暗号通貨で35億円調達!?ICOの可能性、そしてVCの仕事は無くなるのか?


仮想通貨「イーサリアム」の共同創業者 Photo by: Duncan Rawlinson

今月頭、ウェブブラウザを開発する企業 Brave が、暗号通貨の売却を通じて資金を調達する「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」によって、3500万ドルをたった30秒で調達したことが話題になった(参照ソース元)。

そこで今回はICOの可能性、そしてICOがVC業界にもたらすであろう影響について書くことにした。

ICOとは何か?
ICOとは、プロダクトやサービスまたは企業が、独自のトークンやコイン(仮想通貨)を発行して暗号通貨取引所に上場、資金調達を行うプロセスである。ベンチャーファイナンスやIPO等で、株式を発行し、それを購入してもらうことで資金調達をするのと似たプロセスだ。

トークンの可能性
トークンは誰でも発行することができ、誰でも買うことができる。そしてこのトークンは、ビットコインや他の仮想通貨と同様、需要と供給によって価値が変動する。これらの特徴によって、新たなビジネスモデルやサービスの設計が可能になる。

例えば、ユーザーがコンテンツを生み出すCGM系サービスやコミュニティーサービスの運営企業の場合、ネットワークに貢献しているユーザーがトークンを受け取れるよう設計したり、早い段階でそのネットワークに参加した〈アーリーアダプター〉に、ICO時にトークンを購入させたりすることができる。このトークンは、暗号通貨取引所で売却したり、別の仮想通貨と交換することも可能だ。

ネットワーク需要やユーザーが増えれば増えるほど、そのネットワークの「トークンの価値」が上がる。
つまりトークンを所有するユーザーにとって、そのネットワークに貢献することが大きなインセンティブに繋がる。トークンによって一般ユーザは、ベンチャー投資家と似たようなインセンティブを得ることができるわけだ。

ICOブーム
ICOによる資金調達額は、2016年の時点で、すでに100億円を超える額だったが(参照ソース元)、ここ3ヶ月をみると、なんと300億円を超える規模に拡大しているのだ。(参照ソース元)。下図は、毎月行われているICOの件数を表している。


(参考ソース元:TechCrunch)

VC業界への影響
ICOへの参加に関して、現時点では細かい規制(ルール)が存在しない。そのため、トークンを購入するユーザー側のリスクが非常に高く、様々な問題や限界が顕在している。「完璧なシステム」と呼ぶにはほど遠く、どんなスタートアップでもICOで資金調達をするという時代がすぐに来るとは考えにくい。でも、仮にICOを通じた資金調達が主流になった場合、VC業界にどんな影響を与えるのだろうか?

  1. 価値提供のシフト
    〈リスクマネー〉を提供できるベンチャーキャピタルには、今後も一定の価値が存在し続けると思う。しかし、ICOによってこの〈リスクマネー〉へのアクセスが多少なりとも容易化すれば、企業はベンチャーキャピタリストに対し、資金提供以上の価値提供を求めるようになる。起業家をサポートする力やその他事業を成長させるための「サービス」を提供できるようにならないといけない。これら資金提供以外の価値を提供できないVCは、ICOによって置き換えられてしまう日が訪れるだろう。
  2. VCのビジネスモデルが変わる
    ベンチャーキャピタルは、投資実行からエグジットまで大体7年〜10年がかかる。しかし、投資した対価として得るものが「株式」ではなく「トークン」であれば、流動性が高まる。近い将来、株式をトークンに転換するという条項が投資契約の内容に組み込まれるようになるかもしれない。これによってVCのリスク・リターンの考え方、エグジットのタイミング、ファンド資金の集め方、そしてビジネスモデルそのものが変わるかもしれない。
  3. 新しいタイプの投資家が生まれる
    ICOの普及によって起業家が重要視し始めるのは、トークンの発行後、そのネットワークに人を呼び込む力や、ネットワーク自体の価値を高めるスキルだ。つまりアーリーアダプターであることや、インフルエンサーであること自体が一つの〈価値〉となり、結果、トークンの価値を向上させることを専門とする新しいタイプの投資家が生まれるかもしれない。

VCの仕事は無くなるのか?
どれだけ資金アクセスが簡単になって、お金のコモディティー化が加速しても、ベンチャーキャピタリストの仕事がなくなることは無いと思う。事業をつくるために必要な戦略、採用、マネージメント、プロダクト、パートナーシップ、カウンセリングなど多面の支援ができる「プロフェッショナル」としての需要は残るからだ。

参考記事:完璧である必要はない。ベンチャーキャピタリストによる起業家支援。

そして、トークンによって誰もが短期的にいつでも売買できるような時代になるからこそ、長期的に良い場面でも悪い場面でも逃げない、信頼できる良いパートナーを持つことの需要が高まるはずだ。

ICOの動きはまだ始まったばかり。まだまだ未熟な状態だ。これからどうなっていくのか、予想することは難しい。でも、これが主流になれば新しいチャンスがたくさん生まれることは間違いないだろう。

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起業家とVCでは「ゲーム」が違う


Peter Miller

起業家とVCの違いについてよく聞かれることがある。表面上は似たようなキャリアパスに見えるかもしれないが、実は共通点よりも違いの方が多いのだ。

考える vs. 決断する

VCと起業家では、まず時間の使い方と決断の数が全く異なる。起業家はプロダクト、採用、戦略、マネージメント、資金の使い方など、日々決断して実行に移していく必要がある。この一つ一つの決断の積み重ねが大きく結果に繋がる。
一方、VCは出会ったスタートアップについて、市場について、支援先についてなど、考える時間や起業家と議論をすることに多くの時間を費やす。決断する数は起業家に比べて少なく、VCにとって一番重要な決断は「どのスタートアップに投資するか」になる。

フィードバック

決断から結果が現れるまでの期間の長さも違う。起業家は、会社を動かしていく中で決断したことが数日、数週間で結果として現れる。一方VCは、投資を決めてから、その判断が良い判断だったのかどうかかが見えてくるのは1〜2年後。そして、実際結果(イグジット)として現れるのは、5〜10年程度は先となる。

アクティブ vs パッシブ

起業家は会社の中の様々なオペレーションにアクティブに関わるのでテンポが早い環境にいる。一方VCは10~30社ほどのポートフォリオを組むので常に支援先のオペレーションにアクティブに関わることができない。ほとんどはパッシブに関わっていて、重要だと思ったタイミングでアクティブに関わる場面が時々ある。

コントロール

会社経営に対するコントロールの差もある。起業家は、ほとんどの事柄を自ら決めることができる。VCがその権利を一部持ってはいるものの、仮に意見が噛み合わなかったとして、経営者が信じないことを無理矢理やらせるのは難しい。
VCは起業家に近い立場にいることから、影響力はあっても、会社を直接コントロールすることは少ない。

リスク vs リターン

起業家が、VCよりリスクを背負っているのは当然のこと。起業家は自分の会社に対して全ての力を注ぐのに対して、VCは、10〜30社にリスクを分散させる。でもその代わり、リターンにも差が出てくる。

とあるスタートアップで起業家とVCが、その会社の株を同じ25%ずつ保有しているという仮のシナリオがあるとしよう。そのスタートアップが100億円で買収されると、起業家には直接25億円が入ってくる。一方VCの場合、この25億のリターンが運用しているファンドに入る。

VCは、多くのパートナーから資金を集めて運用していることが多く、大体は売却益の20%を成果報酬(「キャリー」)として受け取る。もし、そのVCが50億円のファンドを運用していたら、25億円を受け取れるまでには、前述のようなエグジットをあと6回は実現させないといけない。

計算式:(7社 x 25億円 – 50億円の投資元本)x 20%成果報酬 = 25億円

起業家とVCでは「ゲーム」がまったく違う。だから元起業家がVCになって、すぐにまた起業家に戻るケースも多く見られるし、元起業家だからと言って、優秀なVCになれる訳でもない。
「VCとして成功するために、起業家としての成功は必要なのか?」も合わせて読んでみてほしい

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VCの愛は平等なのか?起業家に知ってもらいたいVCファンド事情とポイント


Shiyang Huang

VCは支援先の企業を、全社同じだけ愛しているのか?
この問いに多くのVCは「YES」と答えるだろう。もちろん、信念を持って ”えこひいき” がないよう最善を尽くしているVCもいると思う。でも、投資戦略や経済合理的な理由で、この「平等性」を確保するのは、現実問題なかなか難しい。そこで今日は、VCファンド事情と起業家に知っておいてもらいたいポイントについて書いてみようと思う。

リターンの最大化
まず前提として、VCは他人のお金を預かっている以上、リターンを最大化する義務を持っている。そのため、支援先に対する時間の割り振り方を考える時は、「ファンドリターンを最大化すること」を念頭に、以下のような優先順位を付ける。

  1. 投資パフォーマンスが高いスタートアップ:投資倍率や事業進捗が好調なスタートアップ。特にアーリーステージの投資リターンは、〈べき乗則(Power Law)〉が成り立つ(ファンドの半分以上の価値は、ポートフォリオの中でも最も企業価値の高い数社によって構築されているという原理)。つまり、支援先の企業のうちトップ数社が、「優先度の高い存在」となる(参考:VCが期待する投資リターン)。
  2. 投資額が大きいスタートアップ:ファンドサイズに対して投資額が大きい会社。指標としては、一社に対し、ファンドサイズ全体の10%以上の資金を投資しているスタートアップは、リターンに大きなインパクトを与える。
  3. アップサイドが大きいスタートアップ:マイルストーンを達成すれば、いっきに何十倍も評価が上がることが期待できるスタートアップ。

IQよりEQ
ここで起業家がVCを選ぶときに考慮すべきことは、「EQ(感情知能指数)」の高さだ。
ファンドにとって「優先度の高いスタートアップになる」ことは、企業が好調なときは全く問題ない。でも、不調になり始めたり、トラブルが発生したときは、他企業に比べて、VC側から焦りが出やすくなる。起業と経営は、激しい感情の波との葛藤だ。そこに外部の株主が、また異なった “感情” を持って衝突してくるのは、明らかに非効率だ。つまり、感情を自己管理できる「EQの高いVC」が、こういった場面では最適な存在となる。
IQの高さよりEQの高さ。株主構成を考えるとき、僕だったらEQが高い外部株主を大多数にする。

ファンドサイズ
ファンドサイズと投資額を見れば、ファンドが考えている優先順位が見えてくる。だいたいの指標として、ファンドサイズの2%以上を投資したときは “本気の投資” であり、それ以下は本気の投資をする前の “実験的な投資” であるケースが多い。そしてファンドサイズの10%を超えてきた場合は、期待値が非常に高く、是が非でも失敗は避けたい〈超重要案件〉であると言って良いだろう。ただし、この配分の考え方は、投資戦略によって異なるもの。起業家は、VCからの調達を検討する際ポートフォリオ配分についての考え方を確認すると良い。

ポートフォリオサイズ
支援先が10社なのか、または100社なのか、ファンドのポートフォリオの大きさによって支援の仕方が大きく変わっていく。起業家は、ファンドサイズやポートフォリオのサイズを理解し、どういった支援を得られるかを理解すること、そしてお互いの期待値を一致させておくことが重要だ。

フォローオン投資
戦略によって追加投資枠が無いファンドもあれば、ファンドの半分以上を追加投資枠に設定している場合もある。それぞれの投資戦略、追加投資に対する考えや金額の決め方などを理解することが大切だ。少なくとも投資を受ける前の時点で明確にしておくべきポイントとしては:

  • どれぐらいのKPIを達成すれば追加出資に繋がるのか
  • 追加出資を受ける際の金額は、どのくらいを想定できるのか
  • 追加出資にバリュエーションの上限はあるか

これらは、次の調達を計画するに当たって、とても重要な情報になる。

これが、起業家がVCを株主に迎えるときに、理解しておいてもらいたいポイント。
VCによって方針や戦略が異なるので、考え方をじっくり話しながら確かめると良い。そして、そこで理解した内容を考慮した上で、調達戦略や株主構成を組み立てて、VCと最大限効果的な関係を築いていって欲しい。

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SaaSスタートアップが達成すべき4つの “フィット”


Liza

リーンスタートアップによって〈プロダクト・マーケット・フィット(PMF)〉という概念がスタートアップ業界の中に浸透した。では、B2B SaaSスタートアップにとっての PMFとは何か?それは、1つではなく複数の指標があると思う。そしてPMFは、数週間や数ヶ月で達成するものと思われがちだが、B2B SaaSスタートアップの場合は、最低でも2年程度はかかると考えるべきだ。

僕が考える、PMFを達成するために必要な「4つのフィット」はこれだ。

プロダクト・フィット
まず達成すべきは、ターゲットとなる顧客が持つ『課題』に適したプロダクト/ソリューションを提供すること。そして、高い顧客満足度を得ること。
ここで使うべき指標は:

  • エンゲージメント:日々利用するサービスであればDAU/MAU、週に1回程度の利用頻度ならば、WAU/MAUをみると良い。この数値は、50%以上を維持することが望ましいが、サービスの特徴に適した評価方法を探る必要がある。
  • 月次チャーン:月額制のプランであれば、月次の顧客退会率は3%以下が望ましい。
  • NPSスコア:ある程度の顧客数(40程度)が必要になるのだが、NPSを測って満足度を測ることもできる(NPSスコアは最低30以上は欲しい)。NPSの他にも、Sean EllisのPMFテストなどもある

ローンチして間もないスタートアップは、顧客インタビューなどを通じて、定量的な指標以外の(満足度に関する)定性的な意見も積極的に取り入れて欲しい。

プライシング・フィット
自分たちが狙いたい(狙える)ACV(年間発注額)を理解する必要がある。これはターゲット顧客が解決したい課題に対して払える金額、プロダクト/ソリューションの完成度、そして競合優位性(又は差別化)で決まってくる。最初から狙ったACVを達成できるスタートアップは少ない。ほとんどの場合は低いACVから徐々に機能を拡張してACVを上げていくケースが多い。

ストラテジー・フィット
顧客獲得の戦略は、「ACV」と「顧客の属性」によってだいたい決まる。対面営業でないと説得できない顧客もいれば、非対面でも導入まで持ち込めるケースもある。高いACVであれば、アウトバウンドの営業部隊を抱えたり、長いセールスサイクルでも事業を成立させることはできるが、低いACV (50万円以下)の場合は、セルフサーブ型やインサイドセールスを中心とした戦略でないと成り立たないことが多い。
ここできめ細かくみる必要があるのが、「LTV (一顧客が、取引期間を通じて企業にもたらす利益 )」と「CAC(一顧客を獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用)」の2つだ。時価総額1000億円超える北米のB2B SaaS企業の場合LTVをCACで割った数字は8以上というケースが多いのだが、少なくとも3以上であるべきだ。

マーケット・フィット
ターゲット顧客と狙えるACV、そして獲得戦略が理解できたら、次に直接狙える市場規模を理解する必要がある。これはターゲット顧客の数とACVを掛け合わせてボトムアップで計算できる。そして、この数値が自分たちにとって十分なのかどうかを考える必要がある。「十分」の定義は、人それぞれでマーケットシェアをどれぐらい取れるかの自信と事業規模をどれくらいにしたいかの目標が影響してくる。僕のB2B SaaSスタートアップへの投資基準は、最低50億円のARR(年間定額収益)を見込むことができる市場規模。スタートアップが現実的に取れると思うマーケットシェアは、競争が激しい分野になる可能性が高い場合は20%、ほぼ独占的なポジションが取れそうな場合は50%程度になると考えている。

PMFの達成は、多くの指標の組み合わせで確認する必要があり、想像よりも長い道のりを歩む覚悟をしなくてはならない。ほとんどのスタートアップは2年以上をかけてARRが2億円程度に到達したところで、やっと〈達成の可能性〉が見えてくる。
でも、ここで覚えておかなくてはならないのは、「PMFの達成は、成功を保証するものではない」ということ。PMFを達成した上で、最高のチームをつくり、最高のエグゼキューションがなければ『成功』はできない。

関連記事:

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Y Combinator Demo Day から感じたSaaSトレンド

今年も3月20日から3日間「第24回 Y Combinator Demo Day」が開催された。僕にとってはこれが10回目の参加。今回も電動飛行機や印刷ができるOLEDなど、100を超えるスタートアップによる興味深いプレゼンテーションの数々が繰り広げられた。
そこで今日は、Demo Dayから感じたSaaSのトレンドについて書いてみようと思う。

音声認識を使ったSaaS
音声認識を応用した新たなソリューションを提供しているSaaSスタートアップが2社あった。Clover Intelligenceは、営業電話の内容を分析し営業スクリプトの最適化やコーチングを行うサービス。Tetraは、会議の音声を記録し議事録に落とし込むサービス。

様々なセンサーの精度が上がると同時に、音声やジェスチャー等で画面の無いインターフェースのSaaSソリューションは今後もどんどん増えるだろう。

SDRのリプレイス
問い合わせや営業電話で獲得したリード(案件)を営業マンに渡すSDR業務の委託を受けたり、自動化させるサービスが多数あった。Scribeは、企業の問い合わせフォームから問い合わせをしてきた顧客を分析し、その顧客が有料ユーザーになる確率を自動でランク付けするサービス。RileyはSDR業務をクラウドワーカーに委託できるサービスで、Upcallは営業電話を委託できるサービス。

こういったSaaS企業向けのSaaSはサブスクリプションマネージメントのZuoraや、カスタマーサクセスのGainsightを筆頭に次々と現れている。すでにこの分野はレッドオーシャン化しつつある。

SaaS / マーケットプレイスのハイブリッド
導入ポイントはSaaSと同じだが、マーケットプレイスの要素を持つスタートアップも多かった。Hivyは総務の仕事を一元管理できるSaaSで、マーケットプレイスから名刺の発注やフードデリバリー、石鹸の購入などができる。Algorizはトレーダーが簡単にアルゴリズムを作りテストすることができるツールで、アルゴリズムを購入できるマーケットプレイスも提供している。

ハイブリッドモデルの優れた点は、マーケットプレイスのネットワーク効果によって参入障壁を強化させることができること、そして手数料による収益など、SaaS以外のところで利益を上げることができること。こういったハイブリッドモデルのSaaSビジネスは今後も注目したい。

MLが活用したSaaS
マシンラーニング(ML)を活用したSaaSもいくつか発表された。Quikiは、カスタマーサポートのチャットやメールログ内容を解析し、自動でFAQ(よくある質問)ページを自動生成する。Bicycle AIは、カスタマーサポートをA.I化するソリューション。

MLを活用したSaaSはここ数年で特に増えている分野だ。MLの活用は今後どの業界でも必須になり、さらに加速していくだろう。

現場が使えるSaaS
工事や製造の現場に携わる人間が、主にスマホを使って活用できるSaaSも多数あった。従業員が、ビルや工場の管理・メンテナンスをスマホやPCから行えるUpkeep。そして工事現場にいる従業員がスマホを使ってプロジェクトやタスクの管理ができるサービスFIBO

今後はスマホだけでなく、IoTやARを活用したソリューションによって現場の人間の業務効率化を実現させるサービスが増加していくだろう。

以上が「第24回 Y Combinator Demo Day」のSaaSトレンド。特に「SaaS / マーケットプレイスのハイブリッド」「MLを活用したSaaS」と「現場でも使えるSaaS」は、日本でも注目したい分野である。

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MRR 革命!月額課金に転換したAdobeやMicrosoft、そして日本でも。

ソフトウェアのライセンス販売で展開してきた Adobe が月額課金サービスを発表し、Microsoft もOfficeの月額課金プラン〈Office 365〉を発表。さらにAmazonの〈Amazon Prime〉やAppleの〈Apple Music〉など、特にここ5〜6年前から、一度きり課金モデルから月額課金制へと課金モデルを次々と転換する企業が増えている。

なぜ MRRへの転換が起きているのか?
この転換が起きている理由はいくつかある。

テクノロジー:従来ソフトウェアを提供するためには、物理的にパッケージを販売し、インストールする必要があったが、今ではクラウド上でサービスを提供したり、ソフトウェアを配布することができる。これによって導入や販売コスト、そしてメンテナンスコストを格段に下げることができるようになった。

顧客からの需要:パッケージ販売は一度きりの関係性のため、販売後、サービスを提供する側から継続的に顧客サポートを行うインセンティブが低い。これが月額課金制にすることにより「いかに継続的に長く使ってもらうか」が企業にとって重要なポイントとなるため、顧客の満足度を導入後も維持させないといけないというインセンティブが強く働く。
また、”導入コストゼロ” の月額課金制にすることによって、顧客は自分が利用した分だけサービス利用料を支払うという、よりフレキシブルな料金体系を提供することが可能になる。

ウォールストリートが好む:月額課金モデルはソフトウェア販売と違ってボラティリティーが小さく、売上予測がしやすい。これにより、業績予想も外しにくく、企業の評価もしやすくなる。

Adobeの株価が4倍近くに
Adobeが2012年4月に月額課金制の〈Creative Cloud〉を発表した日から、株価は4倍近くに上がり、月額課金のビジネスが年間売上4000億円以上までに伸びている。2012年、月額課金による売上は全体売上の27%しかなかったところが、今では8割以上を占めるまでに成長した。


Adobe社の株価グラフ


月額課金ビジネスのARR(年間契約金)のグラフ。今では年間4000億円以上のビジネスに。

Adobe全体売上の8割以上が月額課金制

日本でも創業20年の企業が
日本でも同じような動きを見ることができる。さまざまな企業向けツールをパッケージやライセンスで販売していた Cybozu も月額課金モデル展開を始めており、クラウドサービスによる売上の割合が5割を超えている。

参考までに、Cybozu が展開しているプロダクトの一つ〈ガルーン〉のライセンス版とクラウド版の料金体系の違いは以下である。

ライセンス版:初期費用に加えてアップグレード時に支払うライセンス費用や、継続ライセンス費用などがある。

クラウド版:初期費用なし、アップグレード費用なし、ユーザー数に応じて課金されていくわかりやすい料金体系。

既存プレイヤーがMRRモデルに転換し、同時に次々とTo BでもTo Cでも新たなサブスクリプションビジネスが生まれている。近い将来、ほぼ全てのサービスが月額課金制になるだろう。

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未上場のSaaS企業336社をベンチマーキング。ACVによって変わっていく営業戦略

2016年10月 Pacific Crest が発表した、未上場SaaS企業336社を対象に行ったアンケート調査の結果をまとめた資料が興味深かったので、要点をまとめてみたいと思う。
まずこの調査に参加した企業について:

  • 75%は北米を拠点としている企業
  • 社員数15名以下で年間売上$750K (約8400万円) 以下の会社から、社員数500名以上、売上$100M (約112億円) 以上まで、企業規模はさまざま
  • 年間売上の中央値は$5M(約5.6億円)で、社員数の中央値は50人ほど

従業員1人あたりの年間売上の中央値は$130K: これは売上$2.5M(2.8億円)以下の企業を除いた中央値。従業員1人あたりの売上は、年間売上$15M~$25M(16.8億円~28億円)の企業で$133K(1500万円)、年間売上$100M(112億円)以上の企業で$214K(2400万円)になる。

平均年間成長率の中央値は35%: 平均成長率が60%を超えるのは、年間売上$7.5M〜$15M(8.4億円~16.8億円)の企業。これをACV(一顧客あたりの平均年間契約金額)別にすると、ACV$15K〜$25K(168万円~280万円)の企業が一番成長スピードが高く、平均年間成長率の中央値も年間50%になっている。

規模が小さい時はInside Salesが中心、規模が大きくなったらField Salesを中心に: 44%の企業は、年間売上$2.5M(2.8億円)を超えた時点で営業手法を Field Sales にシフトしている。

特に面白いと思ったのはACV別に見たとき。ACVが小さい会社の営業手法は、Inside Sales(会社の外ではなく電話やオンラインで行う営業のアプローチ)やセルフサーブの割合が大きいが、ACVが$25K(280万円)を超えたところから、Field Sales(会社の外に出て潜在顧客と直接会う営業のアプローチ)が中心になっていることが分かる。

マーケティングとセールスとの内訳は7:3 : CAC(顧客獲得コスト)の内訳を見ると、マーケティング(マーケティングの人件費も含まれる)のコストはCACの30%、そしてセールス(営業メンバーの人件費も含まれる)のコストがCACの70%。この比率は、営業手法に関わらず同じ結果だった。

CACの回収期間の中央値は18ヶ月: 一顧客にかかった獲得コストを回収するまでには、18ヶ月間かかっている。なお一般的に望ましいとされている回収期間は、ACV$12K (134万円)未満の場合が6ヶ月以内、ACV$12K〜$50K(134万円〜560万円)の場合は12ヶ月以内、そしてACV $50K(560万円) 以上の場合は24ヶ月以内と言われている。

年間グロスチャーンの中央値は8%: 年間グロスチャーンをACV別にみた場合、ACV$5K (56万円)以下の場合17.5%(月次1.46%)、ACV$250K(2800万円)以上だと3.3%(月次 0.27%)。このことから、ACVが上がるにつれて年間退会率が低くなっていることが分かる。

以上が Pacific Crest のレポートで僕が注目したポイントのサマリー。特に注目したのは、ACVによって営業手法や戦略、退会率、そしてCACの回収期間が変わるところだ。

十分なサンプルサイズになってきたら将来、日本のSaaS企業に絞ったレポートもまとめて見たいと思う。

※ Pacific Crestのレポートの全内容は、ここから ダウンロード できる。
※ グロスチャーンをはじめSaaSの重要キーワードリストはこちら。

為替レートは、2月26時点 $1=112円で換算

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注目SaaS企業20社のウェブサイトを見て分かったこと

Intercom、Workday、Gainsight、Salesforceなど注目の北米SaaS企業20社の料金ページとプロダクトページを見ていて、気づいたことをまとめてみようと思う。

提供しているプロダクトの数は平均して5つ
20社のSaaS企業が、平均して提供しているプロダクト・ソリューションの数は5つ。ShopifyやSurvey Monkeyのように、シングルプロダクトを提供していた企業はたったの3社。多いケースでは、Salesforceが20以上、Atlassianが12以上のプロダクトを提供していた。

70%の企業が、複数部署に展開できるプロダクトを提供している
例えばAtlassianでは、エンジニア向けのプロダクトだけでなく、カスタマーサービス向けのツールやプロジェクトマネージメント用のツール、複数の部署でも横断して使うことができるコラボレーションツールを展開している。このように、部署別に広くプロダクトを展開している企業が20社中14社。約70%を占めている。

45%がフリートライアルを提供、20%が無料プランを提供
SurveyMonkeyやBoxのように、セルフサーブ型の無料プランを提供している企業の多くは、そのプロダクトを1人で使っていても、そのプロダクトの価値を感じてもらえるサービスやプランを用意している。

一方で、BetterworksやGustoのように、フリートライアルを提供している企業は、複数人又は会社全体規模で導入されないと、プロダクト自体の価値を得られないというソリューションがほとんどだった。

料金を記載していなかった企業が45%
WorkdayやVeeva Systemsのように、大手企業を主なプロダクト提供先としている企業は、サービスプランや料金情報を掲載していないケースが多い。また、エンタープライズプランを提供していた企業の70%が料金を表示せずに、営業担当者への問い合わせを必須にしている。

平均して3.8個の料金プラン
複数の料金プランをサイトに掲載している企業は、平均して3.8個の料金プランを掲載している。これら企業は、SMBからエンタープライズまで、様々な企業規模の顧客を対象としてサービスを提供している企業がほとんど。

1人ユーザーあたりの月額単価は、平均して116ドル
料金プランをサイトに公開している会社のなかで、従業員数毎に課金しているケースを見てみると、低いところではGustoが1人当たり毎月6ドルを課金していて、高いところではSalesforceのSales Cloudが毎月1人300ドルを課金している。

以上がSaaS企業20社のサイトを見て分かったこと。

これらの内容から僕の見解をまとめると:
複数のプロダクトを出すことによっていくつかの戦略を取れるようになる。
1つは、企業への導入ポイントを増やせること。例えばHubspotの場合、セールスやCRM、マーケティングソフトなど、異なるビジネスニーズにフィットするプロダクトを展開することで導入ポイントを増やしており、Atlassianは、エンジニアやプロジェクトマネージャーが使うツールを複数展開して導入ポイントを増やしている。
もう1つは、複数の部署を巻き込めること。導入先企業が、複数の部署をまたいでプロダクトを使うことでロックイン(依存性)が高まる。例えばAppDyinamicsでは、ITスペシャリストやエンジニアが集まる部署だけでなく、経営企画やマーケティング関連の部署にもプロダクトを展開することによって、サービスへの依存性を高めている。

対象顧客の規模やサービスの特徴によって適切な対応手法が変わる。
1人で使っていてもそのプロダクトの価値を感じられるならば、セルフサーブや無料プランの提供でもサービスを拡めていくことができるだろう。でも、まとまった人数での利用、またはデータの蓄積が必要になるプロダクトで、大規模な導入となる場合は営業プロセスが複雑になるため、営業メンバーからの説明を必須にしたり、無料トライアル期間を設定することで、導入に繋がる確率をあげていく。

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A.I+SaaS:4つのモデルとスタートする時の注意点


grover_net

今さまざまな業界で、A.Iブームが到来しているのは言うまでもない。今回は、米大手VCのGreylock PartnersのSarah Guoが先日発表した、「A.I+SaaS」に関するプレゼン について、そしてA.Iスタートアップを立ち上げる時に考えるべきポイントについて書いていこうと思う。

「A.I+SaaS」4つのモデル
Sarah Guoのプレゼンによると、「A.I+SaaS」には主に4つのモデルがある:

1. 新しい情報を提供(提案)する
データを収集し機械学習を活用して、事業に必要な新しい情報を提供する。

例として:
Rhumbix – 建設現場の様々の情報(労働者のシフト、工材の受注発注等)を収集、解析し、生産性を上げる方法等を提案する。
Medallia – アンケートデータや電話のログ、購入データなどを解析し、顧客満足度とロイヤリティーの向上を提案する。
Orbital Insight – サテライトイメージを分析し、店舗へのトラフィック、国の経済成長率、原油在庫量等の情報を提供する。

2. ルールの置き換え
機械学習を活用し、より優れた発見や判別ルールを作る。

例として:
Cylance – マルウェアやサイバー攻撃を機械学習を活用して判別する。
Prosper – ローンの与信を機械学習を活用し判別する。
Clover – 病気の発症を早期に防ぐ、優れた健康保険。

3. アイアンマンスーツ
人のアウトプットを増幅する支援型A.I。

例として:
Inbox by Google – 返信メールの内容を予測し、より効率よくメール処理ができるようにする。
Awakens Network -サイバー攻撃に対応するオペレーションチームに対し、最適な対応方法を提示する。

4. 人のリプレイス
人が行うタスクを完全にリプレイスするA.I。

例として:
Clara – スケジューリング業務の置き換え。
AiCure – 適正な薬を摂取しているかを確認するタスクを画像認識で行う。

A.Iはプラットフォームではない

Sarahのプレゼンの中で「A.Iはプラットフォームではなく、差別化のための1つの要素にすぎない」という言葉があった。有能なA.Iを作っても、スタートアップが持つ全ての問題が解決されるわけではない。以下は、特に注意すべきポイントだ:

マーケット戦略が必要
A.Iスタートアップと話すときによく感じるのが、顧客獲得方法やポジショニングを含めたマーケット戦略が詳細に考え抜かれていないということ。先ほど述べたように、有能なA.Iを作っても勝手に人が集まるわけではない。戦略を立てて事業を遂行させるためには、他のSaaSスタートアップと同じくカスタマー・デベロップメント、プロダクトマーケットフィット、マーケティングやセールスオペレーションが必須だ。

残りの20%をA.Iで埋める必要があるか
A.Iスタートアップも、”LEAN” であるべきだ。できるだけ早い段階で、ユーザー検証とプロダクトマーケットフィットを確認する必要がある。
A.I.の完成度が100%だとしても、プロダクトマーケットフィットが100%達成できるわけではない。とすると、A.Iの精度が80%のときに、残りの20%を埋めるための研究と開発を半年以上続けるよりも、精度80%の段階でもMVP(実用最小限のサービスやプロダクト)を提供する方法を考えて、早めにプロダクトマーケットフィットの検証をすべきだ。
MVPを提供するときは、A.Iと人を組み合わせたソリューションとなることが多い。実例としては、パーソナルアシスタントA.iの「x.ai」が挙げられる。「x.ai」は、ベータローンチの段階で、A.I+人力でソリューションを提供して機械学習させている。

アルゴ勝負じゃなくデータ勝負
アルゴリズムよりも重要なのは、独自のデータ取得の手段。優良なアルゴリズムは徐々にオープンソース化されている。となると、差別化と参入障壁を生み出すのは、「データ」になる。他社よりもデータの量と質で勝る分野やポジショニングを狙っていく必要がある。

以上が「A.I+SaaS」の機会と立ち上げにあたっての注意点。これはあくまでも機械学習を取り入れたSaaSスタートアップについて述べている。A.Iに関連する技術が飛躍的なスピードで改善されているいま、もしかするとA.Iスタートアップの立ち上げ方についても近い将来大きな変革期を迎えるかもしれない。

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成功しているSaaS企業の価格設定とは?そして「死の谷」を避ける方法


Andreas Beutel

価格設定は、対象顧客の設定やセールスオペレーションの構築、そして目指すべき企業規模を決める上で重要なキーファクターとなる。今回はSaaSの価格設定において、考えておくべきポイントを書いていこうと思う。

成功しているSaaS企業の価格設定は?

以下の表は、Blossomstreetventuresが公開した、北米SaaS企業37社の上場時の売上、顧客数、そしてACV (一顧客あたりの年間平均単価)を一覧にしたものだ。

特に見て欲しいのは、Average Contract Size(以下、ACV)の列。高いところでは、2U (ACV 約11億円)、Veeva Systems (ACV 約8500万円)、Workday (ACV 約6900万円)などがあり、低いところでは、Lifelock (ACV 9千円)、Xactly (ACV 3万円) などがある。上記37社全体のACV 中央値は、$14,449(約160万円)。

ACV $15000〜$25000が “死の谷”!?

上の表をACV別にグラフ化すると、ACV$15,000〜$25,000の会社がないことが分かる。実は、ACV $5000〜$30,000は “死の谷” にハマりやすいと言われている。ここで言う「死の谷」とは、ACVと対象顧客がフィットせず売上の伸びが頭打ちとなり成長が止まる、またはビジネスモデルが破綻している、ということ。

しかし、自分が経営する会社のACVがACV$5,000〜$30,000だからと言って、”死の谷” に足を踏み込んでいるとは限らない。提供先となる企業の業種や業界によって、この “死の谷” となるACVが異なるからだ。実際上のグラフのように少ない数ではあるが、一般的に ”死の谷” と言われているACVでも、成功しているSaaS企業が存在している。

“死の谷” を避ける方法はあるのか。

仮に、年間売上50億円規模になることを目指す企業があるとしよう。ACVに応じて算出すると、この企業が必要とする顧客数は以下の通りとなる。

ACV ¥500,000の場合、10,000社の顧客が必要になる。ここで考えるべきは、「実際対象となる顧客数はどのくらいいるのか」。この答を求める際に考慮するべきポイントは、SaaSで独占的なマーケットシェアを取るのは難しい、と言うこと。創業18年のSalesforceでさえ、マーケットシェア19.7%と言われているのだ。

Source: Forbes

自社のACVに対してフィットする対象顧客数が、一体どのくらい存在しているのか。そして獲得できるであろう現実的なマーケットシェアから見ても、目指したい企業規模に成長させることができるのかを常に計算し、把握しておくことが重要だ。
もし、目指している規模に到達する前に頭打ちする可能性が見えたら、ACVを上げる(又は下げる)など価格設定戦略を見直す必要がある。

もう1つ考慮する必要があるポイントは、販売のプロセスがどのくらい複雑であるか。セルフサーブやインサイドセールスだけで完結するのであれば、低いACVでも成り立つだろう。しかし、販売のサイクルが長かったり、営業やカスタマーサクセスのタッチポイントが多かったりする場合、低いACVのままではゴールの達成は難しい。

段階的に。

もしも自社のACVが低すぎることが分かったとき、いきなり5倍以上のACVを狙うのではなく、機能拡充や営業プロセスの修正を行い、1.2倍、1.5倍、2倍というように段階的に見直していくことで、”死の谷” にハマることのない、企業になってほしい。

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