嵐に耐えられる会社の築きかた

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Zooey

Lars Dalgaardは、シリコンバレーのVCアンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナー。2001年にSuccessFactorを創業し、2007年にNASDAQで上場。2012年にはSAPが同社を$3.2Bで買収した。彼が最近書いたブログが非常に興味深い内容だったので、Larsの許可を得て、彼が最近書いたブログを要約することにした。元記事はこちら
一流の創業者や社長は、長くそして強く存続できる会社を作ろうとする。とくに未上場の状態を維持する会社が増えている今の時代だからこそ、長く強く存続できる会社を作ることは、必要なことであると言えるだろう。

しかし、企業の肝となるセールス、マーケティング、HR、リーガル、カスタマーサポート、会計やファイナンス部門を正常に機能させ続け、さらに優良なガバナンスを維持させ続ける、言わば「嵐に耐えられる会社を築く」というのは、過去に同じ経験を積んでいない社長にとって容易なことではない。

この「嵐に耐えられる会社を築く」ために今の社長に必要なのは、個人、プロフェッショナル両方の面で、ただひたすらに成長し続けることだ。

そして選択や決断をするときは、必ずこの質問を自分自身に問いかけていくべきだ。

「この決断は、長期的にこの企業を強くしていくのか?」

ここでは、僕自身が起業したときに得た「学び」について共有しようと思う。

成功する会社は、売られるのではなく買われる

会社を売却するときの企業価値は、他社が買収したくなるような優良な会社であるかどうかで決まる。SuccessFactorを当時の売上げの11倍の評価で売却する交渉をしたとき、僕は「この評価での条件をのまないのであれば、これ以上での交渉は行わず、会社を成長させ続ける道を選ぶ」と伝えた。僕らはあのとき、消して虚勢を張っていたわけではない。

優良な会社は、売られるのではなく買われるものだ。自分の会社を売りたがっているという情報が流れれば、その瞬間に会社の評価は下がる。景気に左右されない自立した会社を作っていれば、交渉時の立場は有利になり、売却交渉を長く引き伸ばすことによって価値をさらに上げる事ができる。

では、近道など存在しない、自立した会社を作るための方法とは何なのか。

それは社長が次の5つのポイントにフォーカスを当てて、会社を成長させていくことだ。

  1. 「早く学ぶこと」を学ぶ
  2. 良い時も悪い時も持続できる企業文化をつくる
  3. “本物” の役員構成を作る、そして使う
  4. 正しいミーティングのリズムを作る
  5. 頭の中のモンスターを殺す

1.「早く学ぶこと」を学ぶ

会社が早く成長すれば成長するほど、次から次へと難題に直面する頻度が高くなり、大きなチャレンジが続く。そしてそんな状況が続くことで、自分がCEOとして何をすべきなのかが分からなくなる。

そんな状況の中でも大きなビジョンを持ち続けようとする社長のために、「早く学ぶ」を学ぶためのヒントを紹介しよう。

永続的に、そしてアグレッシブに助けを求めるマインドを持つ

「僕が知らないことは何か?それを教えてくれる人は誰か?」 を日々自分に問いかける。他人から「自分に自信がないのか」と思われてしまうことを恐れて、このアクションをためらう起業家が多いのだが、必要としている知識やノウハウを、アドバイザーや、役員、エグゼクティブ、社員、コーチ、顧客などから積極的に学ぶことは、非常に重要なことだ。

今まで自分自身の力で課題や問題を解消し成長に導いてきた人が起業して、自分の思い描いた未来を現実のものにしようとしたとき、他人に助けを求めるというのは違和感を感じてしまうかもしれない。しかし、成長するには、「早く学ぶこと」が必要だ。自分のエゴや恐怖は、脇に置いておこう。

小規模の会社と大規模な会社の経営は違う

会社が成長しスケールし始めると、従来の経営手法に変化が求められる時がくる。社長は、そのギャップに戸惑いを感じることがあるだろう。しかし、大規模な会社で社員1000人のモチベーションを維持させ、結果を出し続けるためには、いくつかのプロセスや仕組みを導入する必要がある。

小規模の会社と同じ経営手法を大企業でも適用させようとすることは、必ず避けなくてはならない。

明確なコミュニケーションフレームワークを構築する

スケールする組織は、学習する組織である。

最高の「学習できる組織」を作るためには、マネージャーや社員が互いにフィードバックを求めたり伝えたりできるコミュニケーションフレームワークが重要だ。1人1人何が上手くできていて、何を改善する必要があるか。このフレームワークは、組織図の再設計や、後継者の育成、そして報酬額の設定をおこなう際にも非常に役立つはずだ。

ちなみに。CEOは、他のボードメンバーとこのフレームワークを実践すると良い。

リーダーシップコーチに依頼する

リーダーシップコーチは、社長の360度評価を行ってくれる。周りのボードメンバーや直属の部下からの声や意見を匿名で集め、整理をした上でフィードバックしてくれる。このフィードバックは、CEOをさらに成長させる材料となる。

エキスパートを雇用する

社長が自らセールス、マーケティング、リーガル、フィイナンス、HRなどの会社の重要な機能について学ぶよりも、それらのエキスパートである人たちをエグゼクティブチームに招き入れるべきだ。

大半の社長は、自分自身で学び、会社のほとんどの機能の主導権を持とうとする。しかし、長く存続してスケールし続ける会社をつくるためには、重要な機能は、それぞれの分野に適した人に任せていく必要がある。

2. 良い時も悪い時も持続できる企業文化をつくる

会社のカルチャーは社長がつくる。これは他の人に任せられることではない。

そして、自分自身がつくりあげたカルチャーを自分自身が信じ続けることは、会社を成長させ続ける上で、非常に重要だ。

コア・バリューを定義する。

コア・バリューを定義し、さらにそれを書き出すことは、時間の無駄のように思えるかもしれないが、とても大切なことだ。コア・バリューを明確化させるためには、クリアな考えと規律が要求される。

コア・バリューの定義で大切なのは、人が共感と親近感を感じられるかどうか、である。共感できない理念を定義づけたところで、それは存在しないに等しい。コア・バリューは、組織全体にとって大切で重宝される存在でなくてはならない。人材を採用する際にも、このコア・バリューは、常に意識することで、自分たちにより共感してくれる人材を獲得することができるだろう(参考:会社のコア・バリュー)。

3. “本物” の役員構成を作る、そして使う

社長は、自分の思い通りの経営スタイルを貫き通したいがために、役員の人員を強化することに懸念を抱くことがある。しかし、強化することによって、経営チームに足りていない要素を補完し、誤った判断をすることから守ってくれる、ディフェンスにもなる。

経営チームをより強化させるための方法は次の通り。

早い段階で社外役員を迎える

多くの会社は、創業メンバーと出資しているVCから役員体制を構成させる。ただ、前述の通り、早く学ぶための効果的な方法は、学びたい知識や経験を豊かに持つ社外役員を迎え入れること。選択基準は、会社から100%独立しており、CEOと会社のことを優先的に考え、サポートしてくれる人材だ。

売り上げ10億円に到達する前に、1〜2名ほどの社外役員を迎えて、10億円超えたところで3〜4人迎えるくらいのテンポが良いだろう。

僕自身の経験からも、社外役員を迎えることによって引き締まった経営ができて、基準と目線を上げていくことができたと思う。外からの情報や視点を参考に、重要な決断もすることもできたのは大きかった。

取締役会は、規則正しく

取締役会の延期やキャンセルはしないこと。取締役会は、会社のコアとなるメンバーが、社長やマネージメントそれぞれの現状を把握し、会社が抱えている課題を考えるきっかけになるからだ。

リアルなデータが重要

状況を正確に把握できるためには、データを持つことが不可欠だ。そのデータを、少なくとも取締役会の3日前に、役員に共有することによって、より効果的な会議ができるだろう。昨年比や計画に対してのファイナンシャルパフォーマンスはもちろん、社員のターンオーバーといった人員の数値や計画などを共有することによって、様々な側面で会社を見渡すことができる。

社長以外からもレポートさせる

少なくとも年に1度は、会社の重要な機能を任せているメンバーを集めて、レポートをさせる機会を持つと良い。これは社長以外の視点から会社の現状を理解し、会社のリーダーやマネージャーと会って話す絶好の機会になる。

クローズドなセッションの実施

会社の現状を把握するためには、2つのクローズドなセッションを行うと良い。1つは、役員とマネージメントチームのみが集まるセッション。そしてもう1つは、役員と社長のみのセッションだ。

このように2つのセッションに分けることで、他のメンバーに対する遠慮をせずに議論を進めることができ、また、会社のトップである社長の顔色をうかがわずに話すことができるため、オープンでダイナミックな議論ができる。

4. 正しいミーティングのリズムを作る

無駄なミーティングは絶対になくすべきてあるが、鍵となるステークホルダーとの定期ミーティングは会社をスケールする上で重要である。

ボートメンバーとの1:1

ボードミーティングが定期的にあるのに、また改めてボードメンバーと話す必要があるのか?そう思う人もいるだろう。しかし、ボードメンバーを正しく選んでいたら、1:1ミーティングを通して、根本的な課題を早期発見できたり、CEOとしてのスキルを磨くことができる。

マネージメントミーティング

このミーティングは、マネージメントからの状況アップデートを議題とするのではなく、会社の存続のために重要な事項や、改善点、その他普段の業務の中では話すことができない重要事項を中心に議論する。

顧客と定期的に話す

これは、スタートアップのフェーズを過ぎても重要なことだ。ある程度成長したフェーズのなかでも、定期的に顧客と話す機会をもつことは大切にして欲しい。

5. 頭の中のモンスターを殺す

自分に嘘をつかないこと。数値、KPI、計画や結果を細かく厳しい目で見て、本当に什長にいっているのか、自分が避けている現実がないかを常に確認する。

「勝つ」マインドセットを忘れずに

そもそもここまで来れたのは、他の人が不可能と思っていたことを可能にしたから。そして自分を信じたからだ。だから、自分の直感を信じることも大事だ。でも、「嵐に耐えられる会社」を築くためには、常に自分の考えを他の人の知恵を借りてチャレンジし続け、学び続けてほしい。

AppleやAmazon、Facebookといった一流企業は、膨大なプロセスを導入し、作り続け、起業家精神と会社のミッションを維持できている。

そう。ハードワークでしか会社を強くできない。近道などはない。

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