世界中が大変な時期を迎えている今、すべての業務をリモートワークに切り替えている企業が増えている。みんなでオフィスに集まる環境から、それぞれが自宅で働くという環境に変わり、従来見えていなかった課題も見えてくるだろう。コミュニケーションの取り方、マネジメントの仕方など、その環境の変化に合わせて変えていかなくてはならない。
現状、この「リモートワーク」の取り組みをいつまで続ける必要があるのかは分からない。もしかすると、リモートワークがデフォルトとなる時代が到来するかもしれない。ただどちらにしろ、リモート組織のマネジメント、そして自身のリモートワーク手法をマスターすることは大事になってくる。今回は、僕の実体験と、国内外のリソースをリサーチした結果をもとに、まとめ記事を書いてみようと思う。
今回の記事では、マネージャー向けのアドバイスと、個人向けのTipsの2つのセクションに分けて書いている。
マネージャー編
定例ミーティングを倍にする
普段の1on1実施頻度が月に2回なのであれば、その回数を少なくとも月に4回にする。定例ミーティングの回数が週に1回なのであれば、それを週に2回に増やす。リモートワークになると、オーガニックなコミュニケーションや、情報共有の機会が発生しづらくなるので、〈話をする〉というきっかけを積極的に作り、シンクロさせる時間を増やす必要がある。
1 on 1の質を上げる
リモートワークの導入による急な環境の変化や、経済状況の変化によって、人が不安や不慣れを感じることが多くなり、1on1の重要性はこれまで以上に高まってくるだろう。メンバーが何を思い何を考えているのかを聞き出す姿勢が重要になる。コミュニケーションの改善など、メンバーからのフィードバックを求める姿勢も強化しなくてはならない。
そして、何よりも健康面での確認を忘れずに。家にこもることによる精神的な負担、運動不足による体調面の不調などが発生しやすいので、生活状況のチェックも大切だ。
1on1についてのコツやポイントは、この記事とポッドキャストを参考にしてみてほしい。
毎日15〜30分のチームチェックイン
チーム全体で毎日2回(午前と午後)15〜30分程度のZoomミーティングを実施する。マイクロマネジメントをするためではなく、質問を受け付けたり、業務や会社の方向性に変更がないかの確認、チームメンバー全員の意識を揃える、そしてお互いの顔を見てコミュニケーションの活性化を図ることが目的だ。もしチェックイン中、特定のメンバーとの話し合いが必要な課題が出てきた時には、チェックインの直後に別途話をする時間を作ると良い。
これを毎日同じ時間に実施してルーチン化させることによって、みんなで共に生活のリズムを作り出す効果もある。メンバー同士の連携力を高める目的もあるので、仕事と関係のない話や、お互いのことを知るための工夫もぜひ入れてみて欲しい。
ミーティングの終わり方には、合言葉や、気合い入れの掛け声・ポーズをするのも良い。僕たちBEENEXTでは、こんな風にミーティングの最後に同じポーズと掛け声をした。
単純なことに思えるけれど、人はこういう些細なことでも、団結力を上げてポジティブなムードで、それぞれ仕事に戻る事ができるものだ。
社内の交流を活性化する工夫をする
どんな時でも、チームワークを高めるためにはお互いのことを知ること、そして信頼関係を築くことが重要だ。物理的に〈会う〉という行為ができないリモートワークには、特に工夫が必要になる。以下は、Zapier社とGitlab社が実際に行っている取り組みだ。
- ブレークアウトセッション:毎週実施される全社ミーティングの直後に、小さいグループに分かれて10〜15分間仕事に関係のないことをラフに話す機会を作る。
- コーヒーチャットをする:Donut というSlackプラグインを使って、チームメンバーをランダムにマッチングさせる。マッチングした人は、リモートでお茶やコーヒーを飲みながら雑談して、休憩時間を過ごすことができる。
- ハッピーアワーを実施:コアタイムの後に、誰でも参加できる「Zoom飲み会」を実施。
- お友達システム:新入社員向けに「お友達」を1人アサインする。きちんとオンボーディングできているのか。分からないことはないか。リモートワークの切り替えが問題なくできているのか。こういった不安要素を取り除くための相談役となる友達だ。最初の1〜2ヶ月は、高い頻度で「お友達」とチェックインするリモートワークならではの制度だ。
- 楽しいSlackチャネルを立ち上げる:仕事と関係のない面白楽しい話題を投稿し合うSlackチャネルを立ち上げる。お互いのペットを見せ合う #fun-dog や、アニメについて語り合う #fun-anime、休憩中の人が集う #fun-resting などのチャネルを作る。
全てをドキュメント化
リモートワーク文化には、組織全体で『ドキュメント化する習慣』をつけることが必須だ。
重要な会社の規約はもちろんのこと、ミーティングやワークフローをマニュアル化して、それらを全てドキュメントに落とす。これにより認識のズレがなくなり、ミーティングに参加していない人にも情報をスムーズに共有することができるようになる。そしてもう一つ、同じ説明を何度も繰り返す必要がなくなるので、効率も向上させられる。
デフォルトオープンにする
情報はできる限りオープンに。そして透明度の高い経営を。
物理的に集まることができない状況下での情報の拡散や確認の徹底は、少なからず難しくなるだろう。しかし、Slackのコミュニケーションや、KPI、チームミーティングの議事録を出来る限りオープンにして高い透明性を保つことで、改善させることはできる。
コラボレーションがしやすいルールを作る:
他のメンバーとの連携の妨げになるような物事は、できる限りなくす。例えば、メンバー全員がお互いのカレンダーを閲覧できるようにしたり、リアルタイムで話しやすくするためにリモートワークでもコアタイムを設けたり、基本的に仕事中はSlackをオンラインにした状態にすることを推奨するなどは、実行してみると良いだろう。
期待と方針はよりクリアに
目標設定やKPIはクリアにしておくこと。そして、相手に期待するコミュニケーションの取り方や仕事の仕方なども共通認識を持っておこう。期待と方針を明確にすることは、リモートワークに限らず、社内を健全な状態に保つための重要な要素だ。また、マネージャーやリーダーは、戦略や方針の理解度を ”スーパークリア” にして、メンバーとはオーバーコミュニケーションをしていって欲しい。
個人編
リモートワークを上手に行うには、もちろんメンバー個人の努力と協力が必要だ。
ルーチンを作る
作業をする場所と生活の場所が一緒になるので、仕事とプレイベートの切り替えルーチンを意識的に行う必要がある。例えば、朝起きたらすぐにパソコンを触り始めるのではなく、会社に行くつもりで洗顔やシャワーをして着替えをし、身嗜みを整えてみると自然とスイッチが切り替わる。他にも、朝コーヒーを入れたり、メディテーションをする時間を設けることを自身のルーチンに入れて、生活のリズムを作る。
仕事を始める前だけでなく、仕事を終える時のルーチンも重要。着替えや運動などを取り入れて、オフモードのスイッチに切り替えていこう。
Zoomは基本ビデオをオンに
人は基本的に社交的な生き物で、人の目や顔を見ながらコミュニケーションをすることに慣れている。オンライン会議の際、ビデオをオンにすることで、より通常と同じ感覚でコミュニケーションを取ることができるし、親近感を感じやすくなる。
時間をブロックする
リモートワークになると、Slackやメールでのコミュニケーションがより活発になる。そして、人に見られてないので躊躇することなくソーシャルメディアを見ることもできる。
でも、よりクリエイティブなアウトプットを出したり、自分の考えをまとめたりする上で、思考が邪魔されないまとまった時間を作ることも非常に重要だ。
スマートフォンやパソコンにくる通知をオフにしたり、メールやソーシャルメディアを見ない時間を毎日作り、その時間は予めブロックしておくことで、自分の時間を管理して欲しい。
作業スペースを作る
可能な限り、作業をするスペースと生活をするスペースは離してみよう。ベッドの上やソファの上で作業をするのは危険。普段リラックスしている場所で作業をしてしまうと、リラックスをしたくなるトリガーになって、仕事とプライベートのオン・オフがしづらくなる。できれば、部屋の隅っこでも良いので仕事専用のデスクやエリアを作ることができれば切り替えがしやすくなるだろう。
絵文字やスタンプをもっと使う
文字だけのコミュニケーションは、どうしても相手に冷たく距離感のある印象を与えてしまう。チーム内のコミュニケーションには絵文字やスタンプを積極的に使い、親近感を感じるコミュニケーションをすると良い \(^o^)/。
運動をする
リモートワークをしていると、どうしても体を動かす機会が減る。家の中でも決まった時間にちょっとした運動をするとリフレッシュをする機会にもなる。今はYouTube上にもたくさんのエクササイズ動画がアップされているので、自分の気に入ったエクササイズを見つけて、ちょっと集中力が落ちたなと思う時には、運動をしてみるのも良い。
オーバーコミュニケーションをする
オーバーコミュニケーションとは、コミュニケーションの回数を上げることではなく、目的意識を持って、明確に情報を伝えるために取るべきコミュニケーションのことを指す。会社で顔を合わせてのコミュニケーションができない分、確認、報告のオーバーコミュニケーションはとても大切だ。連携しているメンバー同志の状況を正確に把握し、共有すべき情報をクリアに伝えられるようにすること。これによって、メンバー全員が、目的に向かって正しい判断をして動くことができるようになる。
以上が、リモートチームのマネジメントとリモートワークを上手くやるポイントだ。上手くやれば今まで以上に連携力が高まり、普段よりパフォーマンスを向上させることだって出来る。
リモートに切り替えてから、生産性が4%~13% 上がったと言う調査結果も出ている。これを機にリモートワークの〈マスター〉になって、この困難を自分自身と組織を強化する機会に変えていこう。
参考ソース:Zapier’s guide to working remotely、GitLab’s Guide to All-Remote。
(編集してくれたkobajenneに感謝)