海外展開のスコアシート

ca. 2000 --- Keeping Score for the Team --- Image by © Royalty-Free/Corbis

iOS、アンドロイドなど様々なプラットフォームの普及によって、事業の海外展開はより行いやすい状況になっている。そのため、海外展開を目指すスタートアップの数も増加している。でも、ただ海外を目指せば良いということではない。海外展開を行うためには、いくつかの条件を満たしている必要がある。そこで、どういう条件や状況が望ましいのか、そして現在のフェーズが海外展開に進むフェーズとして適しているかをスコアリングするフレームワークを紹介する。

99%は、まず日本

まず何よりも重要と考えていること。それは、創業者が自分が育った国の市場をしっかりと狙えているかということ。例えば日本人または日本育ちの創業者が海外展開を計画する際、僕は99%の確率で、まずは日本市場を確実に狙うべきとアドバイスする。

スタートアップは、人材、資金、時間など、ありとあらゆる面で不利な状況からスタートすることになるため、自分たちのリソースを最大限にレバレッジしていく必要がある。この「自分たちを一番レバレッジできる市場」こそが、自分自身が育った場所なのだ。

他の国に行くと、人脈をいちから構築し、その国の文化や言語を学ぶ必要が出てくる。現地にいる企業やスタートアップと比較をしても、非常に不利な状況だ。だからこそ、スタートアップのほとんどには、まずはじめに人脈の基盤を持ち、状況を一番把握している市場を狙うよう勧めている。

海外展開のスコアシート

海外展開のスコアシートには、「フェーズ」「言語」「人材」「ランドスケープ」「ネットワーク効果」の5項目がある。それぞれの項目に最大5点まで採点することができ、全5項目の点数の合計で25点満点を獲得できれば、海外展開に適していると判断することができる。

それぞれの項目の採点方法は以下。

フェーズ

会社のフェーズを意識する。まだプロダクト/マーケットフィットを達成できていないスタートアップは、そもそも海外展開を考えない方が良い。最適なフェーズは、最初に狙った市場を独占できる状態であること。独占までの道筋が見えていいて、戦略も固まっている状態であること。

  • 採点
    • 5点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できていて、独占までの道筋が見えている
    • 3点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できているが、独占はまだ見えていない
    • 0点 – プロダクト/マーケットフィットを達成できていない

文化 / 言語

参入しようとしている国の言語を話せるか?文化を理解できているか?言語を話せなかったり、文化を理解できていないというのは、ビジネス展開上大きな不利となる。例えば、現地での採用が難しくなったり、マネージメントがしにくくなる。また、サービスを展開するときにターゲットユーザーを理解することが難しくなったり、細かいニュアンスなどをピックアップする事ができなくなってしまう。

  • 採点
    • 5点 – ネイティブレベルで現地の言語を話すことができ、その国に住んだ事もある
    • 3点 – ビジネスレベルで話せる、文化をそこそこ理解している
    • 2点 – 全く話せない

人材

最高の人材を現地で採用できている必要がある。戦略・採用・実行などは現地のチームに任せる事になるので、初期メンバーはかなりトップクラスである必要がある。

展開先のメンバーの採用の際、人材のデューデリジェンスが手薄くなってしまうことが多い。同じ言語を話せないとさらに難しくなる。でも実は、共同創業者を選ぶとき同じぐらい厳しくデューデリジェンスをする必要がある。

  • 採点
    • 5点 – Aクラスのチームを採用できる
    • 3点 – そこそこのメンバーは集まっているが、まだ完全に任せるのは難しい
    • 0点 – 良い人が採用できない

 

ランドスケープ

海外展開先となる国での競合分析、市場分析、法律、文化、そして現地の資金調達環境を分析する必要がある。

現地に競合はいるのか、いる場合は本当にそれら競合に勝てる見込みがあるのかを調査、検証する。現地の競合に対して多額な資金を投資するプレイヤーがいるのかを探る必要もある。例えばUberの場合、インド、東南アジア、中国などの現地プレイヤーが何百億円もの資金調達を成功させ力をつけていることから、類似サービスの激戦区となっている。

他にも、展開しているサービスと狙っている国の文化的適合性や、法律面の問題点が無いかなども確認する必要がある。

  • 採点
    • 5点 – 文化や市場の適合性があり、現地の競合に勝てる見込みがある
    • 3点 – 文化や市場の適合性はあるが、現地の競合に勝つのは厳しそうだ
    • 0点 – 市場や文化の適合性がない

ネットワーク効果

ネットワーク効果とは、同じプラットフォームやサービスを利用するユーザが増えると、それ自体の効用や価値が高まる効果のこと。例えば電子メールのユーザーが増えれば増えるほど、メールを送ることができる相手が増加し、メール自体の価値が高まる。

そして海外展開で特に重要になってくるのが「グローバルネットワーク効果」だ。

現在展開しているサービスの新規ユーザー、在庫、コンテンツなどを増やすことが、他国のユーザーを含む全ユーザーにとってのサービス利用価値の向上に繋がるのか?ネットワーク効果が他の国にいるユーザーにも行き渡るのか?

「グローバルネットワーク効果」のあるサービス例の1つはAirBnBだろう。サービス利用者は旅行者が大半であり、アメリカで泊まれる場所(供給)が増えればアメリカに旅する他の国のユーザーが得られる価値も上がる。そして日本での供給が増えれば、日本に旅行するAirBnBユーザーがサービスの価値を感じる。AirBnBが世界で広まれば広まるほど、ひとりひとりのユーザーが得られる価値は上がっていく。

もう1つの例として挙げるとすれば、Instagramだ。写真を中心としたSNSなので、日本人がアメリカのユーザー、台湾人が日本人のユーザーをフォローしあうことができる。ユーザーやコンテンツがどの国で増えても、全体としてユーザーひとりひとりが得られる価値が上がっていく。

  • 採点
    • 5点 – グローバルネットワーク効果が強いサービスを展開している
    • 3点 – 少しだけグローバルネットワーク効果がある
    • 2点 – ネットワーク効果がない

集計

合計で25点満点をスコアリングできている場合、海外展開をする準備は整っていると判断しても良いだろう。合計が15点以上で、1つも0点にならなかった場合(文化/言語とネットワーク効果は0点取れないようになっている)は、海外展開を検討しても良いが慎重にアクションをとる必要がある。15点未満の場合は、海外展開はまだ先のフェーズであると判断すべき。まずは国内市場でのビジネス展開にフォーカスするべきである。

海外展開を検討している起業家は、是非このスコアシートを参考に使ってもらいたい。


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