リーン・スタートアップに必要な「メンタリティー」

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2011年にEric Riesの著書「リーン・スタートアップ」が出版されてからというもの、たくさんの起業家がこの本をベースにしてアイディアを検証しているが、同じ本を読んで、同じように進めているのにも関わらず、すぐに市場に適合するプロダクトにたどり着くことができる起業家がいれば、何ヶ月も何年も迷走し続ける起業家もいる。僕は、その差が出てしまう理由の1つに、起業家の「メンタリティー」が大きく関係していると思っている。リーン・スタートアップをベースにアイディアの検証をする時は、強い信念と論理的思考が必要だ。

信念を曲げない強さ

起業家がリーン・スタートアップを実践する場合、強い信念を持って取り組む必要がある。持っているアイディアが最初からスムーズに上手くいくケースは、可能性としてかなり低いと思う。ユーザーヒアリングで思ったような反応がでなかったり、仮説が間違っていたり。思い通りに行かないことが多くあるはずだ。そんな中、リーン・スタートアップの中では「ピボット(方向転換)」という言葉が数多く登場している。この言葉は、便利だし有効な方法だけど、誤った使い方をしてしまうと、本来の目的を見失ってしまう。例えば、時にはアプローチの方法を微妙に変えながらチャレンジをし続けるべき状況でも、ちょっと思い通りにいかなかったからと言って、そのアイディアを「ピボット」して逃げてしまうこともできる。

起業家は、自分の中で「世界はいずれこうなる、その世界を実現するのは自分だ」といった様な強い信念を持たないと、「永遠のピボット」を続けることになるだろう。

論理的思考

信念の強さと同じくらい必要なのが、論理的な思考。これは信念だけで進めてしまうと、いつの間にか現実が見えない状態に陥ってしまいがちなためだ。だから、ロジカルな視点でユーザーや市場、競合などを分析して、次のアクションを決断していける論理的な思考が必要になる。

そして最後に。起業家は、頑固な人が多い。もちろん良い起業家である為には、ある程度の頑固さは必要だと思う。ただ、感情的になって細かいところで必要以上に頑固になってしまうと本質的な部分を見落としてしまい、良いプロダクトにたどり着けなくなる。

「リーン・スタートアップ」は、起業家に取って凄く良い著書だと思う。でも、起業家のメンタリティーによっては、結果の差が大きく出る。だからこそ、リーン・スタートアップを実践する前にアイディアを自身のビジョンにして、強い信念を育てるフェーズが必要である。そして、そのアイディアを検証する時は、常にロジカルに考える、またはロジカルに考えることができる信頼のおけるパートナーが必要になると思う。


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日本人の起業家がシリコンバレーで成功するには

僕はこの3年の間で、シリコンバレーを目指す日本人の起業家が率いるスタートアップ6社に出資をしてきた。出資後、その6社のうち3社が500 Startupsに参加し、1社がY Combinatorに参加した。そして残りの3社は、シリコンバレーに残らずに日本に帰国している。その後、シリコンバレーの投資家から調達を成功をさせた4社のうち、シリコンバレーに残って順調に成長しているのは2社という結果となった。

今までも現在も、シリコンバレーを目指す起業家が僕を訪ねてくることがよくあるのだが、実は僕が彼らに対してシリコンバレーを目指すことを勧めることは滅多にない。その主な理由は、「レバレッジ」だ。

スタートアップは、はじめから不利なことが多い。資本力、マンパワー、ブランドなど大手に劣る点が多い中で、スタートアップは少ないリソースを最大限にレバレッジして競合に勝っていく必要がある。

アメリカに住んだ経験や現地でのネットワークに乏しく、また、現地の文化をきちんと理解できていない日本人の起業家がシリコンバレーでスタートアップを実践しようとする場合、より一層不利な状況になってレバレッジできる事がさらに減ってしまう。

なので僕は、1番良い形でレバレッジを効かせられる環境が国内になるだろうと判断した起業家に対しては、日本で事業を拡大させていくことを勧めている。

成功するための前提条件「現地採用」 

日本人起業家がシリコンバレーで成功するためには、人材を現地で採用する必要がある。僕の投資先以外のケースを見ても、シリコンバレーで順調に成長している日本人起業家のスタートアップに共通している点と言える。

米国のマーケットや競合を相手に勝ち進んで行く為には、現地でトップクラスの人材を獲得する必要がある。セールスやマーケティング、カスタマーサポートといったほとんどのビジネスシーンでは、現地の人間と対面してコミュニケーションを取ることが必要とされるからだ。ネイティブレベルの英語スキルを持ち、且つ現地の文化を理解できる人材がいないと、圧倒的に不利になってしまう。

ただし、現地の人材を獲得するだけでなく、採用した後も雇用した人たちのモチベーションを高く維持して、成長し続けていくことができる環境を提供する必要がある。特にシリコンバレーでは、人材の獲得戦争になっている状況が続いていて、少しでもやりがいを感じなくなると他社に移ってしまう傾向がある。

だから僕は、シリコンバレーで起業を目指す起業家には先ずこの2つの事を問いかけたいと思う。

現地の人を採用できる自信はあるか?

そして、

日本より何倍も人材獲得の競争が激しい場所で、会社を経営する覚悟があるか?


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効果的に働く

組織やチームを率いるリーダーにとって、いかに効果的で上手なタイムマネージメントをするかは重要なポイントとなる。理由はシンプルで、リーダー自身の働きが効果的でなければ、効果的な組織を創り、マネージメントをすることは出来ないからだ。

そこで、様々な企業や組織のリーダーやマネージャーが実践して成功させてきたテクニックの中で、僕自身も実践しているタイムマネージメントテクニックを紹介したいと思う。ただし、このテクニックが全ての人に当てはまることは無い。リーダーは、たくさんのタイムマネージメントテクニックを試しては改善しを繰り返すことで、自分が最も効果的になれるテクニックを見つけて身につけなくてはいけない。

日々テーマを持って働く

Twitterの共同創業者であるJack Dorseyがあるインタビューで、自分は毎日「1日のテーマ」を決めて、そのテーマにフォーカスして1日を過ごすようにしていると話している。会社にとって重要なトピックだけをテーマに選んで、なるべく1日の多くの時間をそのテーマのために使う。例えば僕は、こんなテーマを設定している。

月曜日:文化とマネージメント
火曜日:新規事業の促進
水曜日:海外投資
木曜日:ブランドとPR
金曜日:国内投資
土曜日:休み
日曜日:振り返り、未来の戦略

でも、Jackも言及していることだが、すぐにこのやり方に慣れるのは難しくて、継続していくには忍耐力と練習が必要だ。僕もこのテクニックを試し始めてから1ヶ月程度でやっと慣れ始めて、効果を感じ始めたのは3ヶ月目くらいからだった。ちなみに、テーマは毎週固定しないで、自分の考えや意識が別のテーマに変化していくのに気がついたら、臨機応変にテーマを変えて1日集中するようにしている。

このテクニックの優れた点は、特にたくさんの心配ごとに直面することが多いリーダーが、こうして日々のテーマを持つことによって、無駄なことをシャットアウトして、テーマに沿った重要なポイントだけに集中出来るようになることだ。

そして、他に対応しなくてはいけないことが発生して、自分が集中している事を中断しなくてはならなくなったとしても、テーマさえ決まっていれば作業に戻りやすくなるのもメリットの1つだ。

1日3つの結果を出す

僕は毎日、翌日中に結果を出したいと思うテーマに沿った3つの目標を設定するようにしている。このとき重要なのは、3つの「タスク」ではなくて、3つの「結果」であること。

そして1日の最後に、その3つの結果を出すことができたのか、改善できる点があるのかを振り返って考えることが大切だ。毎日30分程この振り返りの時間を持つようにしている。

 Prioritisation Matrix

これはRedpoint VenturesのTomasz Tunguzのブログで紹介されていたPrioritisation matrix (優先順位のマトリックス)だ。

その日に設定したテーマや結果に関係なく、他の人や何らかのイベントによって、その日のタスクが増えてしまうのはよく起こること。そんな時このマトリックスを使って、そのタスクを今行うべきなのか、それとも他の人に任すべきなのか、もしくは今は行わずに無視する選択肢もあるのかを判断しやすくする。

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緊急性(高い)重要性(高い):すぐに対応すべきタスク。例えば、重要な顧客や取引先の対応や、緊急性の高い重要な契約書の対応など。

緊急性(低い)重要性(高い):別途時間を作って対応内容を考えたりする必要のあるタスク。例えば、パートナーシップの開拓や会社の長期戦略の計画を立てるなど。

緊急性(高い)重要性(低い):部下や他のメンバーに任せるタスク。

緊急性(低い)重要性(低い):今は無視するタスク。

ハーバードビジネスレビューでも、このマトリックスのタスクとリズムに関する面白い記事があった。

本来無視すべきはずの緊急性が低く重要性の低いタスクと他の人に任せるべき緊急性が高く重要性の低いタスクは、作業のリズムとペースの両方が早くなることが多い。これらは、テレビを見ている時やゲームで遊ぶ時と同じような居心地の良いリズムでペース早くタスクを進められるため、効率よく進捗させているかのような錯覚に陥る。だから人は、このリズムが早くなりがちのタスクをやりたい衝動に駆られる。

逆に緊急性が低く重要性の高いタスクは進捗のリズムが遅く、すぐに成果を感じることができないため、罪悪感を抱いてしまったりする。でも実は、緊急性が低く重要性の高いタスクこそ、組織やチームを前に進めるために優先させる必要がある。早いペースでリズム良くタスクを消化していることが、効果的に働けていることだと勘違いしないことが大切だ。

僕は、緊急性と重要性の組み合わせの異なるタスクに移るときは、一旦休憩を取って音楽を聞いたりすることで、リズムとペースを自分の中で調整している。

自分に合ったタイムマネージメントテクニックを作り出す

最初に書いたように、今回紹介したテクニックが全ての人に適しているとは思ってない。自分に合ったタイムマネージメントテクニックを探して、改善し、練習を繰り返す事によってより効果的なリーダーになれるだろう。


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スタートアップを生み出す組織「Startup Studio」

ここ数年の間に、シリコンバレーでは「Startup Studio」というスタートアップを生み出すための新たな組織概念が誕生して、注目を浴び始めている。

Startup Studioの特徴は、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、そしてその他のオペレーションをすべてインハウスで持つこと。Startup Studioは、これらのリソースを駆使して、新しいスタートアップを生み出したり、投資先の事業を成長させたりしている。

そしてもう一つの特徴は、実際に事業を創った事のある起業家たちが、このStartup Studioの運営・マネージメントをしていているところだ。Twitterの創業者であるEvan WilliamsとBiz StoneのObvious Corp, PaypalやSlideを創業したMax LevchinのHVF、MySpaceの社長だったMike JonesのScience、Time WarnerのSVPだったJohn Borthwickが率いるBetaworksなどがStartup Studioのカテゴリーに入る。

ただし、それぞれのStartup Studioのモデルは若干異なる。Obvious CorpやHVFはアイディアやチームをゼロから生み出しているのに対し、BetaworksやScienceはゼロから始めるスタートアップもあれば、すでに事業を進めているスタートアップ、既に成長拡大フェーズに入っているレイターステージ、もしくはスタートアップを丸ごと買収したりしているケースもある。

経験の蓄積、拡大、そして実行スピード

Startup Studioのメリットは複数ある。

1つは、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、マネージメントなど会社を成長させるために必要なあらゆる面でスタートアップと深く関わることで、その経験や知識がStartup Studioに蓄積していき、そして、これらをスピーディーに他の支援先の企業に伝達し、実行することできる。

こういったオペレーションレベルでのサポートや経験、知識の蓄積は、アクセラレーターやベンチャーキャピタルでは実現できていなかったことだ。

そしてもう1つのメリットは、Evan Williamsが ”Parallel Entrepreneurship” と呼ぶ、複数の事業を並行して同時に生み出す仕組みが実現できること。例えば、1人の起業家が、複数のアイディアを持っている場合、Studio内にいる他の起業家にアイディアを渡して同時に実行させたり、起業経験が少ない若手起業家同士でコンビを組んで二人三脚で事業を創造させる。これによって、経験やアイディアを持つ起業家が、他の起業家にその知識やスキルを上手に伝えていくことができるようになる。

Startup Studioモデルを採用したBEENOSの事業創造プラットフォーム

去年7月に僕たちが発表した「BEENOS」は、Startup Studioモデルを日本で初めて採用し、企業の創造と育成を目的にした組織だ。現在、エンジニアチーム、デザイン、リクルーティング、マーケティングのスペシャリスト、投資マネージメントチーム、ベンチャーパートナー、オペレーションチームの7チーム計24名で運営している。

BEENOSでは、起業家と共にスタートアップの立ち上げをゼロから二人三脚で行い、そして、また、シードステージやミドルステージのスタートアップに対し投資を行い、その企業のオペレーション業務に深く関わっていく。

BEENOSは、エンジニアリング、デザイン、マーケティング、リクルーティング、マネージメント、データ分析に関する知識、そして起業に関する実績、経験を持つ集団であり、その知識、経験を今後の起業家たちに伝えていくことをミッションとし、従来とは異なる起業家支援の形を実行する「起業家のための事業創造プラットフォーム」を目指していきたい。

僕は、この「Startup Studio」モデルは支援を受ける側、そして支援を提供して行く側の双方にとってメリットが多いモデルだと考えている。今後、日本国内でBEENOSの他にもStartup Studioをモデルとした取り組みが増えていくだろう。 


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編集長になれ

3年ほど前にSquareやTwitterを創業したジャック・ドーシーは、スタンフォード大学での講義で「CEOは会社の編集長になるべきだ」と語った。

ジャックは、3つの編集ポイントが大事だと言う。

一つ目はチーム。最高な仕事ができるように最高なチームになるための編集をする。新しい人材を入れたり、時には外したりする。これによってネガティブ要素を取り除いていくのだ。

二つ目はコミュニケーション。社外に対しては、ユーザーの共感を得られるように会社のストーリーを編集する。そして、社内に対しては、社員一人一人が組織としてどの方向を向いていて何が一番大事かが理解できるようなストーリーを見せる。

三つ目は会社を成長させるためのお金の流れの編集。売り上げや資金調達から得たお金を違う形の価値のあるものに編集することで、会社を成長をさせていく。

さらに、Squareの元COOだったキース・ラボイスも、CEOが会社の編集長になることを意識する重要性について語っている。

キースは、自分がいま取り組んでいることは、「編集」をしているのか、それとも「書いている」のかを常に意識することが大事であると言う。「書いている」というのは、マーケティング戦略を企画したり、プロダクトデザインやロードマップを作ったり、戦略を考えてたりするなど、何かを生み出す作業だ。

すなわち、この「書く」作業の割合が多いという事は、部下や社員への信用が足りていない、もしくはCEOが様々なタスクを任せていける人材を雇用できてないという事に繋がっているのだ。

特に、スタートアップが組織を拡大(スケール)させて行かないといけないフェーズにいる時、CEOはできるだけ「編集長」になる事を意識する必要があるわけだ。

そして最後に、僕自身がもう一つ思っていること。それは、CEOは自分自らをも編集する必要があるということだ。スタートアップのCEOは、様々な役割を並行して担わなくてはならない。変化をもたらすプロダクトを作れるイノベーターであり、組織を作ってチームを引っ張るリーダーであり、そしてオペレーションを最適化することができるオペレーターである必要もあるのだから。

僕が関わっているスタートアップの中で急成長している会社の多くは、創業者自身、人が変わったかのように自分を「編集」し、あらゆる人、物、そしてお金を上手に組み合わせて「編集」している。その結果、大きな価値が生まれているのだと思う。


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投資家やメンターのアドバイスをどう処理するべきか?

Always-Be-Closing

アクセラレーターに参加する初期段階のチームやスタートアップは、投資家やメンターに出会う機会が多くある。それぞれから色々な指摘やフィードバックを受け、その結果、ピボットしたり、戦略を変えたり、はたまたプロダクト自体を変えることだってある。しかしあまりにも素直に、すべてのフィードバックを受け入れた結果、迷走してしまって軸がブレてしまうケースをよく見かける。

どのフィードバックが正しいのか?どれを優先して反映するべきか?など、スタートアップの創業者はもらったフィードバックを的確に分析していく必要がある。

アジェンダ

まず始めに理解しないといけないのは、アドバイスをするメンターや投資家はそれぞれ違うアジェンダを持っているという事。
特に投資家のアドバイスには細心の注意を払った方が良い。投資家は「ビッグなアイディア」に投資したがるので、「アイディアが小さすぎる」と言及してくることが多い。でも、そのアイディアが本当に小さいのかどうかはほんの数分間話を聞くだけでは分かるはずがない。アイディアの大小は、サービスをローンチしてマーケットとユーザーの反応を見てからではないと分からない事が多い。一流のVCでさえアイディアの大小の判断を間違える事がある(例えば初期の段階のTwitterやGoogleへの出資を断った一流VCもいる)。

そして、初対面のスタートアップに対してたくさんのアドバイスをする投資家がいる。その中には、「この人は知識が豊富で、今後一緒に組めれば色々と教えてもらえる」という印象を起業家に与えるためにこうしたスタイルを取る投資家もいるのだ。今そのスタートアップにとって何が大事なのかを理解しようとする前に、とにかく「自分と組めばうまくいく」と思わせるために色々な知識やアドバイス、ビジョンを語りかけるのだ。これは、投資家自身「どれだけ優秀な起業家と組むことができるか」が1つの重要なキーポイントなのだから、仕方のないことなのだが。だからこそ、起業家がアドバイスを求める時、人はそれぞれ違うアジェンダを持っている事を理解しないといけない。そしてそのアドバイスが本当に正しいかどうかは必ず自分で判断する必要がある。

プロダクト

  1. ターゲットユーザー
  2. クオリティーが高く、たくさんの人に愛用されたプロダクトを作った事がある
  3. スペシャリスト

極端に聞こえるかもしれないが、そのメンターや投資家が上記のいずれかにも当てはまらないのであれば、そのプロダクトに対するフィードバックは無視しても良いと思う。

プロダクトのフィードバックは、ターゲットとなるユーザー(お客さん)から聞くことを優先する。

ビジョン

ビジョンは創業者が自分自身で考えて作るべき。他の人に言われたビジョンを選択肢にしてはいけない。

プライオリティ

では実際に今後たくさんもらうであろうアドバイスは、どう分析して判断すれば良いのか。

それは自分のスタートアップが今どんなフェーズにいて、プライオリティが一番高い大事な課題が何なのかを把握する事によって整理しやすくなる。

課題検証なのか、プロダクトの検証なのか、プロダクトやオペレーションの最適化なのか、それともスケールするフェーズなのかなどを把握する事によって、どのようなアドバイスが必要なのかが判断できる。もらったアドバイスをリストに落とし込んで、今のフェーズに適しているアドバイスをハイライトする。ハイライトされなかったポイントは、無視するくらい強気で良い。

ドメイン

誰からアドバイスをもらっているかも重要なポイント。起業家は、アドバイスをしてくれた人がどのような経験、実績を持ち、どういった分野の専門家なのかを理解しておく必要がある。その人の専門がマネージメントなのか、データ分析なのか、プロダクトデザインなのか、など。自分のプロダクトやサービス、企業にとって一番必要なアドバイスをもらえるよう、起業家自身も予め考え理解しておくべき。

何度も言うが、出始めのスタートアップは、色々な人からたくさんのアドバイスをもらう。だからこそ、きちんと整理をすることが大事。

  • ビジョンは自分自身で見出して信じるべきで、決してブレてはならない。
  • プロダクトはユーザーファースト。
  • プライオリティの把握。
  • 誰からのアドバイスを得るべきかを起業家がきちんと整理し、理解しておくこと。

そして最後に分かっておいてもらいたいのは、アドバイスは「指示」ではなくて、あくまでも「アドバイス」であるということ。自分が立ち上げたスタートアップなのだから、自分が一番正しいと思った方向を進むべきなのだ。その結果それが正しかったかどうかはすぐに見えてくるし、それが正しかったとしても、誤りだったとしても、起業家人生というのはそういう経験の連続であり、それによって「判断力」を磨くことが一番大事なのだ。


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受け入れられないということの恐怖

起業をしたら、ときに自分の信念や考え方を色々な人から否定されるという状況に直面する覚悟が必要だ。
ユーザーインタビューをした結果、自分が作ったサービスがユーザーから受け入れられないこと、営業電話をかけてもきちんと話さえ聞いてもらえないこと、投資家に対してピッチをするときや、アクセラレータープログラムに応募をしても自分のアイディアやサービスが受け入れられないこと、自分が挑戦していることを家族や友人に説明しても理解してもらえないことなど、自分が取り組んでいることが受け入れられないということは頻繁に起きる。

しかしこれは当たり前のことで、起業家はその恐怖に立ち向かう必要がある。

ユーザーからの受け入れ

その中でも特に向き合っていく必要があるのは、ユーザーやお客さんからのフィードバック。一番良くないパターンは、ユーザーの反応を恐れてユーザーヒアリングを行わなかったり、プロトタイプのフィードバックをユーザーに求めず、それを避けるかのように開発をどんどん進めること。良いプロダクトを作るためには、ユーザーとの距離感を縮める必要がある。距離を縮めるということは、ユーザーとコミュニケーションを取る頻度を増やして、フィードバックを受けて、理解や共感を深める事。

決して、自分のユーザーを恐れてはならない。

何が間違っていたのか?

もしユーザーから受け入れられなかった場合は、「何故なのか」を振り返って分析し、学ぶ必要がある。伝え方が悪かったのか、ユーザーの課題を理解していなかったからなのか、ソリューションが適合していないのか等、原因を探る必要がある。その学びを生かして次に繋げていく。

起業家の道を進む過程で、自分の何かを「否定される」ということは当たり前のこと。恐怖心を持つことも当たり前のこと。でも、恐れたままで大丈夫。

ただ、その恐れを理由にリスクを取ることを止めないこと。そして必ずその恐怖に立ち向かう事。逆にその恐れをモチベーションを高める武器にするといい。


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起業家を理解する事

シードアクセラレーターを3年半前に立ち上げて、35のスタートアップを支援してきた中での一番の気付きは、シードステージの投資家やシードアクセラレーターの運営者は起業家をきちんと理解する能力がものすごく重要だと言うこと。これ無しでは起業家にポジティブなインパクトを与える事はできない。

アイディア

起業家と初めて出会う際に先ず最初に理解しないといけないのが、起業家とその起業家が進めようとしているアイディアが適合しているか。以前にも書いた事があるのだが、起業家の経歴、働き方、性格、長所と短所を理解して、アイディアを成功に導くために必要な要素が揃っているかを分析する必要がある。経験上ほとんどの場合、起業家が最初に考えるアイディアは、その起業家に適合してない事が多い。僕が関わってきたスタートアップの中で成功しているのは、大半が元とは別のアイディアになっている。

実際僕も、過去に何度か起業家とその起業家のアイディアが適合していない事に気づかず、その起業家が思い付いたアイディアに惚れすぎてしまった事や、自分が考えたアイディアに惚れてしまってそれを起業家に押し付けてしまった事がある。結果、両方とも上手くいかなかった。

アイディアに惚れすぎてはならない、アイディアを押し付けてはいけない。起業家を理解することが最優先。理解していない状態で、アイディアを進めないこと。

アドバイス

アドバイスを提供したい人は沢山いるのだが、日本で最も足りてないと思うのが、「聞き上手」な投資家。今対話している起業家は現在どんな状況下にいて、何が一番の悩みなのかを理解せずにアドバイスをしてしまうと、起業家が混乱してしまう事が多い。まず大事なのは状況を把握すること。そして、その起業家はどういう考えをもって「今」にたどり着いたのかを理解する事。アドバイスをしないという判断が正しい事も多々ある。「今」大事じゃない事について、アドバイスをしても起業家は混乱するだけだ。

成功確率

実は、僕は投資家が起業家の成功する確率を伸ばすことができるとは思っていない。僕が関わってきたスタートアップで成功している企業は、僕がいてもいなくても成功することはできたと思っている。それと同じように失敗しているスタートアップも、僕がいてもいなくても失敗しているのだと思う。ただ、唯一貢献できているのだろうと信じているのは、成功や失敗にたどり着くまでのスピードと成功と失敗の大小。今までの経験を活かしながら、より早い段階で成功もしくは失敗に起業家を導く。これによって成功の規模を最大限に引き出し、また、失敗を最小限にとどめる。これがシードステージの投資家やシードアクセラレーターの運営者に特に必要とされていることだ。

感情

起業家は日々、感情のジェットコースターに乗っているようなものだ。不安、恐怖、混乱の状態に入る日もあれば、自信に溢れて無敵になった気分にさえなる日もある。でも、どんな状態でもハードワークを続けて、決断スピードを落としてはならないし、社員に対してリーダーシップをとっていかないといけない。だからこそ、起業家がどのような感情状態にあるのかを理解して、コミュニケーションの仕方を変えていく必要がある。

僕自身も、まだまだ起業家や人を理解する力を磨く必要があると思う。これをマスターしてこそ、起業家をサポートする人間として一流と言えるのだろう。


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創業者の時間

スタートアップの創業者は常に忙しい。やる事が多すぎて遅い時間まで働き、今やっている事以外の事は考えられない状態に入る事が多い。経営経験が少ない創業者はよく自分が忙しいから会社が前に進んでいると勘違いをしてしまい、「忙しい事」によって安心感を得てしまうことがある。

しかし本来創業者の時間は何に一番使うべきか?
それは「今、会社にとって一番大事な事」に使うべき。創業者は現在何に時間を割いていて、そしてそれが自分の会社にとって本当に最優先すべきことなのかを意識する必要がある。

時間の作り方

先ずやるべき事は時間の確保。
会社がどのフェーズにあったとしても、創業者は時間を作る必要がある。会社が「一番大事な事」をやり遂げるには、たいてい時間を集中的に確保する必要がある。毎日寝る前に30分ほどかけて、その日何の事にどれくらいの時間を割いたかを振り返り、記録する。

次にやるべき事は「今、会社にとって一番大事な事」を考える。
考え方としては、今一番の課題は何なのか?もしくは、会社の成長を妨げる一番のボトルネックは何か?を考える。恐らくたくさん出てくると思うが、これをあえて一個に絞る事が大事。

そして、記録してきた日々の時間の配分を見て、「一番大事な事」にどれくらい時間をかけられているかを見る。もしそれが1日4時間未満だった場合、他の事に時間を割き過ぎだと判断する。

時間の確保がきちんと出来ていないと判断した場合は、それらが今本当に必要なことなのかを考えて、もし必要な場合それを他の人に任すことができるかを考える。他の人が担うことができるのであれば、そのオペレーションを他の人に任す。経営者は、できる限り最低1日4時間程度は今直面している課題の為に時間を集中的に確保出来るようにする。その時間が途切れるほど生産性が下がるので、4時間連続で確保する事がベスト。

採用

「一番大事な事」の大半は採用になる事が多い。採用は必ず創業者自らやるべきだと思う。会社が小さければ小さいほど、そして埋めようとしているポジションが重要であれば重要なほど創業者自身が判断をする重要性が高まる。自分が作った会社の文化を大事にするべき

オペレーションモードの罠

会社が軌道にのりとにかく今やっている事を継続すれば、売上も利益もユーザーもどんどん増えていく ー この、今やっている事だけを繰り返す「オペレーションモード」に入らない事。トップに立つ人間の役割は、常に先の事を考え、機会を探し、先手を打つ。先の事を考える時間を確保する事。

マスターするまで時間がかかる

タイムマネージメントは、すぐに上手くはならないし、時間確保ができるようになるまで時間がかかる事が多い。僕自身もまだ完全にマスターできていなくて、自分の時間配分に不満足な時もある。とにかく繰り返し繰り返し自分の時間配分の最適化に挑戦する事。いずれ効果的で生産性の高い創業者になり、自分の会社の成長スピードも加速する事になる。


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自分が働きたい会社をつくれ

スタートアップにとって最も大事な資産は”共に働く人”だ。Virgin Groupを創業したRichard Bransonが「成功への一番の秘訣は?」と聞かれた時「自分より賢い人を探し出し、彼らを仲間として迎え入れ、自分が会社のビジョンにフォーカスできるように彼らに自由と権限を与えたことが全てである。」とRichardは答えた。Richardはビリオンダラーカンパニーを8社も生み出した唯一無二のアントレプレナーである。

僕は一週間ほどGitHubの創業者であるPJ HyettとScott Chacon、そしてGitHub従業員のDavidと共に活動する幸運な機会があった。GitHubは300万人以上のプログラマーが利用しており、会社の評価額は$750Mと報告されているシリコンバレーで今最も注目の企業である。

一週間一緒に活動していちばん印象的だったことは、創業者同士の信頼関係と、Richardと同様に従業員を大切にしていることである。GitHubは2008年の創業から雇用してきた従業員150名のうち、1人たりとも自分から辞めたことがないという驚くべき実績を持つ。

採用プロセス

GitHubの採用プロセスで特に気にかける点は「頭が良いか」そして「文化が適合しているか」の2つである。文化の適合性では、他の従業員と一緒に上手く働けるか、そしてGitHubの独特な職場環境にフィットするかが含まれる。GitHubではほとんどのコミュニケーションがオンラインで行われていて、従業員の大半は会社に出社せずリモートで作業をしている。また、マネージャーという役職が存在しないフラットな組織で何を開発するかは個人の自由のため、従業員には時間を効率よく管理し自発的にプロジェクトを遂行できる能力が必須である。

またGitHubでは採用の最終段階で「Beer Test」というものがあり、採用候補者と一緒にお酒を交えて会話をし「その人とまた一緒に呑みに行きたいか」によって、採用・不採用を決めるという興味深い採用プロセスが存在する。どれだけ優秀でも、他の従業員と上手く働ける事が絶対条件である。

優秀な人材を惹き付ける

Open Network Lab第6期生のメンタリング中、投資先企業からの「どのようにしたら自分の会社に優秀な人材を惹き付けることができるのか?」という質問に対し、PJは「それはとてもシンプルなことで、”自分たちが本当に働きたい会社をつくること“である。」と答えた。PJ達はGitHub創業の際に、とにかく自分たちが働きたい会社をつくる事に専念した。殆どの社員がリモートで働いているため、その分オフィスは従業員同士のコミュニケーションの場として機能するよう、人が集まりやすい楽しい場所になるよう設計した。また仕事意外の心配を軽減させるため福利厚生を充実させ、医療費は会社が全額負担をし、産休も長く取れるようにしている。自分が働きたい会社をつくることで、自然と自分と同じ価値観を持った人間が集う場所になるのである。

それとPJは言及しなかったが、優秀な人材を惹き付けるための重要な要素の一つは”ブランディング”である。GitHubの技術者に対するブランディングとても上手くいっており、GitHubが主催する交流会「DrinkUp」を定期的に開催しエンジニア同士の交流をはかったり、社内で作った最先端の技術を使ったプロジェクト等を沢山公開することで、技術者にとって魅力的な会社というブランドを確立している。

最高な会社は、最高な人々を引きつける賢く野心的な創業者によって創られる。自分が働きたい会社を創り最高な人材を採用して彼らに自由と権限を与えるべきである。


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