スタートアップをメンタリングする中で、僕はよく「フィードバックループは、もっと短くすることができる」とアドバイスする。
「フィードバックループ」とは、ユーザーとコミュニケーションをとり、その声を集めて改善につなげていくこと。特に初期の段階で、まだ自分たちのプロダクトがユーザーを満足させているかどうかが分からない場合は、コンバージョンやスケール、最適化などは後回しにして、ユーザーからのフィードバックをできるだけ収集してサービスを実際に利用するユーザーについて学ぶことを最優先にすべきだ。
この「フィードバックループ」をより効率的に実行する方法の例は以下である:
電話で話す
過去に起業経験のない起業家がよく陥る落とし穴は、数値の分析をしすぎること。KPIやユーザーデータを基に、ユーザーの満足するポイントや、不便な部分、分かりにくい部分を分析しようとする。特に初期の段階はデータサイズが小さいので、あまり参考にならないし、データがたまるまで時間がかかったりする。だから、ユーザーとできるだけコミュニケーションを取る機会を作る必要がある。例えば、ユーザーが登録したタイミングで、登録のサンキューメールと共に電話でも話す機会を作る。
ここでポイントなのは、電話でのヒアリングを通して何を検証・確認したいのかを明確にして、ヒアリングに適切なユーザーが誰なのかを予め決めておくことだ(ターゲットユーザーなのか、アクティブユーザーなのか、もしくは非アクティブユーザーなのか 等)。
よくある効果的な流れの例は、まずメールで簡単なアンケートを実施する。このアンケートの結果を通してヒアリングをしたい対象ユーザーをフィルタリングし、電話インタビューに繋げる。この時、簡単なプレゼント(Amazonギフト券500円 等)を付けてみても良い。実際、検証したいユーザーデータが集まるのを1週間も2週間も待つよりも、500円支払ってユーザーと直接話して確認したほうが確実に効率的だ。
トリガーメール
機能やページ単位の細かい検証をする時に効果的なのは、サイトやアプリ上で特定の動きをしたユーザーに対してメールを自動配信することだ。例えば、決済ページの離脱が異常に高い場合、そこまで辿り着いたユーザーに対してフィードバックを依頼するメールが自動配信されるよう設定しておく。返事が来たら、フォローアップして電話インタビューに繋げる。
その他にも、アクティブユーザーとなるきっかけを検証するために、5日間連続でログインしたユーザーが現れたときにメールを自動配信することで、アクティブユーザーだけのメーリングリストを作ることもできる。
ユーザーグループ
オフラインでもオンラインでも、過去に話してきたユーザーの中で今後も関係性を保ちたいユーザーを集めてディスカッションをする場を作ると良い。すぐにフィードバックが欲しい時には、その場で意見を求める事もできるし、もし熱量が高ければサービスの「応援団」になることもある。そのためにも、改善されている部分を定期的に知らせたり、ユーザーがその改善に貢献していることを感じさせることがポイントになる。
常駐サポート
これはエンタープライズ向けサービスを提供している場合に効果的な方法で、古いやり方と思えるかもしれないが、サービスをβ利用してくれる企業に常駐してサポートをする。
サービス利用者の近くにいることによって、質問があった時は迅速に対応することができ、更にフィードバックをもらえるきっかけができる。可能であれば、利用者を観察できる場所に常駐させてもらえると多くの貴重な学びがあるだろう。
これらがフィードバックループを短くする例だ。とにかく重要なポイントは、何を検証・確認したいのかを予め決めて、プロダクトを使っているユーザーとコミュケーションをとるきっかけを作ること。そして(特に初期段階のスタートアップは)フィードバックループを短くすること。まずはスケールすることを考えずに、ユーザーのニーズや考え、プロダクトがどこまでユーザーに適合しているかを学ぶことを最優先にすることが重要だ。