ARR100億円のSaaS企業を作る10項目

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先日、支援先のPOLLIFE PEPPERが主催するイベントで、① 世界最大級のSaaSカンファレンス「SaaStr」について、そして② 過去僕が20社以上のSaaS企業に投資して学んだ事について話をさせてもらう機会があった。

今回のポッドキャストでは、このイベントで話した2つ目の内容の一部を公開しようと思う。

以下はポッドキャストで話をしている内容のサマリーなので、ポッドキャストを聴きながら、または聴いた後に読んでみて欲しい。

その1:まずは、カスタマーサクセス

SaaSに必要なのは、とにかくまずは「カスタマー・サクセス」だと思う。

このステップを後回しにしたりスキップしてしまうと、後で痛い目をみる。

カスタマーサクセスをきちんとやれば、クライアントの満足度が上がり、リファレンスを出してくれる。良いリファレンスが多ければ、新規クライアントの獲得ハードルも下がる。

退会率が、年間10%なのと1%なのでは経営の難しさが全然違う。

最初は小さく感じるかもしれないけれど、売上の数字が大きくなればなるほど退会率の痛みも大きくなる。

目標にすべき更新率の目安は、年間契約の場合で更新率が90%以上であること。

月契約の場合は、チャーンレート1%未満で運用すべき。

その2:採用計画を達成しなければ、売上計画を達成することなど不可能

売上を伸ばすためには、人が必要だ。

売上を1億円伸ばすために必要なカスタマーサクセス人員は1〜2名を目安にすると良い。

また、営業一人あたりが新規で獲得する1年間のARRは5,000万円。ということは、ARR5億円を達成するには、10人の営業担当者が必要になる。

一人あたりが取れるARRを考慮しつつ、会社の目標を達成するために、何人の人員必要なのかを常に考えなくてはいけない。

もう一つ忘れてはいけないのは、新しく人が入社した後、その人がフル稼働できるようになるまでに時間がかかるということ。計画を立てる上で、この点も考慮する必要がある。

その3:ポジショニングが超大事

クライアントが「これが自社にとって最適なプロダクトなのだ」と一瞬で分かるような売り方をするべきだ。

展開するプロダクトはハイエンドなのか、またはローエンドなのか。

例えば人事労務や建築など、どこの部署または分野に特化するプロダクトなのか。これらをはっきりとしてポジショニングすることが重要。

もし、クライアントに対するアピールポイントが機能比較になってしまった場合、それは既にポジショニングに失敗しているということだ。

プロダクト導入を検討する時に「○○なら▲▲社のプロダクトだ(「人事労務ならSmartHR」のように)」と瞬時に自分たちのプロダクトを相手に思い浮かべさせること。そして、導入検討に使う時間など必要無いほど素早く、相手が導入を決断できるような、《決定的なブランド力と実績》を持つことが大切だ。

狙ったポジショニングは、独占できたほうが良い。勝率9割以上にするべき。

営業とマーケティングの戦略は、とにかく顧客目線で。

導入するプロダクトをクライアントが選ぶ時どのようなことを気にしているのか、どのような判断基準があるのかをリストにしてみる。その結果、自分たちのプロダクトが第一候補になれているのかを常にウォッチすること。

実は、負けても良い商談もある。そもそも狙ってないポジショニングで負けたのであれば、それは無視しても良い。しかし、自分たちの強みとしているポジショニングで負けた場合は、かなりシビアに見たほうが良い。

負けてもいい商談、絶対に勝たないといけない商談を明確にすべきだ。

その4:価格、価格、価格

「最適な価格」は常に変化する。あのSalesforceでも、7回ほど値段が変わっている。

プロダクトは常に進化しているのだから、クライアントにとってのメリットが増えれば、価格が上がるのは当然の動き。また、カスタマーサクセスのコストが上がった場合も、価格を上げるタイミングに繋がる。

価格によって、プロダクトの見え方が変わる。

価格は、ハイエンドなのかローエンドなのかを表現するための一つの方法だ。

価値、価格の両方の面で何一つ懸念されずにプロダクトが売れ続ける時は、値上げを検討するべきタイミングだ。プロダクトは、少しの文句を言われながら導入されるのがちょうど良い。

ありがちなのは、最初の価格設定を安くしすぎるケース。とりあえず、次のクライアントには、その2倍の価格で提案してみると良い。過去、初期の価格設定を3万円にしていたプロダクトが、30万円にまで値上げを成功させたことがある。自分たちが考えるプロダクトの価値とクライアントが考える価値は異なる。自分たちの目線より、クライアント目線で探るべき。

その5:売上継続率100%以上でないとユニコーンにはなれない

アメリカの上場SaaS企業49社の平均売上継続率は約120%。

少なくとも売上継続率が100%以上でないと、時価総額1,000億円の企業にはなれないと思う。

現実に売上継続率180%の企業も存在し、その企業は既存クライアントだけで翌年の売上が80%増になる。売上継続率が高いということは、顧客満足度が高くなり、顧客が定着する。

ということは、新規に必ず獲得しなくてはいけないクライアント数が減ってストレスが減り、企業経営自体が楽になる。

クライアントが成功すればするほど、価格を上げられる料金体系にすることが重要。

とにかく意識すべきは、クライアントの成功の単位。人事はヒト単位、営業は顧客単位、デベロッパーはAPIコール単位、アカウンティングは金額単位など。どのような単位で物事を考えているのかを念頭におく。

その6:プレイブック無しでは、スケールできない

SaaS企業は、多くの人を入社させて、戦力化させていく必要がある。

すべての部隊に、それぞれのプレイブックが必要。

営業チームなら、営業時のスクリプトや、商談のスタイル、戦略など。

カスタマーサクセスチームなら、顧客の成功の定義など。

マニュアルやプレイブックを持つことが超重要だ。

初期段階は属人的でも問題ないが、部隊が100人以上になったときに属人性のある体制は負債になる。

そして、ARR10億円を超えると、プレイブックがないと企業全体が成り立たなくなると言っても過言ではない。

その7:CS、セールス、マーケ仲良くせなあかん

本当に成功しているSaaSは企業は、部署間の連携能力が高い。

例えば、営業チームは顧客が何を考えているのか。どういう機能があればさらに導入してもらえるのかを理解しているはず。この情報は絶対にプロダクトチームにフィードバックするべきだ。

営業チームが現存するプロダクトを販売し続け、プロダクトチームは自分たちの仮説に頼って開発を続けていく状態は、一番避けたい。

また、既存クライアントが何に困り、何を求めているのか。どうしたらよりハッピーなシチュエーションを作り出せるのかは、カスタマーサクセスチームが一番理解しているはず。この情報もプロダクトチームにフィードバックすることで、今後のプロダクトがよりクライアント目線のものになる。

その8:セールスフォースを使い倒せ

どこかで、事業の成長スピードが遅くなったり、いつもより高いチャーンレートになったりする場面に出くわす。そんなとき重要なのは、どれだけ早くその原因を突き止めることができるかだ。

リードからのコンバージョン率、成約してからの継続率などのKPI管理、各クライアントのライフサイクル、その他全ての情報をしっかり管理して、いつでも見返して分析できるようにしておくこと。

これらの情報が整理できていないと、いざ営業効率を上げる必要が出てきた際に、どこから何を始めるべきなのかが分からなくなる。

その9:SaaSは人めっちゃいる

Boxは、ARR700億円突破のタイミングで従業員1600人、SendGridは、ARR100億円突破の時に従業員300人が在籍していた。なかには、ARR10億円のタイミングで従業員100人を突破しているSaaSスタートアップも存在する。

伝えたいのは、SaaS企業を経営者は、たくさんの人を雇う組織を経営する覚悟が必要だということ。

SaaS企業に「少数精鋭」は、ない。

大規模で、人がたくさんいる状態をイメージして経営した方が良い。会社の文化、採用基準、コミュニケーションの取り方、目標設定の仕方など、これら全てを上手くまわしていくことが出来ないと100人、300人が在籍する組織の経営は不可能だ。

少しでも壊れたなと思った時点で、スピーディに対応し修復すること。たとえ、従業員が20〜50人のタイミングでも、それは同じ。一旦放置すれば、修復はどんどん困難になる。覚悟が必要だ。

よく、プロダクトには興味があっても、経営には興味がないという経営者がいるが、経営に興味がなければ、ARR50億円、100億円の会社は創れない。

マネジメントや経営に、関心を持って欲しい。

人を採用して活かすこと。高いパフォーマンス性を維持できる組織にしなければならない。

その10:SaaSは美しい。なんとかなる。

SaaSは、矛盾がないビジネスモデルだ。

クライアントの満足度が高ければ退会率が低くなる。

退会率が低ければ、その年の売上が来年の売上としても残っていく。

そういう美しいビジネスモデルだ。きちんとやれば必ず良い会社になっていくはずだ。

そして、他のビジネスモデルと違って、急に売上がゼロになることがない。

そう、なんとかなる。

SaaSは、正しくやれば、正しく成長する。

Photo and sound edited by kobajenne


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