成功しているSaaS企業の価格設定とは?そして「死の谷」を避ける方法


Andreas Beutel

価格設定は、対象顧客の設定やセールスオペレーションの構築、そして目指すべき企業規模を決める上で重要なキーファクターとなる。今回はSaaSの価格設定において、考えておくべきポイントを書いていこうと思う。

成功しているSaaS企業の価格設定は?

以下の表は、Blossomstreetventuresが公開した、北米SaaS企業37社の上場時の売上、顧客数、そしてACV (一顧客あたりの年間平均単価)を一覧にしたものだ。

特に見て欲しいのは、Average Contract Size(以下、ACV)の列。高いところでは、2U (ACV 約11億円)、Veeva Systems (ACV 約8500万円)、Workday (ACV 約6900万円)などがあり、低いところでは、Lifelock (ACV 9千円)、Xactly (ACV 3万円) などがある。上記37社全体のACV 中央値は、$14,449(約160万円)。

ACV $15000〜$25000が “死の谷”!?

上の表をACV別にグラフ化すると、ACV$15,000〜$25,000の会社がないことが分かる。実は、ACV $5000〜$30,000は “死の谷” にハマりやすいと言われている。ここで言う「死の谷」とは、ACVと対象顧客がフィットせず売上の伸びが頭打ちとなり成長が止まる、またはビジネスモデルが破綻している、ということ。

しかし、自分が経営する会社のACVがACV$5,000〜$30,000だからと言って、”死の谷” に足を踏み込んでいるとは限らない。提供先となる企業の業種や業界によって、この “死の谷” となるACVが異なるからだ。実際上のグラフのように少ない数ではあるが、一般的に ”死の谷” と言われているACVでも、成功しているSaaS企業が存在している。

“死の谷” を避ける方法はあるのか。

仮に、年間売上50億円規模になることを目指す企業があるとしよう。ACVに応じて算出すると、この企業が必要とする顧客数は以下の通りとなる。

ACV ¥500,000の場合、10,000社の顧客が必要になる。ここで考えるべきは、「実際対象となる顧客数はどのくらいいるのか」。この答を求める際に考慮するべきポイントは、SaaSで独占的なマーケットシェアを取るのは難しい、と言うこと。創業18年のSalesforceでさえ、マーケットシェア19.7%と言われているのだ。

Source: Forbes

自社のACVに対してフィットする対象顧客数が、一体どのくらい存在しているのか。そして獲得できるであろう現実的なマーケットシェアから見ても、目指したい企業規模に成長させることができるのかを常に計算し、把握しておくことが重要だ。
もし、目指している規模に到達する前に頭打ちする可能性が見えたら、ACVを上げる(又は下げる)など価格設定戦略を見直す必要がある。

もう1つ考慮する必要があるポイントは、販売のプロセスがどのくらい複雑であるか。セルフサーブやインサイドセールスだけで完結するのであれば、低いACVでも成り立つだろう。しかし、販売のサイクルが長かったり、営業やカスタマーサクセスのタッチポイントが多かったりする場合、低いACVのままではゴールの達成は難しい。

段階的に。

もしも自社のACVが低すぎることが分かったとき、いきなり5倍以上のACVを狙うのではなく、機能拡充や営業プロセスの修正を行い、1.2倍、1.5倍、2倍というように段階的に見直していくことで、”死の谷” にハマることのない、企業になってほしい。

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チャーン(退会率)との戦い方


Hans Splinter

チャーンレート(退会率)を低く抑えることは、どのビジネスもが戦わないといけないこと。ほんの数パーセントの違いだけでもそのビジネスの成長率や利益率に大きくインパクトを与える。

下図は、ある企業の月次売上の推移。青い線は月次チャーンが2.5%の企業。赤い線は5%の企業。両社とも新規の売上成長率は全く同じだが、ビジネスの規模が大きくなればなるほど、差が開いていることが分かる。チャーンレートが高ければ高いほど成長するための時間とコストがかかるのは明らかだ。

チャーンと戦う時ときは、大きく3つのステップがある

Step 1: 「成功したユーザー体験」が何かを理解する

まずは、成功したユーザー体験を知ること。プロダクトやサービスを使ったことがあるユーザーへのインタビューを通じて、満足度の高いユーザーが、どういった体験をしているのかを理解する。

(成功したユーザー体験例)
B2B・・・「とあるタスクを〇〇分でできた」
コマース・・・「欲しい商品が購入できた」
ソーシャルアプリ・・・「特定の動作(いいね、コメント、お気に入り等)を行った」

もし分析できるユーザーデータがあるのであれば、アクティブ率が高いユーザーとそうでないユーザーの行動を登録からの時間軸で見てみると良い。そこから、アクティブ率が高いユーザーがどういう体験(行動)をしているのかを導き出していく。

(事例)
B2B・・・「導入から30日以内に社員データを70%以上記入している」
コマース・・・「登録から24時間以内に購入している」
ソーシャルアプリ・・・「登録から7日以内にお気に入りを10回押している」

Step 2: 成功したユーザー体験を提供する

チャーンレートが低いユーザーがどのようなユーザー体験(行動)をしているのかが理解できたら、その体験をできるだけ多くのユーザーに提供する方法を考えて実行する。これは、完全にマニュアル作業で良い。スケーラブルである必要は全くない。

(事例)
B2B・・・「導入から最初の30日はサポートやコンサルを手厚くする」
コマース・・・「商品をメールで提案する」
ソーシャルアプリ・・・「お気に入りに入れるコンテンツを提案する」

先ほど述べたように、この段階で自動化やスケーラビリティーを考える必要はない。なぜならこれは、チャーンレートを下げる施策の検証が主な目的だからだ。

Step 3: 再現性があり、スケーラブルなプロセスにする

Step 2で実施した内容が、チャーンレートを下げるための施策として有効であることが検証できたら、この施策を再現性のあるスケーラブルなプロセスにしていく。

(事例)
B2B・・・カスタマーサクセスのマニュアルを作って体制を大きくする
コマース・・・提案の自動化や品揃いを増やす体制をつくる
ソーシャルアプリ・・・パーソナライズされたコンテンツ増やす仕組みや体制をつくる

ベンチマーク

チャーンレートと戦う時に、同規模の顧客を対象にサービスを展開している企業や、同業他社のチャーンレートを把握できていると、自社のチャーンレートの状況を正しく理解することができたり、目指すべきチャーンレートを知ることができる。
例えばB2Bの場合、大企業向けのサービスなら月次チャーンレートは0.5~1%未満、中小企業向けのサービスなら3%~7%程度がベンチマークとなる。月額制コンテンツ課金サービスの場合は、月次チャーンが2%〜6%。サブスリプション型コマースの場合は、5%未満が望ましい。

これらが、常に続いていくチャーンレートとの戦いに備えて実践すべき3つのステップ。このステップ1〜3は、今後何度も何度も繰り返しまわしていくべきだ。

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VCとして成功するために、起業家としての成功は必要なのか?


JD Lasica

VCを目指す若手や、VCの世界に入ろうとしている元起業家から時々聞かれる質問。

まずは、毎年 Forbes が発表している〈Midas List〉を見てみよう。これは投資先のIPO評価や、専門家からの意見によって決定されるテクノロジー系ベンチャーキャピタリストのランキングだ。2016年でトップ10入りしたVCで、実際起業家として成功しているのはどれくらいいるのだろうか。

※ 今回は成功の定義を100億円以上のエグジットとした

1) Jim Goetz, Sequoia Capital
有名な投資先:WhatsApp
起業家としての成功経験:無し。LinkedInではVital Signsの共同創業者として記載されているが、買収された時期が彼が辞めてから10年経過しているので、これは無しとしてカウント。

2) Steve Anderson, Baseline Ventures
有名な投資先:Instagram
起業家としての成功経験:無し。経歴はeBayでプロマネをしていたのと、StarbucksでGMをしていた。

3) Chris Sacca, Lowercase Capital
有名な投資先:Twitter
起業家としての成功経験:無し。Googleで従業員として働いていた。

4) Peter Fenton, Benchmark
有名な投資先:Twitter
起業家としての成功経験:無し。Accel Partnersで働いていた。

5) Mary Meeker, Kleiner Perkins Caufield & Byers
有名な投資先:Facebook
起業家としての成功経験:無し。元々はゴールドマンのMD

6) Josh Kopleman
有名な投資先:LinkedIn
起業家としての成功経験:あり。Half.comを創業し、$300M以上の価値でeBayに売却。

7) Neil Shen, Sequoia Capital China
有名な投資先:Alibaba
起業家としての成功経験:無し。Yale大学卒業後、Citibankに就職。

8) Bill Gurley, Benchmark
有名な投資先:Uber
起業家としての成功経験:無し。ウォールストリートでアナリストをした後、VCの世界へ。

9) Douglas Leone, Sequoia Capital
有名な投資先:FireEye
起業家としての成功経験:無し。Sun Microsystems、やHPを経てVCの世界へ。

10) Peter Thiel, Founders Fund
有名な投資先:Palantir
起業家としての成功経験:あり。PayPalを創業し$1.5Bでエグジット。

〈Midas List〉でトップ10入りしたVCの中で、起業家として成功しているのは、仮にJimをカウントしたとしても3人。つまり、起業家として成功を収めていなくても、VCとして成功する可能性は十分にある、ということだ。

それは何故か?

役割が異なる:特にこれから強い組織を作り上げようとしている初期段階の企業の場合、起業家に求められるのは物事を適格に判断して実行に移す、まさに組織を動かす「主役」になれる力だ。でもVCは、様々な情報や経験を集めて起業家が正しい判断ができるようにサポートしたり、資金調達や人材の採用、ネットワークの支援など、主役とはまた異なる視点や分野で力強く起業家を支援する「脇役」のような存在でいるべきだと思う。

選ぶ方が大事:VCは、有望なスタートアップや起業家を見つけて投資することが重要だ。つまり極端な話、起業家をサポートする能力が無くとも情報収集能力や目利き力があればVCになることはできる。でも、VCが起業家を選ぶように起業家もVCを選ぶ。だから、ただ起業家を見極めるだけの力でなく、起業家に選ばれるVCになることが、良いVCになる上で大切なことだと思う。

でも、起業経験はあった方が良い

共感:起業経験を持っていた方が、自分自身の経験から起業家の視点を理解し、強い信頼関係を構築できる。また、経験者の意見の方が未経験者の意見より尊重されやすい。

アドバイスができる:経験者の方が多面的かつ具体的なアドバイスができる。特に初めて起業する起業家は、少しでも困ったときや相談したいことがある時、起業経験そして成功体験のある人にアドバイスをもらえることは、とてもありがたいことだ。

「VCとして成功するために、起業家としての成功は必要なのか?」

僕なりの結論を述べると、VCとして成功するために、起業家としての成功は必須ではない。ただ、起業家経験があった方が差別化になり、より強いVCになれるのではないかと思う。

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友情を勝ち取り、人を動かす方法

年末年始は、かねてから読んでおきたかった本を読むことができた。
その中の1つがデール・カーネギー著の「 人を動かす 」。リーダーシップや人のマネージメント、そして人に好かれるための 30の原則 について書かれている。自分が無意識のうちに、すでに実践していたこともあれば、自分がチームをマネージしていた頃にもっと意識しておけば良かったと思う部分もあった。今回は、この30の原則のうち僕が特に意識しておきたいと思った「5つの原則」についてピックアップしたい。

他の人の意見を否定せずに尊重する
人と話をしている中で相手と意見が合わないときもあるだろう。
そんな時「間違っている」などネガティブな言葉を使って相手をただ否定するのではなく、その人の意見を尊重する姿勢をみせること。特に、意見が合わないときの話の進め方として重要なのは、まず意見が合う部分についての話から始めて、そこから意見の合わない部分の理由や原因を噛み砕いていく。非難、文句、そしてネガティブな言葉を並べ続けてはいけない。ポジティブでプロアクティブに会話を進めるべき。

正直で誠実な感謝を伝える
人は、簡単に感謝を伝えることを忘れてしまう。
どれだけ小さなことでも、ポジティブなフィードバックは伝えるべき。誰かに変わってほしい、または改善してほしいことがある時は、まずその人に対して感謝していることを具体的に伝えることが大切だ。これによって、自分がその人を認め、感謝し、信頼していることが伝わり、相手がフィードバックを吸収しやすくなる。

相手の興味を理解する
自分の話を相手により聞いてもらえるようにするためには、相手が何に興味を持っているのかを理解する必要がある。話の中心を「自分の興味」ではなく「相手の興味」にする。自分のストーリー、売りたい物、アイディアなどを伝えるとき、「相手が興味を持つことは何か」を考慮した伝え方ができると良い。

“成功の秘訣” というものがあるとしたら、それは他人の立場を理解し、自分の立場と同時に他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。” ~ ヘンリー・フォード

聞き上手になること、相手に自分のことを語らせる
シンプルなことだが、会話の中で自分よりも相手にたくさん話をさせるような流れを作ることが大切だ。相手の話を親身に聞くことによって、相手の自分に対する印象は確実に良いものになる。そして自分にとっても、相手の考えや想いを学ぶことができ、相手との会話をよりスムーズに進めることができるようになる。

相手に自分のアイディアだと感じさせる
人は、それが自分のアイディアだと感じることができれば、より責任感とパッションを持って物事を進める。人に対して、”やること” を命令するのではなく、質問や提案を通してやるべきことを気づかせる。

以上が、僕がピックアップした5つの原則。他にも参考になる原則がたくさんあって、具体的な事例もあるので、この本はぜひ読んでもらいたい、おすすめの一冊です。

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Q: 投資のステージ、出資金額、取得比率は?

A: ほとんどはスタートアップの1回目か2回目の資金調達、シード期で投資している。1社に対しての投資金額は1000万円〜1億円。出資金額が高くなればなるほど投資基準が高くなる。ほとんどは2000万円前後の出資が多い。

出資に対して株式取得比率は5~10%。株式比率が10%に近ければ近いほど僕にとって魅力的な条件になる。ほとんどの投資先の保有比率は7%前後ぐらいになる。単独で投資する場合もあれば、2社(多いときは3社)共同で出資する場合もある。

回答してほしい質問のリクセストがある場合はこちらのフォームで提出してください!

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起業家にとってのポジティブなインフルエンス


Patrick Gibson

自分が影響されたくないと思っていても、人は無意識に他人からの影響を受け、また、自分も周りに何かしらの影響を与えている。だから、「自分の周りに誰を置くか」が重要だ。VCと起業家も例外ではなくて、お互い影響し合いながら過ごしている。だから僕は、起業家のパートナーとして重要なのは「ポジティブなインフルエンス(影響)を与えられること」だと思っている。

自分が考える支援先の起業家に与えていくべき「影響」は、主にこの3つだ。

野心
起業家には、すでに野心的な人が多いけれど、彼らの野心をさらに増幅させることがパートナーとして重要だと思う。情報や人、そして経験を起業家に繋げて、さらに高い目標を持たせて、もっと大きなインパクトを目指していけるようなインスピレーションや刺激をもたらす。

自信
意見が一致する時は強く後押しをして、一致しない時は自分たちの決断に自信を持てるように議論などを通して”考え抜く機会” をつくる。

モチベーション
モチベーションには波があると思う。波があるのは当たり前なこと。モチベーションが下がった時には、パートナーとして起業家が向かっている先が世の中に大きな変化と価値をもたらすのだ、ということを再認識させてあげることが大事だ。

僕は世界中の起業家から、様々な経験やインスピレーションをもらう機会に恵まれた環境下にいる。起業家が少ないリソースで大きな価値を創造しようと挑む姿を目の当たりにすると、僕自身とても影響を受けるし、刺激をもらう。だから、起業家のパートナーとなるVCも、同じくらいポジティブな影響を与えられるよう意識するべきだと思う。

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B2B SaaSスタートアップへの投資基準


Fortune Brainstorm TECH 2014

ここ最近、僕はB2B SaaSスタートアップに出資する機会がとくに増えてきているので、自分の投資基準を一度書き上げてみようと思う。

僕が出資しているB2B SaaSスタートアップは、主にシード期のフェーズでMRR 0円〜500万円の間の企業が多い。まだローンチ前のプロダクトであることもあれば、ローンチして一年以上経過している場合もある。そんな中、僕が投資判断をするときに軸としているのは、この5つのポイントを信じられるかどうか、だ。

1) 顧客がサービスを愛してくれていること:スタートアップが提供しているサービスに対して、顧客の満足度が非常に高いこと。ローンチしてある程度時間が経過している場合は、Churn Rate (3%未満が望ましい)を見るし、あまり経過してない初期のベータ・プロダクトであれば、ユーザーのエンゲージメントを見る。そしてローンチ前であれば、顧客インタビューを通して予測する。

2) 対象顧客のTop 3の課題を解決していること:例えば、人事部長を説得して導入してもらうHR向けサービスを提供しているのであれば、その人事部長が日々感じているTop 3の課題を解決するソリューションでないといけない。そうでないと緊急度や重要度が低すぎてセールズサイクルが長くなったり、そもそもリーチすること自体が難しくなったりするからだ。

3) 世界レベルの開発スピード:僕が投資するとき、ここが一番気にしている部分だ。B2Bスタートアップは、既存顧客の満足度を高めるための機能開発、競合に対するポジショニングを固めるための開発、アップマーケット(大規模の顧客)に展開するための開発など、「開発」という言葉が常に隣にいる世界だ。開発スピードが勝負の鍵を握っていると言っても過言ではないと思う。だから、開発を外部に委託していたら、僕にとってはNG。
開発スピードは、技術メンバー単体のスキルだけでなく、優先順位の決め方、カスタマーフィードバックを効率よく取り入れる営業チームとカスタマーサクセスチーム、そして技術チーム間でのスムーズで効率的な連携が大きく影響する。

4) 社長が自ら売れること:社長がトップクラスの営業マンである必要はないが、まだ小規模なスタートアップならば、少なくとも最初の100社〜1000社は、社長が自ら営業する必要がある。そのためにも顧客に対しての理解力が必要不可欠だ。ターゲットユーザーを理解できていなければ、サービスを売ることなどできない。この、「自ら売れる力」を持っているかどうかは、かなり重要なポイントだ。

5) ARR 50億円のポテンシャル:大多数のスタートアップは、最初の段階ではACVが低い。最初のうちは低くても良いのだが、今後向上させることができて、将来的にはARR 50億円以上を見込める十分な市場規模であること。ARRの規模だけでなく、持続性のあるユニットエコノミックス(CACの回収期間が18カ月以内)等も重要になる。

ARR、MRR、ACVとは?分からない場合はこちらの記事をご覧ください。

以上が僕がシード期のSaaSスタートアップに投資する時に気にしているポイントだ。

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SaaSマーケティングでも無視できない「Jobs To Be Done」とは?

Matt Hodgesは、2008年から2014年までの6年間、Atlassian のコラボレーションビジネス(Hipchat と Confluence)のプロダクトマーケティングをリードし、年間売上60億円以上のビジネスにまで成長させた。そして現在は、SocialCapital、Bessemer Venture Partners、Iconiqなどから100億円以上を調達しているカスタマーコミュニケーションツール Intercom のマーケティングチームでシニアディレクターとして活躍しており、すでに1万3000件以上の導入実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMattとのセッション内容の一部をまとめてみた。
Intercomは最初、1つのプロダクトで4つのプライシングプランを提供するところから始まった。

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その頃のトップページは、以下のようなデザインだった。

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しかし今のIntercomは、「Acquire」「Engage」そして「Resolve」と言う3つのプロダクトに分けてそれぞれ違うプライシングモデルを提供している。

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Jobs To be Done

このように、1つのプロダクトだけでなく複数のプロダクトを提供するようになった背景には、「Jobs To Be Done」というフレームワークの存在がある。Intercomでは、この「Jobs To Be Done」を応用して取り入れているのだ。

「Jobs To Be Done」は、ハーバード大学の教授Clayton Christensenが生み出した、消費者のモチベーションを理解するためのフレームワーク。ポイントは、消費者は製品・サービスを「購入する」のではなく、自分の「用事(又は仕事)」)を片づけるために製品・サービスを「雇っている」ということだ(参考)。

例として挙げられる機能として、Intercomには、顧客が世界中のどこにいるのかが分かる 〈ライブマップ機能〉がある。

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この〈ライブマップ機能〉がどのように使われているのか、ユーザーの動向を観察した結果、ソーシャルメディアでの共有や、投資家にアピールするために使用されていたり、また、イベントでのPRツールとして利用されていることが分かった。

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ユーザー動向を “観察” することで、この〈ライブマップ機能〉が、どんな「仕事」のために「雇用」されているかを理解することができたのだ。

Intercomのユーザーが〈ライブマップ機能〉を「雇用」する理由は、自社のユーザーが世界中に拡大していることを上手く外部にアピールするという「仕事」をしてもらうためだった。Intercomは、この理解を元に機能改善に取り組んだ。

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そして完成したプロダクトは美しい見た目のほか、アニメーション付きでリアルタイムにアップデートされ、また、プレゼン時でも使える全画面表示機能や、ソーシャルメディアでも共有しやすいように個人データの非表示機能などが付くバージョンにアップグレードされた。

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その結果、さらに多くのユーザーが、この〈ライブマップ〉をソーシャルメディアで共有するようになった。

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“Focus on the job, not the customer”

マーケターとしてまず理解する必要があるのが、”人は、どんな「仕事」を片づけるために、プロダクトを「雇用」しているのか?” だ。それを理解するためには、たくさんのユーザーと話す必要がある。Intercom では、新規ユーザー、退会したユーザー、アクティブユーザー、非アクティブユーザーそれぞれにインタビューをした。

そしてユーザーは、主に3つの「仕事」を済ませるために Intercom を「雇用」していることが分かった。そこで、そのJob (仕事) を軸に、トップページやランディングページのデザインを変更し、プロダクトも3つに分けることになった。

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ランディングページは、Intercomを「雇用」することで、どんな「仕事」を済ますことができるかを明確に伝えられるようにデザインに変更し、細かい機能の説明など、この時点では “余分” な情報をすべて外した。

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マーケティングにも活用
プロダクトの「Jobs To Be Done」が理解できれば、マーケティング戦略にも活用することができる。

マーケティングは、主に5つの活動に分けられる。

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Reach: Intercomを「雇用」しそうな人たちにリーチをする活動。これはPR、イベントでの登壇やスポンサー、FacebookやGoogle広告といったチャネルでメッセージを発信する。

Attract: 顧客を呼び込む。これはブログを使ったコンテンツマーケティングや、本の出版、セミナー開催などから、潜在顧客を呼び込む。

Convince: リーチしたり、呼び込んだ顧客を説得する活動。主にランディングページの最適化や、成功事例をトップページに掲載するなどといった活動になる。

Educate: プロダクトを雇用してくれたユーザーが正しい使い方を行えるための教育。How-to動画や、プロダクトのデモ、ヘルプドキュメント等といった教育教材の用意や活動。

Delight:イベントの主催や高い頻度でのプロダクトアップデートなど、雇用したことを「喜び」に繋げるための活動。

まずは、Convinceから
スタートアップは、多くのマーケティング活動のなかで、どこから手をつけるべきなのか?まずは、ユーザーを説得するためのConvinceから始めるべきだ。そのためにも、ユーザーの「Jobs To Be Done」を理解し、言葉選びや適切なストーリーを伝えていくことが重要である。

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「答え」だけでなく「思考」も伝える


Thomas Helbig

VCがスタートアップへの投資を検討するとき、起業家に対していくつかの質問をする。そのとき重要なのは、ただ単純にその問いの答えを述べるのではなく、自分の「思考」も伝えられるかどうかだ。

チェスができるか
スタートアップの経営は、3対1で3人の対戦相手と同時にチェスをするぐらい複雑だ。3人の相手のうち1人は、他社の動きや経済、技術、文化のトレンドなどで変化する「マーケット」。2人目の相手は、容赦なく攻めてくる「競合」、そして3人目の相手は、仲間や取引先、顧客など広い意味での「人」だ。起業家は、この「マーケット」「競合」「人」それぞれの一手に対して駒を進める複雑なチェスをしている。だから、状況を素速く的確に把握して、次の一手を考え抜く力が必要になる。ピッチの後によくあるQ&Aやディスカションでは、この複雑なチェスができるか、考え抜く力があるかをVCに対して証明する必要がある。

思考を伝えると説得力が増す
VCからの質問には答えだけでなく、その答えに対する思考を述べることでどこまで深く物事を考え、どのようにその答えを編み出したのかを伝えることができる。ただ単に回答するよりも自分が知っていることや経験したこと、試してきたことを答えの中に含めることで、深みが出て、その答えにオリジナリティーが生まれ、説得力が増す。

よくある質問
例えば、VCがよく聞く質問の1つが「マーケットの規模」。
ここでは、トップダウンのリサーチで市場規模の割合(マーケットシェア)を説明するのではなく、対象顧客を明快にセグメント(プロファイリング)して、その数とARPU(又はARPA)をかけた数字を伝えるほうがリアリティーのある数字になる。これによって、ユーザーは誰なのか、そのユーザーはどれくらいいるのか、サービスやプロダクトに対してユーザーがいくら支払うと考えているのかなど、細かな考えを伝えることができる。

もう1つよくある質問が「ユーザーの獲得方法」。
ここでも、獲得チャネルの話をするだけではなく、ユーザーの課題意識やコンプレックスがなんなのか、コンテンツや広告を見たときの感情や期待はなにか、プロダクトへの動線をどう設計するのかという内容にまで落とし込むことで、今まで試行錯誤してきたことやユーザーの理解度を伝えることができる。

起業家に、「考え抜く力」があるか。
これは、VCがスタートアップに投資するとき、もっとも重要視するポイントの1つ。「考えを伝えること」を意識しながらVCの質問に答えられれば、より強くその可能性を伝えられるだろう。

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エンタープライズの変化とSaaSスタートアップの機会

Mamoon Hamidは、シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタル「Social Capital」のゼネラルパートナー。早期の段階で、BoxやSlack、IntercomといったB2B SaaSスタートアップへの投資を実行した実績を持つ。今回は、10月19日に開催した「SaaS Conference Tokyo 2016」でのMamoonとのセッション内容の一部をまとめてみた。
エンタープライス向けソフトウェアの変化
アメリカでは、時価総額1兆円を超えるエンタープライズ向けソフトウェア企業は10社しかない。そしてその10社の平均創業年数は30年。創業して成長させるには、ものすごい時間がかかる。

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エンタープライズ向けソフトウェアを提供する大手企業は、顧客に提供できるサービスやプロダクトを増やすために積極的に企業買収をしている。例えば、SAPのSuccessFactor買収や、SalesforceのExactTarget買収は記憶に新しいだろう。

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セールスチームによる営業活動、その後のソフトウェアのインストールやサーバー導入そして導入後メンテナンスなど、エンタープライズ向けソフトウェアを販売するためには、多くの時間や労力、費用、そして手間がかかる。そのためソフトウェアの購入単価は高くなり、結果、購入できる企業が限られてしまっていた。
しかし、ソフトウェアのクラウド化によって、顧客の獲得やサービスの提供、導入後メンテナンスを低コストで実現できるようになった。サービスを低価格で提供できるようになったことで、SaaSソリューションを購入できる対象顧客が一斉に拡大している。1995年時点では、対象顧客が20万社程度だったのに対して、2015年には2000万社にまで拡大した。そしてソフトウェアの平均単価は、12万ドルから1万ドルにまでいっきに下がった。また、導入コストが高かったために、複数のソリューションを1社の大手ベンダーのみから購入していた企業が、現在では、複数の企業からソリューションを購入する傾向に変化している。

市場の拡大、高利益率、VCやエンジェルの活発化、SaaSの経営ノウハウの成熟度レベルをみても、この時期にB2B SaaSの領域で起業することで、事業成功へのチャンスが格段に広がっていることが分かる。

SaaSスタートアップにとって重要な指標
1つはチャーンレート(退会率)。有料顧客の月次退会率が3%以上のサービスには投資できないし、良い事業はつくれない。退会率は、ユーザーの満足度やエンゲージメントを表す重要な指標だ。また、売上げ額が毎月3%以上下がるのであれば、事業を伸ばすために新しい売上げを3%以上獲得しなくてはならない。売り上げが1000万円程の企業にとってはたいしたインパクトはないが、売上げ額が40億円や100億円となったら、このチャーンのインパクトは無視できない。長期的に持続可能なビジネスをつくること自体が難しくなるからだ。

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もう1つは「Quick Ratio」を 4 にするべきだ。「Quick Ratio」とは、SaaSビジネスの成長の程度を計る指標。当月の増加収益(MRR増分)を、当月の減少収益(MRR減少分)で割った数値。方程式に割り出すと:

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となる

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プロダクトマーケットフィット
B2B SaaSが、プロダクトマーケットフィットを達成できたかどうかを見分ける方法の1つは、「ユーザーエンゲージメント」をみることだ。日常的に利用されるサービスであればDAU / MAUを見ると良い。業務用のソリューションであれば、WAU / MAUに着目すべき。これらの数字が、常に50%を超えているのなら、良い波に乗っていると言っていいだろう。気を付けてほしいのは、サービスによって適正な指標が変わるということだ。

もう1つは、オーガニックで獲得できた有料顧客がどれくらいいるのかだ。
毎月100ドル以上支払う有料顧客を100社以上オーガニックで獲得できていれば、それは「プロダクトマーケットフィットに近づいている」と思って良いだろう。

ボトムアップで自然に上がる
ACV(Annual Contract Value = 年間発注額が高いからといって、いきなりFortune 500や大規模の会社を狙ったサービスをつくるのは賢明ではない。まずは、中小企業を対象にサービスを展開して、自然と引っ張られるように大手企業に展開していくのが得策だろう。例えばZenefits社は、まずYconbinatorに参加しているスタートアップを最初の顧客として取り入れ、それぞれのスタートアップの成長とともに、大手企業への展開を段階的に進めていった。

Boxの場合は、大きな企業のなかでも、まず10名や20名程度の小規模な部署への導入から始めて、徐々に人数の多い部署へと展開していった。こうして、結果的に自然と会社全体でBoxが利用されるようになっていった。

SaaSの成長痛
SaaSスタートアップの初期の顧客は小規模な会社であることが多いため、セルフサーブでサービスを提供することができ、サポートやセールスチームがいなくても成り立たせることができる。しかし、従業員が100人または1000人いるような中規模〜大規模の企業を顧客に持つようになると、サポートやセールス、カスタマーサクセス、アカウントマネージャーなど、組織やオペレーションチームをつくることが不可欠になる。この「組織づくり」こそが、SaaS経営者がもっとも苦労することだろう。

プレイヤー / コーチ
最初にセールスチームやカスタマーサクセスチームをつくるときは、プレイヤーでありコーチにもなれる人材を採用するべきだ。なぜなら、初期の段階では顧客について学び、分析し、試行錯誤を繰り返しながら再現性のある「プレイブック」をつくらなくてはならないから。そして、そこからメンバーを増やし、他のメンバーに伝えていくコーチのような役割を果たさないといけないからだ。

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