起業家とVCでは「ゲーム」が違う


Peter Miller

起業家とVCの違いについてよく聞かれることがある。表面上は似たようなキャリアパスに見えるかもしれないが、実は共通点よりも違いの方が多いのだ。

考える vs. 決断する

VCと起業家では、まず時間の使い方と決断の数が全く異なる。起業家はプロダクト、採用、戦略、マネージメント、資金の使い方など、日々決断して実行に移していく必要がある。この一つ一つの決断の積み重ねが大きく結果に繋がる。
一方、VCは出会ったスタートアップについて、市場について、支援先についてなど、考える時間や起業家と議論をすることに多くの時間を費やす。決断する数は起業家に比べて少なく、VCにとって一番重要な決断は「どのスタートアップに投資するか」になる。

フィードバック

決断から結果が現れるまでの期間の長さも違う。起業家は、会社を動かしていく中で決断したことが数日、数週間で結果として現れる。一方VCは、投資を決めてから、その判断が良い判断だったのかどうかかが見えてくるのは1〜2年後。そして、実際結果(イグジット)として現れるのは、5〜10年程度は先となる。

アクティブ vs パッシブ

起業家は会社の中の様々なオペレーションにアクティブに関わるのでテンポが早い環境にいる。一方VCは10~30社ほどのポートフォリオを組むので常に支援先のオペレーションにアクティブに関わることができない。ほとんどはパッシブに関わっていて、重要だと思ったタイミングでアクティブに関わる場面が時々ある。

コントロール

会社経営に対するコントロールの差もある。起業家は、ほとんどの事柄を自ら決めることができる。VCがその権利を一部持ってはいるものの、仮に意見が噛み合わなかったとして、経営者が信じないことを無理矢理やらせるのは難しい。
VCは起業家に近い立場にいることから、影響力はあっても、会社を直接コントロールすることは少ない。

リスク vs リターン

起業家が、VCよりリスクを背負っているのは当然のこと。起業家は自分の会社に対して全ての力を注ぐのに対して、VCは、10〜30社にリスクを分散させる。でもその代わり、リターンにも差が出てくる。

とあるスタートアップで起業家とVCが、その会社の株を同じ25%ずつ保有しているという仮のシナリオがあるとしよう。そのスタートアップが100億円で買収されると、起業家には直接25億円が入ってくる。一方VCの場合、この25億のリターンが運用しているファンドに入る。

VCは、多くのパートナーから資金を集めて運用していることが多く、大体は売却益の20%を成果報酬(「キャリー」)として受け取る。もし、そのVCが50億円のファンドを運用していたら、25億円を受け取れるまでには、前述のようなエグジットをあと6回は実現させないといけない。

計算式:(7社 x 25億円 – 50億円の投資元本)x 20%成果報酬 = 25億円

起業家とVCでは「ゲーム」がまったく違う。だから元起業家がVCになって、すぐにまた起業家に戻るケースも多く見られるし、元起業家だからと言って、優秀なVCになれる訳でもない。
「VCとして成功するために、起業家としての成功は必要なのか?」も合わせて読んでみてほしい

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