思いやりと率直さ。リーダーに必要なコミュニケーションスタイル。

部下や同僚に対して、効果的にフィードバックができるコミュニケーションスタイルを身に付けることは「良いリーダー」になるうえで、とても重要なこと。

間違いを指摘するだけのコミュニケーションでは一方的に厳しさだけを与えてしまい、次第に周囲の人間は、その人に物事を話すことさえ躊躇し、恐れ始めてしまう。逆に、褒めてばかりのコミュニケーションでは、相手の成長の機会をつくることができなくなってしまう。
良いリーダーに求められるのは、「成長の機会」をつくり、また「オープンな関係を構築」できるバランスの取れたコミュニケーションが必要だ。今回紹介したいのは、Google出身のKim Scott(キム・スコット)氏が提唱したフレームワーク『Radical Candor(徹底した率直さ)』だ。

このフレームワークには、2つの軸がある。

縦軸は「思いやり」- これは、相手のパフォーマンスや仕事の能力だけでなく、相手を一人の人として、その人とパーソナルな関係を築くこと。注意や意識を100%その人に向けて話すことも重要だ。

横軸が「率直さ」- 伝えることが難しい内容でもきちんとフィードバックをして、相手にまっすぐに伝えようとする姿勢を意識する。常に相手がチャレンジできる機会、ストレッチできる環境、そして成長できる場をつくることで、仕事の質に高い基準を設けてそれを維持する。

この2つの軸を取り入れたコミュニケーションスタイルを徹底するためには、いくつかのポイントがある。

フィードバックを求める: 人に対してフィードバックをするには、自分も相手からのフィードバックをきちんと受け入れられることを見せる(証明する)べきだ。フィードバックをもらった時には、自分をかばったり言い訳をせず、受け入れる姿勢を見せて次のアクションやコミットを示す。フィードバックを求めるベストなタイミングは1on1の最後。聞き出し方は、その時々で変えて工夫していくと良い。(例えば僕の場合は「もっと気持ちよく働くために僕にできることはあるか」、「今モヤモヤしてることはあるか」、「(あなたの)ミッションを果たすために僕が始めるべきこと(または止めるべきこと)はあるか?」など、質問の仕方を変えるようにしている)

ポジティブなフィードバックをする:フィードバックを率直に伝え合える関係になるために、ポジティブなフィードバックをしてバランスをとることも重要。こうしたポジティブな会話は、できる限り他の人も話が聞こえるオープンな場所で行うことで、その人のプレゼンスを上げることができ、同時に会社が推奨したい行動を他のメンバーに知ってもらう機会になる。1on1の時だけではなく普段からこうしたコミュニケーションを意識する。

普段からフィードバックをしあう文化を作る:フィードバックをし合う機会は、上司と部下との間だけではなく、メンバー同士でも積極的に行う文化があると良い。他のメンバーに対して意見がある場合、マネージャーやリーダーを介して話をするのではなく、メンバー同士で直接話をするよう促すことによって自然と自発的にフィードバックをし合う文化が根付いていくだろう。

率直なフィードバックの仕方:相手にフィードバックをしたいことがあれば、1on1ができる次の機会を待つのではなく、できる限りすぐにフィードバックの場を持つようにして欲しい。お互いの記憶の中で、そのシナリオがフレッシュな状態に話をした方が、認識や理解のズレが生じにくいからだ。

1〜2分でも良いので時間をつくり、他の人には聞こえないプライベートな環境で話をする。

その時フィードバックをする側は、謙虚さを忘れず、言葉選びもその人を攻撃するような話し方ではなく、その行動や考えを指摘する。

(例えば「あなたは間違っている」と断言するのではなく「僕はそのアイディアにこういった間違いがあると思う」という伝え方に変える。)

行動(または状況)、インパクト、提案の順で伝える:フィードバックをする時の順番も意識が必要だ。まず「指摘したい行動は何なのか」を伝え、「その行動が周りに与えているインパクト」について、そして「それを改善するための提案」で終わらせる。

例えば、マーケティングチームのリーダーに対してフィードバックする時:

【行動(または状況)】
背景も伝えることなくチームに否定的なフィードバックと改善の指示(行動)だけを出してしまっている。

【インパクト】
■ その指示が何の理由でどこから来ているのか
■ なにが重要なのか
■ どの程度の緊急度なのか
こうした点が全くチームに理解されない状態となり、結果誰にもささらないアウトプットが生まれてしまう。

【提案】指示を出すときは、背景、ターゲット、緊急度、重要な要素が何になるのかをしっかり含めた伝え方をすると良いと思う。

感謝を忘れずに:そして最後に。もちろん感謝を忘れずに。フィードバックをするというのは、その人がエネルギーと時間をかけて伝えてくれているのだから、フィードバックをしてくれたことに感謝の気持ちを伝えることを忘れずにいたい。フィードバックがしやすい文化を根付かせるためにも重要なことだ。

以上が、キム・スコットのフレームワークだ。経営者やリーダーは、ぜひこのフレームワークを取り入れて、良いコミュニケーションスタイルを実践して欲しい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)

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「人」の支援を軸に、100年続くSaaS企業を起業家と共に築く。LTVを最大化するVCを作りたい未来の仲間へ。

日本のSaaSの歴史は、まだ始まりにすぎない。

僕は、今後さらなる拡大の一途を遂げるであろう国内SaaS市場、なによりSaaSというモデルの無限の可能性に惹かれて、SaaSに特化したファンドALL STAR SAAS FUNDを2019年7月に設立した。

これまで、たくさんの起業家と出会い、ALL STAR SAAS FUNDを共に成長させていく仲間を集め、各分野のプロフェッショナルをメンターやアドバイザーに迎え、SaaS起業家のための支援プログラムを実施してきた。そのなかで、経営の強化、チームの成長、そして事業の成長を加速させるために企業が乗り越えるべきハードルや、より強固な組織を築くために必要不可欠な要素など、起業家に伝えたい、伝えるべき「気付き」に多く出会った。

僕たちは、その気付きをきちんと具現化させたいと強く思っている。

このブログは、端的に言えばALL STAR SAAS FUNDの仲間を募集するためのリクルート投稿だ。僕と話をしたことがある人にとっては、真新しい情報は一切含まれていない投稿になるけれど、僕たちが考えていること、実際にどのようなことをしているのか、そして大切にしていることは何なのかを改めて伝えたいと思う。

そしてもし、僕たちの考えや活動に関心を持って、仲間に入りたいと思ってくれた人がいるのなら、ぜひ連絡をして欲しい。

僕は、SaaSの魅力に心の底から惚れている

B2B SaaSは、サービス提供者と利用者の関係が「一度きり」になることがなく、サービスを利用しはじめてもらってからが本番と言っても過言ではない。サービスを提供する側は、顧客の成功を一番に考え、利用者との関係を構築し、最先端のテクノロジーやソリューションを提案し続けていく。常に「継続」が軸となったビジネスモデルだ。

僕は、この誠実で正直、そして進化を怠ることがないSaaSの世界に心底惚れ込んだ。

そしてもう一つ感じていることは、『日本はSaaS大国になる可能性を秘めている』ということ。労働人口が減少傾向にある中でも生産性を高め、維持していくためには、SaaSの力が必要だと考えている。

ビジネスモデルの美しさに惚れたこと。そしてSaaSには「これからの日本を救う」と言っても良いほどの可能性があると信じていること。

これ以上に自分のパッションと、世の中が求めることがマッチすることはないのではないか。

こう考えた2015年、僕は国内のSaaS事業を中心に投資していく形に自身の投資方針を振り切ることを決めた。

SaaSは決して「ブーム」ではない。この歴史は、100年先も続くと信じている。

そもそもサブスクリプションというモデルは、つい最近生まれたものではない。17世紀、ドイツの出版社がこのモデルの基となるサービスを提供し始めたことがはじまりと言われている。その後このモデルは、様々な業種で適用され世界中に広まったわけなのだが、ソフトウェアの世界でこのモデルが受け入れられ始めたのは、90年代に入ってから。歴史はまだ浅く、これから先も長く、大きな成長を見込めると信じている。

数字の面で見ても、国内民間企業のIT投資額は年々増加傾向にあり、2020年度は13兆円に達すると予測されているのに対して、SaaSの市場規模は未だ約5000億円程度と言われている。

SaaS市場に対する注目がどんどん高まる中でも、国内のSaaS浸透率はまだまだ低く、始まりにすぎないと言えるだろう。ALL STAR SAAS FUNDは、この先10年、いや100年先も続く企業を築くためのパートナーのような存在であり続けたいと思う。

指標化しやすいSaaSだからこそ「人」を軸にした支援をする

MRR、T2D3、チャーンレート、営業効率、マルチプル。

SaaSは良くも悪くも指標化しやすい。経営者として数字を無視するというのは無理な話だけれど、僕たちが最も重要視したいのは「人」だ。その理由は至ってシンプル。会社を動かす原動力は「人」から生まれたビジョンと信念であり、全てを現実のものにしていくのも「人」だからだ。

そこで僕たちは、2019年から「人」を軸とした3つの支援プログラムをスタートさせた。

⬛️ Leadership

一流の会社には、一流の組織が必要。

この一流の組織を作るためには、まずトップからの情報が組織全体に正しく伝達していること、認識のズレが生じない状態を維持することが必須だ。そして、さらに組織として進化し続けるにために、ボトムアップでフィードバックや課題が拾い上げられる心理的安全性のある文化を築いていくべきだ。

そこで僕たちは、効果的なコミュニケーションの取り方や、矛盾した動きが発生しない目標設定の仕方などを重点に置いた経営者層に向けたプログラムを提供している。

その一つの例としては、SmartHRで実施している組織評価がある。年に1度、過去5回この組織評価を実施し、フィードバックや改善提案をさせてもらっている。その他にも、社長と部下との1 on 1の様子を録画で確認してフィードバックを行うなど、直接的、かつ実践的に効果を感じてもらえる取り組みを中心に実施するよう心掛けている。

⬛️ Recruitment

SaaS企業の場合、少数精鋭の経営は難しい。

ARR 100億円を目指すのであれば、300人規模の組織が必要と考えた方が良いだろう。そこで僕たちは、優秀な人材の紹介はもちろんのこと、会社の魅力を外部に伝えるための採用ブランディング手法や、クロージング率を高めるためのサポートも行っている。

ALL STAR SAAS FUNDのタレントパートナー楠田が主となってスタートさせた日本最大のSaaS特化型タレントコミュニティーの規模もますます拡大している。最近では、投資を実行してから15日以内に、その投資先企業のCOOの採用を成功させる事例も出てきている。

⬛️ Enablement

一人一人のポテンシャルが最大限に引き出されていること。そしてそのレベルを向上させ続けることは、組織全体のパフォーマンスレベルを上げるだけでなく、会社のモラルを高く保つためにも重要なこと。

支援先企業の経営者層のみならずチームの誰もが、ALL STAR SAAS FUNDに参画してくれている一流のメンターやアドバイザーのノウハウを学び、経験に触れることができるよう機会を提供している。

例えば、営業レベルを向上させるためのクローズドワークショップの開催、支援先のインサイドセールスチームをゼロから立ち上げるための支援や、営業資料のブラッシュアップ、営業のロープレーなども実施し、吸収した知識やテクニックは、全て自社で確実に実践できるように1対1でサポートをし始めている。

これらの要素は、一流のSaaS企業を作るために必ず強化させるべきことであり、多くのSaaS企業の成長に携わらせてもらっている僕たちだからこそできる、特に注力すべきプログラムだと考えている。

LTVを最大化するVCへ

SaaSは、LTV(顧客から生涯にわたって得られる利益)を最大化するビジネスだ。

短期的な利益よりも顧客と共に成功し、生涯に渡って互いの価値を最大化させる。チャーンを最小限にし、継続率を最大化する事ことに注力する。

SaaSに特化した投資をしているからこそ、僕はVCとして、僕たち自身にもSaaS起業家たちと同じ概念を適応させたいと思っている。短期的なイグジットやリターンではなく、長期的なサクセスと最大価値を共に追求していきたい。

これを実現するためには、従来のVCファンドの形とは違う挑戦をしなくてはならない。投資先はもちろん、関わるすべての人たちとより強固な信頼関係を築き、環境を作り上げていかなくてはならない。100年以上続く産業を築こうとする起業家にとっての最高のパートナーとなり、LTVを最大化させるために投資をし続けたいと考えている。

ALL STAR SAAS FUNDを設立してから1年半。この間に参画してくれたタレントパートナーやメンター、アドバイザー、そしてサポートしてくれるみんなの協力によって、少しずつ描いていたものが形になり、効果も実感し始めている。

でも、まだまだこの取り組みは始まったばかり。未熟な点も多くあるし、サポートが行き渡ってない支援先の方が多いのが実情だ。

僕たちは今、この構想とビジョンを一緒に実現できる仲間を探している。

僕たちと一緒にこの挑戦にワクワクしながら挑んでくれる人、そして僕たちのバリューに共感してくれる人は、ぜひ応募フォームから応募してほしい。

(編集してくれたkobajenneに感謝)