差をつける、2023年

そもそも「予想する」ことは難しいことだけど、2023年の予想は特に難しい。

「リセッションは浅く、今年の前半に底を打つだろう」という比較的楽観的な予想もあれば、「2022年より深刻な状態になり、2024年に入ってからでないと回復の兆しはみられないだろう」という悲観的な予想も出ている。

まだまだ先行きが不透明なこの1年、僕たちはどのように突き進んでいくべきか。

起業家たちからもらう質問の中でも、もっとも多い質問の一つなので、僕なりの答えをブログにまとめてみようと思う。

強いのか?それとも弱いのか?

自分が経営するスタートアップの状態は「強い」のか「弱い」のか

同じフェーズのスタートアップと相対的にみて、KPIの進捗、ユニットエコノミクス、財務状況、組織の状態はどうか。もう一度見つめ直してみてほしい。

強い状態でいることは当然だ、と思う人も多いだろう。でも、変化の激しい市況の中で「強く有望な企業」でい続けるためには、一つの視点にとらわれず、その変化に順応できる“秀でた強さ”が必要だ。

既存株主にVCが入っているのであれば、「僕たちは今、強い状態にあるのか、有望だと感じるか」を聞いてみるのも良い。日々スタートアップを支援しているVCの視点で意見をもらえるだろう。

まだ株主がいなくても、VCが実施しているオフィスアワーや相談会などで話をする中で、自分たちの強さや弱さの気づきを得ることはできると思う。自分たちから見える景色だけでなく、俯瞰的な意見もぜひ取り入れて見つめ直してみてほしい。

その結果、自分たちが強く有望な状態であると考えるのであれば、市況にかかわらず攻めのスタンスをとっても良いと思っている。資金調達の面においても、強く有望なスタートアップならば調達を成功させられる可能性は十分ある。

一方、「弱さ」が見えたスタートアップは、「強く有望」なスタートアップになるために何をすべきなのか、既存計画の見直しの必要性などを含めて考えるところからスタートしてみてほしい。

大切なことなのでもう一度。とくに市況の変化が激しい時期は、「強さ」を測る投資家の基準やセンチメントも頻繁に変わるので、株主はもちろん、これから関係を築いていきたいVCや投資家たちと、自分たちの強さや有望さを確認する機会を定期的に設けよう。

C-90・60・10プランをつくる

達成確度 90%、60%、10%ごとのプランをつくる
※この「C」は「Confidence(自信度)」を表す

これは、北米のSaaS特化VC SaaStr が推奨しているファイナンシャルプランの立て方。

(参照:SaaStr「The 3 Financial Plans You Need for The Year: C-90, C-60 and C-10 (Updated) 」内のスライドを日本語に翻訳したもの)

まずベースプランとなる「C-60」をつくる。「それ以上だとストレッチが足りない、それ以下だとリスクが高すぎる」というちょうど良いバランスで設定する。

そして「C-90」。これは悲観的なシナリオになったとしても十分に資金が確保できるのか、ランウェイを確保できるのかを確認するためのもの。全社に共有するためではなく、あくまでも経営陣の中で共有するためのプランだ。つくり方は比較的簡単で、ベースプラン(C-60)から売上を20%程度カットした数字を設定する。

「C-10」は、よりストレッチさせたプラン。ベースプラン「C-60」よりも20%ほど上回った数字を設定する。例えば、年度成長率100%が「C-60」であれば、「C-10」は年度成長率120%を設定する。ちなみに僕の個人的な考えとしては、SaaStrが推奨する達成確度10%〜20%というのは、少々ストレッチしすぎているように感じている。「C-30」くらいに調整してみても良いのでは、と思う。

プロダクトは、命

プロダクトの予算は、可能な限りカットしない方が良い

予算の見直しでコストカットを実施するとき、全体を均等にカットしようとする企業をよく見かける。でも、プロダクトは攻め続けるべき。プロダクトは、スタートアップにとって命であり、差別化を実現できる非常に重要な要素だ。プロダクトが劣ってしまうと、景気が回復したときにも大きな不利になってしまう恐れがある。

現実の理解

向き合うべきは、あなたの現実

SnowflakeのFrank Slootmanに、不景気にどう対処すべきかと聞いたとき、彼のアドバイスは「ニュースに振り回されず、ビジネスの中で起きていることだけに反応すべき」だった。市場はあまりに大きく複雑。だから、マクロ経済が悪かったとしても、自分が取り組んでいるビジネスや市場には全く影響がないということだってあり得るのだ。

「あなたの現実は、隣の人とはまったく異なるかもしれません」~ Frank Slootman

今年の予算は、どんな状態か?
抱えている課題のトップ3は、何か?
お客さまは、何を考えているのか?

不透明な市況に右往左往するよりも、これらの理解を徹底的にアップデートすべき。

自分とお客さまの状況を客観的にみてしっかり理解し、それらを基にアクションを取るべきなのだ。

晴天では15台も追い越せない……でも、雨天なら追い越せる。

“You cannot overtake 15 cars in sunny weather…but you can when it’s raining.”

F1界のレジェンド、アイルトン・セナ氏の言葉。

環境が良ければ、誰もがアクセルを踏む。採用もマーケティングも、みんなが先行投資をする。そのような中で差を生み出すのはなかなか難しい。

ならば、今僕たちがいる環境は、強い会社がより強くなる絶好のチャンスだと捉えてみたい。PMFを達成し、ユニットエコノミクス、財務状況を改善して、プロダクトを強化する。競合との差をつけるなら、今だ。

(記事の編集してくれたkobajenneに感謝)


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