:1on1は、部下や仲間の成長を促進するパワフルな時間だ。もし週1回の実施ができていないのであれば、頻度を上げることを早急に検討してほしい。

きちんと準備をして、1on1に真剣に取り組めば、個人はもちろんのことチーム全体の成長にも繋がり、権限移譲をやり早く進めることができる。良いことだらけだ。

大げさに喜ぶ:チームメンバーや仲間が、目標を達成したり、何かに勝利したり、成功体験があった時は、心の底からその成功を喜び、感謝をしよう。大袈裟過ぎるくらいがちょうど良い。

ほんの数分かけて書いたメッセージが、特別なパワーを持ち会社の雰囲気を良くする。普段あまり意図的に意識することが少ない「感謝の気持ち」を持っていることを再認識するプロセスにもなり、自分の幸福度をアップすることにも繋がる。

以上が、より上手に、よりハッピーなスタートアップ経営をするためにできる「10のこと」だ。経営は難しいことばかりで、時より死ぬほどハード・シングスな出来事がおきる。

だけど壁にぶつかったときの向き合い方、そして経営力の上達で、よりハッピーでより効果的な経営者になることができる。

(編集してくれたkobajenneに感謝)


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【動画】2020年のSaaS。そしてSaaSのニューノーマルとは?

先日開催したALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2020でのDNX Ventures 湊 雅之さんとのセッション「2020年のSaaS。そしてSaaSのニューノーマルとは?」の録画動画をアップしました!

2020年にSaaS業界で起きた出来事の振り返りや、ニューノーマルのトレンド、国内SaaS企業にとって最もチャレンジングだったことは何だったのか。最後には、2021年に向けて僕たち2人からSaaSに携わる皆さんに伝えたいメッセージも。

カンファレンスでご覧いただいた方も復習として。ご覧いただいていない方は、この機会にぜひチェックしてみてください。

(動画とポストを編集してくれたkobajenneに感謝)

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思いやりと率直さ。リーダーに必要なコミュニケーションスタイル。

部下や同僚に対して、効果的にフィードバックができるコミュニケーションスタイルを身に付けることは「良いリーダー」になるうえで、とても重要なこと。

間違いを指摘するだけのコミュニケーションでは一方的に厳しさだけを与えてしまい、次第に周囲の人間は、その人に物事を話すことさえ躊躇し、恐れ始めてしまう。逆に、褒めてばかりのコミュニケーションでは、相手の成長の機会をつくることができなくなってしまう。
良いリーダーに求められるのは、「成長の機会」をつくり、また「オープンな関係を構築」できるバランスの取れたコミュニケーションが必要だ。今回紹介したいのは、Google出身のKim Scott(キム・スコット)氏が提唱したフレームワーク『Radical Candor(徹底した率直さ)』だ。

このフレームワークには、2つの軸がある。

縦軸は「思いやり」- これは、相手のパフォーマンスや仕事の能力だけでなく、相手を一人の人として、その人とパーソナルな関係を築くこと。注意や意識を100%その人に向けて話すことも重要だ。

横軸が「率直さ」- 伝えることが難しい内容でもきちんとフィードバックをして、相手にまっすぐに伝えようとする姿勢を意識する。常に相手がチャレンジできる機会、ストレッチできる環境、そして成長できる場をつくることで、仕事の質に高い基準を設けてそれを維持する。

この2つの軸を取り入れたコミュニケーションスタイルを徹底するためには、いくつかのポイントがある。

フィードバックを求める: 人に対してフィードバックをするには、自分も相手からのフィードバックをきちんと受け入れられることを見せる(証明する)べきだ。フィードバックをもらった時には、自分をかばったり言い訳をせず、受け入れる姿勢を見せて次のアクションやコミットを示す。フィードバックを求めるベストなタイミングは1on1の最後。聞き出し方は、その時々で変えて工夫していくと良い。(例えば僕の場合は「もっと気持ちよく働くために僕にできることはあるか」、「今モヤモヤしてることはあるか」、「(あなたの)ミッションを果たすために僕が始めるべきこと(または止めるべきこと)はあるか?」など、質問の仕方を変えるようにしている)

ポジティブなフィードバックをする:フィードバックを率直に伝え合える関係になるために、ポジティブなフィードバックをしてバランスをとることも重要。こうしたポジティブな会話は、できる限り他の人も話が聞こえるオープンな場所で行うことで、その人のプレゼンスを上げることができ、同時に会社が推奨したい行動を他のメンバーに知ってもらう機会になる。1on1の時だけではなく普段からこうしたコミュニケーションを意識する。

普段からフィードバックをしあう文化を作る:フィードバックをし合う機会は、上司と部下との間だけではなく、メンバー同士でも積極的に行う文化があると良い。他のメンバーに対して意見がある場合、マネージャーやリーダーを介して話をするのではなく、メンバー同士で直接話をするよう促すことによって自然と自発的にフィードバックをし合う文化が根付いていくだろう。

率直なフィードバックの仕方:相手にフィードバックをしたいことがあれば、1on1ができる次の機会を待つのではなく、できる限りすぐにフィードバックの場を持つようにして欲しい。お互いの記憶の中で、そのシナリオがフレッシュな状態に話をした方が、認識や理解のズレが生じにくいからだ。

1〜2分でも良いので時間をつくり、他の人には聞こえないプライベートな環境で話をする。

その時フィードバックをする側は、謙虚さを忘れず、言葉選びもその人を攻撃するような話し方ではなく、その行動や考えを指摘する。

(例えば「あなたは間違っている」と断言するのではなく「僕はそのアイディアにこういった間違いがあると思う」という伝え方に変える。)

行動(または状況)、インパクト、提案の順で伝える:フィードバックをする時の順番も意識が必要だ。まず「指摘したい行動は何なのか」を伝え、「その行動が周りに与えているインパクト」について、そして「それを改善するための提案」で終わらせる。

例えば、マーケティングチームのリーダーに対してフィードバックする時:

【行動(または状況)】
背景も伝えることなくチームに否定的なフィードバックと改善の指示(行動)だけを出してしまっている。

【インパクト】
■ その指示が何の理由でどこから来ているのか
■ なにが重要なのか
■ どの程度の緊急度なのか
こうした点が全くチームに理解されない状態となり、結果誰にもささらないアウトプットが生まれてしまう。

【提案】指示を出すときは、背景、ターゲット、緊急度、重要な要素が何になるのかをしっかり含めた伝え方をすると良いと思う。

感謝を忘れずに:そして最後に。もちろん感謝を忘れずに。フィードバックをするというのは、その人がエネルギーと時間をかけて伝えてくれているのだから、フィードバックをしてくれたことに感謝の気持ちを伝えることを忘れずにいたい。フィードバックがしやすい文化を根付かせるためにも重要なことだ。

以上が、キム・スコットのフレームワークだ。経営者やリーダーは、ぜひこのフレームワークを取り入れて、良いコミュニケーションスタイルを実践して欲しい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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「人」の支援を軸に、100年続くSaaS企業を起業家と共に築く。LTVを最大化するVCを作りたい未来の仲間へ。

日本のSaaSの歴史は、まだ始まりにすぎない。

僕は、今後さらなる拡大の一途を遂げるであろう国内SaaS市場、なによりSaaSというモデルの無限の可能性に惹かれて、SaaSに特化したファンドALL STAR SAAS FUNDを2019年7月に設立した。

これまで、たくさんの起業家と出会い、ALL STAR SAAS FUNDを共に成長させていく仲間を集め、各分野のプロフェッショナルをメンターやアドバイザーに迎え、SaaS起業家のための支援プログラムを実施してきた。そのなかで、経営の強化、チームの成長、そして事業の成長を加速させるために企業が乗り越えるべきハードルや、より強固な組織を築くために必要不可欠な要素など、起業家に伝えたい、伝えるべき「気付き」に多く出会った。

僕たちは、その気付きをきちんと具現化させたいと強く思っている。

このブログは、端的に言えばALL STAR SAAS FUNDの仲間を募集するためのリクルート投稿だ。僕と話をしたことがある人にとっては、真新しい情報は一切含まれていない投稿になるけれど、僕たちが考えていること、実際にどのようなことをしているのか、そして大切にしていることは何なのかを改めて伝えたいと思う。

そしてもし、僕たちの考えや活動に関心を持って、仲間に入りたいと思ってくれた人がいるのなら、ぜひ連絡をして欲しい。

僕は、SaaSの魅力に心の底から惚れている

B2B SaaSは、サービス提供者と利用者の関係が「一度きり」になることがなく、サービスを利用しはじめてもらってからが本番と言っても過言ではない。サービスを提供する側は、顧客の成功を一番に考え、利用者との関係を構築し、最先端のテクノロジーやソリューションを提案し続けていく。常に「継続」が軸となったビジネスモデルだ。

僕は、この誠実で正直、そして進化を怠ることがないSaaSの世界に心底惚れ込んだ。

そしてもう一つ感じていることは、『日本はSaaS大国になる可能性を秘めている』ということ。労働人口が減少傾向にある中でも生産性を高め、維持していくためには、SaaSの力が必要だと考えている。

ビジネスモデルの美しさに惚れたこと。そしてSaaSには「これからの日本を救う」と言っても良いほどの可能性があると信じていること。

これ以上に自分のパッションと、世の中が求めることがマッチすることはないのではないか。

こう考えた2015年、僕は国内のSaaS事業を中心に投資していく形に自身の投資方針を振り切ることを決めた。

SaaSは決して「ブーム」ではない。この歴史は、100年先も続くと信じている。

そもそもサブスクリプションというモデルは、つい最近生まれたものではない。17世紀、ドイツの出版社がこのモデルの基となるサービスを提供し始めたことがはじまりと言われている。その後このモデルは、様々な業種で適用され世界中に広まったわけなのだが、ソフトウェアの世界でこのモデルが受け入れられ始めたのは、90年代に入ってから。歴史はまだ浅く、これから先も長く、大きな成長を見込めると信じている。

数字の面で見ても、国内民間企業のIT投資額は年々増加傾向にあり、2020年度は13兆円に達すると予測されているのに対して、SaaSの市場規模は未だ約5000億円程度と言われている。

SaaS市場に対する注目がどんどん高まる中でも、国内のSaaS浸透率はまだまだ低く、始まりにすぎないと言えるだろう。ALL STAR SAAS FUNDは、この先10年、いや100年先も続く企業を築くためのパートナーのような存在であり続けたいと思う。

指標化しやすいSaaSだからこそ「人」を軸にした支援をする

MRR、T2D3、チャーンレート、営業効率、マルチプル。

SaaSは良くも悪くも指標化しやすい。経営者として数字を無視するというのは無理な話だけれど、僕たちが最も重要視したいのは「人」だ。その理由は至ってシンプル。会社を動かす原動力は「人」から生まれたビジョンと信念であり、全てを現実のものにしていくのも「人」だからだ。

そこで僕たちは、2019年から「人」を軸とした3つの支援プログラムをスタートさせた。

⬛️ Leadership

一流の会社には、一流の組織が必要。

この一流の組織を作るためには、まずトップからの情報が組織全体に正しく伝達していること、認識のズレが生じない状態を維持することが必須だ。そして、さらに組織として進化し続けるにために、ボトムアップでフィードバックや課題が拾い上げられる心理的安全性のある文化を築いていくべきだ。

そこで僕たちは、効果的なコミュニケーションの取り方や、矛盾した動きが発生しない目標設定の仕方などを重点に置いた経営者層に向けたプログラムを提供している。

その一つの例としては、SmartHRで実施している組織評価がある。年に1度、過去5回この組織評価を実施し、フィードバックや改善提案をさせてもらっている。その他にも、社長と部下との1 on 1の様子を録画で確認してフィードバックを行うなど、直接的、かつ実践的に効果を感じてもらえる取り組みを中心に実施するよう心掛けている。

⬛️ Recruitment

SaaS企業の場合、少数精鋭の経営は難しい。

ARR 100億円を目指すのであれば、300人規模の組織が必要と考えた方が良いだろう。そこで僕たちは、優秀な人材の紹介はもちろんのこと、会社の魅力を外部に伝えるための採用ブランディング手法や、クロージング率を高めるためのサポートも行っている。

ALL STAR SAAS FUNDのタレントパートナー楠田が主となってスタートさせた日本最大のSaaS特化型タレントコミュニティーの規模もますます拡大している。最近では、投資を実行してから15日以内に、その投資先企業のCOOの採用を成功させる事例も出てきている。

⬛️ Enablement

一人一人のポテンシャルが最大限に引き出されていること。そしてそのレベルを向上させ続けることは、組織全体のパフォーマンスレベルを上げるだけでなく、会社のモラルを高く保つためにも重要なこと。

支援先企業の経営者層のみならずチームの誰もが、ALL STAR SAAS FUNDに参画してくれている一流のメンターやアドバイザーのノウハウを学び、経験に触れることができるよう機会を提供している。

例えば、営業レベルを向上させるためのクローズドワークショップの開催、支援先のインサイドセールスチームをゼロから立ち上げるための支援や、営業資料のブラッシュアップ、営業のロープレーなども実施し、吸収した知識やテクニックは、全て自社で確実に実践できるように1対1でサポートをし始めている。

これらの要素は、一流のSaaS企業を作るために必ず強化させるべきことであり、多くのSaaS企業の成長に携わらせてもらっている僕たちだからこそできる、特に注力すべきプログラムだと考えている。

LTVを最大化するVCへ

SaaSは、LTV(顧客から生涯にわたって得られる利益)を最大化するビジネスだ。

短期的な利益よりも顧客と共に成功し、生涯に渡って互いの価値を最大化させる。チャーンを最小限にし、継続率を最大化する事ことに注力する。

SaaSに特化した投資をしているからこそ、僕はVCとして、僕たち自身にもSaaS起業家たちと同じ概念を適応させたいと思っている。短期的なイグジットやリターンではなく、長期的なサクセスと最大価値を共に追求していきたい。

これを実現するためには、従来のVCファンドの形とは違う挑戦をしなくてはならない。投資先はもちろん、関わるすべての人たちとより強固な信頼関係を築き、環境を作り上げていかなくてはならない。100年以上続く産業を築こうとする起業家にとっての最高のパートナーとなり、LTVを最大化させるために投資をし続けたいと考えている。

ALL STAR SAAS FUNDを設立してから1年半。この間に参画してくれたタレントパートナーやメンター、アドバイザー、そしてサポートしてくれるみんなの協力によって、少しずつ描いていたものが形になり、効果も実感し始めている。

でも、まだまだこの取り組みは始まったばかり。未熟な点も多くあるし、サポートが行き渡ってない支援先の方が多いのが実情だ。

僕たちは今、この構想とビジョンを一緒に実現できる仲間を探している。

僕たちと一緒にこの挑戦にワクワクしながら挑んでくれる人、そして僕たちのバリューに共感してくれる人は、ぜひ応募フォームから応募してほしい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

スティーブ・ジョブズのチーム作りとマネジメント

前回に続いて、Steve JobsがMIT Sloanで行った講演の紹介。今回は、Steve Jobsの採用ポリシー、彼がAppleで学んだこと、そしてチームとしての決断について話している部分をシェアしていきたいと思う。

チームは妥協してはいけない。

私たちが実行した大切なことの1つ、それは彼、Mike Sladeを雇ったことです。彼は、Microsoftに7〜8年在籍したあと、VP of Marketingとして私たちの会社にジョインしました。初めて彼に会った時は、彼はExcelのプロダクトマネージャーで、その後Microsoftの大規模なマーケティングプロジェクトを走らせていました。

現在Mikeは、NeXTのマーケティング業務の全てを担当しています。彼がNeXTに入ったのは、私たちがやっと大企業から業務に必要なカスタムアプリの話をヒアリングできるようになったタイミングだったので、私たちは密に連携をとって共に会社のマーケティング戦略を立て直しました。この時、Mikeは本当に素晴らしい仕事をしてくれました。

そしてつい最近、COOとしてPeter van Cuylenburgという人物を迎え入れました。もともとPeterは、私がセールスとマーケティングのエグゼクティブVP候補を探していたときに最初に出会った人物でした。でも、オファーを出した結果断られてしまい、それ以降私たちはこのポジションの採用を止めたのです。そして、それから1年半の間彼を追い続けました。彼はそれほど優秀な人材だったんです。

彼は、TI(テキサス・インスツルメンツ)のヨーロッパ支社の運営に長く携わり、そして3年前にUK版のMCIであるイングランドのMercury Communicationsという会社に参画しました。そこでこの企業の売上を20億ドル企業にまで成長させました。これは、Mercury社の親会社であるCable & Wirelessの半分(Cable & Wirelessの当時の売上は約60億ドル)に値するのです。

彼は、コミュニケーションとコンピューティングが一つの共同体となると考えてこの会社に入ったのですが、実現することはありませんでした。それが分かったと同時に、彼の本当の愛は、コンピュータービジネスにあることに気づいたんです。

そして彼は、私たちの仲間になりました。つい先週のことです。どうやら私が本当に雇いたいと思う人物は、参画してくれるまでに1年はかかるようなのです。Mikeの時は1年半をかけましたし、Appleの時も同じでした。でも全てその価値があったんです。とても優秀な人に出会い、でも、その人を仲間にすることができなかった時、他の人を探そうとする人もいるでしょう。そしてそこで出会った人と最初に出会った人を比べて、2番目と分かっていながらも、妥協してその2番目の人で落ち着こうとするかもしれません。でも私は妥協せず、自分が1番だと思った人にアプローチし続けるんです。

Appleでの経験で学んだこと

私がAppleにいた時に学んだこと、というよりはAppleにいたときのデータから学んだことがあります。それは、私はいま、人に対して長期的な視点をもつようになったということです。もし相手が、正しくない間違ったことをしたとき、私が最初に行うことはその問題を正そうとすることではありません。大切なのは、今私たちはチームを作ろうとしていること。そして、1年後のためではなく、10年先のために最高のものを作るためにここにいるのだということです。だからこそ、どうやって私が問題を解決するかではなく、その間違ってしまった人に学んでもらうために自分が何をすべきかを考えるのです。時にそれは苦痛なことです。私もまだ、手っ取り早く問題を解決したいと思うことがあります。でも、長期的な視点を持つということは、恐らく私が1番変わった点なのだと思います。

チームとしての決断

もし私たちが同じ経営陣に所属し何かを決断しなければならないとき、相手が賛成していない決断を無理やり通そうとすることが正しいとは思いません。なぜなら、あなたは彼らが正しいと思ったことをしてもらうために給料を払っているのに、これでは彼らが本当は正しくないと思っていることをむりやりさせることになり、遅かれ早かれ衝突することになってしまうからです。私が考える1番良い方法は、その決断したことを実行するために関わる全員の同意が取れるまで話し合うということです。これがNeXTで実際に行っているやり方です。NeXTの組織のトップには「ポリシーチーム」というチームがあります。そこには私とMikeを含む8人のメンバーがいます。このチームでやろうとしていることは2つ。1つは、本当に大切な決断と私たちが決断しなくても良いことを区別することです。本当に必要な決断に関しては、私たち全員が同意するまで話し合うを続けます。なぜなら、私たちが給料を払っている理由は、人に何かをさせるためではなく、何をすべきかを教えてもらうためだからです。何かをしてもらうためだけの人を探すのは簡単なことです。でも、何をすべきかを教えてくれる人を見つけるのは難しいことですよね。

これこそが私たちが求めていることです。私たちは人に多額の給料を支払い、そして彼らに何をすべきかを教えてもらうのです。これを前提に考えたとき、本当は全員が納得していないと分かっていながら、その状態から逃げるべきではないのです。ここでの成功の否決は、実は1つのチームが本当に決断しなくてはいけないことは、そんなに多くはないということを知ることです。私たちも1年のうちに本当に決断しなくてはいけないことは25個くらいです。そんなに多くはないのです。うまくいくこともあれば、試行錯誤していることもありますが、これが私たちが実践している方法です。

私は、「私がCEOなんだ!このやり方に全員従え!」と発言したことはありません。そして「同意できないのなら、チームから外れろ。」と言ったこともありません。いや、私の長いキャリアの中で1度や2度はそんなことがあったかもしれません。でもそれはせざるを得なかった時です。 もしチームがこっちの道に進みたいと良い、でも一人違う方向に進みたいと言った場合、それはもう上手くいかないと伝えることも仕事の一つですから。でも全員がチームとして動いているときは、共に課題を解決していくのです。

(編集と翻訳をしてくれたkobajenneに感謝)

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