エンタープライズの変化とSaaSスタートアップの機会

Mamoon Hamidは、シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタル「Social Capital」のゼネラルパートナー。早期の段階で、BoxやSlack、IntercomといったB2B SaaSスタートアップへの投資を実行した実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMamoonとのセッション内容の一部をまとめてみた。
エンタープライス向けソフトウェアの変化
アメリカでは、時価総額1兆円を超えるエンタープライズ向けソフトウェア企業は10社しかない。そしてその10社の平均創業年数は30年。創業して成長させるには、ものすごい時間がかかる。

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エンタープライズ向けソフトウェアを提供する大手企業は、顧客に提供できるサービスやプロダクトを増やすために積極的に企業買収をしている。例えば、SAPのSuccessFactor買収や、SalesforceのExactTarget買収は記憶に新しいだろう。

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セールスチームによる営業活動、その後のソフトウェアのインストールやサーバー導入そして導入後メンテナンスなど、エンタープライズ向けソフトウェアを販売するためには、多くの時間や労力、費用、そして手間がかかる。そのためソフトウェアの購入単価は高くなり、結果、購入できる企業が限られてしまっていた。
しかし、ソフトウェアのクラウド化によって、顧客の獲得やサービスの提供、導入後メンテナンスを低コストで実現できるようになった。サービスを低価格で提供できるようになったことで、SaaSソリューションを購入できる対象顧客が一斉に拡大している。1995年時点では、対象顧客が20万社程度だったのに対して、2015年には2000万社にまで拡大した。そしてソフトウェアの平均単価は、12万ドルから1万ドルにまでいっきに下がった。また、導入コストが高かったために、複数のソリューションを1社の大手ベンダーのみから購入していた企業が、現在では、複数の企業からソリューションを購入する傾向に変化している。

市場の拡大、高利益率、VCやエンジェルの活発化、SaaSの経営ノウハウの成熟度レベルをみても、この時期にB2B SaaSの領域で起業することで、事業成功へのチャンスが格段に広がっていることが分かる。

SaaSスタートアップにとって重要な指標
1つはチャーンレート(退会率)。有料顧客の月次退会率が3%以上のサービスには投資できないし、良い事業はつくれない。退会率は、ユーザーの満足度やエンゲージメントを表す重要な指標だ。また、売上げ額が毎月3%以上下がるのであれば、事業を伸ばすために新しい売上げを3%以上獲得しなくてはならない。売り上げが1000万円程の企業にとってはたいしたインパクトはないが、売上げ額が40億円や100億円となったら、このチャーンのインパクトは無視できない。長期的に持続可能なビジネスをつくること自体が難しくなるからだ。

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もう1つは「Quick Ratio」を 4 にするべきだ。「Quick Ratio」とは、SaaSビジネスの成長の程度を計る指標。当月の増加収益(MRR増分)を、当月の減少収益(MRR減少分)で割った数値。方程式に割り出すと:

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となる

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プロダクトマーケットフィット
B2B SaaSが、プロダクトマーケットフィットを達成できたかどうかを見分ける方法の1つは、「ユーザーエンゲージメント」をみることだ。日常的に利用されるサービスであればDAU / MAUを見ると良い。業務用のソリューションであれば、WAU / MAUに着目すべき。これらの数字が、常に50%を超えているのなら、良い波に乗っていると言っていいだろう。気を付けてほしいのは、サービスによって適正な指標が変わるということだ。

もう1つは、オーガニックで獲得できた有料顧客がどれくらいいるのかだ。
毎月100ドル以上支払う有料顧客を100社以上オーガニックで獲得できていれば、それは「プロダクトマーケットフィットに近づいている」と思って良いだろう。

ボトムアップで自然に上がる
ACV(Annual Contract Value = 年間発注額が高いからといって、いきなりFortune 500や大規模の会社を狙ったサービスをつくるのは賢明ではない。まずは、中小企業を対象にサービスを展開して、自然と引っ張られるように大手企業に展開していくのが得策だろう。例えばZenefits社は、まずYconbinatorに参加しているスタートアップを最初の顧客として取り入れ、それぞれのスタートアップの成長とともに、大手企業への展開を段階的に進めていった。

Boxの場合は、大きな企業のなかでも、まず10名や20名程度の小規模な部署への導入から始めて、徐々に人数の多い部署へと展開していった。こうして、結果的に自然と会社全体でBoxが利用されるようになっていった。

SaaSの成長痛
SaaSスタートアップの初期の顧客は小規模な会社であることが多いため、セルフサーブでサービスを提供することができ、サポートやセールスチームがいなくても成り立たせることができる。しかし、従業員が100人または1000人いるような中規模〜大規模の企業を顧客に持つようになると、サポートやセールス、カスタマーサクセス、アカウントマネージャーなど、組織やオペレーションチームをつくることが不可欠になる。この「組織づくり」こそが、SaaS経営者がもっとも苦労することだろう。

プレイヤー / コーチ
最初にセールスチームやカスタマーサクセスチームをつくるときは、プレイヤーでありコーチにもなれる人材を採用するべきだ。なぜなら、初期の段階では顧客について学び、分析し、試行錯誤を繰り返しながら再現性のある「プレイブック」をつくらなくてはならないから。そして、そこからメンバーを増やし、他のメンバーに伝えていくコーチのような役割を果たさないといけないからだ。

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完璧である必要はない。ベンチャーキャピタリストによる起業家支援

僕がベンチャー投資をはじめたのは、まだ大学を卒業して間もない23歳の時だった。最初は、投資戦略や投資基準の定め方や案件開拓の方法など、常に試行錯誤の連続だったが、そのなかでも、特に長く悩んだことは、「投資先の起業家をどうやって支援するのか」だった。

完璧である必要はない

起業家は、採用、マネージメント、プロダクト、資金、競合、パートナーシップなど数多くの、それこそ死ぬほどたくさんの悩みや課題を抱えている。ベンチャー投資をはじめたばかりの僕は、良いVCは、起業家が持つこれら全ての悩みや課題を解決するためにサポートする必要があり、それらに対する「答え」を持っていなくてはならない、と思っていた。慣れない営業開拓をしたり、打ち合わせに同席したり、採用候補者のリスト作成を手伝ったり、とにかくその起業家に必要な「答え」に繋がることは、できる限りカバーしようとしていた。

もちろん起業家は、こうした多面的なサポートを喜んでくれる。が、実は一見 ”手厚いサポート” に見えるこのやり方の中身を掘り下げていけばいくほど、効果が薄い‥いや、それどころか結局逆効果になることが多くある。
理由はシンプルだ。中途半端にオペレーションを手伝っても、中途半端な結果しか現れない。そして、知識や経験のない、自分が得意としない分野について、どれだけアドバイスをしようとしても効果は無いからだ。

生かすべきは、強みと興味

だから僕は、多分野の知識や経験を積んで起業家をあらゆる面でサポートするのではなく、自分の長所と興味を生かした専門分野のみに集中したサポートを実行している。その方が、スケールさせることもできるし、なにより自分が提供できる価値を最大化させることができる。

僕の場合、エンジニアとしての経験と興味を生かした「プロダクト」、グローバルなポートフォリオ(投資先)から得た学びや経験を生かした「ストラテジー」、そして自分が組織を率いたときに苦労した「マネージメント」の3つの分野に関する専門的な知識とスキルが、自分の生かすべき強みだ。これらは、自分の長所と言える分野であるとともに、支援対象としているシード期のスタートアップの成長のために欠かせないポイントにもなる。

良いパートナー

知識や経験以上に重要なのは、起業家にとって「良いパートナー」になれることだと思っている。僕の中で良いパートナーの定義は、

  • 透明性:何も隠さず自分の気持ちや考えを伝えること。間違っていたり、悪いと思った時は真っ直ぐにそれを言う。
  • コントロールはしない。尊重する:起業家と意見や考えが一致しないときも、自分の意見や考えは、はっきり主張する。これは、僕の視点から何が正しいと思うか、ほかに考慮すべき要素が何なのかを”伝える”ためだ。でも最後は、たとえ起業家と自分の考えにずれがあったとしても、起業家の決意を尊重して応援する。VCとしての役割の1つは、起業家があらゆる選択肢を考慮して考え抜いているかどうか、を確認することだと思う。
  • 感情のカウンターパート:起業家はとにかく日々感情のジェットコースターに乗っている。上がっているときは、感情も上がり、下がるときは、これでもかという程思いっきり下がる。だから僕は、この起業家の感情の上下を把握しつつ、常に適切な感情を表現できるようにしている。起業家がパニック状態になったなら、とにかく自分は冷静でいる必要があるし、勢いがあるときは「行けっ!」と背中を押して加速させる。感情が荒れているときは、安定と安心の姿勢で接する。

これが僕の考えるVCの支援の仕方。
これはあくまでも自分自身の長所、短所、性格、そして起業家のニーズを考慮してあみだした僕流のスタイル。VCによってそれぞれの考えや、支援の仕方(強み)があって良いと思う。いろんなタイプの支援者が増えることによって、起業家は自分が必要なサポートや自分に合うパートナーの選択肢、活用方法が増えることに繋がるのだから。

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VCやエンジェル投資家に伝えるべき「物語(ストーリー)」


Elias Ruiz Monserrat

VCやエンジェル投資家にピッチをするときは、彼らが前のめりに話を聞き、関わりたいと思わせられるような、説得力のある「物語(ストーリー)」を伝えることがキーとなる。

起業家のピッチによくあるのが、”ファクト” についてだけ話すこと。チームの経歴からはじまって、市場規模、プロダクトのデモ、KPIそして事業計画を説明して完結してしまう。確かにこうしたファクトも重要ではあるが、それだけでは肝心なことが伝わらない。

自分たちが、このマーケットを狙うための最適なチームであること、そして描いているビジョンを実現させることができるということを、まるでストーリーのような流れで伝えられるかどうかが重要だ。

投資家を説得させるためのストーリーに含めるべき要素

WHO (誰なのか)

チーム構成について
ここは十分に時間をとって話をするべきだ。自分たちの過去の経歴を話すときは、どういう性格の人間が集まっているのかを含めて説明すること。そしてなにより重要なのは、今から挑もうとしているマーケットで活躍することができる優秀で最適な人材がチームに集まっていることを感じさせること。この事業を成功させるために必要な要素が何かを意識し、その要素がこのチームに揃っていると感じさせるような伝え方をする。

WHY (なぜなのか)

「機会」の魅力について
自分が狙っている機会が、魅力的であり大きな可能性を持っていることを伝える。トップダウンの数値でマーケットの大きさを表すのではなく、ユーザーからのヒアリング、自分自身の経験をもとに、大きな機会が健在していることを表現すると良い。そして、なぜこのタイミングなのかも明確に伝えられるべきだ。

THE FIRST WHAT (まず、何をするのか)

この「何」には2つのポイントがある。1つ目は「何」をつくるのか。
ここでは、デモを含めてサービスやプロダクトの説明をする。このとき、ユーザーがそのサービスやプロダクトを使っているかのようなシナリオで説明をして、なぜプロダクトがこのように設計されているのか、それぞれの機能が存在している理由を伝える。

THE SECOND WHAT(その後、何をするのか)

2つ目は、「何」になっていくのか。
このプロダクトまたはプラットフォーム、そしてこの会社は、この先何になっていくのかを伝える。その最終的な将来像は、野心的であると同時に現実的である必要がある。そして、創造しようとしている世界観が、この世の中にとって重要であることを感じさせるように伝えることが不可欠だ。

HOW (どうやって)

どうやって事業をつくり、成長させ、最終的な将来像につなげていくのか。
考え抜いていることを証明するためには、これらのポイントを十分に詳細に説明できる必要がある。答えを全て知っていなくても良いが、少なくとも、どうやって答えを見い出すのかは説明できるようにしておく方が良い。明確なマイルストーンが定義できていて、WHO、 WHY、WHATが全てつながる形で、最後のHOWを伝えらると、きれいにストーリーをまとめることができる。

資金調達のために投資家と話すときは、透明性が高く、本物だと感じさせるようなストーリーがあると、より説得力が増す。情報やファクトだけをスライドにまとめてピッチするのではなく、誰がなぜ、どういう風に何を創造し、最終的に何になっていくのか、その全ての「点」がつながるように伝えることが大切だ。

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知っておきたいB2B SaaSのビジネス指標と単語


Pixta

来月10月19日に開催するB2B SaaSに特化したカンファレンス「SaaS Conference Tokyo 2016 」に向けて、今回はB2B向けのスタートアップなら知っておきたいビジネス指標と単語をまとめてみることにした。

MRR (Monthly Recurring Revenue) = 月間定額収益。年間定額のサービスを提供している場合、その額を12で割るケースが多い。

ARR (Annual Recurring Revenue) = 年間定額収益。月間定額収益を12倍で算出するケースが多いが、単発的なサービスやコンサルからの収益は含めない。

ACV (Annual Contract Value) = 年間発注額。契約が1年以上の場合、顧客が12ヶ月間で支払う金額。

Churn = 退会や解約を意味するが、”Churn” には様々な種類がある。

Revenue Churn = 退会による、MRR損失。例えば、毎月10万円を支払う顧客が、3社退会した場合、その月のRevenue Churnは、30万円になる(3社 × 10万円)。

Customer Churn = 顧客の退会率。例えば、月の初めに定額で支払っている顧客が100社いたとして、その月に5社退会したら、その月のCustomer Churnは、5%となる。

Gross Churn = 失った金額分のチャーンの比率。以下の方程式で割り出す。screen-shot-2016-09-19-at-12-09-42-am

Net Churn = 失った金額分とエキスパンションやアップセルにり増えたMRRを合わせたチャーンの比率。以下の方程式で割り出す。

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Negative Churn = Net Churnがマイナスになること。これはエキスパンションやアップセルによって増えたMRRが、退会によって失ったMRRより多い場合に起きる。

NPS (Net Promoter Score) = 顧客満足度とロイヤリティを数値に表したスコア。これは、実際に顧客の声を直接聞いて、そのデータを数値化する必要がある。

このスコアを出す1つの方法として、顧客に「このサービスやプロダクトをどの程度知り合いに勧めたいと思うか?」と質問をし、0-10の点数で答えてもらうというやり方がある。
(10 = 是非勧めたい、0 = 全く勧めない)

① プロモーターの比率 = 9 か10 と答えた回答者の数 ÷ 全回答者数

② 非プロモーターの比率 = 6 以下の数字を答えた回答者数 ÷ 全回答者数

NPS =(①プロモーターの比率 – ②非プロモーターの比率)

参照:a16z ‘16 more metrics

CAC (Customer Acquisition Cost) = 一顧客を獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用。

LTV (Lifetime Value) = 一顧客が、取引期間を通じて企業にもたらす利益 。B2B SaaSの場合は、以下の方程式で割り出すことができる。

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Premium/Professional Service = プロダクトやサービスの提供による月次売り上げ(MRR)以外からくる、トレーニングやカスタマイズ、コンサルティング等単発的な売り上げ。

Expansion / Upsell = 既存顧客に対し、現在加入しているプランより高いサービスプランの購入を促したり、アカウント数を増やすこと。

Customer Success = プロダクトやサービスが正しく活用され、顧客がその価値を得られていることをプロアクティブに把握し、徹底していくアプローチ。

Inside Sales = 会社の外ではなく、電話やオンラインで行う営業のアプローチ。

Field Sales = 会社の外に出て、潜在顧客と直接会う営業のアプローチ。

Outbound Sales / Sales Development = 営業チームが潜在顧客にアプローチをかけること(電話やメールでの営業、テレマーケティング等)。

Self Serve =登録からサービスの利用開始までの一連の流れを、営業やカスタマーサポートなどを介さずに顧客が自分自身で行うこと。

Lead Generation = プロダクトやサービスに興味を持ってくれている潜在顧客の問い合わせや登録を増やすこと。

SQLs (Sales Qualified Leads) = 営業チームが直接営業のアプローチをしても良いと判別できたリード。

SDR (Sales Development Rep) = リードとのアポ取りや、SQLへの転換をさせるInside Salesの担当者。

Account Executives = 潜在顧客にプロダクトやサービスのデモを行い、価格交渉やクロージングを行う営業担当者。

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企業向けハード+ソフトウェアソリューション


Tecnalia

これからスタートアップ業界の中で、大きな可能性を秘めていると思う分野は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた企業向けソリューション。特に少子高齢化の時代を迎えている日本では、効率性向上を図って、様々な業務を「無人化」するニーズが増々高まっていくと思う。

シリコンバレーをはじめ、機械学習、画像認識、そしてロボティクスを応用した、様々なスタートアップが生まれている。

Gecko Roboticshttps://www.geckorobotics.com/
発電所の点検を無人化するサービス。四角いロボットが、発電所のボイラールームを物理的にクロールして、様々なセンサーで点検を行う。

Skycatchhttps://www.skycatch.com/
建設現場などのマッピンングや現場のプランニング、分析に必要なデータを、ドローンを使って収集するソリューション。

Robby Technologieshttps://robby.io/
半径5km以内の物品の宅配を完全無人化するロボット。

Ceres Imaginghttp://www.ceresimaging.net/
ドローンなどに搭載する高画質カメラを使用し現場を撮影、分析することで、農業の生産性を向上させるためのデータを提供する会社。

Litmus Automationhttp://litmusautomation.com/
製造ロボットなど様々なデバイスのデータを収集し、効率化につなげるための解析を行うIoTのミドルウェアソリューション。

日本のスタートアップ業界では、コンシューマー向けのプロダクトが目立っている。しかし、企業向けのソリューションには、まだまだ効率化、無人化できる分野があり、国としても必要性が高まることが予想される。だからこそ、日本のスタートアップにも、この分野には積極的に挑戦して欲しい。

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VCが期待する投資リターン


OTA Phot

VCがスタートアップに投資するとき、その1社からどれくらいのリターンを期待しているものなのか?それを知るためには、まずVCがどのようなリターンシミュレーションをしているのかを理解する必要がある。

VCファンドのリターンシミュレーションは、投資戦略や投資ステージ、投資スタイル、ファンドリターンの期待値、そして最終的にどのような配分でリターンが出るか等の考え方によってだいぶ異なる。今回は、僕が行っているシード期やアーリーステージへの投資を例にして説明する。

Power Law
アーリーステージの投資リターンは、「べき乗則(Power Law)」が成り立つ(例1例2例3)。
Power Lawとは、VCファンドの価値を測ってみたときに、そのファンドの半分以上の価値がポートフォリオの中で最も企業価値の高い会社数社によってつくり出されているという原理。過去の自分の投資先のパフォーマンスを分析しても、この「Power Law」が成り立っていて、数字にすると、ポートフォリオ全体価値の80%は、20%以下の投資先企業によって生み出されていることになる。

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ファンドリターン
VCは、ファンドを何倍の規模にすることを期待されているのか?
これは、ファンドに出資するLP(リミテッドパートナー)によって異なるが、北米でVCファンドに専門的に出資する機関投資家は、最低でも10年で約4倍(IRR15%)規模になることを期待する。トップクラスのシードファンドの中には、10年の間で8倍以上の実績を出した例もある。

シミュレーション
スタートアップに投資するときに、VCはその1社にどれくらいのリターンを期待しているのか?例えば、30億円規模のアーリーステージ専門のファンドを運営しているとしよう。
想定するファンドの運用形態としては:

  • 1社への投資に対して、5000万円を投資
  • ファンドの管理コストや報酬は、全体の約2割を占める。30億円のファンドだと、6億円を管理にかけるので、実際投資に使える資金は24億。

投資資金24億円で、1社への投資が平均して5000万円の場合、48社に投資することになる。

Power Lawに沿ったリターンシミュレーションを組むのであれば、48社の約2割、つまり10社がファンド価値の約80%のリターンを生み出すことになる。

30億円のファンドを4倍にすることを目指していれば、ポートフォリオのトップ10社が、120億円のリターンのうちの96億円を生み出すという計算になり、平均すると19.2倍のリターンを出すという結果になる。

でもこれは、あくまでもLPが期待している最低ライン。一流のシードファンドになるためには、10倍、つまり300億円のリターンを目指す必要がある。ということは、48社のポートフォリオのうち、トップ10社が240億円のリターンを出す必要がある。つまり、このシミュレーションを組んでいるシードのVCは、スタートアップに投資するとき、ポートフォリオのトップ10社に対して48倍のリターンを期待していることになる。

上記の例は、リターン配分の考え方を説明することを目的として計算を簡単にするために、追加投資や投資先の持分比率などは考慮していない。でも、実際僕が組んでいるシミュレーションとは大きく外れてはいない。僕がシード期のスタートアップに投資するときは、その1社から30倍以上リターンを期待している。

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起業家の知的誠実さ


Richard Schneider

起業家をサポートする投資家の役割の1つは、起業家が自らを過信しすぎず、また、先入観にとらわれずに物事に取り組めるように、「知的誠実さ」を保てるように、導いていくことだ。

会社経営とは困難の連続だ。だからこそ、自信や自らを信じる強さ、そして時には楽観主義でいることができないと、なかなか続けられるものではない。でも、この「自信」や「楽観主義」を自分に都合よく解釈してはいけない。自分の会社について認めたくない “不都合な事実” から見て見ぬふりをして避けるために、無理に自信を持とうとしたり、楽観視し過ぎて、最終的に自分に対して嘘をつくようなことをしてはならない。
ただ、ここで難しいのは、ほとんどの場合、意図的に自分に嘘をつこうとしているわけではないということ。僕も含めて誰もが、気付かぬうちに自然とこうしたシチュエーションに陥ってしまうことが多い。だからこそ「知的誠実性」をもって物事に対応できているかを確認するための「質問」や「情報」のポイントを予め理解しておく必要がある。

以下は、特に定期的に確認すべきポイントだ。

数値
今設定している ”数値” は本当に正しいのか?この数値でビジネスが成り立ち、また、この数値を維持して成長し続けることに「根拠」があり、また、「現実的」なのか?KPIの1つ1つの根拠と実現性を確認する。

競合
競合と比べて、十分に差別化できているか?ユーザーが比較した時に、自分のサービスを選んでくれる「決定的な理由」が十分にあるのかを確認する。


マネージメントを上手くできているか?社員に対する適材適所が実践されていて、モチベーションを高く維持して働ける環境があるか?1対1のミーティングや360度評価、そして経営評価をする取組みなどを通して確認する

市場
狙っている市場は十分に大きいのか。頭の中で市場を広く定義し過ぎて、現実とのギャップが発生してはいないか。ターゲットユーザーや市場を明快に定義し、その規模がどれくらいかを確認する。

誰にでも認めたくない「不都合な事実」はある。しかし、経営者には事業の数値、競合、人、そして市場に関しては「知的誠実性」を持ち続ける必要がある。外部パートナーや株主の存在を活用しながら、自分が本当に誠実に考えることができていのかを問いかけてみてほしい。

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点じゃなくて線を引く


iParham

  "I Invest in Lines, Not Dots" ~ Mark Suster (Upfront Ventures)

資金調達をするために投資家と話をするとき、パートナーシップやM&Aを進めるために他の企業の代表と会うとき、または、重要な採用候補者を口説こうとしたとき。重要なのは、「点」じゃなく、「線」を引くことだ。

初めて誰かと会うとき、その人にとってあなたは「点」だ。
そこから、その人と会い、話す機会を重ねて、関係を築いていくことによって、その人が、あなたとの「線」を引くことになる。今回は、人を ”巻き込み” ながら深い関係性を築くための「線の引き方」について書いてみようと思う。

成長と進化
人は、自然と成長し、進化し続ける人に惹かれる。会う回数を重ねるたびに、自分が動かしている事業が成長していて、また、起業家自身も成長し、物事の考え方が進化していると相手に気付かせられるかどうかが肝だ。
以前、半年を通してミーティングをし続けた起業家がいた。最初はアイディアも戦略も説得力がなく、出資を断っていたのだが、その起業家と半年をかけて話をすればするほど、アイデアがブラッシュアップされ、解像度の高い計画と戦略に進化していっていることを感じた。さらに、その人に強い忍耐力、精神力が備わってきたことも見て取れるようになり、最終的に出資を実施するという結果に繋がったことがある。

プランニング
計画性があることは重要だ。線を引くためには、成長の変化率を十分に証明できる期間と、適度なミーティングの回数を重ねる期間を設ける必要がある。僕の場合、起業家と会って、すぐに投資を決めなかった場合も、3ヶ月〜半年をかけて月に1度程のテンポでキャッチアップするようにしている。

相手の「線」を引く
自分の「線」を引くだけではなく、相手の「線」も引いていく必要がある。自分と相手との相性だったり、自分が今取り組んでいる事業のことを考えたときに、相手と有益な関係を築くことができるのか、を見極めるのも重要だ。

「点」の状態よりも、「線」の状態の方が、トリガーを引きやすい。資金調達やM&Aを進めようとしたときや、何かを依頼するときにも、線が引かれている状態の方が実行しやすい。だから、常に長期的な視点で見て、考え、「線」を引いていきたい相手とは、早い段階で着実な関係構築を始めていくべきだ。

「点」よりも「線」、これを意識すれば、良好な関係性は、たくさん作れるはずだ。

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未来がソウゾウできるアイディアを選ぶ


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「複数のアイデアがあって、どのアイデアにすればよいか悩んでいる」
ときどき起業家からこんな相談がくる。そんなとき僕はいつも「未来が想像できて、未来を創造できるアイデアを選ぶべきだ」と答える。
アイデアを選ぶときに考えるべき要素と、その詳細について説明しよう。

どんな未来になるのか

技術の発展が進み、常に時代が変化し続けるなか、3年先、5年先、そのアイデアはどういう状態になるだろうか。人類の進歩に貢献できる存在であり続けることができるのか、それとも時代の流れに逆らう存在となってしまうのか。どの程度の規模まで事業を成長させることができるのか。

その未来を実現する条件

そのアイデアを成功させるための条件は何か、そして成功までの道のりの中で踏むべきステップは何なのか。
最初から全ての答えをそろえる必要はない。しかし、どのようなタイミングでどのようにその答えを出せるのかは、ある程度把握しておく必要がある。

想定外のなかで存続できるか

不景気になっても存続できるアイデアなのか?大企業が参入してきたらどうするのか?想定していた条件や基準を満たさない結果に直面したらどうするのか?強敵な競合が現れたとき、想定外の問題が発生したとき、どういうアクションを取れるのか。

毎日ブログを書けるか

そのアイデアについて、毎日ブログ記事を書けるくらいのパッションを持っているか。そのアイデアに関わる知識、業界、技術について貪欲に学びたいと思えるパッションがあるか。

最低5年続ける覚悟はあるか

想像や想定よりも上手くいかないケースの方が多い。タイミングが早すぎたり、なかなかユーザーが獲得できなかったり、資金が集まらなかったりもする。そんな時でも自分たちを信じて諦めずに突き進む覚悟はあるか。

どんな未来を創造したいか

最後に、どんな未来を創りたいか。この世の中にもたらせたい変化、そして創り出したい価値は何なのか。そのアイデアは、自分が創造したい未来を創りだすことができるのか。
これらの要素について、明確な答えを持っていること。パッションを持ち続けられること。この2つが重要だ。

数あるアイデアの中から、「これだ」という1つに絞り込むときは、自分自身が創り上げたい(創造)未来に繋がるアイデアを選ぶべきだ。

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スタートアップの社長を評価する


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スタートアップの社長が評価されるとき、たいていその指標となるのは、会社の成長率や目標の達成率だ。しかし、投資家やボードメンバーがよく見落とすポイントがある。それは、社員が社長をどう評価しているかだ。

僕自身も最近まで、特に順調に成長しているスタートアップに対しては、この評価の重要性を見落としていたのだが、会社が順調であるときも、この評価は非常に重要であることに気づいた。その理由は、1) 社長以外の視点で会社の状況や情報を収集することができる 2) 組織の中で壊れていたりしている部分を悪化する前に早期発見することができる 3) 社長をより良い経営者にするために必要なコーチングが何かを把握できるようになるからだ。

社長を評価するための社員面談は、社長の許可を得て一部または全員と1対1で話す機会を設ける。この評価を行うタイミングは「組織的なブレークポイント」で行う。ブレークポイントとは、会社が10人、25人、50人、そして100人を超えた時。より効率的なコミュニケーションのために組織変更がされたり、部署が設置されてミドルマネージメントが入るタイミングだ。

社員と1対1で話すとき、主に確認すべき点は以下である。

ビジョンや戦略の明快さ:会社のビジョンや戦略が明快に伝わっているかどうか。個人レベルでどういうアクションを取るべきか、目標は何か、が明確に理解されているか。

コア・バリー(価値観)の明快さ:会社のコア・バリューを理解できているか。仕事をするとき、何か判断をするときに何を重要視すべきかを理解しているか。経営軍はそのコア・バリューをきちんと日頃実行しているか。

カルチャー作り:社員のモチベーションが高いか。一体感のあるチームになっているか。

人材マネージメント:採用基準が明快に定義されていて、高く設定されているかどうか。人材が適材適所に配置されているかどうか。

上記の要素に対して情報をまとめて、社長にフィードバックをする。緊急性のある問題が発覚した場合、すぐにアクションに移すこともあれば、注意だけして時間かけて改善するケースもある。なお、これはあくまでも社長をより良い経営者にするためのフィードバックが目的であり、役員報酬等その他の決議に使われるものではない。

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