B2B SaaSスタートアップへの投資基準


Fortune Brainstorm TECH 2014

ここ最近、僕はB2B SaaSスタートアップに出資する機会がとくに増えてきているので、自分の投資基準を一度書き上げてみようと思う。

僕が出資しているB2B SaaSスタートアップは、主にシード期のフェーズでMRR 0円〜500万円の間の企業が多い。まだローンチ前のプロダクトであることもあれば、ローンチして一年以上経過している場合もある。そんな中、僕が投資判断をするときに軸としているのは、この5つのポイントを信じられるかどうか、だ。

1) 顧客がサービスを愛してくれていること:スタートアップが提供しているサービスに対して、顧客の満足度が非常に高いこと。ローンチしてある程度時間が経過している場合は、Churn Rate (3%未満が望ましい)を見るし、あまり経過してない初期のベータ・プロダクトであれば、ユーザーのエンゲージメントを見る。そしてローンチ前であれば、顧客インタビューを通して予測する。

2) 対象顧客のTop 3の課題を解決していること:例えば、人事部長を説得して導入してもらうHR向けサービスを提供しているのであれば、その人事部長が日々感じているTop 3の課題を解決するソリューションでないといけない。そうでないと緊急度や重要度が低すぎてセールズサイクルが長くなったり、そもそもリーチすること自体が難しくなったりするからだ。

3) 世界レベルの開発スピード:僕が投資するとき、ここが一番気にしている部分だ。B2Bスタートアップは、既存顧客の満足度を高めるための機能開発、競合に対するポジショニングを固めるための開発、アップマーケット(大規模の顧客)に展開するための開発など、「開発」という言葉が常に隣にいる世界だ。開発スピードが勝負の鍵を握っていると言っても過言ではないと思う。だから、開発を外部に委託していたら、僕にとってはNG。
開発スピードは、技術メンバー単体のスキルだけでなく、優先順位の決め方、カスタマーフィードバックを効率よく取り入れる営業チームとカスタマーサクセスチーム、そして技術チーム間でのスムーズで効率的な連携が大きく影響する。

4) 社長が自ら売れること:社長がトップクラスの営業マンである必要はないが、まだ小規模なスタートアップならば、少なくとも最初の100社〜1000社は、社長が自ら営業する必要がある。そのためにも顧客に対しての理解力が必要不可欠だ。ターゲットユーザーを理解できていなければ、サービスを売ることなどできない。この、「自ら売れる力」を持っているかどうかは、かなり重要なポイントだ。

5) ARR 50億円のポテンシャル:大多数のスタートアップは、最初の段階ではACVが低い。最初のうちは低くても良いのだが、今後向上させることができて、将来的にはARR 50億円以上を見込める十分な市場規模であること。ARRの規模だけでなく、持続性のあるユニットエコノミックス(CACの回収期間が18カ月以内)等も重要になる。

ARR、MRR、ACVとは?分からない場合はこちらの記事をご覧ください。

以上が僕がシード期のSaaSスタートアップに投資する時に気にしているポイントだ。

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SaaSマーケティングでも無視できない「Jobs To Be Done」とは?

Matt Hodgesは、2008年から2014年までの6年間、Atlassian のコラボレーションビジネス(Hipchat と Confluence)のプロダクトマーケティングをリードし、年間売上60億円以上のビジネスにまで成長させた。そして現在は、SocialCapital、Bessemer Venture Partners、Iconiqなどから100億円以上を調達しているカスタマーコミュニケーションツール Intercom のマーケティングチームでシニアディレクターとして活躍しており、すでに1万3000件以上の導入実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMattとのセッション内容の一部をまとめてみた。
Intercomは最初、1つのプロダクトで4つのプライシングプランを提供するところから始まった。

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その頃のトップページは、以下のようなデザインだった。

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しかし今のIntercomは、「Acquire」「Engage」そして「Resolve」と言う3つのプロダクトに分けてそれぞれ違うプライシングモデルを提供している。

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Jobs To be Done

このように、1つのプロダクトだけでなく複数のプロダクトを提供するようになった背景には、「Jobs To Be Done」というフレームワークの存在がある。Intercomでは、この「Jobs To Be Done」を応用して取り入れているのだ。

「Jobs To Be Done」は、ハーバード大学の教授Clayton Christensenが生み出した、消費者のモチベーションを理解するためのフレームワーク。ポイントは、消費者は製品・サービスを「購入する」のではなく、自分の「用事(又は仕事)」)を片づけるために製品・サービスを「雇っている」ということだ(参考)。

例として挙げられる機能として、Intercomには、顧客が世界中のどこにいるのかが分かる 〈ライブマップ機能〉がある。

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この〈ライブマップ機能〉がどのように使われているのか、ユーザーの動向を観察した結果、ソーシャルメディアでの共有や、投資家にアピールするために使用されていたり、また、イベントでのPRツールとして利用されていることが分かった。

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ユーザー動向を “観察” することで、この〈ライブマップ機能〉が、どんな「仕事」のために「雇用」されているかを理解することができたのだ。

Intercomのユーザーが〈ライブマップ機能〉を「雇用」する理由は、自社のユーザーが世界中に拡大していることを上手く外部にアピールするという「仕事」をしてもらうためだった。Intercomは、この理解を元に機能改善に取り組んだ。

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そして完成したプロダクトは美しい見た目のほか、アニメーション付きでリアルタイムにアップデートされ、また、プレゼン時でも使える全画面表示機能や、ソーシャルメディアでも共有しやすいように個人データの非表示機能などが付くバージョンにアップグレードされた。

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その結果、さらに多くのユーザーが、この〈ライブマップ〉をソーシャルメディアで共有するようになった。

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“Focus on the job, not the customer”

マーケターとしてまず理解する必要があるのが、”人は、どんな「仕事」を片づけるために、プロダクトを「雇用」しているのか?” だ。それを理解するためには、たくさんのユーザーと話す必要がある。Intercom では、新規ユーザー、退会したユーザー、アクティブユーザー、非アクティブユーザーそれぞれにインタビューをした。

そしてユーザーは、主に3つの「仕事」を済ませるために Intercom を「雇用」していることが分かった。そこで、そのJob (仕事) を軸に、トップページやランディングページのデザインを変更し、プロダクトも3つに分けることになった。

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ランディングページは、Intercomを「雇用」することで、どんな「仕事」を済ますことができるかを明確に伝えられるようにデザインに変更し、細かい機能の説明など、この時点では “余分” な情報をすべて外した。

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マーケティングにも活用
プロダクトの「Jobs To Be Done」が理解できれば、マーケティング戦略にも活用することができる。

マーケティングは、主に5つの活動に分けられる。

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Reach: Intercomを「雇用」しそうな人たちにリーチをする活動。これはPR、イベントでの登壇やスポンサー、FacebookやGoogle広告といったチャネルでメッセージを発信する。

Attract: 顧客を呼び込む。これはブログを使ったコンテンツマーケティングや、本の出版、セミナー開催などから、潜在顧客を呼び込む。

Convince: リーチしたり、呼び込んだ顧客を説得する活動。主にランディングページの最適化や、成功事例をトップページに掲載するなどといった活動になる。

Educate: プロダクトを雇用してくれたユーザーが正しい使い方を行えるための教育。How-to動画や、プロダクトのデモ、ヘルプドキュメント等といった教育教材の用意や活動。

Delight:イベントの主催や高い頻度でのプロダクトアップデートなど、雇用したことを「喜び」に繋げるための活動。

まずは、Convinceから
スタートアップは、多くのマーケティング活動のなかで、どこから手をつけるべきなのか?まずは、ユーザーを説得するためのConvinceから始めるべきだ。そのためにも、ユーザーの「Jobs To Be Done」を理解し、言葉選びや適切なストーリーを伝えていくことが重要である。

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「答え」だけでなく「思考」も伝える


Thomas Helbig

VCがスタートアップへの投資を検討するとき、起業家に対していくつかの質問をする。そのとき重要なのは、ただ単純にその問いの答えを述べるのではなく、自分の「思考」も伝えられるかどうかだ。

チェスができるか
スタートアップの経営は、3対1で3人の対戦相手と同時にチェスをするぐらい複雑だ。3人の相手のうち1人は、他社の動きや経済、技術、文化のトレンドなどで変化する「マーケット」。2人目の相手は、容赦なく攻めてくる「競合」、そして3人目の相手は、仲間や取引先、顧客など広い意味での「人」だ。起業家は、この「マーケット」「競合」「人」それぞれの一手に対して駒を進める複雑なチェスをしている。だから、状況を素速く的確に把握して、次の一手を考え抜く力が必要になる。ピッチの後によくあるQ&Aやディスカションでは、この複雑なチェスができるか、考え抜く力があるかをVCに対して証明する必要がある。

思考を伝えると説得力が増す
VCからの質問には答えだけでなく、その答えに対する思考を述べることでどこまで深く物事を考え、どのようにその答えを編み出したのかを伝えることができる。ただ単に回答するよりも自分が知っていることや経験したこと、試してきたことを答えの中に含めることで、深みが出て、その答えにオリジナリティーが生まれ、説得力が増す。

よくある質問
例えば、VCがよく聞く質問の1つが「マーケットの規模」。
ここでは、トップダウンのリサーチで市場規模の割合(マーケットシェア)を説明するのではなく、対象顧客を明快にセグメント(プロファイリング)して、その数とARPU(又はARPA)をかけた数字を伝えるほうがリアリティーのある数字になる。これによって、ユーザーは誰なのか、そのユーザーはどれくらいいるのか、サービスやプロダクトに対してユーザーがいくら支払うと考えているのかなど、細かな考えを伝えることができる。

もう1つよくある質問が「ユーザーの獲得方法」。
ここでも、獲得チャネルの話をするだけではなく、ユーザーの課題意識やコンプレックスがなんなのか、コンテンツや広告を見たときの感情や期待はなにか、プロダクトへの動線をどう設計するのかという内容にまで落とし込むことで、今まで試行錯誤してきたことやユーザーの理解度を伝えることができる。

起業家に、「考え抜く力」があるか。
これは、VCがスタートアップに投資するとき、もっとも重要視するポイントの1つ。「考えを伝えること」を意識しながらVCの質問に答えられれば、より強くその可能性を伝えられるだろう。

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