Matt Hodgesは、2008年から2014年までの6年間、Atlassian のコラボレーションビジネス(Hipchat と Confluence)のプロダクトマーケティングをリードし、年間売上60億円以上のビジネスにまで成長させた。そして現在は、SocialCapital、Bessemer Venture Partners、Iconiqなどから100億円以上を調達しているカスタマーコミュニケーションツール Intercom のマーケティングチームでシニアディレクターとして活躍しており、すでに1万3000件以上の導入実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMattとのセッション内容の一部をまとめてみた。
Intercomは最初、1つのプロダクトで4つのプライシングプランを提供するところから始まった。
その頃のトップページは、以下のようなデザインだった。
しかし今のIntercomは、「Acquire」「Engage」そして「Resolve」と言う3つのプロダクトに分けてそれぞれ違うプライシングモデルを提供している。
Jobs To be Done
このように、1つのプロダクトだけでなく複数のプロダクトを提供するようになった背景には、「Jobs To Be Done」というフレームワークの存在がある。Intercomでは、この「Jobs To Be Done」を応用して取り入れているのだ。
「Jobs To Be Done」は、ハーバード大学の教授Clayton Christensenが生み出した、消費者のモチベーションを理解するためのフレームワーク。ポイントは、消費者は製品・サービスを「購入する」のではなく、自分の「用事(又は仕事)」)を片づけるために製品・サービスを「雇っている」ということだ(参考)。
例として挙げられる機能として、Intercomには、顧客が世界中のどこにいるのかが分かる 〈ライブマップ機能〉がある。
この〈ライブマップ機能〉がどのように使われているのか、ユーザーの動向を観察した結果、ソーシャルメディアでの共有や、投資家にアピールするために使用されていたり、また、イベントでのPRツールとして利用されていることが分かった。
ユーザー動向を “観察” することで、この〈ライブマップ機能〉が、どんな「仕事」のために「雇用」されているかを理解することができたのだ。
Intercomのユーザーが〈ライブマップ機能〉を「雇用」する理由は、自社のユーザーが世界中に拡大していることを上手く外部にアピールするという「仕事」をしてもらうためだった。Intercomは、この理解を元に機能改善に取り組んだ。
そして完成したプロダクトは美しい見た目のほか、アニメーション付きでリアルタイムにアップデートされ、また、プレゼン時でも使える全画面表示機能や、ソーシャルメディアでも共有しやすいように個人データの非表示機能などが付くバージョンにアップグレードされた。
その結果、さらに多くのユーザーが、この〈ライブマップ〉をソーシャルメディアで共有するようになった。
“Focus on the job, not the customer”
マーケターとしてまず理解する必要があるのが、”人は、どんな「仕事」を片づけるために、プロダクトを「雇用」しているのか?” だ。それを理解するためには、たくさんのユーザーと話す必要がある。Intercom では、新規ユーザー、退会したユーザー、アクティブユーザー、非アクティブユーザーそれぞれにインタビューをした。
そしてユーザーは、主に3つの「仕事」を済ませるために Intercom を「雇用」していることが分かった。そこで、そのJob (仕事) を軸に、トップページやランディングページのデザインを変更し、プロダクトも3つに分けることになった。
ランディングページは、Intercomを「雇用」することで、どんな「仕事」を済ますことができるかを明確に伝えられるようにデザインに変更し、細かい機能の説明など、この時点では “余分” な情報をすべて外した。
マーケティングにも活用
プロダクトの「Jobs To Be Done」が理解できれば、マーケティング戦略にも活用することができる。
マーケティングは、主に5つの活動に分けられる。
Reach: Intercomを「雇用」しそうな人たちにリーチをする活動。これはPR、イベントでの登壇やスポンサー、FacebookやGoogle広告といったチャネルでメッセージを発信する。
Attract: 顧客を呼び込む。これはブログを使ったコンテンツマーケティングや、本の出版、セミナー開催などから、潜在顧客を呼び込む。
Convince: リーチしたり、呼び込んだ顧客を説得する活動。主にランディングページの最適化や、成功事例をトップページに掲載するなどといった活動になる。
Educate: プロダクトを雇用してくれたユーザーが正しい使い方を行えるための教育。How-to動画や、プロダクトのデモ、ヘルプドキュメント等といった教育教材の用意や活動。
Delight:イベントの主催や高い頻度でのプロダクトアップデートなど、雇用したことを「喜び」に繋げるための活動。
まずは、Convinceから
スタートアップは、多くのマーケティング活動のなかで、どこから手をつけるべきなのか?まずは、ユーザーを説得するためのConvinceから始めるべきだ。そのためにも、ユーザーの「Jobs To Be Done」を理解し、言葉選びや適切なストーリーを伝えていくことが重要である。
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