VCは支援先の企業を、全社同じだけ愛しているのか?
この問いに多くのVCは「YES」と答えるだろう。もちろん、信念を持って ”えこひいき” がないよう最善を尽くしているVCもいると思う。でも、投資戦略や経済合理的な理由で、この「平等性」を確保するのは、現実問題なかなか難しい。そこで今日は、VCファンド事情と起業家に知っておいてもらいたいポイントについて書いてみようと思う。
リターンの最大化
まず前提として、VCは他人のお金を預かっている以上、リターンを最大化する義務を持っている。そのため、支援先に対する時間の割り振り方を考える時は、「ファンドリターンを最大化すること」を念頭に、以下のような優先順位を付ける。
- 投資パフォーマンスが高いスタートアップ:投資倍率や事業進捗が好調なスタートアップ。特にアーリーステージの投資リターンは、〈べき乗則(Power Law)〉が成り立つ(ファンドの半分以上の価値は、ポートフォリオの中でも最も企業価値の高い数社によって構築されているという原理)。つまり、支援先の企業のうちトップ数社が、「優先度の高い存在」となる(参考:VCが期待する投資リターン)。
- 投資額が大きいスタートアップ:ファンドサイズに対して投資額が大きい会社。指標としては、一社に対し、ファンドサイズ全体の10%以上の資金を投資しているスタートアップは、リターンに大きなインパクトを与える。
- アップサイドが大きいスタートアップ:マイルストーンを達成すれば、いっきに何十倍も評価が上がることが期待できるスタートアップ。
IQよりEQ
ここで起業家がVCを選ぶときに考慮すべきことは、「EQ(感情知能指数)」の高さだ。
ファンドにとって「優先度の高いスタートアップになる」ことは、企業が好調なときは全く問題ない。でも、不調になり始めたり、トラブルが発生したときは、他企業に比べて、VC側から焦りが出やすくなる。起業と経営は、激しい感情の波との葛藤だ。そこに外部の株主が、また異なった “感情” を持って衝突してくるのは、明らかに非効率だ。つまり、感情を自己管理できる「EQの高いVC」が、こういった場面では最適な存在となる。
IQの高さよりEQの高さ。株主構成を考えるとき、僕だったらEQが高い外部株主を大多数にする。
ファンドサイズ
ファンドサイズと投資額を見れば、ファンドが考えている優先順位が見えてくる。だいたいの指標として、ファンドサイズの2%以上を投資したときは “本気の投資” であり、それ以下は本気の投資をする前の “実験的な投資” であるケースが多い。そしてファンドサイズの10%を超えてきた場合は、期待値が非常に高く、是が非でも失敗は避けたい〈超重要案件〉であると言って良いだろう。ただし、この配分の考え方は、投資戦略によって異なるもの。起業家は、VCからの調達を検討する際ポートフォリオ配分についての考え方を確認すると良い。
ポートフォリオサイズ
支援先が10社なのか、または100社なのか、ファンドのポートフォリオの大きさによって支援の仕方が大きく変わっていく。起業家は、ファンドサイズやポートフォリオのサイズを理解し、どういった支援を得られるかを理解すること、そしてお互いの期待値を一致させておくことが重要だ。
フォローオン投資
戦略によって追加投資枠が無いファンドもあれば、ファンドの半分以上を追加投資枠に設定している場合もある。それぞれの投資戦略、追加投資に対する考えや金額の決め方などを理解することが大切だ。少なくとも投資を受ける前の時点で明確にしておくべきポイントとしては:
- どれぐらいのKPIを達成すれば追加出資に繋がるのか
- 追加出資を受ける際の金額は、どのくらいを想定できるのか
- 追加出資にバリュエーションの上限はあるか
これらは、次の調達を計画するに当たって、とても重要な情報になる。
これが、起業家がVCを株主に迎えるときに、理解しておいてもらいたいポイント。
VCによって方針や戦略が異なるので、考え方をじっくり話しながら確かめると良い。そして、そこで理解した内容を考慮した上で、調達戦略や株主構成を組み立てて、VCと最大限効果的な関係を築いていって欲しい。
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