参入障壁を生み出す「13種類のネットワーク効果」

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本記事は、https://www.nfx.com/essays を要約したものです。著作者(James Currier)から転載の許可を得て掲載しています。
※一部説明を加えています。

PayPal、Microsoft、Facebook、Uber、Twitter、 Salesforce。どの企業も世界に大きなインパクトをもたらし、そして、大きな「価値」を持つ。

これらの会社に共通することとは何なのか。
それは、彼らが強力な「ネットワーク効果」を持っているということだ。

「ネットワーク効果」は、参入障壁を生み出すための4つの要素のうちの1つ。その他にも参入障壁を作るための要素として「ブランド」「スケール」そして「エンベッド(埋め込み)」があるが、「ネットワーク効果」は、特に強い影響を持つ。

ネットワーク効果とは、同じプラットフォームやサービスを利用するユーザが増加することによって、それ自体の効用や価値が高まる効果のこと。例えば、電子メールを使うユーザーが増えれば増えるほどメールを送信できる相手が増加し、メール自体の価値が高まる、というのも1つの例だ。

ネットワーク効果は、13のタイプに細かく分類することができ、それらは全て大きく5つのカテゴリーに属している。下図は、これら13のタイプをカテゴリー別に色分けしたもの。円の中心にある〈Physical (物理的)〉は、ネットワーク効果の中でも一番強い影響を持つ(参入障壁が一番高い)。円の外にいけばいく程、ネットワーク効果が弱くなる。

これから、ネットワーク効果が強い順に、それぞれのタイプを紹介していこう。

Physical (Direct)
上図で、青色にカテゴライズされているのは「Direct Network Effects」。
一番シンプル、且つ強いネットワーク効果で、プロダクトが利用されればされるほどユーザーに還元される価値が上がる。

フィジカル・ネットワークの分かりやすい例は、電話回線のネットワーク。電話をかける相手が1人しかいなければ「電話」自体に大きな価値は無いが、かけられる相手が増えれば増えるほどその価値は上がる。電話回線を引くという多額な先行投資こそ必要なものの、一旦整ってしまえばマーケットを独占できる程の強力なパワーを持つ。

例:道路、線路、水、電気やケーブルテレビなど。

Protocol (Direct)
プロトコル・ネットワークは、コミュニケーションや情報処理がスタンダード化され、誰でもそのプロトコルに沿ってネットワークを活用できる。

例:FaxやTCP/IP。最近ではビットコインや、イーサリアムなど

Personal Utility (Direct)
パーソナル・ユーティリティー・ネットワークには、主に2つの特徴がある。
まず、ユーザーのアイデンティティー(身元)がネットワークに紐づいていること。もう1つは、ビジネスや個人的な理由で、そのプロダクトまたはサービスが毎日利用されていること。主にコミュニケーションやコラボレーションの手段になることが多い。

例:Facebook Messenger、Slack、SkypeやSMSなど。

Personal (Direct)
パーソナル・ネットワークは、利用者の「アイデンティティー」と「評判」が紐づいているネットワーク。このネットワークを活用して自身の評判を築いている人が増えれば増えるほど、ネットワークに参加するインセンティブも増え、価値も上がる。

例:Facebook, LinkedIn, Twitterなど。

Market Network (Direct)
マーケット・ネットワークは、「アイデンティティー」と「コミュニケーション」の要素に「トランザクション(取引)」の要素が加わったネットワーク。
純粋な取引だけを目的としたマーケットプレイスのネットワークと違って、ワークフローやコラボレーションができるネットワークで、プロとしての評判を築くこともできるのが特徴。

例:Houzz、AngelList、HoneyBookなど。

Marketplace (2-Sided)
2-Sided(2面性)・ネットワークは、「需要サイド」と「供給サイド」という2種類のユーザーが存在するときに生まれる。例えばクラウドソーシングサービスでは、サービスを提供する側(供給)とサービスを受ける側(需要)の2種類のユーザーがいる。

例:eBay、Alibaba、Amazon Marketplace、Etsyなど。

Platform (2-Sided)
プラットフォーム型・ネットワークは、先ほど紹介したマーケットプレイス型とは異なり、供給サイドがプラットフォームに統合させるための開発を行う必要がある。つまり供給サイドは、技術者やプロダクトを開発している会社になる。

例:iOS、Microsoft、Nintendoなど。

Asymptotic Marketplace (2-Sided)
2面性のマーケットプレイス・ネットワークは、1つとして同じになることはない。特に大きく異なるのは、ネットワークへの参加者が増えたときの、「需要の価値」が上がるスピード。以下グラフを見ると、UberやLyftのような「Asymptotic(漸近的な)・マーケットプレイス」(赤色)よりも、eBay や Craigslist といったマーケットプレイス型・ネットワーク(オレンジ色)の価値の上がりかたの方が、早いことが分かる。

例えば Uber や Lyft は、運転手が増えれば増えるほど、乗客にとってのメリットは増える。その一方で、乗客が得られる価値は急激に減少する。
車が捕まるまで8分かかっていたものが、4分になるのは大きな違いを感じるかもしれないが、それが4分から2分に変わった場合はどうだろう?先ほどよりは、価値を感じなくなるだろう。特定のエリアに一定数の運転手や車が集まってしまえば、それ以上増えたとしてもユーザー体験自体はそこまで変わらなくなるのだ。

Data Network Effects
データ・ネットワークは、名前の通りデータが集まれば集まるほど、そのデータを元にユーザーに提供できる価値が上がるということ。
データのネットワーク効果は、人と人との繋がりから生まれるネットワーク効果よりも弱い。それは「Asymptotic(漸近的な)・マーケットプレイス」同様、一定の数を集めてしまえば、それ以上を集めても得られる価値が大きく上がらないからだ。

例:Google、食べログ、Wazeなど。

Tech Performance Network Effects
テックパフォーマンス・ネットワークとは、ネットワークに参加するユーザーが増えるほど、パフォーマンスも上がるというもの。
例えば、BitTorrent のような Peer-to-Peer でファイル共有をするネットワークは、その同じファイルを共有(Seed)しているユーザーが増えることで、ダウンロードのスピードが上がる。

例:BitTorrent、global VPN、Hola

Language (Social)
言語もネットワーク効果の1つだ。世界には、日本語より英語を話す人の方が10倍近く多く存在する。そこから、「英語」という言語によるネットワーク効果の強さの差が生まれる。

人は、何かを検索する時に「ググる」と言ったり、『仮想通貨』といえば真っ先に「ビットコイン」を思い浮かべる。このようにスタートアップは、言語の中に入り込むことによって、言葉のネットワーク効果を活用することができる。

例:英語、日本語、グーグル、ゼロックスなど。

Belief (Social)
宗教など多くの人が信じる概念には、信念のネットワーク効果が生まれる。
最近の事例として、ビットコインの価値を信じる人が増加したことで、ビットコインの価値が急激に上がるという現象が起きたことが挙げられるだろう。

例:ビットコイン、金、宗教など。

Bandwagon (Social)
最後に、Bandwagonは「仲間外れになりたくない」など人間が生きている中で感じる社会的なプレッシャーによってネットワークに参加したくなる効果。

例えば、テック業界でSlackを使ってない会社は、モダンなコミュニケーションを取り入れられていない印象を持たれてしまうことがある。

Appleも、彼らのブランディングやPR活動により「Apple製品を持つことで “クール” な集団の一員になれる」という社会的プレッシャーを生み出すネットワーク効果を構築することに成功している。

例:Apple、Slack、Githubなど。

以上が「13種類のネットワーク効果」だ。

それぞれのネットワーク効果には、特徴や強さの違いがある。自分が展開しているサービスやプロダクトにどういったネットワーク効果があるのか、そして、それを強化するためにはどうすれば良いのかを考えるための参考にして欲しい。

(edited by kobajenne

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